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カテゴリ:江戸の小咄でござんす
宿下がりにて候 3 宿下がりしたお玉のほうは、かしこまった武家奉公から解放されて のんびり過ごそうかと思ったのに、朝から夜まで来客の相手をしなくてはならないのに堪忍袋の緒が切れてしまったのだ。 お玉は親の気持ちなどどこ吹く風で、武家奉公など自分の性分には合わない、 まっぴらごめんの心持だったのだ。 店の裏口から忍び出て、久しぶりに江戸の町にでて、 思いを寄せていた色男の与三郎に会いたくて、昔よく遊んだ両国橋界隈で探していると、思いが通じたのか与三郎と、ばったり出会ったのだった。 「よお、お玉、久しぶりよな、すっかり垢抜けしたじゃねえか」 「そうよ、与三郎さん、あたいはね、今武家奉公中さ、宿下がりで帰ってきたんだよ、」 「そうだったのかい、どうもこの頃姿を見せねえとおもっていたんだよ、 淋しかったぜ、、さあ、こっちへきな、」 「与三郎、無礼なことは許さぬぞ、わちきはれっきとした武家の娘であるぞ、 下がれ下がれ!頭(ず)が高いぞ!なんてね、そんなことは言わないよ、 あたいはね、やっぱり江戸の町の娘の方が似合ってるよ、」 「そうこなくちゃな、お玉はお玉だ、変わらねえな、、」 「あたいにはね、武家奉公なんて似合わないよ、 あんたと気楽に楽しく暮らしたいんだよ、、ねえ、与三郎、あたしを離さないでね、、」 と、まあお玉は、惚れていた与三郎と一緒になって、 楽しく暮らそうと企んでいたのだが、そうは味噌問屋が卸さない。 つづく 朽木一空
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最終更新日
2024年03月01日 10時30分09秒
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