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ヒロタカズマ

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June , 2024

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December 19, 2008
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●ベーシック・インカムには、次のような心配をされる人が大勢いるようである。そこで、今回はこの問題について触れることにした。
・労働意欲が減退して生産力が低下し、経済活動が機能しなくなるのではないか
・ベーシック・インカムの財源確保のために増税すると、高コスト社会になり、国際競争力が弱くなるのではないか

1.労働意欲

●確かに、働かなくても収入があって生活に困らないのでれば、働かなくなる人が大勢でてくる可能性を否定できない。また働かない人に支給する分までの財源を調達するには増税が必要になり、税金は物価に跳ね返り、結果として経済競争力が下がってしまうのでは、という心配ももっともである。
●ベーシック・インカムの導入に賛成する人は、その多くの利点を感じていると思うが、その推進に当たっては上記のような心配または批判する人との議論を避けてとおれない。

●労働意欲の問題はさておき、ベーシック・インカムの導入によって労働しなくなるのは下記うちの(c)の人達になるだろう。
(a)仕事や会社が好きだ
(b)仕事や会社が嫌だ・しかし豊かな生活がしたい
(c)仕事や会社が嫌だ・最低限の生活ができればよい

●職場が楽しいとか、好きな仕事をさせてもらえるとかという人達が(a)になるが、現代社会ではそれほど多くないのかもしれないしかしこの(a)はベーシック・インカムの導入によって大幅に増大することが期待できる。経営者は従業員に仕事や会社を好きになってもらうような条件を整えなければ事業が成立しなくなるからである。
●ベーシック・インカムは人間らしい生活ができるに必要な支給額であって、十分に豊かな生活を保障するものではないので、楽しくなくても豊かな生活のために働く(b)のような人は大勢いるであろう。3Kのような仕事には、高給が与えられるようになる。
●封建的な職場秩序(職場は民主主義の世界ではない)、嫌な上司、競争の強制、面白みのない仕事などのことを考えると、所得が保障されるのであれば、(c)のような人が大勢でてきても不思議はない。
●健康であるにも関わらず、働くこと自体が嫌いだという人はそれほど多いとは思えない。好きなことであれば進んでするはずである。これが稼得労働ではない趣味である場合もあるであろう。このような人たちは確かに労働力ではなくなる。しかし、ボランティア活動のような稼得労働扱いされていなかった社会的に有用な分野に進出する人も多くなるのではないかと思う。
●たしかに、ベーシック・インカムは人間的な労働条件を経営者に要求するので、コストアップにはならないとは言えない。しかし、労働意欲が増すといったプラス面も期待できる。

●ベーシック・インカムが支給されるようになると怠け者がやたら増えて社会が機能しなくなると考える人は、現在の資本主義社会での社会規範に基づいて、ベーシック・インカムの社会を考えているのではないかと思う。雇用者側の立場の人にとっては、安閑としていられなくなる。

2.福祉国家からの類推

●生活に困らないだけのベーシック・インカムがある国は現時点では存在しないので、社会規範がどうなるかについて断言することはできない。ただし、スウェーデンのような高福祉国家の社会規範はこれに近いのではないかと思う。
●下記は、以前に「スウェーデンンの政治」というタイトルで書いた記事からの引用である。
●スウェーデン型福祉国家は、保守主義陣営から様々な批判の直撃を受けてきたことは勿論である。代表的なものは次のようなものであろうか。
・過剰福祉は競争原理を否定する傾向があるので、国際市場での競争力が低下する。
・過剰福祉が勤労意欲を低下させ、貯蓄意欲をそいでいる。
・高負担政策のゆえに企業の国外脱出を加速する。産業空洞化の恐れもある。
…などなどである。

●このようなことが言われ続けてきたようだが、いずれも懸念されたようにはならなかった。
●教育費や医療費はロハであり、失業しても困ることはなく、老後の生活も保障される…のであれば、怠け者がやたらに増えるのかといえば、事実は正反対である。スウェーデンに限らず北欧諸国には怠け者が多いという話は聞かない。女性の就業率も高く、専業主婦の割合は数%に過ぎないとのことである。

●ベーシック・インカムの社会は高負担・高福祉社会であり、北欧社会の延長線上にあると考えることもできるので、同じことが言えるはずである。

3.税金と国際競争力の関係

●「ベーシック・インカムの導入さればコスト高になって国際競争力が削がれる」ということが、増税が必要になるからということであれば必ずしも正しくない。ヴェルナーの唱えるベーシック・インカムは消費税率を財源とするものであるが、法人税を全廃することを前提としている。
●法人税は物価に転嫁されるので、上記の消費税率が廃止前の法人税率を上回る場合には、従来よりも物価高になる。但し、外国の商品にも同じ消費税が課される。国内で生産された商品は海外ではその国の税体系に従うということなので、国際競争力に影響することは少ない。これに対して法人税の増税は輸入品には有利になり、国際競争力を削がれる。ということで、ベーシック・インカムの財源をどこに求めるかによって国際競争力への影響が異なったものになる。
●スウェーデンの消費税率は25%で貿易依存度は日本よりも格段に高いにも関わらず、国際競争力もある。

4.社会的立場との関係

●「ベーシック・インカム=労働意欲減退」論者は、高福祉社会反対論者と基本的には同じである。嫌な仕事をさせようとする経営者側の立場の人にとっては、労働者の労働意欲減退が眼に見えるようであり、恐怖ですらあるのだろう。このような人達にとっては、ベーシック・インカムにどのような利点があるかは全く関係ない。利害が直接絡んでいるので、どのように説明しようともベーシック・インカム=労働意欲減退論に固執し、その導入に反対するに違いない。
●ところで、不動産収入や株の配当などによって大枚の不労所得がある人には怠け者が多く、労働意欲がない人達ばかりでるといえるのであろうか。推測の域を出ないが、恐らく不労所得のために人並みの「仕事」をしているのではなかろうか。もっと儲けたいという楽しみのために、日夜「努力」している人が少なからずいるのではなかろうか。
●ということで、ベーシック・インカム導入に伴う影響に関しては、現在の社会的立場が大いに影響しているに違いない。人は理論で納得するのではなく、利害や感情で納得するものであり、利害や感情を説明する理屈を是とするのである。

5.経済至上主義からの決別

●ベーシック・インカムに反対する人達はおそらく、高福祉化社会のための消費税(付加価値税)率のアップ、地球温暖化抑制のための炭素税(環境税)の導入にも反対であろう。曰く、国際競争力を殺ぎ、経済成長にマイナスになるから……と。
●ヨーロッパ社会は消費税率が20~25%になっている。炭素税の導入をしている国もある。上記のような主張は人間の意志というよりも資本の意志である。このようなことを言わせておいたら、永遠に人間的な社会は訪れないし、地球環境も守れない。たとえ競争力が削がれようとも、社会的弱者が生きていくうえでの必要条件を満たすこと(万全なセーフティネット)がなによりも優先されなければならない。

●資本主義社会は経済成長を不可欠とする社会であるが、地球の資源は有限であり、地球上で養える人口も上限に達しているように思える。百年前と比べれば一人当たり生産力は何百倍にも増えているはずである。
●人間は、これ以上、稼得労働のために競争する必要はない…どころか、これ以上経済競争していたら地球がパンクする。

●自己責任・低負担・低福祉の競争社会の方が怠惰な人間を生み出しているように思う。失業という強制された怠惰である。今回のような経済不況にでもなれば大勢の人が路頭に迷うはめになる。
●高齢になって年金などの所得が覚束ないため、働き続けたいと思っても、定年という仕事の取り上げ制度によって、人生の後半部分に怠惰を強制されもする。

●ベーシック・インカムで労働意欲が減退するとは思わないが、経済奴隷状態から解放されて、十分な経済力の果実をシェアすることで、意識的に怠惰になって、家族一緒の時を増やして楽しむとか、趣味に興じるとか、社会奉仕をするとか…人として生まれたことの僥倖を十分堪能した方が良いのでは…と思うのであるが。





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最終更新日  December 19, 2008 05:56:52 PM
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ベーシックインカムには反対しませんが   ハリー さん
実現が、なかなか難しいかもしれません。ベーシックインカムの新たな視点は負の利率でゃないかと思います。現在の日銀や米国の公定歩合をみていると、特にそんな感じがします。経済活動が、負の利率を素直に
実現すべき状況を考えてみるのもおもしろいと思っています。ベーシックインカムがあれば、もっと創造的な仕事ができるということは、多分意味のある主張であるともいます。 (December 21, 2008 12:05:32 AM)

フランスのRMI制度   ヒロタカズマ さん
類似制度として、フランスに最低限所得制度のようなものがあります。
収入が一定の最低限所得に達しない25歳以上の人に最低限所得基準と受給権者の世帯収入との差額を支給することになっているようです。
ということで、あながちベーシック・インカムの社会が遠い将来のとはいいきれないと思います。 (December 21, 2008 11:20:39 AM)

経営者にとってのメリット   ヒロタカズマ さん
経営者にとっては、ベーシック・インカムの導入により、従業員の最低限生活費が補償されるためや社会保険等の雇用者負担分などがなくなるために、コストが大幅に削減されるメリットがある。 (December 24, 2008 10:37:30 AM)

お邪魔します   ブロガー(志望) さん
お邪魔します。

>●資本主義社会は経済成長を不可欠とする社会であるが、地球の資源は有限であり、地球上で養える人口も上限に達しているように思える。百年前と比べれば一人当たり生産力は何百倍にも増えているはずである。
●人間は、これ以上、稼得労働のために競争する必要はない…どころか、これ以上経済競争していたら地球がパンクする。
 となれば今現在の世界で飢餓や貧困に苦しんでいる
人達も含めてどうするかの問題になるのではないで
しょうか。もしそうしたらどれくらいの生活水準にな
る?後産児制限も必要になってくるのでは? (January 11, 2009 07:42:15 AM)

Re:お邪魔します(12/19)   ヒロタカズマ さん
次のような仕組みが必要ではないかと思います。
・これまでの資本主義は外部経済をコストゼロ扱いしてきた→外部経済を内部化経済化する政治の仕組み
・世界的な所得再分配の仕組み(例えば、世界的なべーシック・インカム制度)
・自然エネルギーの有効利用や資源のリサイクルシステム、砂漠や海洋の開発
これらによって、地球人口のキャパシティが増えると思います。資源の使用量が同じでも無駄が減ることにもなるでしょう。
このキャパシティを超えて人口が増加し続けるようであれば何らかの対策が必要になると思いますが、妙案があるわけではありません。 (January 11, 2009 11:13:24 AM)

この記事を支持します   155mm榴弾砲 さん
見事に的を得ていると思いました。

BI反対者は、自分より苦しい人や弱い立場の人を踏み躙ることで安心感と労働意欲を増す非道徳者の可能性があります。そもそも労働意欲のみに論点が縛られるのも変です。例えばBI制でニートやネカフェ難民も購買できるようになりす。私の会社の製品を買ってくれるかもしれません。忙しく買い物もできない人より良いターゲットになるでしょう。企業も低所得者も双方に利益があります。金を溜め込む高所得者または利権主義者(高級官僚等)こそ社会の弊害であり格差社会の源です。BI制は絶好の機会。事実上の少子化対策や軽犯罪対策にもなります。あとは細かい補助政策や道徳教育等で周囲を固めていく必要はあるでしょう。共産主義でも宗教でも右翼左翼でもなく、民主主義かつ庶民救済措置として強硬な姿勢で実現に向かう。 (June 1, 2009 05:42:55 AM)

Re:この記事を支持します(12/19)   ヒロタカズマ さん
155mm榴弾砲さん
>見事に的を得ていると思いました。
ありがとうございます。記事を書く張り合いがでてきます。
BIの説明をすると、大抵の人が「働かざるもの食うべからず」や「怠け者ばかりになる」といった視点から疑問を述べます。これらの意見に対する説明や反批判はBIの宿命なのでしょう。 (June 2, 2009 10:14:17 AM)

CO2排出権を財源にベーシックインカム   環境インカム さん
CO2排出権は国民が共有する貴重な財産で国や企業の所有物ではない
したがって国が排出権を売って代金を国民に均等に配布するのは企業間取引より合理的で実施も容易
加えてCO2削減も確実です。

次より
http://www002.upp.so-net.ne.jp/HATTORI-n/107.htm (June 7, 2009 01:35:40 AM)

Re:CO2排出権を財源にベーシックインカム(12/19)   ヒロタカズマ さん
資本主義の論理からすれば、ビジネスにしなければ(儲からなければ)誰も進んでCO2の削減をしようとはしないということなのでしょうが、私はCO2の排出権取引制度で地球の温室効果をSTOPできるなどというのは幻想であると思っています。
排出権取引以前に排出枠を出きるだけ分捕ろうと浅ましい争いに終始しています。それと温室効果対策は技術の問題でしょうか、社会システムの問題なのではないでしょうか?
社会システムが多少なりとも人間的になってきた国では、CO2の排出も抑制できています。スウェーデンのような国は割当枠を守っているにも関わらず、排出権を売って儲けようなどとはしていないようです。
経済を内部と外部に分けている経済の仕組みを抜本的に改め、地球環境を破壊するから…という理由だけで、CO2の削減に進んで努めるようにすることが理想であると思います。
BIの制度はどのような国でも導入できなければならないと思っています、ゼロサムゲームの排出権取引にBIの財源を求めることには無理があると思いますが…。 (June 7, 2009 11:41:15 AM)

よくわかります   古山明男 さん
実証的でたいへんに説得力がありました。いま御著書「未来からの伝言」を注文したところです。 (November 8, 2009 10:58:27 AM)

Re:よくわかります(12/19)   ヒロタカズマ さん
古山明男さん
「未来からの伝言」は今思えば書き直したい点が多々あります。
経済システムに関してまとめたもの(下記URL)を読んで頂ければ幸です。
<未来の経済システム>
http://plaza.rakuten.co.jp/epocha/9001 (November 8, 2009 11:30:42 AM)

ベーシックインカムは効率的で最高景の気対策   景気太郎 さん
資本主義はベーシックインカムの導入で未来は開ける、逆に導入しなければ衰退します。
お月様にも行ける時代です、ベーシックインカムの導入を年金や社会保障なども含めて検討すべきです
ロボットや通信販売などの普及で雇用は増えません、雇用が増えないとは、労働が必要でなくなったことでむしろ喜ばしいことだと考えましょう、人間の望んできたことですよ、技術の進歩もこのためです。
新しい産業などと無理して労働を増やすことはないのです、人間はもっと遊ぼうよ、この遊びがまた景気を良くする。

※タダで金をあげても、この金で消費が増える、これで利益を得る人もいる、景気も良くなる、すなわち社会に貢献しているのです、これが資本主義の良いとこなのです。(資本主義→福祉は負担でなく景気対策、社会主義→福祉は負担そのもの)

※ベーシックインカムの財源は実質的には増税にならない、国民全てに金が支給されるので差引で増税にならないのです。それで消費が伸び景気が良くなり効率的で最高の景気対策なのです。
それで老いも若きも安心、赤ちゃんも増え、地域の活性化にもなり、食料自給率も上がり、犯罪も再犯も減り、資本主義社会の未来は極めて明るくなるのです。

※ベーシックインカム導入は人道的とか支援とかでなく導入しなければ消費が減って資本主義は衰退するのです。

※赤ちゃんから見た少子化対策なのです
生産者としてなら生まれない方が良い(これが現状でだから少子化になる)消費者としてなら(仕事はロボットに任せる)それで楽しい人生が送れる、これでなければ生まれない方が良い。ベーシックインカムは赤ちゃんから見た少子化対策なのです。
次より
http://www002.upp.so-net.ne.jp/HATTORI-n/
(March 7, 2010 09:18:04 AM)

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