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くもり時々映画

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2018.06.17
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カテゴリ:極私的映画史


 1991年5月、その出会いは衝撃だった。非ハリウッド映画を多く見てきたので、ちょっとやそっとの映画では驚くことはなかったのだが、セルゲイ・パラジャーノフ監督の衝撃には脳天を撃ち抜かれた。鮮烈な色彩、強烈な民族色。今まで見てきた映画とはまるっきり違う。「こんな映画が存在していたのか」と、ただただ驚愕させられた。

 当時はまだセゾングループに勢いがあった頃で、アジア映画やソ連映画の専門館というマニアックなミニシアターが運営できる時代だった。パラジャーノフは、グルジア(現ジョージア)生まれのアルメニア人ということで、ソ連映画専門のキネカ錦糸町が「パラジャーノフ祭」と題して3作品連続ロードショーを行った。1971年製作の「ざくろの色」を皮切りに、過酷な投獄生活を経て発表した1984年の「スラム砦の伝説」、遺作となってしまった1988年の「アシク・ケリブ」の3作品は、どれもパラジャーノフにしか作れない世界で圧倒された。

 中でも「ざくろの色」は圧巻だった。一応、18世紀アルメニアの吟遊詩人の生涯を描いた作品なのだが、ありきたりな伝記映画とは程遠く、まるで詩人の残した詩の世界を映像で表現したかのようなイメージが、ひたすら展開されていく。しかし、実はその作品はパラジャーノフの本来の作品ではなく、ソ連当局から反体制的と非難され、セルゲイ・ユトケーヴィッチ監督により再編集されて検閲を通ったものだった。そんなことをされれば、映像だけが印象的な骨抜きの作品になってしまうのが普通だ。

 ところが「ざくろの色」は違った。確かに他人の手が入ったことにより、パラジャーノフの意図はよりわかりにくくはなっているとは思うが、それでもなお、パラジャーノフが描こうとした詩人の魂は強烈に観客の心に突き刺さってくる。と同時に、途切れることのないパラジャーノフのイメージは、観客をまさに異世界へと運び込んでしまう。一見すると、カメラを固定し、まるで動く絵画のように見えるパラジャーノフの作品だが、その絵画的フレームを超え、その世界は躍動を続ける。小さなミニシアターは、一時パラジャーノフの小宇宙へと化してしまうのだ。

 「ざくろの色」があまりに衝撃的だったため、残りの2作品は「ざくろの色」ほどには驚愕しなかったが、パラジャーノフにはしっかり魅了されてしまった。同年9月、彼の名を世界に知らしめた1964年作「火の馬」を見るために、数年ぶりに三百人劇場の「ソビエト映画の全貌」への出向いた。あの日、あの時、パラジャーノフに出会えたことは、今でも幸福な経験だったと思っている。


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Last updated  2018.06.17 21:44:21
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