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2019.03.16
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カテゴリ:極私的映画史
 
 熊切和嘉監督の名は1998年に公開された「鬼畜大宴会」で知っていた。学生運動グループの血まみれの崩壊をハードな表現で描いた「鬼畜大宴会」は、国際映画祭にも出品され、ロードショー公開時には結構な評判を呼んでいた。狂気と暴力を描くという点では確実に好みの題材なのだが、あまりに評論家筋が絶賛するので、あまのじゃくの血が騒いでしまい、劇場に背を向けてしまった。

 初っ端がそんな状況だったからか、熊切監督がコンスタントに映画を撮っているにも関わらず、なぜかその作品を見る機会がないままに年月が経ってしまう。「鬼畜大宴会」から10年を経た「ノン子36歳(家事手伝い)」が、僕にとっての熊切監督初体験。後悔した。どうして今まで熊切監督に背を向けていたのか。「ノン子36歳(家事手伝い)」は「映画芸術」誌で日本映画第1位に選出され、各国の国際映画祭にも出品される見事な作品だった。

 バツイチ出戻り、三十路半ばの元タレントのなげやりな毎日。企画の段階からキャスティングされていた坂井真紀が、三十路女の生態を生々しく、しかも嫌味なく演じる。ロケ地に選ばれた埼玉の寄居と秩父の程よい田舎感も、ダメ女の心象風景としてぴたりとはまっている。ダメ女の心にホンの少し波を起こす若者を、ブレイク前の星野源が演じているのも好バランス。「なんでこんなのが相手役?」と思わされる印象の薄さが、坂井真紀ありきの映画では適役だった。

 「『鬼畜大宴会』の熊切和嘉」のイメージが強かった僕にとっては「ノン子36歳(家事手伝い)」のナチュラルな生活感は意外だった。もっとハードな作風の監督だと思い込んでいたのだが、この作品で描かれているのは、なげやりで、少々やさぐれてはいるものの、いたってささやかな女性の毎日。「女三十、一生懸命生きてます」といった風ではなく、「女三十、それでも生きてます」といった生活感が、全編にごく自然に漂っている。2年後、熊切監督は「海炭市叙景」でも、ある町に住む人々のくらしを見事に切り取っている。ことさら派手さの求められる昨今の日本映画において、この静けさはうれしい限りだ。

 とはいえ、「『鬼畜大宴会』の熊切和嘉」が封印されたわけではない。「莫逆家族ーバクギャクファミーリア」(2011年)や「ディアスポリスーDIRTY YELLOW BOYS」(2016年)といったハードな描写に満ちた過激な作品もしっかり作っている。まさに「静と動」「清と濁」。その両者を行ったり来たりするところも熊切和嘉の魅力である。

ノン子36歳(家事手伝い) [ 坂井真紀 ]

海炭市叙景【Blu-ray】 [ 谷村美月 ]





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Last updated  2019.03.16 15:06:15
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