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2015年09月18日
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テーマ:戦ふ日本刀(97)
カテゴリ:戦ふ日本刀
 
据物切りとねた
 
 自分はかつて藁屋の老練な職人と、物切りの話をした事があった。
彼は、藁庖丁をもって、古畳を一気に一尺あまりさあっっと見事に切り込んだ。
自分が、日本刀を揮って試みたが、二寸とは切れなかった。
この時の、藁屋の物切りから、自分は二つの事を学んだ。
一つは、押し気味に切るか、引き気味に切るかする事、
一つは、刃先をあらす事であった。
刃をあらすとはねた刃を合わせる事である。
刃先を肉眼では見えぬほどに鋸刃とする事である。
この二つの実施で、その次には六寸あまりを切った。
今から約二十年ほど前の事であった。
その直後に各秘傳とするねた刃の方法を知った。
刃先を約九十度に細くつける勘助ねた刃(旧桑名藩の武士がやった)を知るに及んで、
ねた刃合わせは武術の領域である事に気がついた。
 ある年、信州の山中で、杣〔そま〕がはびろ(※刃広)という一種の斧で、
青竹七、八本しばったのを、一挙に切るのを見た。
一昨年、ある武道会で、重ねの厚い大だんびらを揮い、
ちょうど杣が青竹を切った時のような恰好で、藁束を叩っ切るのを見た。
刃のない青龍刀でのそれ自身の重みで、支那兵が首を叩っ切るのも、そうした理法であろう。
 こうした“力”で斬る業の修業に、いくら熟達したとて、実戦には応用は困難であろう。
力で切る人の格好は、雨戸を開いて、薪割りの体勢である。
 据物切りでも有名な中山博道先生は、軽妙な居合の体勢で、
軽く切るが、その手は鮮やかである。
加藤久という斯道の大家の切り方を見たが、忍び寄るような体勢で、気合で切る。
力は形の上には微塵も見えない。
こうした据物切りになると、もはや精神鍛錬の域であり片現である。
 徐州東北方の要地台兒荘の白兵戦で、
新刀祐定を揮って、鉄条網を截〔き〕った某少壮士官の、その日本刀に刃こぼれがなかった。
帰隊後、武勇伝に花が咲いて、たまたま満座の中で試みた結果は、
鉄条網は截れなくて、その刀身の曲がりと大きな刃こぼれを見せた。
よく話にある、虎と見て射た矢が、虎と見えた石を貫いた。
さらばといって、今度はその石を射たが、矢は立たなかった、というのと同じである。
 これは精神力の不思議な作用が、時にのぞんで、
物の性質を超越する恐ろしい力を発揮する事の例証であり、物心一如のよい例である。
これと正反対に、実によく物を切る腕、よく切れる刀で、
白兵戦に敵を打ち損ねた話をまたたくさん耳にした。
 一気に鉄条網がばらりと截れたのは、据物切りの呼吸ではない。
据物切りがうまいから白兵戦に仕損じなかろうと信ずるのは、
鳥打ちの名猟師が、同時に一線の銃士と信ずるのと同じである。
熟練は武術ではない。これに気合が加味されて武術となり、道に従って武道となるのだ。
 ○○部隊の伊代大尉は、長船無銘二尺二寸五分の日本刀で、
敵を斬る事七人、鉄兜を一つ見事に截った。
自分の見聞中、たしかな堅物截りは、これだけであった。
また聞きした話だけでは、他に二、三聞かぬでもなかった。
失敗したのでは、細身の備前忠光で鉄板を截って取りかえしのつかぬ大刃こぼれを仕出かし、
無銘新刀で石燈籠を截って台なしにした等々。
そうした破損刀はあちこちで手にした。
これらは、刀剣の使命本質をわきまえぬ結果で、決してほめた事ではない。
『刀要録』という古書には、これに対して左の如き鑑戒を残している。
 
 近世ニ至リ、新刀ヲ好ムノ士堅物ヲ切ルトテ胄ヲ切リ試スモノアリ。
 大ナル僻事ト云フベシ。
 甲冑ハモト刀刃矢炮ヲ防グ為ニ作リシモノナレバ刀ヲ以テ切ルベキ謂ハレナシ。
 尤モ戦ノ中ニタマタマ胄ヲ切割リシタコト
 又ハ名刀ノ傳ニ出セルモノゝ如クニ能ク鐵ヲ切ル刀モ世ニアルベカラズトハ言ハレザレ共、
 是ハ實ニ千百ノ一刀ニシテ斯クノ如キ刀ヲ得ント欲セバ士ノ迷トナルベシ、
 刀ノ刃味ハ堅キ骨サへ切レズトモ指料トセンニ害ナシト云フベシ。云々。
 





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Last updated  2015年10月23日 02時37分29秒



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