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佐遊李葉  -さゆりば-

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2009年02月03日
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カテゴリ:山吹の井戸
 だが、少将は妹の顔を見るたび、その声を聞くたびに、どうしても苛ついてくる自分を押さえることができなかった。

 どうしてそうなってしまうのか、少将自身にもよくわからない。妹はあからさまに自分の歌才を誇り、求婚者たちがどれほど熱心に自分に言い寄ってくるか自慢げに語るわけではなかったから。

 だが、妹の態度には、ほかの者には決して感じられないだろうけれども、どこか少将を高みから見下ろすような、至極微妙な嘲笑の翳があるような気がしてならなかった。それが、少将の癇に障っていたのかもしれない。

 そうは言っても、少将はいつも姉らしい鷹揚な態度を崩したことはなかった。常に微笑を浮かべて妹の言葉を聞き、怒りや嫉妬の片鱗すら今まで見せたことはない。

 しかし、少将の胸の底には、さっき角盥の中で揺れていた赤黒い靄のような澱みが、さらに黒さを増しながら沈んでいった。そして、その得体の知れない沈殿物が積もっていけばいくほど、少将は次第に妹から遠ざかり、今ではよほどのことがない限り宿下がりをしなくなってしまったのである。

 妹が胸を病んでいることは、去年の十一月に久しぶりの宿下がりをした時から知っていた。

 五年程前に、二の君と呼ばれた少将のすぐ下の妹が亡くなり、間もなく父も母もその後を追ってからは、この世にただ二人きりの肉親である。当然側にいて看病をしたり、病に弱るその心を励ましてやったりするべきだろう。

 だが、少将は内裏での多忙とこの屋敷の経済を一身に背負っていることを理由に、宮仕えを辞めようとはしなかった。

 妹の顔を見るために募る反感、落魄れ果て病に蝕まれた今も尚少将に向けられるあの微量の嘲笑を含んだ眼差しが鬱陶しかったからである。


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最終更新日  2009年02月03日 13時40分34秒
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