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カテゴリ:山吹の井戸
宮中の作法にようやく少しばかり慣れた頃、少将は后の宮のお供をして弘徽殿(こきでん)の上の御局へ上がった。そこは、普段弘徽殿で暮らしている后の宮の、清涼殿での控えの間である。
后が帝とお逢いする時は、帝の常の御殿である清涼殿へ赴くのが習いだ。后の宮は少しお疲れだったのか、上の御局に上がると几帳の陰に入ってお休みになってしまわれた。 手持ち無沙汰な上に、初めて上がった清涼殿の重々しい雰囲気に呑まれた少将は、何となく居たたまれなくなって、少しでも明るいところへ行こうと端近の庇に出た。 辺りには誰もいない。高い軒端の上に広がる空は今にも雨が落ちそうに暗く掻き曇り、時々稲光が辺りを照らして何とも不吉な感じがする。 表に出て逆にますます不安になってしまった少将は、御局の方へ戻ろうとくるりと踵を返したとたん、目の前にあるものにぎょっとして立ち竦んでしまった。 庇の北面は壁ではなく、引き戸の障子になっている。その巨大な障子の面一杯に、世にも不気味な絵が描かれていたのである。 荒々しい海の波立ちが、ごつごつとした岩場に激しく打ち寄せている。それだけでも恐ろしいのに、その岩場の上にはさらに奇怪なものが描かれていた。 それは幾人かの、異様に手や足の長い化け物だった。長い脚を引き摺りながら磯を漁る者、だらりと長い腕を垂らした仲間をなぜか肩車にしている者。濡れた髪を顔に張り付かせ、嘲笑うような、それでいて人を魅入るような目でこちらを眺めている。 ↑よろしかったら、ぽちっとお願いしますm(__)m ↓これが、この時少将が見ちゃったもの。手長・足長と呼ばれる化け物?が描かれています。見づらい写真ですみません。。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年02月14日 14時45分05秒
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