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カテゴリ:羅刹
「それにしても、そのような厳重な警備の御所に、よくそのような文を結び付けられたな」
「女房もそれを不思議がっておりました。道雅が直接いらっしゃったのか、それとも誰かそのような技に長けている手の者に命じてやらせたのか。でも、それから毎日のように文が結び付けられるようになったので、とうとう上臈の女房に見つかってしまって。当子様の部屋の周りには、終夜見張りが立てられるようになったので、さすがに文はそれきり届かなくなったのだそうです」 「その道雅殿の文はどうした」 「まだわたくしが持っております。どんな経緯があろうと、たとえ誰かへ近づくための手段であったとしても、一度は愛しいと思った方の想いの篭った文。わたくしに宛てられたものではないのは寂しゅうございますが、到底捨て去ることなどできませんでした」 そう言うと、乳母はおぼつかない足取りで立ち上がり、側の二階棚から小さな文箱を持ってきた。 老尼が蓋(ふた)を取ると、中には金の箔(はく)を散らした優美な薄様の結び文が何通か入っている。老尼はまた蓋を閉め、文箱を能季の方へ差し出しながら言った。 「どうぞ、これはお持ちください。わたくしはもう長くはございませんでしょう。わたくしが死ねば、この文もどこかへ紛(まぎ)れてしまいます。そうしてしまうのには惜しいような、艶に優しい歌でございますれば、どうかあなた様のお書きになるという書物の片隅にでも残してくださいませ。それが、この尼への供養だと思し召して」 ↑よろしかったら、ぽちっとお願いしますm(__)m お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2015年01月30日 16時39分51秒
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