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佐遊李葉  -さゆりば-

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2016年01月10日
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カテゴリ:羅刹
 能季は網代車(あじろぐるま)の小窓の隙間から、前方に見え始めた長大な築地塀を見つめていた。

 かなり古びてはいるが、きちんと手入れをされていて、いかにも粋人の住処といった趣きだ。

 牛車の傍らを騎馬で従っていた兵藤太が、先触れを告げるために東の門の方へ馬を駆っていくのが見える。

 能季は小窓を閉じ、慣れない尼頭巾のせいでひどく汗ばんだ額を拭(ぬぐ)った。幾重にも重ねられた鈍色(にびいろ)の袿も重く、肩に打ち掛けられた袈裟(けさ)だけでも取ってしまいたいくらい暑い。

 目の前にいる斉子女王も同じように撫子襲(なでしこがさね)の袿(うちき)を着ているが、こちらはその白い額に汗一つかかず、涼しげな表情を微塵(みじん)も崩してはいなかった。

「女装束というものは、何ともうっとおしいものですね。これでは暑くてかなわない」

 能季が尼頭巾の端で汗を拭いながら呟くと、斉子女王はほんの少し微笑んだが何も言わなかった。

 能季の方も、傾(かし)いだ尼頭巾を所在無く引っ張りながら、それ以上何も言えない。

 何とも気詰まりでならなかった。

 斉子女王と二人きりになることをあれほど夢見ながら、その機会がやってきたというのに、気の利いた素振り一つできない。

 もちろん、これからの試練を考えれば浮ついた気持ちでいられないのは当たり前だが、それでも能季の胸はそれとは違った高鳴りで詰まり、汗が流れてならないのも暑さのせいばかりではないらしかった。


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最終更新日  2016年01月10日 16時46分34秒
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