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カテゴリ:羅刹
「でも、私は仔細があって、この屋敷から出ることを禁じられております」
「それでは、わたくしの車に乗ってこの屋敷を出れば良いのではございませぬか。幸い、わたくしは供人を一人連れております。その者の振りをして、牛車にお乗りくだされ。供人はこの屋敷に置いていきますから」 「でも、もし誰かに見咎(みとが)められたら」 「そのお姿ですもの。頭巾を被ってこっそり牛車に乗り込みさえすれば、よほど夜目の利(き)くものでなければ見破られることもございますまい。それとも、わたくしとの同乗では気詰まりでしょうか」 斉子女王と狭い車の中で二人だけになれる。 それが、道雅のすべてのためらいを吹き飛ばしてしまったらしい。 道雅は慌てるほどの勢いで答えた。 「いえ、滅相もない。女王様さえお気に障らなければ、私は何の異存もございませぬ」 ↑よろしかったら、ぽちっとお願いしますm(__)m お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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