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カテゴリ:羅刹
「私は……そなたにとっては、憎い男の息子だったというわけか」
「はじめはそうでした。私は頼宗様が憎かった。そして、二人の間に生まれたあなた様のことも。権力のある者が、私が心から大切にしているものを、いとも簡単に奪っていく。頼宗様から見れば、私など虫けら同然で何の力もない。それが心底悔しかった。それに、若君を授かったとわかった時、あなたの母上はそれはそれは喜んでおられました。私の居場所など、もはやどこにもないように思われた。若君がお生まれになった時も、私は悔しくて憎くて、若君の細い首に手を掛けようとすら考えたほどでした。でも、あの方は……亡くなる前に、私に言われたのですよ」 「私の母が?」 「あなた様が生まれる時は大そうな難産で、その時に床に臥して以来、あの方は結局最期まで起き上がることはできませんでした。お側にはいつも私の母や頼宗様がいて、私など近寄ることすらできなかった。でも、ある夜、看病に疲れた頼宗様が寝殿へお引取りになった後、私の母が呼びにきたのです。あの方が呼んでいると」 ↑よろしかったら、ぽちっとお願いしますm(__)m お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2016年08月07日 11時24分49秒
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