涙のないさばさばした表情が、安藤の複雑な胸中を表していた。「ジャンプ以前に気持ちの持っていき方...。やらなきゃいけないときにやるのが選手。だけど、私はそこまでできない」。２位以上なら無条件、３位でもほぼ確実だったＧＰファイナル進出。だが、結果は４位。シニアのＧＰにデビューして４年目で、初めてファイナルを逃した衝撃を、冷静にとらえられてはいなかった。

　予兆は滑走前の６分間練習にあったという。３回転ルッツで転倒した際、エッジが右太腿に食い込み「感覚が少しなくなった」。練習では４回転を連発し、好調だったジャンプに迷いが生じた。冒頭の連続ジャンプを３-３回転から３-２回転に落とす決断をしたが「国内開催で緊張もあったし、混乱した」という。

　そのコンビネーションはルッツで転倒。以後は糸が切れたように失敗を繰り返した。浅田のトリプルアクセルと同じ基礎点を持つ"新技"のダブルアクセル-３回転トーループは単発。結局、７度のジャンプのうち成功したのは３つだった。

　昨季の世界選手権優勝後、モチベーションが低下した。立て直しを図ってきたが「１００％向かっていけなかった。時々、自分がなぜ滑っているのか考えてしまうときがある」と告白した。一方で「世界選手権でもう１度いい演技をして、優勝して喜びたい」。揺れる気持ちは隠せなかった。

　ファイナル進出を逃したことで、目標は２６日に開幕する全日本選手権（大阪）に移った。「試合続きで全日本に出るより、少しゆっくりして出られるのはうれしい」とは本心か強がりか。大人の女性の妖（よう）艶な演技を目指す１９歳は、精神的にも大人になるべき時が来ている。