「お母ちゃんが、自分で救急車呼んで入院しました。たいしたことはないので知らせなかったけど、食べたものを吐くので、明日胃カメラを飲むことになりました」という姉のメールが来て、
胃カメラとは穏やかではないと次の日の朝、大阪の病院へ行った。
9時35分の電車に乗って、病院へ着いたのは12時10分前だった。吐くのだったら食べ物を持って行ってもダメだと手ぶら。
3階の個室で、母は白い顔をして眠っていた。
「こんにちは」と声を掛けるとすぐに目を開けた。
「ああ。あんたか。ヘルパーさんが来ぇへん日に歩けんようになってな--------電話のそばまで行くのに1分も掛かって、電話の緊急ボタンを押したらな、しばらくして男の人がドアを叩いて
『○田さん。どうしました?』言うねん。「『どなたですか?』言うたら『救急車です』向かいの人呼んだつもりやったのに、救急車やってん。
『ドア開けてください』『歩けまへんねん』『歩けまへんのか』
『向かいに鍵が預けてますよって、開けとくなはれ』言うたら、しばらくして救急車の人と隣の人が入って来はった。ほいで入院してん。膝にようけ水が溜まってな。注射器で4本も抜いてくれはった」
と絆創膏を貼った膝を見せる。
「胃カメラ飲むて聞いたけど」
「ああ。入院して2日めに、食べたもん戻してな、看護婦さんに言うたら先生が来はって、『念のためにカメラ飲んでみましょか』言うて、飲んだ」
「もう飲んだん?」
「うん。昨日。お姉ちゃん毎日来てくれる」
「入院したら何もせんわけに行けへんから、検査ばっかりしはるわ」
「うん。おとうさんの時もそうやった。肺炎で入院したのに、なんや判れへん検査ばっかりして、いっぺんに具合悪うなってしもたんや。『胃はなんともありません』言うて、『ついでに腸の検査もしましょか』言わはるから、『もう96やのに、検査して病名が判っても判らいでも一緒でっさかいに、検査は結構です』言うて断った」
しっかりしている。心配の必要はなかったのだ。ナースが食事を運んできた。おにぎり1個。サラダ菜に乗ったトマトのスライス3切れ。別のお鉢に小松菜の白和え。味噌汁。
テレビ台の下の抽斗に食パンが入っていた。
「冷蔵庫にカステラがあるから、あれ食べ」
「ジュースかコーヒ買うて来るわ」
「お母ちゃんにお茶買うて来て」
「この下にある?」
「病院の外へ出て買わなあかん。右隣にボックスがようけ並べたあるわ」
階下のロビーへ行くと、大きな自動販売機があった。みんな150円だ。高い。右隣へ行ってみた。同じ値段。次のも同じ。3つめのが、100円だった。レモン。ジュースと煎茶を買った。入院して病室から出ないのに、なんで安い販売機を知っているのだろう?
眠いから今日はここまで。