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2011.08.22
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カテゴリ:事故
 ショータンが軽トラのライトを点滅させていたらしく、救急車はまっすぐやって来ました。川沿いに来たので軽トラの前へ駐まり、私には見えませんでした。
「頭は、怪我してませんか?」
「頭は大丈夫です」
「何処が痛いですか?」
「腰と背中です」
「はい。支えてますから、そろっと寝てください」
 頭と背中を支えてもらって、腕の力を抜き地面に仰向きに寝ました。隊員は3人でした。黄色い鉄製の担架を持って来て、私の横でカバッと縦二つに外し、右からと左からと私の身体の下に入れてから一つに合わせました。
一人が私の身体に重たい毛布を掛けてくれようとしました。
「うしろ半分濡れてますから、これは要りません。この金属、頭が痛いです」
「はいはい。そンならこれを…」
 いま畳んだ毛布を、頭の下にあてがってくれました。ショータンの車が後ろへ下がり、私の頭のすぐ上まで救急車がバックして、金属担架がレールを滑って頭から車の中へ入りました。灯りも点いてないし、なんの設備もないようです。私の左横に座った人が、名前と生年月日と住所と電話番号を訊きました。
「お年は?」
 生年月日を言ったのに、年齢も言いました。頭に異常がないかどうかのテストでしょうか。
1キロほどの所に紀和病院がありました。節電中か、駐車場も玄関も廊下も暗い病院でした。看護師さんかドクターか判らない緑色の服装の女の人が、迎えに出てくれました。
「何処が痛いですか?」
「左側の腰……全体に痛いです」
救急車の人達も一緒に中に入り、一人がまた、「お名前は? 生年月日は? 住所は?
電話番号は?」と訊きました。先に訊いた人も手帳に書いていたのに、本当に頭は普通かどうか、確認しているのでしょう。女の人が言いました。
「まず、レントゲンを撮りましょう」
 転落事故だから、まず怪我の箇所を調べるのが先だと思いましたが、担架から移動ベッドに移されてまっすぐレントゲン室へ運ばれました。
数年前にショータンが救急車で行った病院は、玄関も廊下も電灯がいっぱい点いていましたが、周囲がぼんやりとしか見えないほどの照明です。節電徹底とはいえ、病院がこんなに暗くて大丈夫なのかなあと思いました。
 うす暗いレントゲン室で、女の人は背中の下に原版を差し込んで、「はい。息を吸ってェ止めてくださーい」と言って向こうの部屋へ行き、操作しました。
 ハワイで車に跳ねられたとき、ハワイの病院のレントゲン技師は、「息を吸ってー。いきをとめてー。いきをとめるのやめてー」と言いました。ほかの日本の病院では大抵、「息を吸って、止めてください」「はい。らくにしてください」と言いますが、この人は「息をとめて……」のあとなにも言いませんでした。上向いたままで4枚撮影して、「はい。おわりました」と言いました。
「背中も腰から下も痛いんですけど」
「全部撮りましたよ」
前から背面もうまく撮れるのでしょうか? よく判りません。女技師はさっさとストレッチャーをドクターのいる部屋へ運びました。レントゲン室よりはほんの少し明るい部屋に、30代ぐらいのドクターがいました。救急車の人達もまだいました。ショータンが80歳だし私は軽トラに乗れそうもないので、家まで送ってくれるのかも知れません。
「どんなように落ちました?」
「左足を踏み外して水の中に浸かって、それから辷って、斜め上向きに……腰から下、全部濡れてます」
 夏で幸いでした。ショータンは何処へ行ったのか、救急車に乗る前から姿が見えません。落ちた処から家は近いので、着替えを取りに行ったのかも知れません。まさか…
「はい。はい」
 ドクターは、レントゲン写真を見ただけで、痛いという箇所は見ませんでした。
「骨に異常はないようですが、もし、何日も痛みが続くようでしたら、ここに写っていないところが骨折している可能性もあります」 






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Last updated  2011.08.22 23:05:26
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