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カテゴリ:日々の読書(その他小説)
これも、現文メディアさんから献本していただいた本である。心に残る本を送っていただいてありがとうございます。 今日紹介する「チャリンコ・ヒコーキ・ジャージャー麺」(イサンベ/ペクミョンシク :現文メディア/理論社 )は、「韓国人気童話シリーズ」の第1巻にあたる。 私も、韓国の事情には詳しくないが、著者による前書きを読むと、あちらには「少年少女家長制度」というものがあるようだ。これは、両親が死亡等で子供たちの面倒を見られなくなった場合に、満20歳以下の少年少女が、家事の実質的な責任を持って生活することを法的に許可する制度のことらしい。すなわち、子どもたちだけが残っても、いちばん上の子供が家長になれば、兄弟姉妹が施設などでばらばらに生活しなくてもよくなるのである。現在、韓国には、6千人もの少年少女家長がいるとのことだ。 ●チャリンコ(自転車) このお話の主人公であるトンスはまだ小学6年生の少年である。両親を亡くしたため、家長として、バラックで、弟のトンベ、妹のパンウルの面倒を見ながら暮らしている。彼らの生活は貧しい。しかし、貧しくても卑屈になったりはしない。それぞれが夢を持ち、なんともたくましく生きている。 ●ヒコーキ こういったお話には、意地悪な人が出てくることが多いが、この作品に出てくる人はみんな親切だ。どうも悲しい話は苦手なのだが、今回は安心して読むことができた。例えば、トンスが新聞配達で行く団地の管理人である「空軍おじさん」は、洗車のアルバイトを紹介してくれたうえ、自分の取り分を減らしてトンスに多めに報酬を渡してくれたり、トンスが欲しがっていた自転車を持ち主に安く売るように働きかけたりしてくれた。クラスメートのヘジュは、小児麻痺で片足が不自由だが、明るく積極的な少女で、トンスと仲が良い。そのヘジュの誕生日会に招かれた際には、ヘジュのお母さんが、誕生日のお餅のおすそ分けを装い、ごちそうの包みをもたせてくれた。こういった善意に囲まれて、トンス達は、貧しくとも前を向いて生きている。 ●ジャージャー麺 唯一はらはらしたのは、トンスが自転車を買うために貯めていたお金を、ゲーム中毒のトンベが根こそぎ使い込んでしまったことである。しかし、トンスは父親のことを思い出して、弟を許した。トンベも、模型飛行機という熱中できるものが見つかり、立ち直ったようだ。 最後は、トンベが模型飛行機大会で優勝したお祝いに中華料理屋でジャージャー麺を食べる場面で終わっているが、この兄弟は、これからも夢に向かってたくましく生きていくことを予感させる。 ○応援クリックお願いします。 風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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