|
カテゴリ:日々の読書(SF/ファンタジー)
自らを「鈴鹿」と呼ぶ、女性しか生まれない、滅びかけた「妖」の一族の物語「アカイロ/ロマンス」(藤原佑/椋本夏屋:アスキー・メディアワークの第3巻、副題は「薄闇さやかに、箱庭の」である。 ○「アカイロ/ロマンス3 ― 薄闇さやかに、箱庭の ―」(藤原佑/椋本夏屋:アスキー・メディアワーク) 「鈴鹿」一族は、人間を種の保存の道具としか考えない「繁栄派」と名乗る一派が、人との共存を求める「本家」に反旗を翻し、「鈴鹿」は二つに割れていた。白州学園に通う桐沢景介は、「繁栄派」に襲われ、学園に潜んでいた「本家」の生き残りである「妖」の少女「枯葉」と出会ったことから、彼女の婿候補として、「鈴鹿」の争いに巻き込まれていく。 表紙に描かれた、椋本夏夜による、3人の美少女のイラスト。後ろに描かれているちょっと性格のきつそうな年長の少女と前側の、現代風の裾の短い和装をしたかわいらしい双子の姉妹。いずれも残酷な「繁栄派」の殺戮者なのである。 今回の舞台は、病院。首だけになっても生きられる、強靭な生命力を持っている「鈴鹿」の一族であるが、滅びかけた一族ゆえに、特有の病に冒される者が結構いるようだ。人間と異なる体を持っている彼女たちは、普通の医者にはかかれない。だから、彼女たちの息がかかった病院は、一種の非武装地帯になっているはずであった。 景介は、失踪した姉のことを知る「繁栄派」の少女檻江と出会い、彼女について、病院を訪れる。そこには、枯葉の仲間である夭が入院していた。夭は、胸の病のためか儚げな感じがする大人の女性と言う感じだ。しかし、見かけとは裏腹に、人をおちょくって遊ぶのが好きらしい。景介も、散々からかわれているうえ、枯葉も手玉にとって簡単に丸めこむその手腕はなかなかのものだ。しかも、蔵物の「廻りじんろう」を使うと、文字通り、血に飢えた獣と化してしまうという、ものすごい意外性ももっている。 この枯葉たちを、イラストの3人が襲ってくるのである。非武装地帯である病院をなぜ彼女たちは襲ってきたのか。この戦いで、景介は、なかなかの頭脳プレーを見せる。何しろ、体力的には、圧倒的なハンディがある。ただの人間は、彼女たちと頭で戦うしかないのだ。 「・・・・・・おまえはすごいな。わたしも・・・・・・がんばるから」 この戦いにより、枯葉の心の中で、景介の株はまた上がったようである。 枯葉の、「誰ひとりとして殺さずにこの騒動を収めてみせよう」というまっすぐな決意が、なんともすがすがしく心に響く。 ○ランキングの順位は? ○関連過去記事 ・「アカイロ/ロマンス2 ― 少女の恋、少女の病 ―」 風と雲の郷 別館「文理両道」はこちら 風と雲の郷 貴賓館「本の宇宙(そら)」はこちら お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[日々の読書(SF/ファンタジー)] カテゴリの最新記事
|