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カテゴリ:日々の読書(ミステリー)
表紙イラストに半分ジャケ買いした感じの、「喫茶店タレーランの事件簿」(岡崎琢磨:宝島社)。 後の半分の理由は、自分の学生時代の活動範囲とほぼ重なっているところが舞台になっていたからだが。どうも、最近は、あのころを思わせるような作品を見かけると、懐かしくなってつい買ってしまう傾向にある。歳のせいかな(笑)。 主人公は、なんとも嗜虐的で自己中心的な元カノとケンカした際に、たまたま見つけた<純喫茶 タレーラン>。そこで彼は、まるで女子高生のようなバリスタ・切間美星(実は主人公より年上)と出会う。彼女の入れたコーヒーは絶品だった。そんな彼女とコーヒーの味に魅せられた主人公は、この店に足繁く通うようになる。 本書では、主人公が持ち込んだ謎に、美星が回答を与えると言う形で、様々なエピソードが展開されていく。その謎と言うのは、傘を間違えられたことだったり、親戚の娘の彼氏に関することだったりと、どちらかと言えば、たわいもないようなものばかりだ。美星が謎解きをするスタイルがなかなか面白い。ハンドミルをコリコリコリと回しながら考えるのだ。そして、回答を思いついた時の決め言葉が傑作。<その謎、たいへんよく挽けました>である。この姿を。頭の中に思い浮かべてみると、なんだかとっても可愛らしい。 これだけなら、のほほんとして、牧歌的なボーイ・ミーツ・ガールの物語として進んでいきそうなのだが、実は美星には、心の中でトラウマのようになっているある問題があった。その問題しだいにあきらかになってくるのだが、そちらの方にはあまりミステリー臭はない。しかし、作者は、全体に大きな叙述トリックをしかけていたことが判明する。途中で、一波乱あったものの、やはりこれは、ミステリーとしてよりは、ボーイ・ミーツ・ガールの性格が強い物語だろう。 ※本記事は、「本の宇宙」に掲載したものの写しです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
October 11, 2012 07:12:43 AM
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