清宮早稲田「佐々木組」は、12月4日の早明戦を40対3の大差で、五年連続全勝優勝で終えた。清宮克幸監督が就任して五年、早稲田のラグビーは確実にスケールアップしている。
監督にとっても、学生にとっても、対抗戦優勝は大学選手権を秩父宮を拠点に戦うための予選会の位置づけだ。更に大学選手権連覇すらもトップリーグへの挑戦権を得るための通過点にすら思えてくる。
対明治戦を終えた監督は、早稲田は毎年昨年のチームを乗り越えることを目標にやってきていると事も無げに語った。その結果が今年の成績に現れている。「まったり」とした、「ゆる~い」気の抜けたプレー(あれよあれよのターンオーバーとか、リズムを寸断するノックオンとか)も、皆無とはいえないものの、例年より格段に低下している。
今年の佐々木組の特徴は、フォワード、ハーフ、バックス三者の力が、既にして山下組、諸岡組を上回っていることだろう。二年生プロップ畠山のボールキープ力、突進力は、彼がまだ二十歳そこそこであることを忘れさせ、今すぐ日本代表でも通用するのではないかと、見るものに期待を抱かせる。フッカー青木のラインアウトは安定感を増している。スクラムハーフ矢富は、いささかボールを持ちすぎるところがあるが、球離れのタイミングに緩急をつけられれば、スタンドオフ曽我部とのハーフ団は相手にとっては的を絞りきれず最大の脅威となるだろう。バックスはウイング、センター、フルバックいずれも逸材ぞろいだ。小兵首藤を止めるにはペナルティ覚悟で止めに行くしかない。今村の身体能力に止めを刺すのは、ダンプカーに体当たりするようなもので危険が伴う。対抗戦で8トライを挙げた菅野は今年一番の出世頭。二年生五郎丸のタッチキック、コンバーションは安心してみていられる。時折垣間見えるむらっ気を80分間通して抑えられれば今以上に試合は引き締まるはずだ。
清宮監督は、今の大学生に対して、精神論だけでは学生が納得しないことがあることから、ビデオ解説などに加え、プレー内容を数値化したグラフを活用したミーティングを行っていると聞く。
監督にしてみれば、社会人サントリーの第一線で行ってきたことを、学生に適応したに過ぎないのかもしれないが、こうした戦術指導を行っている大学がどれほどあるだろうか。今の学生にとっては、視覚情報の方が吸収が早いので、耳からお説教を聞かされるよりはるかに理解が進むことだろう。
早稲田ぐらいの大学選手権常連校ともなると、ラグビー部員の数は120名から160名程度に及び、5軍まで組織されている。学生生活四年間をラグビーに打ち込んで、一度も1軍のジャージに袖を通すことなく卒業する部員も多い。そうした集団を監督として束ねていくことの難しさを考えると、何故自分がレギュラーに選ばれ、また選ばれなかったのか、パラメーター化して具現化することは、最も分かりやすく、最も公正な方法だといえよう。
12月18日、大学選手権開幕、清宮早稲田佐々木組は五年間の集大成として、どんなラグビーを見せてくれるのか。今、私たちは21世紀の早稲田黄金時代到来の生き証人として、伝説の誕生に立ち会っている。
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