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カテゴリ:院長の「物語り」
彼女が見せてくれたのは、写真館で撮影したご家族の集合写真。盛装した人々の中心には、もちろん☆☆ちゃんの笑顔がありました。 ピアノの演奏が得意な女子大生だった☆☆ちゃんのからだに、血液の難病が襲いかかったのは、今から10年前の出来事。わたしが勤務していた大学病院に入院した彼女は、そこでつらい治療の日々を過ごしました。 そして、当時まだ制度が発足したばかりの骨髄バンクを介して、ドナー(骨髄提供者)を探したところ、幸いにも一致した登録者があらわれて、彼女は治療の仕上げとして骨髄移植を受けたのです。骨髄バンクの非血縁ドナーからの移植は、まだ日本では黎明期のころで、様々な苦労がありましたが、非常に順調な経過で、彼女はみごとに病いを克服されました。 あれから10年。彼女がわたしに見てほしいと持参したものは、「骨髄移植後10周年」を祝って撮影された記念写真だったのです。 その歳月のあいだ、彼女は学校を卒業し、仕事に就き、さらに結婚もされました。わたしも、大学病院を退職して開業医に転職。お互い変わりましたが、彼女の朗らかな性格と笑顔だけは、全く変わっていません。 記念写真のなかのご両親の柔和な表情や、少し照れくさそうなダンナさまの姿を見ると、10年前のつらい経験が無駄にならなくて、本当に良かったと思えます。 わたしが忙しい診療の合間を縫って、ドナーの検診・採血・面談など、骨髄バンクの仕事を、ボランティアとして当院でつづけているのは、バンクを介した移植のおかげで、自分が治療を担当した患者さんたちの命を救ってもらったことへの、「ご恩返し」にほかなりません。 血液の病気を「卒業」されてからも、こうしてわたしのところを訪ねてくれる患者さんとお話していると、「自分という医者は、この人たちに育てられてきたんだ」と、強く感じます。 例年のように、インフルエンザのワクチンを打ち終えて、☆☆ちゃんは診察室を後にしました。その日の診察が終わったあとで、彼女とわたしのツーショト版「移植10周年記念写真」を、診察室のデジカメで撮影しておけば良かったと気づきましたが、もはや後の祭り。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007.11.25 13:00:51
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