ムクノキ繁盛記
今年も、近畿地方中部では冬の鳥が出揃った感がある。賑やかなモズにジョウビタキ、ツグミにカモ達。そんな季節、河原近くで繁盛するのがムクノキである。昨日、神戸の六甲山麓でムクノキのそばのベンチにいると、一時間中、終始ヒヨドリ、ムクドリ、キジバトの群れが入れ替わり大騒ぎしていた。彼らのお目当ては、径1cm程の黒い実である。彼らはぱくぱく頬張っては楽しげに鳴き交わすが、この実は、人の舌にも美味しい。黒い皮は、少しぶどうに近い丈夫さだが、中の甘さは柿に近い。野の実らしく種が大きいのが特徴だが、子供のおやつにしても十分に贅沢な甘さである。あちらこちらでこの実を野鳥と競ってつまんでいる私だが、何ぶん、翼を持たないだけいつも分が悪い。ムクノキ自体は肥沃な河川を代表する大木なので、なかなか手の届く範囲に実がならない。辛うじて低い木や地形に助けられて採取したり、落ち葉の上に落ちたものを拾うことができる程度なのだが、それでもついつい熱中してしまう。常々思っているのだが、小中学校の校庭にはもっとこんな郷土の樹木が幾種類も植わっていた方が良い。イチョウやメタセコイア、ニセアカシアといった理科的に面白い海外産の樹木を植える気持ちも分からなくないが、それと引き換えに、子供達が郷土の樹木をたかだか十種すら挙げられない教育環境は、あまりにお粗末ではないか。環境教育、などと大上段に構えず、まずは子供達が普段過ごす教室のまわりに、ごく自然に郷土の動植物が息づいていることが肝要なのだと感じる。