Standing On The Edge Of The Noise 〜ノイズの崖っぷちに立つ覚悟〜(後編)
リアムのドキュメンタリー「AS IT WAS」感想後編です。このページから開いた方はもしよろしければ、前半と併せてお読み下さると嬉しいです!ただ映画の時系列に沿って書いていないので、どちらから読んでも同じかも…笑「ノエルは音楽の重要性を過大評価し、リアムの重要性を過小評価し過ぎた」この言葉は、衝撃的でした。しかしとても的確な表現だとも思います。oasisの成功は第一に、リアムの存在とリアムの歌声があったからこそ得られたものだったということ。CDの売り上げ、またライブの集客という明らかな数字となって、ノエルはその残酷な事実を突きつけられました。ただノエルはその点に関してはあまり問題だと感じていないようで、「お互いそれぞれ楽しくやってるんだから、それでいいじゃん」とあくまで冷静。最近のノエルは売り上げ云々よりもとても穏やかに自分の音楽を楽しんでいる感じですよね。対してリアムは。兄貴より売れたぜ、ザマーミロ。ハイフライングバーズなんかぶっ潰してやる!なんてきっと一欠片も思ってはいません。ステージの裏やホテルの一室でソファに寝そべり、何かが降りてくるのを待つようにギターを弾くリアムの姿は、自分自身を使ってノエルの存在をなぞっているようでした。「リアムは兄を気にせずには何もできない。リアムはいつもノエルの視点で、ノエルならどうするかと考えている。リアムのライブの演出はたった一人の聴衆のためだ」こんな切ないことがありますか…リアムの存在を消すかのように新しい道に進み続けていくノエル。リアムは一人で歩き出したけれど、足元に映るのは兄貴の影。各々が作り出す曲を聴いていると、それがとてもよくわかります。ノエルはリアムの曲を聴いたかな。聴いたんだろうな。兄貴だもの。まさにジレンマです。ちょっと脱線しますが、リアムの2ndに「Now that I've found you」という曲があります。この曲はリアムが娘のモリーちゃん(映画にも登場してました)に向けて書いた曲だと言われていますね。ちょっと歌詞を引っ張ってきますI'll be the branch that breaks your fall枝みたいに落ちてくるなら俺がお前をつかまえるIf you need me, make the call俺が必要なら電話してくれよI'll be thereすぐ駆けつけるさAnd I know it's late for lullabies子守唄にはもう遅いかもだけど、But the future's yours and mine未来は君と俺のものNow and for evermore今もこれからもずっとこの歌詞を見た時にふと思い出したのがこちら。could be your lover俺はお前の恋人になれるYou could be all mineお前はすっかり俺のものWe'd go on forever俺たちは永遠に続くよリアムがノエルに向けて書いた?と言われている「Guess God Thinks I'm Abel」です。書いた人が同じだから当たり前なんですが笑、ちょっと似てますよね。リアムは、恋人ではなく自らの家族に「俺のもの」という表現を使うんです。「俺のもの」を失った喪失感がこの映画には映し出されていました。ノエルのように近しい存在を疎ましく思う気持ちも、私にはすごくよくわかります。ただリアムがその気持ちに共感できる日はこないんだと思います。多分死ぬまで。脱線したぁ〜〜というわけで最後です。この映画を見ていて、私が一番印象的だったのはロックンロールスターのリアル、でした。「リアムがあの歌い方で、25年間やってこれたのは奇跡」というような表現です。あの、とはおなじみの「手は後ろに組み」「マイクを見上げるようにして」「半ばぶっきらぼうに」歌う、リアムの歌い方。きっともっと楽に歌う(喉に負担がかからないように発声する)方法はあるのに、リアムは25年間一度もこのスタイルを変えたことはありません。それは、リアムのロックンロールスターとしてのポーズだからです。ファンが、観客たちが、その姿に羨望の眼差しを向けていることを知っているから。oasis中期〜後期、たまに表現されるリアムの「ゲロ声」は単に声が出ないのではなく、おそらく楽に声を出すため、長いツアーを歌い続けるための防御策であったのでしょうね。本当に天晴れとしか言いようがないですよね。しかもそのスタイルを貫くために、若い頃に続けていた悪癖や不摂生を辞めたというんだから、天晴れも天晴れ。20年前のリアム自身が現在の自分の姿を見たら、きっとファッキンクールではないと吐き捨てるだろうなと思います(昔、「サラダ食べてるとことか見られたくない!」とか言ってましたしね笑)。でもやるんです。走るんです。だってリブ・フォーエバーしたいから、と笑うリアムが素敵でした。私がタイトルに引用した「Standing On The Edge Of The Noise」は、ゲムがリアムについて表現した言葉だったと思います。リアムはいつもノイズの崖っぷちに立ってる。波のように揺れる大勢の観客の激しい熱狂という名のノイズ、耳を壊すほどのドラム、ギター、ベースの音。そのぎりぎりに立ち、歌うリアム。リアムはそこに永遠に立ち続けることを覚悟したのだと、この映画を観て感じました。随分と遅くなってしまいましたが、私の感想はここまでです!最後まで読んでくださり、ありがとうございました!!