Dr.半熟卵のつぶやき～女性医療の現場で働く産婦人科医の日記～

今日の言霊:
　魂のレベルが下がって悪循環に陥りそうになったら、
　まずは1人になってリセットする事。
　あせって充電しようとしても空回りしちゃうからね。

　やっと冬らしくなってきたせいなのか、空気が乾燥しているせいなのか、最近風邪ひきさんが急増中です。産婦人科では特に、妊娠中で内科で診てもらえない風邪ひきさんが次々にいらっしゃいます。妊婦さんでも飲める咳止めや抗生物質もありますし、漢方薬でもかなり症状を和らげる事が出来ますから、｢妊娠中は薬は飲めない｣と思わずに、とにかく｢風邪っぽいな｣くらいのときに受診するようにしてくださいね。
　妊婦さんに限らず、例えば、葛根湯を風邪のひき始めに飲む場合、風邪かな～と感じてから24時間以内に飲んだ場合が最も悪化を防ぐ効果が高いというデータが出ています。

　どんな病気もそうですが、早目早目の対応が全てのカギを握ってるんですね。理想的には、ちょっと風邪っぽいかな、と思った時点で早めに帰って、体を温めるものを摂って、お風呂でじっくり温まって、ビタミンをたっぷり摂ってとにかく寝る！のが一番なんです。
　とはいえ、この忙しすぎる毎日の中で、少々の体調不良では休みなんてもらえない、病院に行く事すら出来ないって人も多いですよね。実は、ここ数日パートナーが風邪をひいてしまっていて、電話の辛そうな声を聞くたびに内心｢お仕事お休みしなよ～｣とやきもきしているんですが････常備薬として渡している風邪薬もそろそろそこをついてしまうはず････日本の企業戦士は、なぜこんなにも働き者なんでしょうね。

　っと、話を元に戻しましょう。忙しい毎日の中で、病院に行けない時に風邪を悪化させないためには・・・・手洗いうがい、は基本中の基本として、まずは体を温める事と喉を乾燥させない事。部屋全体の加湿が難しかったら、厚手のマスクをして寝るといいですよ。体の保温は、外からも内からもしていきます。特に背中が冷えないような寝間着を着ましょう。体を温める飲み物は、生姜湯やジンジャーのハーブティー、ハニーレモン、など。食事は無理に摂る必要はありませんが、消化のいい温かいものを中心に。

　市販の風邪薬も、上手に利用しましょう。最近は、鼻水や咳など、メインの症状に合わせた総合感冒薬で優秀なのが結構出ています。咳がついて眠れない時は、ちょっと強力な咳止めも購入できますから、店頭の薬剤師さんに相談してみたらいいですよ。
　漢方薬は、病院で処方されるものよりかなり割高になってしまいますが、成分的には同じ物を購入できます。主な使い分けはこんな感じ････これはあくまで一例ですから、病院でちゃんと診断してもらえる人はもちろん医師や薬剤師さんに相談してくださいね。
　　風邪のひき始めでゾクゾクっとした感じがある時⇒葛根湯
　　咳がひどい時⇒麦門冬湯
　　鼻水･鼻詰まり⇒小青竜湯
　　熱があって節々が痛い時⇒柴胡桂枝湯
　　食欲がなくて体力がひどく落ちている時⇒補中益気湯

　熱は、体がしんどくなければ、実は無理に下げる必要はありません。むしろ、一回ば～っと熱を上げて汗をしっかりかいた方が、風邪のウイルスは早く退治できます。これは下痢をした場合も同じで、無理に下痢を止めるよりも、整腸剤で腸内の細菌叢を整えて水分補給だけをしっかりしながら悪い菌が早く排出されるようにした方が、後々の治りはスッキリするんですね。症状のピーク時はちょっと辛いですが･････

　抗生物質は、必ずしもすぐに飲まなければいけないものではありません。そもそも、抗生物質というのは細菌を退治するための薬で、風邪の原因はウイルスなわけですから、初期には必要ないんですね。でも、病院にいけなくて何とか市販薬でしのいでいたけれどなかなか治らない、なんて時は抗生物質を早めに飲んでおいた方がいいケースがあります。
　目安としては、水っぽかった鼻水がドロッとした黄色や黄緑色の鼻水になった･透明だった痰が黄色っぽい粘ついた痰になった･つばが飲み込めないほど喉がヒリヒリして腫れてきた･38度を越える熱が出だした・・・・ここまできたら、早めに病院に行ったほうがいいですよ。

　年末の一番忙しい時に、風邪くらいで仕事を休むなんて絶対に無理！って人は、日頃からうがいやビタミン補給、そして毎日笑顔で過ごすように心がけてみましょう。でも、やっぱり、調子が悪くなったら早い段階で思い切って休みを取るほうが、トータルの被害は少なくてすむんですけどね。
　今年も残り30日・・・・この調子で元気に乗り切っていくぞ、と思う今日この頃。