カテゴリ:北朝鮮
アジアプレス・石丸次郎大阪代表による北朝鮮の現状(全文1)取材方法など 2016.03.02 THE PAGE
北朝鮮の核実験や「ミサイル」発射実験など、朝鮮半島情勢が不安定化する中、アジアプレスの大阪オフィス代表である石丸次郎氏が2日午後3時から、東京の外国特派員協会で記者会見した。
北朝鮮の取材方法について
石丸:皆さん、こんにちは。よろしくお願いします。石丸と申します。今日はたくさんお集まりいただきましてありがとうございます。国連安保理で経済制裁が今日の日本時間の晩に通過する見込みになってます。もうご存じのように1月6日に核実験、そして2月の7日ですか、ロケット発射をしたことに対するものです。この経済制裁の影響は、どういうものの中で出てくるのか、それを予測するのはなかなか難しいんですけれども、そのお話を少ししたいと思います。
それから北朝鮮の中の人たちが、各実験あるいはロケット発射、そして金正恩政権に、どういういま、思いを持っているのか、どう考えているのかについても取材したことをお話したいと思います。
それではまず最初に私の取材の方法について、お話をしたいと思います。はい、ちょっと地図を見ていただけますでしょうか。これ北朝鮮ですね。北朝鮮と中国は鴨緑江、Yalu RiverとTumen Riverこの2本を国境としています。
この中国側の国境地帯にずっと私は通って、そして合法、非合法で中国に出てくる北朝鮮の人たちとこの20年ずっと会ってきました。私自身も95年、97年、98年の3回、北朝鮮の中に入りました。この中で、皆さんの中で北朝鮮に行ったことのある方、ちょっと手を上げていただけますか。4人ですね。行った経験のある方は共通して感じたことだと思いますが、まったく自由な取材はできません。寝てる時間以外は、ガイドという名前の監視がつきます。
で、それでその私がこれではもういつまでたっても北の中がどうなっているのかっていうのは、取材に限界があると思いました。で、それで私が選択したのは、北朝鮮の人たちと一緒に取材チームをつくって、それで彼らに中の調査をしてもらうという方法です。
北朝鮮に入ったわれわれ外国人はその北の中の、言ったら核心ですね、それに近づこうと思っても高い高い壁があって、いくら努力をしてもいくらお金を積んでもその壁の向こう側を見ることもできない、人と会うこともできない現状があります。
それで北朝鮮の中の人たちとチームをつくって取材をするという方法を、この13年ほどやってきました。 それで私がずっと心掛けているのは、2つあります。1つは強い証拠力を持って世界に発信したいということですね。で、2つ目は北朝鮮の中の人たちに、実際に取材をしてもらう。ジャーナリストとして育っていってもらいたいということです。
それで日常的に連絡をいま、どうやって取ってるのか、ということをちょっとご説明したいと思います。この2本の国境の川を越えて中国の携帯電話を中に入れています。これまで中に入れた携帯電話50~60台にはなると思います。で、その多くはどっかに売り飛ばされたりなくなったりすることが多かったんですけれども、いま現在10台ほどが稼働しています。最近はスマートフォンを入れています。で、スマートフォンだと通話以外にも写真とかそれから音声を送ってくることができます。メッセージ、文字のメッセージもできます。はい、それでは本題に入っていきます。
まずお聞きいただきたいのは、2月のこれは8日に北朝鮮の中の人と通話したときの音声です。で、これは北部地域の女性です、相手は。で、聞いたのは核とミサイルについて、核とロケット発射ですね。それと金正恩政権についてどう思うのかという話を聞きました。で、ほか同じような質問をたくさんの人に電話で聞いたんですけれども、ほとんど内容が同じでした。で、それで今日ご紹介する人を1つの代表例として皆さんにお聞きいただきたいと思います。
北朝鮮北部地域の女性との通話
「昨日、ミサイルを打ったことについては知っていますか」
「はい、話を聞きました」
「ミサイルだと言っていますか、衛星だと言っていますか」
「衛星と言われています」
「(発射が)成功したので重大報道をしたそうですが、皆が集まって聞いたんですか」
「はい。昨日のお昼に(重大報道を)すると言ってましたが、電気が来なくて晩に見ました」
「晩に集まって見ましたか? 人民班別に?」
「人民判別にきちんと集まって見るなんてせずに、見ようとしたら電気が来ないので、一つ電気の来る家に行って見ました」
「電気が来ていなくても電気の来る家が別にあるようですね」
「はい、それも力のある家には電気が来たりするから」
「そうですか。では人々はそれについてどう考えていますか? 衛星を撃ったことをお祝いムードで喜んだりしていますか?」
「そんなのは特にありませんよ」
「人々は関心がないんですか。衛星を打ったことについて」
「みんな食べて生きることに手いっぱいだから。しかし、こんなこと言っても大丈夫ですかね」
「大丈夫です。いくつかお伺いします。では結局は関心がないとしたら、人々はニュースを見ながら喜んでいる人もいないのですか?」
「はい、喜ぶとしたら、コメをくれるならば喜ぶんでしょうが」
「しかし、ミサイル一つ打つお金があるなら、そちらの住民たちの3年分の食糧を供給できるそうです」 「はい。私たちもそれについては知っています」
「(配給の)食糧は与えずあんなことだけをやる理由についてどう考えますか?」
「だから、人々の不満が多いんですよ。不満というと、なぜそんなことをするのかと?」
「はい。食べ物さえなく死にそうなのに(苦しいのに)」
「では上で、そんなのをやっている理由はなんだと思いますか。食べ物もなく、人々がろくに食べられないのに、なぜ核実験や衛星実験をやったりするのでしょう?」
「そうですよね。全部自分たち(権力者たち)がやりたいからやってるということでしょう、自分たちで。私たち(庶民)とは関係ないことだから、自分たちで好き勝手にやっているんだろう」
「しかし国際的にはこんなことやってはいけません」
「なぜですか? 私たちはやってもいいものと教えられていますが」
「衛星とは勝手に打ってもいいのではなく北朝鮮はいま制裁を受けている状態です。しかし、制裁をするといってもずっと打っています」
「こんなのを実験して、こんな理由が下から見ると、上の者たち自分たちの目的に従ってやっていると言うが、下の人々は本当に苦しいと思うが。衛星発射するのに(配給の)コメもくれないでいるから、理由がちょっと気になって、個人的にちょっと気になります」
「それで、もしもし、聞こえますか」
「はい。もう一回ちょっと」
「だから、こんなことやったらいけないのに、ずっと(核やロケットを)やりながら(配給の)コメも与えない」
「もしもし。ではそちらの電気事情などはどうですか」
「電気はこちらまったく来ていません。来ないんですか。では水事情は?」
「水は毎日汲んできて飲みます。水は冬にはただ組んできて飲むしかありません。(水道麻痺と渇水のためと思われる)」
「ああ、そうですか。では先にも言いましたが、上からの一言で(決まる)、金正恩将軍様がこんなやりかたですが、すでに(執権して)4年目ですよね。以前よりよくなったことはありますか?」
「いいえ何がよくなったことありますか」
「それでも建築とかたくさんやっているそうですが。それは平壌の方だけでやっているのでしょう。私たちは毎日のように人民班動員に行かなければならないのに、腹が立ってやってられません」
「それならば、人々はそれに対して不平不満をたくさん言いますか?心の中ではみんなします。でも表だって話せないだけです。どうやっていえるというんですか?(不満を)言ったら捕まっていくんです。(朝鮮に)ここではわかりきったことですよ。不満はみんなにあります」
「では知り合いどうしの間では、不満をどんな形で表現していますか」
「知り合いと言っても、ただ家族の間では話しますが、知り合いでもそのようには言えません(腹を割って言えない)。とにかく国のことについては、親戚の間ぐらいで言うか、(ほかの)人には特に言いません」
「では、家族の間ではどのように言いますか。『小さなガキ』なんて言いますよ」
「あ、そうですか。あ、将軍様をそう言っていいんですか?」
「(私が)こんなことを言っても大丈夫かな」
「はい。大丈夫です。そちらの人たちの話を聞きたくて」
「金正日のときもそうでした。人々が率直に言うのは、いつも『強盛大国をつくる』なんて言っていましたが、よくなったものなんてないです。いまはみんな個人で自分の頭を使って生きていて。いまは国なんか信じてもいません」
「『小さなガキ』がやるようになって、変わったことがありますか?」
「もっと窮屈で、もっとしんどくなっただけです」
「そうですか。統制はきびしくなるのに(人民に)くれるものはなく」
「このような核実験したり衛星を発射したりして、昔のように喜ぶとか、宇宙強国になったとかこのような表現をしないということは、関心がないとのことですか」
「はい。打ったら、打ったそうだと、やったらやったそうだと(言う程度)。そんなことをするならコメとか配給くれたらいいのに。このように言います」
「では、今回それ(衛星打ち上げ)を見て、人々はそんなのを打つならコメでもくれたらと、このように言っていますか。ほかの人々は(核やロケットに)費用がたくさんかかることを知っていますか?」
「知っています。もう1回2回ではないから、だからさらに不満が多いんです。費用がたくさんかかることは、こちら(韓国)からおくったラジオとか映画とかを見て分かったのですか?」
「いいえ。そんなものを見たのではなく、いまではそこにお金がたくさん使われていることは分かっています」
「では今回実験して衛星発射したことに、人々は関心がないとのことですね」
「はい。1回目2回目のことでもないし」
「では、核実験時も関心がなかったのですか?」
「ええ。報道とか講演会とかでは、ずっと『私たちは強国だ』と言ってきたけれど、私たちには何一つよくなったことないから」
「もし将軍様の悪口を言うとしたら、どのように言うのですか。最近では、人々は何について悪口を言いますか?(あなた)本人の考えとしては、『小さなガキ』なんて言うのは何が嫌だからですか? 政治(執政)が悪いからですか?」
「言うのがちょっと怖いですが、とにかく年端もいかない若造じゃないですか。何歳だと考えられていますか?」
「1982年生まれだと(当局は)言っていますが、私たちはだいたいが84年生まれだと考えています。だいたい大人たちも、おじいさんおばあさんたちも(若造だと)言います」
「また嫁さん(李雪主<リ・ソルチュ>)を毎日のように連れていると言っていますね」
「はい。私たちから見ると、(リ・ソルジュが)鞄をいつも持ち歩いているので、『将軍様の奥さんの鞄は(値段が)高いぞ』とか、そんな話もしたりします」
「嫁さんのせいでも悪口を言われていますね」
「はい、そうよ。そんなことも言うし『若いくせにひどいデブだ』『真似ばかりしている』とか。好きになれないですね」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2016.03.14 00:48:19
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