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民主化封圧へ“スパイ記者”潜入、中国「思想教育強化」で脅かされる学問の自由 2015-2-6 産経新聞
中国共産党中央と中国国務院(政府)がこのほど、国内の大学での思想教育の強化などを指示する「意見」を配布した。「意見」では、マルクス主義の学習などに加え、習近平国家主席(61)が掲げる「中華民族の偉大な復興という中国の夢」への貢献を求めており、習近平指導部による「学問の自由」に対する干渉が、本格化することが懸念される。
7部構成の「意見」
中国国営新華社通信によると、「意見」は7部構成となっており、「大学での宣伝思想活動の強化・改善が、重大かつ緊迫した戦略的任務である」「中国の特色ある社会主義理論体系を、教材や教室、頭脳へ取り入れることを的確に促進する」「党の大学における宣伝思想活動の指導を的確に強化する」といったテーマごとに分けられている。
「意見」では、大学をマルクス主義や「中国の夢」、社会主義の核心的価値観、伝統的な文化を守るための最前線と位置づけている。さらに、習主席が2013年8月20日に行った演説の中で、大学をマルクス主義学習を植え付ける場にさせると述べたことを強調。特に教員レベルでの思想活動、政治活動を向上させていくべきだとしている。
中国共産党機関紙、人民日報傘下の国際情報紙、環球時報(英語版)によると、中国社会科学院の社会主義システムの専門家は「(12年11月の)第18回党大会以降、共産党中央と国務院が思想を基礎とする教育に関する声明を出し、キャンパスでの思想教育の重要性を示したのは初めてだ」と指摘し、「マルクス主義を強固にし、社会主義の核心的価値を維持する時だ」と主張している。
大学20校に記者を潜入
中国では昨年11月、遼寧省の地方紙「遼寧日報」が、大学の講義中に中国政府を批判した大学教師を糾弾する「公開書簡」を掲載し、波紋が広がった。
遼寧日報によると、昨年10月下旬、ある学生から、教師が公然と政府の政策に異議を唱え、いわゆる「西側」の制度を追求すべきだとの意見や、腐敗や格差社会を「政治システムの欠陥」と誇張する言葉も聞いたといった情報が寄せられた。その情報を端緒に、遼寧日報は北京や上海、広州、瀋陽などの大学20校に記者を潜入させて、実態を調査したという。そして、公開書簡の中で「教授らの広範な知識や研究態度、責任意識には感動したが、中国批判も存在し、度を越したものさえあった」と報じた。
当局は、遼寧日報が「公開書簡」を発表する以前から、こうした状況を把握していたふしがある。当局は昨年10月の時点で、すでに大学教師の思想に関する指針を発布していたのだ。 指針には「教師は価値観を正し、社会主義の核となる思想を学生にもたらすべきだ」と記されており、当局が大学での民主化思想の拡散に神経を尖らせていたのは明らかだ。
教師らは当然、「教室は自由に意見交換できる場だ」などと反発。指針を出した後も、状況が当局の思惑通りに改善されなかったことが、今回の「意見」の配布につながった可能性も否定できない。
歯が浮く自画自賛
環球時報(英語版)によると、中国の今時の大学生は、政治に関する講義を「退屈」と感じ、政治関係の受講を避ける傾向が強いという。思想教育の強化で、学生の自由な発想の芽が摘み取られることへの懸念も出ている。
「意見」では、思想教育に基づいた教育によって、中国の特色ある社会主義事業を引き継ぐ人材を育てるといった目的を示している。しかし、「意見」が訴える教育システムはすべて、「党中央の堅固な指導の下で」という前提条件がついている。
「多くの教師や学生は党の指導を心から支持している。習近平同志を総書記とする党中央を十分に信頼している。中国の特色ある社会主義事業と中華民族の偉大なる復興という中国の夢の実現に自信を持っている」-。歯が浮きそうな自画自賛の言葉は逆に、習近平指導部の自信のなさを感じさせる。
(中国総局 川越一) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2016.03.18 22:54:28
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