昔つとめていた会社の総務部長に会いに行く
守衛で受付をすると　知らない守衛さんが
総務の場所を詳しく教えてくれた
心の中で　ちょっとだけ笑った
本社の入口は　昔と全然変ってなかった
総務の受付に顔を出すと　知らない人ばっかりだった
辞めてから　７年もたてば当り前か　と思う
総務部長が僕の近くに来た
「じゃぁ　会議室に行こう」
と言われ　後をついて行った

会議室で僕が配属になる予定の部長が来るまで近状を話す
「ちょうど　タイミングが良かったんだよ
　１人欲しかったし　かといって　うちの製品を全然しらない人を
　雇うのは一人前になるまで不安だったし
　前任者が仕事が合わなくて　精神的に参っているから
　早く人が欲しかったし」と部長が言う

「そうなんですか・・　そんなに仕事がきついんですか？」と僕
「いや・・　調整役だから　いろんな人と交渉したりしなくちゃいけなんだよ」
「大丈夫ですかね？」
「おまえなら　大丈夫だよ」

しばらくすると　部長が来て　いろいろと話した
「まぁ　総務部長のお薦めなら　大丈夫でしょう」
「おまえ　いつからこれる？」
「来月　中旬ぐらいです」
「じゃぁ　それまでに　英語をやっておけ」
「英語ですか？」
「数年前ドイツの会社と合併してから　
　管理職のほとんどが外人になったんだよ」
「わかりました　頑張ります」

部長達が退席して　事務的な手続のため人事の人が来た
僕の後輩だった人だった
「お恥ずかしながら　出戻りです」と僕が言う
「（笑）ぽちさん　辞めて何年になります？」
「７年かなぁ」
「そうなんだ・・・　まだ３年ぐらいしかたってないと思いましたよ」
「もうお互い３０代じゃん（笑）」

いろいろ昔話やまだ残っている人の話をして　やっと事務的な話になった
それが終る頃　また総務部長がやってきた

「入社したら　俺が会社内を案内するから」と部長
「え・・　別にいいですよ・・」と僕
「バカ　おまえを知っている人に会わせなくてどうする」
総務部長がうれしそうに言った

人の記憶がなくなったときに　その人は死ぬ
この会社では　まだ僕の事を覚えている人が多くいて
そこに存在していた