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カテゴリ:ジャズ
クロマチック・ハーモニカのヘンドリック・ミュールケンス(1957-)の「ジャズ・ミュールケンジャー」というアルバムを聞く。 例によってbandcampからの情報で知ったアルバムだったが、これがめっぽうよくダウンロードしてしまった。 カナダのセーラー・ドアからのリリースでC$10なので、約1100円+手数料で入手できる。 ロス・レスなので例によってアップ・コンバートしての試聴。 ノイズ感が皆無で、前に張り出してくるサウンドが心地よい。 ハイレゾと遜色のない録音だ。 特に、シンバルの目の覚めるような鮮烈なサウンドが、リアルに迫ってくる。 筆者はジャズのハーモニカと言えばトゥーツ・シールマンス(1922-2016)しか知らない。 ミュールケンスはドイツの方で、ジャズやブラジル音楽方面で活躍しているそうだ。 ピアノ・トリオ+ハーモニカで、ギターやテナー・サックスが加わるという編成。 サックスとのユニゾンでも、全く遜色ないサウンドだ。 プログラムはスタンダード2曲とエリントンとホレス・シルバーの曲以外はミュールケンスのオリジナル。 どの曲も高水準の仕上がりで、オリジナルもスタンダードに見劣りしない。 オリジナルは親しみやすく明るい作風の曲が多く、メロディアスでヴァラエティに富んだナンバーが楽しめる。 ミュールケンスのハーモニカは澄んだ音色と豊かなハーモニーで、ビブラートは僅か。 テクニカルなパッセージなどは出てこないが、それだけで十分魅力的だ。 多分肺活量がかなり多く、大きな音が出るのでプレイに余裕が感じられる。 ただ、ハーモニカは技術的なハードルが高く、やはりスローテンポの曲のほうがしっくりくる。 ピアノ・トリオのバッキングが強力で気持ちのいいプレイを聴くことができる。 ドラムスのプッシュが心地よい。 エド・チェリーのスインギーなギター、ニック・ハンプトンの骨太で豪放なテナーもベスト・マッチ。 ハーモニカが全く見劣りしないのも素晴らしい。 「Belgian Beer At Dawn」(夜明けのベルギービール)というしゃれたタイトルのだが、アップテンポで推進力があり、なおかつ爽快さも感じられるナンバー。 「 A Lullaby For Benny」はミディアム・テンポの爽やかなバラード。 ホレス・シルバーの「Silver's Serenade」は原曲に比べ、はるかに洗練された音楽だ。 スインギーな味わいも十分。 マンシーニの「Dreamsville」の文字通り夢見るような演奏。 ピアノやギターも、いい味出している。 快速テンポの「If I Were A Bell」はプレスティッジのマイルス・デイヴィスのマラソン・セッションでのエロールガーナーのイントロを使ったピアノから始まる。 ミュールケンスのソロはスインギーでご機嫌。 スローバラードの「A Tear For Toots」は、トゥーツ・シールマンスの生誕100年あたる2022年に作られた曲。 彼のトゥーツに対する切々たる思いが感じられる。 16歳でバイブをはじめ、19歳でトゥーツの演奏を聴き、ハーモニカを始めたそうなので、人生の師のような存在だったのだろう。 ハーモニカ、ピアノ、ギターの絡みが何とも言えずいい。 トロピカル・ムードのエリントンの「Smada」は知られていない曲のためか、いまいち精彩に欠ける。 サイドではスティーブ・アッシュの趣味の良いピアノとエド・チェリーの暖かいギターが光っていた。 気になるのはテナー・ソロでにエコーがかかっていて、夜のムードを感じさせることぐらいか。 ということで、思いがけずハーモニカによるジャズに酔いしれてしまった。 ミュールケンスはリーダーアルバムが多数あるので、今後少しづつ耳を傾けたい。 ところで、このアルバムではブックレットが付いていて、ミュールケンスがハーモニカーを始めたいきさつや、曲の詳しい解説がアメリカの音楽評論家スコット・ヤナウにより書かれていて、とても参考になる。 特にクロマティック・ハーモニカでのアドリブの困難さが書かれていて、なるほどと思った次第。 単なるスケールを演奏するのでも吹くのと吸うのがあり、高速で演奏するのはかなり困難であると推測される。 いままで、なぜ高速のアドリブが出来ないのかと思っていたが、そういう理由があるとは知らなかった。 何しろバップ・メロディーを吹けるのはトゥーツとミュールケンスくらいしかいないというのだから。。。 Hendrik Meurkens:The Jazz Meurkengers(Cellar Live Records CMR080824)16bit44.1kHz Flac 1. A Slow One 2. Belgian Beer At Dawn 3. A Lullaby For Benny 4. Horace Silver:Silver's Serenade 5. Meurk's Mood 6. Mancini/Livingston/Evans:Dreamsville 7. Frank Loesser:If I Were A Bell 8. A Tear For Toots 9. Ellington/Strayhorn:Smada Composed by Hendrik Meurkens:(except track 4,6,7,9) Hendrik Meurkens(chromatic harmonica) Ed Cherry(g track 1,4,6,8) Nick Hempton(ts track 2,5,7,9) Steve Ash(p) Chris Berger(b) Andy Watson(ds) Recorded June 22nd & 23rd, 2023 at Acoustic Recording, Brooklyn, NY お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2024年03月12日 16時43分39秒
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