カテゴリ:映画-アジア
いやあ、なんというか今回の「親切なクムジャさん」(公式ホームページ)、このブログのアジア映画の一番最初がこれでいいのかと言う疑問が沸々とわいてくるのですが、「C級シネマ評論」と大上段にブログを立ち上げた以上、そして今回も宮崎のあやちゃんに見得を切った以上、やらずばなるまい・・・って、筆、違ったキーボードが重いのです。
ストーリー Cinema topics onlineより サンタクロースの衣装を着た聖歌隊と伝道師が、"親切なクムジャさん"と呼ばれている女性を待っている。キョンジュ刑務所から出所した女たちは、待ち構えていた家族と抱き合ったり、「心を白くして二度と刑務所に戻らないように」豆腐を食べている。そんな中を、冬だというのに水玉のワンピース姿の女性が無表情で歩いてくる。 イ・クムジャ。20歳のときに「ウォンモ君誘拐事件」の犯人として逮捕され、その美貌と残忍な手口により世間を騒然とさせた。13年の刑期を終えた彼女は、逮捕された時と同じワンピースを着て出てきたのだった。刑務所にいた時からクムジャを支援してきた伝道師が差し出した豆腐の皿を、彼女は片手でひっくり返し、「余計なお世話です」とぴしゃりと言って、立ち去っていく。 刑務所の中で、クムジャは、他の囚人にいじめられた新入りの代わりに復讐を施したり、老いた元北朝鮮スパイの世話をして、この世の天使のように崇められ、"親切なクムジャさん"と呼ばれるようになったのだった。その顔からは光が放たれていたという。だが、出所した彼女からは、刑務所にいたときの聖母のような微笑みは消えていた。13年前から心に決めていた作戦を開始する時が来たのだ。 主人公のクムジャは、刑務所で「親切なクムジャさん」と言われるほど善行を尽くしたのだけど、それは復習のための事前準備にしか過ぎなかった・・・と言うのが前半の主題。善行を施した相手を、自分の復習に利用しようと綿密に計画する。ここは陽の中の陰の部分で、クムジャ役のイ・ヨンエの演技がいい。(チャングムの誓いと、とても同人物とは思えない)善人面をして悪事を働くクムジャを、あどけない笑顔で表現していて、見ている私は後半よりむしろこの部分で背筋が寒くなった。 この前半部分のイメージは「白」である。 出所した後、さっそく復習に取りかかる。 先に出所した仲間を訪ね、自分を誘拐犯に仕立て上げたペグを次第に追いつめていく。 と同時に、懲役に行くことで別れ別れになった娘(=ジェニー)を捜し出し、オーストラリアまで会いに行く。結果としてジェニーは韓国に戻ってくるのだけど、このジェニーも結構したたかだ。クムジャに宛てた手紙に「なぜ私を捨てたの?ごめんなさいを3回(以上)言わないと許さない」としたためる。後になってクムジャがジェニーを抱きしめ「I'm sorry」と謝る時、ちゃんと指折り数えて回数を数えるのだ。これはクムジャのしたたかさと同一のものであり、このシーンによってクムジャの執念をより強く印象づけるのである。 この中盤のイメージは、クムジャのアイシャドーでも解るように「赤」である。 そしていよいよ復習の実行。イメージカラーは「黒」である。 クムジャは自分だけでペグを殺すのではなく、ペグが誘拐して殺した子供の家族を呼び寄せ、ペグが子供を殺害しているところを撮したビデオを見せる。 そして、「警察に引き渡すか、それとも自分たちで始末(=リンチ)するかを迫る。 実はこの部分が「親切なクムジャさん」のタイトル通り、一番「親切な部分」なのである。 それにしても凄惨な映画だ。 子供達の殺人シーンや、ペグを実際に刃物で傷つけるシーンはない。しかし、その一歩手前で停めることによって、見ている方のイメージは増幅される、よりリアリティを増すのである。 この映画の唯一の救いと言えば、ラストシーン。 ジェニーがすくった白いケーキを口にできなかったクムジャだが、ついにケーキに突っ伏しむしゃぶりつく。 復習が終わったからこそ、救いを求めるクムジャの姿がある。 復習では何も変わらないことを悟った、クムジャの姿があるのだ。 そう、信じたい。 イメージは、「純白」である。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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