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南風のC級シネマ評論

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2007/01/05
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カテゴリ:映画-欧州
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 大変ごぶさた致しておりました。
 私なりの「C級シネマ評論」を復活させようと、あれこれ考えていたのですが、これほど長期に休んでしまうと「復活」させるのにも勇気がいりました。
 何だか構えてしまって、「取り上げる映画を選んでしまう」と言う自虐的な状況に陥ってしまったのです。軽い気持ちではじめた「C級シネマ評論」なので、それに捕らわれていくのは本末転倒なのですが、致し方ありませんでした。
 そんな中で復活に際して取り上げたのは、「白バラの祈り ゾフィ・シェル、最後の日々」です。前から見たい見たいと思っていた映画で、ようやくDVDで見ることができました。公式ホームページ

 ストーリー CINEMA TOPICS ONLINE より
 1943年、ミュンヘン。ヒトラーが破壊的な戦争をヨーロッパで遂行する中、そのほとんどが大学生からなるドイツ人の若者たちのグループがあった。ナチスによる非人道的戦争を終結させる唯一効果的な道は、非暴力的なレジスタンス運動に訴えることだと彼等は考えていた。第三ドイツ帝国を失脚させるべく、レジスタンス組織、「白バラ」が結成された。ゾフィー・ショルは、唯一の女性メンバーとしてグループに入る。純粋なゾフィーは、兄と共に献身的に抵抗運動を行うなかで、一人の女性として成熟していく。
                全文を読む

 ゾフィー・シェルは、どこにでもいそうな女学生である。
 ビリー・ホリデイの曲が好きで、シューベルトをこよなく愛する女の子である。
 澄み切った青空が好きで、風の音に心をときめかし、恋人のことを思い続ける心豊かな女の子である。
 そんな普通の女の子が、レジスタンス運動に取り組んでいく過程で、「人間として」大きく成長していった。
 この映画は、その過程を丁寧に描いた、秀作である。

 映画のほとんどはゾフィー・シェルが逮捕されて取り調べを受ける場面で、ゾフィー・シェルとロベルト・モーア尋問官とのやり取りである。
 この取り調べの中で、ゾフィー・シェルは闘うことの本当の意味を知っていく。そして「人として」大きく成長していくのである。

 ゾフィー・シェルは最初から立派な「闘士」だったわけではない。

 大学にビラをまきに行く前のアパートでのシーン。
 ピンで髪をとめた自分の姿に「普通の学生みたい?」と兄に聞く。そんな、本当にどこにでもいる女の子である。

 2度ほど繰り返される、ゾフィーが膝に置いた手を握りしめるシーン。取り調べに対する恐怖に、ゾフィーは必死に耐え続ける。
 最初は無罪を主張していたゾフィーだが、次々にあがる証拠に闘う決意を決める。
 「そうよ、ほこりに思っているわ」とモーアに答えるゾフィー。
 トイレで涙を浮かべながらも、髪のピンを外す。このシーンは、「普通の学生」との決別、ゾフィーが闘うことを決意したシーンだ。

 ゾフィーの心は揺れながらも、最後まで信念を貫き、仲間を守る。
 尋問官モーアが、ゾフィーを取り調べるシーンは圧巻。
 モーアのナチス擁護の世界観に、毅然と立ち向かうゾフィー。
 ゾフィー・ショルを演じるユリア・イェンチと、モーア尋問官を演じるアレクサンダー・ヘルトの迫真の演技に、スクリーンに引き込まれていく。

 留置場。
 窓に向かって祈りを捧げるゾフィー。
 空襲に心をときめかすゾフィー。
 切なくなるシーンだ。
sirobara9.jpg 
 そして、裁判。人民法廷での死刑判決。
 死刑判決から99日ある猶予もなく、即日、処刑されるゾフィー。
 控え室で一人になったゾフィーは、自分の下腹を押さえ、動物のような唸り声をあげる。
 自らの信念に従い死を選んだゾフィーだが、決して強靭な精神力を持ち合わせた女性ではなかったのだ。
 「死」に対する恐怖と、残していく恋人・家族のことを思い、揺れ動く心を持つごく普通のやさしい女性だったのだ。
 そして、それらへの決別が「動物のような唸り声」として表現される。
 第二の自分との決別である。

 廊下。
 家族との面会を終え、涙ぐんだ姿をモーアに見られたゾフィーは言う。
 「両親に別れを言ったからよ、誤解しないで」
 良心に従った自分をありのまま受け入れ、迷いと決別した言葉である。

 ラストシーン。
 処刑室に移される途中で、青空を見上げたゾフィーの顔がまぶしい。
 祈りを捧げた「窓」の外にでたゾフィーが、そこで見たものは何だったのだろうか。
 1943年2月23日、ゾフィーが命を奪われてから60有余年たった今でも、戦火の絶えることない愚かな地球の、未来予想図でなく、「輝き続ける太陽」であって欲しいと祈るばかりである。





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最終更新日  2007/01/05 08:07:21 AM
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