カテゴリ:ドラマ
このドラマ、WOWOWのドラマ枠で制作され、放送された物だという。わが家はWOWOWを契約してないし、その手の情報誌を読んでいないのでこのドラマについてはまったく知らなかった。レンタルビデオやさんで偶然見つけ、そこに書いてあったコピーと、以前読んだ川田茂雄さんの「社長をだせ!」がリンクして借りてきた物だ。 ストーリー 公式ホームページより なんとなく居場所をみつけられないまま大手広告代理店を辞め、中堅食品会社珠川食品に転職した佐倉凉平は、入社早々役員会議でトラブルを起こし、リストラ要員収容所と恐れられるお客様相談室へ異動になってしまう。そこで出会ったのは、やる気はないのになぜかクレーム処理にだけは天才的な手腕を発揮する中年社員・篠崎や、どこか壊れ気味の元社長秘書・宍戸、保身がすべての室長・本間、ストレスで首が片方にしか向かない神保、健康マニアの山内、フィギュアおたくの羽沢など、ひと癖もふた癖もある面々。 続きを読む・・・ 不思議なドラマである。 このドラマを要約すると、「左遷させられた男たちが、団結して会社を守り、自らと会社を再生させる物語」と言うわずか40文字足らずで事足りる。 しかしながら、会社再生物語と言っても「陽はまた昇る」(西田敏行主演)のような硬派なものではなく、どちらかというと軟派系。で、笑っている間に見終えた・・・でも・・・、そんなドラマなのである。 物語の前半は、「お客様相談室」でのクレーマーとのやり取りが主なテーマ。 商品に虫が入っていたと言うクレームや、新製品「ポルコ!」の味がまずいと言うクレームから、はてはスクラッチカードの不備につけ込んで、街宣車で乗り付け脅すと言う人たちまで現れてその対応に追われる。 内容的にはかなり誇張された部分もあるのだろうけど、その対処法に思わず引き込まれ、妙に納得してしまう。(篠崎役の陣内孝則のコミカルな演技がいい。こういう役を演じられる俳優は、彼意外思いつかない) 後半部分に入ると、一転、内容的に重くなる。 「お客様相談室」から本社勤務へ意欲を見せる佐倉は、暗礁に乗り上げたプロジェクトの解決をまかせられるが、小麦粉の偽装問題、会社の身売り-乗っ取り(買収)を知る過程で会社そのものへ疑問を感じる。 「会社ってなんでしょうね」と言う佐倉の疑問は、それまで「会社への忠誠心」という言葉さえ持たなかった佐倉自身の変化だ。そしてこの忠誠心に気付かせてくれたのは、創業以来、会社で作り続けてきた事業=ラッキョの漬物、である。 そしてこのドラマのもう一方の柱は、個人の再生である。登場人物それぞれが持っている個人的事情が、全編を通して丁寧に描かれる。 恋人から見捨てられた佐倉は、ケータイに残された伝言で、一度の妥協が次の妥協を産むと言うことを知る。社長秘書だった宍戸は、不倫していた社長から棄てられたのではなく、不倫した自分はどうだったのかという問いかけを自分自身へ向ける。 それは妻子と別れた篠塚とて同じ事で、彼らはそう言った自分自身と決別することで、自分自身の再生を成就する。 「会社」と言う壁にぶち当たり、苦悩する彼ら。 佐倉は言う。「所詮、組織です。上に立たなかったら何もできない。それが現実」と。 そんな彼らが会社再生に取り組むのだが、そこには悲壮感もなにもない。彼らにとって会社の再生する事は、自分自身の再生とまったく同じレベルなのである。このある種の軽さが、良い意味でこのドラマを不思議な仕上がりにさせているのだと思う。 「謝罪とは何か」「会社とは何か」「そこで働く意味は」等々、押しつられることなく考えさせられるドラマである。 ラストシーン。 最後に流れるスタッフロールに重ねられた珠川食品の製品一覧を見て、このドラマのテーマの「実直」さが際だつようにできている。それぞれの製品の発売年を見て、この会社が真面目に、真摯に仕事をしてきたかが伝わってくる。 平然と食品偽装などが行われる現在、「実直」さが時として馬鹿を見る現在、この言葉の意味を今一度考えてみなさいと諭しているように思えるのだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008/01/27 06:14:05 AM
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