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長い間、ヨーロッパ人は陶磁器の製法を知らなかった。 中国や日本の陶器を王侯貴族だけが手に入れることが出来た。 そしてフランスがポンパドール夫人の尽力の下、ついに宮廷を飾る陶磁器を完成させたのがセーブルである。 エッフェル塔を背に、セーヌ河にかかるセーブル橋を渡る。 太陽王ルイ14世やマリーアントワネット、そしてナポレオンが、華麗な馬車を仕立てて通った橋。 ヴェルサイユ宮殿へと続く路の途中にセーブルはある。 パリの西南約10キロ。セーブルは地下鉄の終点になる。地上に出るとすぐ、セーヌ川の河畔となり、橋の向こうに城が見える。 それがフランス国立セーブル製陶所。正面は博物館になっている。 奥の建物が現代の一流職人達のアトリエになっている。 現代の職人は、アートスクールを出て、国家試験をパスしてここにやってくる。 数年間は修行期間、一人前になるとアトリエが一部屋与えられる。 セーブルの前身は、ヴァンセンヌ窯(1738年創設)という。2人の陶工がパリの東にある古城に居をかまえ、軟質磁器を作り始めた。 それを国威賭けて時の大蔵大臣が応援する。 そして1756年、この窯を現在のヴェルサイユに近いセーブルに移したのが、ルイ15世の寵妃ポンパドール夫人だった。 当時のヨーロッパは厳格を重んじるバロックの時代が終わり、ロココ文化が誕生しつつあった時代である。 芸術家達の有力なパトロンであり、かつ常に流行を先取りしていなければ気の済まない彼女の情熱が、今日のセーブル窯の礎を築いたといえる。 画家、彫刻家、金工家、化学者など美術界、技術界から第一人者を選りすぐり、絢爛たるロココ様式を完成させていく。 その豪華にして繊細、華麗にして優美な陶磁器は時の王や王妃の日用品として、または贈り物として、富と権力の象徴として発展していくことになる。 セーブル独特の典雅な美しい色は、カオリン(陶土)の質、うわ薬や絵の具の配合、そしてそれらの絶妙な組み合わせによって開発されたものである。 有名な「ローズポンパドール」や「王者の青」なども、たゆみない研究の末に表現された色。 絵付けに使う絵の具は現在までに数千種類にも及んでいるという。 この製陶所には、世界中から良質のカオリンを集めて調合し、寝かせておく建物もある。材料の徹底的な選択も王者の青を守る秘訣らしい。 そして、セーブルの金彩文様、模様を一旦銅版に彫り、それを和紙に写し取り、陶磁器に貼り付ける。 その手間は大変だが、ここではより美しく仕上げるためには時間や労を惜しまない。 王室御用達だったセーブルは、現在では大統領御用達。生産量は限定され、その殆どが国賓への贈り物などフランス国花のために作られている。 注文がこなければ作らない、素材の選択を徹底したっぷりと時間をかけて歴史に選ばれた職人達の手によって造形され、描かれ、そして焼かれていく。 今も二十数か所のアトリエで働く、類稀なる百数十人の名工たちによって支えられている。 「幻の陶磁器」といわれたりするが、幻とならず、この美の伝統をいつまでも守っていって欲しいと願ってやまない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
herenさん!本当に勉強になります!!
そうですよね。チャイナとは、英語では磁器のことですものね。ガラスはローマ時代からあったのに不思議ですね。 さて、セーブル。すばらしいです。王者の貫禄ですね。バカラといい、フランスのものには風格がありますね。この濃紺のお皿に描かれた金模様、すごいですね。これもすべて手書きなのですね。ちょっと気が遠くなります。 このようなアルチザン(技能のある特別な職人)の技術、本当に残して欲しいなと切に思います。ヨーロッパでは、国が後押ししてこのような技法を守っているのがすごいですね。 ただ、すこし前にバカラで大ストライキがあって、たくさんの有能な職人さんが職を失ったと聞きました。時代の流れの中でも、大切なもの、残していきたいと本当に思いますね(余談ですが、だからバカラで廉価版作るようになったのでしょうか?)。 (December 31, 2005 01:14:22 AM)
アトムおじさんさま
>この青、上品ですね。 >そんな歴史があったのですか。 >勉強になります。 セーブルはフランスの誇りでしょうね。 この磁器はフランスにしか表現できないものがあると思います。 セーブルはフランス以外では唯一日本で取扱いがあったのですが、現在ではその数も少なくなり、寂しい限りです。 (December 31, 2005 01:44:52 AM)
grazielizzyさま
>herenさん!本当に勉強になります!! >そうですよね。チャイナとは、英語では磁器のことですものね。ガラスはローマ時代からあったのに不思議ですね。 ヨーロッパにおける磁器の歴史は、ガラスに比べると本当に浅いですよね。 1709年、マイセンで磁器が完成してからですもの。 ガラスについても、ムラノ島に幽閉された職人たちのことを思うと何とも。 逃げ出した人や、そこで芸術品を作り続けて一生を終えた人、腕のいい職人さんたちは、ある意味かわいそうなところもありますよね。、 >さて、セーブル。すばらしいです。王者の貫禄ですね。バカラといい、フランスのものには風格がありますね。この濃紺のお皿に描かれた金模様、すごいですね。これもすべて手書きなのですね。ちょっと気が遠くなります。 セーブルの磁器は本当に芸術品といって過言でないくらい、洗練されていると思います。 まさにフランスでしか表現できない雰囲気が醸し出されていて、高貴な印象があります。 >このようなアルチザン(技能のある特別な職人)の技術、本当に残して欲しいなと切に思います。ヨーロッパでは、国が後押ししてこのような技法を守っているのがすごいですね。 > >ただ、すこし前にバカラで大ストライキがあって、たくさんの有能な職人さんが職を失ったと聞きました。時代の流れの中でも、大切なもの、残していきたいと本当に思いますね(余談ですが、だからバカラで廉価版作るようになったのでしょうか?)。 バカラにも日本でいう人間国宝にあたるフランスの最優秀職人制度、M.O.F.の資格をもつ職人が20名ほどいると聞きます。 ストライキで有能な職人さんが職を失うなんて、悲しいですよね。国家の財産が失われるような感覚に思えます。人こそ本当に財産です。 技術と伝統、いつまでも継承していって欲しいです。 (December 31, 2005 02:07:38 AM)
1枚目の写真の食器の配置は本当にすばらしいですね。
すこしアンバランスでセーブルを置いているあたりは驚きです。 セーブルの青の気品は本当にすばらしいと思います。 いつかこれに囲まれてフルコースで食事をいただいてみたいものです。 時間があったので丸の内のサンルイのショップに行ってきました。バカラ、ジョージジャンセンのショップも隣にあって、もちろんサンルイのショップも普段見かけないほどたくさんあって楽しかったです。 お時間があればぜひ訪問してみてください。 そこでサンルイがエルメスグループに吸収された事をはじめて知りました。 (December 31, 2005 04:14:09 AM)
A.Haruharu74610さま
>1枚目の写真の食器の配置は本当にすばらしいですね。 >すこしアンバランスでセーブルを置いているあたりは驚きです。 有難うございます。どちらかというとアンバランスな感じの雑然とした雰囲気が自分にはあっているのか心地よく感じます。 >セーブルの青の気品は本当にすばらしいと思います。 >いつかこれに囲まれてフルコースで食事をいただいてみたいものです。 セーブルの食器でフルコースというのは贅沢ですよね。 ちゃんと自分でお料理できる腕前があればいいのですが、とても、とても。 >時間があったので丸の内のサンルイのショップに行ってきました。バカラ、ジョージジャンセンのショップも隣にあって、もちろんサンルイのショップも普段見かけないほどたくさんあって楽しかったです。 >お時間があればぜひ訪問してみてください。 > >そこでサンルイがエルメスグループに吸収された事をはじめて知りました。 サンルイがエルメスグループに吸収ですか...。 初めて知りました。貴重な情報有難うございます。 そういわれれば、よく行く神戸大丸でも、ドーム、クリストフル、エルメス、サンルイと横並びで仕切りの無いスペースに並んであって、ディスプレイも一緒にしてあったりします。 普段見かけないものが並んでいるのを見ると、ついつい手が出てしまいますね。ワクワクしそう。 (December 31, 2005 03:32:29 PM)
の使いが大変贅沢なお皿ですね。見ているだけでため息が出そうです。私もセーヴルだけは別格だと思います。一般のリモージュとは格が数段違いますよね。
ちなみにこの様式、フランス革命の時に逃げた陶工達がマイセンに伝えたと理解しています。19世紀始めからのマイセン・ポメロ期にはコバルトをふんだんに使った陶器が作られています。またマイセンの隆盛はセーヴルから移った才能ある陶工や絵付師達によることも大きいのでしょう。こういう歴史的な流れもヨーロッパ陶器の面白さの一つですね。 (December 31, 2005 06:50:11 PM)
Q_さま
>の使いが大変贅沢なお皿ですね。見ているだけでため息が出そうです。私もセーヴルだけは別格だと思います。一般のリモージュとは格が数段違いますよね。 セーブルは格別、本当にそうかもしれません。 高貴な雰囲気に包まれております。 オーラが出ているというのでしょうか。 ラピスラズリにも似た深い深いブルー、吸い込まれるようです。淡いブルーやブラウンにも惹かれます。 >ちなみにこの様式、フランス革命の時に逃げた陶工達がマイセンに伝えたと理解しています。19世紀始めからのマイセン・ポメロ期にはコバルトをふんだんに使った陶器が作られています。またマイセンの隆盛はセーヴルから移った才能ある陶工や絵付師達によることも大きいのでしょう。こういう歴史的な流れもヨーロッパ陶器の面白さの一つですね。 マイセンのコバルトも有名ですが、コバルトに関してはやはりセーブルの方が繊細で品があるように感じます。 昔の逃亡してあちこちへ散らばった陶工達の功績は大きいですよね。磁器制作の発展に大きく影響していると思います。 マイセンのコバルトは、モカセットのみ持っているのですが、セーブルより気楽に使っております。 http://plaza.rakuten.co.jp/heren/diary/200511150000/ (January 1, 2006 11:25:30 PM) |