テーマ:政治について(19789)
カテゴリ:医療問題について
奈良で妊婦がたらい回しされ、流産してしまうという悲しい事件が起こりました。
この件に付いて、奈良県立医大附属病院がホームページで「今般の妊婦救急搬送事案について」と題し事情説明をしている。 「今般の妊婦救急搬送事案について」 http://www.naramed- u.ac.jp/~hp/20070831.pdf 医療機関に身をおく人間として、この事件を機会に是非国民の皆様に是非理解していただきたいことがあります。 行政も、メディアも、国民も 「たらい回し」「拒否」などとセンセーショナルに議論している場合ではないとおもいますよ。 医療を抜本的に考えるときです。 医療崩壊と言われて久しいですが、そこをなんとか医療従事者が労働基準法を無視して、無理に無理を重ね制度を持たせてきたのが今の医療の現状なのです。 「今般の妊婦救急搬送事案について」を読むと、当直医は一睡もしないで次から次へと仕事をしていたことが分かる。 もちろん次の日も引き続き通常勤務をしている。 ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 平成19年8月28日の当直日誌記録より (産婦人科当直者 2名) 対応内容 8月28日(火) 19:06 前回帝王切開した患者A(妊娠36週)が出血のため来院 診察終了後、患者A帰宅 19:45 重症患者B(妊娠32週) 妊娠高血圧のため搬送入院、病状管理に努める 23:00 重症患者Cの手術終了(9:00~手術開始) 医師一人が術後の経過観察を実施 23:30 患者B 早剥のため手術室へ搬送、緊急帝王切開実施(00:08終了) 8月29日(水) 00:32 患者Bが病室に帰室重症であったため、医師一人が朝まで術後の処置等におわれながら、他の患者への処置等を応援、当直外の医師1名も、重症患者の処置応援にあたり2:30頃まで勤務 02:54 患者D(妊娠39週) 陣痛のため緊急入院、処置 02:55 救急隊から1回目の入電(医大事務当直より連絡があり、当直医一人が事務に返答。「お産の診察中で、後にしてほしい」 03:32 患者E(妊娠40週) 破水のため緊急入院、処置(患者Eの入院により、産科病棟満床となる) 04:00 開業医から、分娩後に大量出血の患者Fに関する入電があり、搬送依頼あるが、部屋がないため他の病棟に交渉を開始 04:00頃上記の直後に救急隊から2回目の入電(医大事務が説明したところ電話が切れる)「今、医師が、急患搬送を希望している他医療機関医師と話をしているので後で電話をしてほしい」 05:30 産科満床のため、患者Fを他病棟に緊急収容 05:55 患者Dの出産に立ち会う その後も、患者Fの対応におわれる 08:30 当直者2名は一睡もしないまま、1名は外来など通常業務につき、他1名は代務先の医療機関において24時間勤務に従事 ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 過密業務でよく問題となる、トラック業界やバス業界でこのような勤務体制をしていたら、経営者は間違いなく処罰されるだろう。 でも、人命を預かる医師をこのような勤務に従事させ、今回の奈良県立医大附属病院のように堂々と公表しても院長は処罰されることはない。 医療現場に対する見方が 理解されず 厳しすぎるのである。 そもそも今回の当直医の勤務状況は、『当直』といえるのか???? 当直というのは、滅多にない緊急事態に備える勤務を言うのだ。毎度毎度診療に追われる今回の事例のことを普通『夜勤』というはずだ。交代制で行われなければならないのだ。 今回の当直医の勤務は『日勤』『夜勤』『日勤』なのである。 医師は、たとえ一睡もしなくても『当直』なので勤務ではないと見なされる。だから連続30時間以上の勤務が放置され、その前後にも休日はない。この状況が放置されているのである。 人間の限界を超えるような勤務態勢を放置して、それでも不十分だとしたら、体制そのものを変えなければならないことくらい、行政も、メディアも、国民も、理解すべきである。 この場に及んで医療にかけるコストを減らす議論がされる。 一度医療が完全に崩壊しなければこの事態を理解出来ないのだろうか? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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