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多くの人が勘違いしてしまうことに、会社の規模さえでかければそれは強いことだし、よいことだと思いがちな部分がある。
元IBMのルー・ガースナーでさえ巨象も踊るで、でかいことはいいことだという、しかも 「象が蟻より強いかどうかの問題ではない。その象がうまく踊れるかどうかの問題である。見事なステップを踏んで踊れるのであれば、蟻はダンス・フロアから逃げ出すしかない」 とまで言っている。 ほんとうにそうなんだろうか? これを検証するには、ウォルマートをはじめとするリテール(小売)業界を検討してみるといい。ウォルマートは世界最強の小売企業なのだろうか? え? 一体誰がそんなことを言ったの? あれは単に速くてでかいだけだ。 アメリカのニューヨーク州には、ウォルマートが牙城をほんの少しも侵食できない、ニューヨーク州最強スーパーチェーンがある。 ウォルマートが独占しつつあるのは、強いからではない。 最強スーパーが、速く動けないから、というだけなのだ。 その説明をしよう。 あ、その前にこの言葉をぶつけておこう。 「もし、たった一つだけあなたの生活に存在するスーパーを選ぶとしたら、それはウォルマート?」 やだなぁ(笑)。 想像しただけで怖くなってくる。 さて、わたしは、ECが長かったので、小売の研究はよくしている。 その中には、ウォルマートの強さを宣伝する記事ばかりが多いが、専門家の見方は違うようである。普通に考えれば、IT技術を駆使し、卸価格を下げさせ、徹底的な効率化をすれば、小売では勝ててしまうように見えるのだが、実際には全くそうではない。 日本に、外資系スーパーが参入したのは記憶に新しいが、未だに目立った成果を挙げていない。 日本は現在、イオン系・イトーヨーカドー系の二社に絞られつつあるように見えるようなのだが、実際にはそうではないことをまず言っておく。 小売は感情の産物である。 そんなことはちょっとでも一般客相手の商売をしたことがあるのなら、あっという間に分かるはずだ。 ある大手チラシ会社の社長は、ウォルマートが参入して、カルフールが参入してきたとき、実際に店舗を見に行ってほっと息をつき、胸をなでおろしたという。 「やつらは、生鮮売り場を全く理解していない!」 嬉々として、そう言ったらしい。 別に日本の小売業界が閉鎖的なわけではない。 単純に、ウォルマートが日本の小売を知らないだけなのである。 ■リアルタイム・リテールってサイトご存知ですか? さて、えらそうに語ってきたのだが、実はわたしが話そうとしていることは、日経系のリアルタイム・リテールというサイトで語られることの受け売りである。 ・リアルタイム・リテール http://premium.nikkeibp.co.jp/retail/ このサイトは非常に上質な情報が集まっているのでお気に入りだったのだが、二年ほど前から連載がストップしてしまっている。 ほんとうのことを言うと、ここにある記事を全部読んで頂くのが手っ取り早いし、どれを読んでもためになるのでお勧めなのだが、全部読むのに数時間かかるだろうから、わたしがポイントと思える部分を抜き出して紹介したい。 ウォルマートはちっとも強くないことがよく分かってくるはずだ。 ■実は、地域独占が進んでいる日本の小売業 さてまずはこの記事から言ってみよう。 「塗り変わる勢力地図——国内小売業最前線 第7回 元気な地方小売業」 http://premium.nikkeibp.co.jp/retail/column/kazama/07/index.shtml この記事は、小売業の成長率が高い会社は地方の小さい企業が多いということ。引用してみよう。 先ほどのデータが示すように、地方小売業はとにかく元気だ。また、このランキングにまでは入らなかったものの、イオンやイトーヨーカ堂、セブン-イレブン・ジャパン、さらにはオートバックスセブン、コジマ電機、マツモトキヨシ、大創産業といった、それぞれの業態ではトップブランドにある小売業をたじたじさせるような地方小売業も少なくない。筆者は、その強さの秘密として、 ・熟知したホームグラウンドで戦える強み ・むやみに規模拡大を狙わないことも共通点の一つ と言っている。 実は小売とはこういう性質を持つ側面もあるのを理解しないといけない。小売は感情の産物である。お客さんに愛されることにおいて一番を目指すのであれば、安易な規模拡大化をしないほうがよい事は、わかりやすいことである。 ■実は、アメリカも、地域独占が起こっている。 続いて、冒頭に書いた、ニューヨーク州最強スーパーの話。 「米国注目企業に見る最新流通戦略 第3回 常識を超えよ!究極のコンビネーションストア ウェッグマンズ」 http://premium.nikkeibp.co.jp/retail/column/suzuki/03/index.shtml 必勝プロトタイプを引っさげて他州へ進出開始 食品シェア80%だそうである。そして、アメリカでは珍しいことではないと。 ちなみに、サイトはここ。 http://www.wegmans.com/ 店舗はほんとうにニューヨーク州付近にしかない。 http://www.wegmans.com/about/storeLocator/index.asp ちなみに、売上高は年間40億ドル。日本のイオンの1/10である。 そして、非上場企業。 つまり、株価は気にしなくていいわけだ。 良識ある、東海岸の雰囲気がぷんぷん漂うサイトで、ここ数年、働くのに最もよい会社ベスト100で上位をキープし続けている。 わたしも働くなら、買い物するなら、こっちの方がいい。 これは物凄くまっとうな競争の結果起こっている現象である。 ■では、なぜウェッグマンズはウォルマートになれないのか それはこの記事が参考になるかもしれない。 「日本の小売業は優れた感性を持つからこそ、それを生かすデータ分析が重要」 http://premium.nikkeibp.co.jp/retail/interview/10/ 日本の小売業は属人的なため急成長が望めない 要するに、ウェッグマンズのやり方は、属人的なので、スケールできない、という事。 続いて、日本とアメリカの違い。 ──日本は米国に比べて相当遅れているということでしょうか。 結局、スケール問題だけであって、お客さんに愛される、健全な企業として運営するという意味では、特に問題はないということ。小売は感性です。 ついでに、サイト外だけど、イトーヨーカドーの理念。 伊藤雅俊の「『ひらがなで考える商い』のこころ」 http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20060414/101346/ 商売は「難しいことば」で考えてはいけない 必要なのは高度な知識より、深い知恵 http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20060616/104561/ 「商人が漢字や難しいことばでものを考えるようになると、現場から遠ざかっている」というのが私の持論です。 との事。 わたしって、けっこう本気でECやってたんだなぁと改めて実感。 以上。 ウォルマートは強いんじゃない! 単に上手くスケールできただけだ、という話でした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
June 26, 2007 03:26:38 PM
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