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【1日1冊!】猿のごとく読み、人のごとく考える

【1日1冊!】猿のごとく読み、人のごとく考える

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2017年12月13日
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カテゴリ:文学

【猿のごとく読み、人のごとく考える・その283276冊目】

 

・紹介する本

 


金閣寺改版 (新潮文庫) [ 三島由紀夫 ]

 

・サノーさん一言コメント

「時代の寵児となった小説家が放つ、背徳と背信の哲学。人間の深遠を抉る、天才の筆」

【サノーさんおすすめ度★★★★★】

・ウノーさん一言コメント

「全編を覆う黒い雲のような鬱屈は、金閣寺の炎に焼き尽くされたのでしょうか」

【ウノーさんおすすめ度★★★★★】

 

・サノーさん、ウノーさん読書会

 

サノーさん(以下サ):さて、名前は知ってるけど、読んだことがない作家さんで、この人を外すわけにはいかない。

ウノーさん(以下ウ):天才、という形容詞をここまで現実化した作家さんは、他にいません。

:でも、人生そのものが「壮絶」な「小説」にしてしまったから、そのインパクトと、そこから生じる誤解により、「読まなくても、分かったような」気になって、作品そのものを楽しむ人は、現在は少ない。

:クーデター未遂のうえ、安田講堂で切腹したんですから、敬遠したくなる気持ちはよくわかります。

:この作家の生き様、言動、やったことと、彼が生み出した「作品」とは、基本的に関連していないことを、この小説を読めば理解するだろう。

:繊細な描写、慎重な展開、人の心の深くに突き刺さる表現の数々は、極めて理性的で、人の深遠に迫る哲学的な「小説家」であったことを確認できます。

:主人公の「溝口」の少年時代から、金閣寺での奉仕、終戦と娼婦との事件、大学進学と住職が見せた俗物としての人間、そのどれもが、人間が抱え続ける苦悩と、不変の存在であるかのような「金閣寺」とのコントラストを浮かびあがらせている。

:そこに、「教義としての仏教の無常」が忍び込み、物語が深度を増していきます。

:驚くべきことは、この物語が、実際に起こった「事件」を元に書かれていることだ。

:実際に「金閣寺が放火により焼失」した事件が元なんですが、内容は取材に基づいたノンフィクションではありません。

:そう、そこに、この作家の「狂気」と「凄み」がある。

事件の登場人物、その背景にあったものが「考察」ではなく、「人間の本質」に迫る内容に変換され、創作されている。

:根底に若者の「孤独と無力感」を忍ばせ、仏教の美しさと強さを象徴する建造物である「金閣寺」を燃やす「根拠」を与えていることに、この作家の力量がただならぬものであったことを感じます。

:それだけに、もったいない。これだけの才能があるなら、生きて、自分の理想を現実化する道筋があったはずだ。

:それは、難しかったのかもしれません。これだけ繊細な人が生きるには、世界は残酷すぎますから。

【了】

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最終更新日  2017年12月13日 08時15分40秒
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