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カテゴリ:★★★★★な本
なんにもなかった。だけどなんだか楽しかった。懐かしい時間。愛しい人々。吉田修一が描く、風薫る80年代青春群像。 <感想> ★★★★★ この作品の存在を知ったのは、本屋大賞のノミネートです。 面白そう なタイトルだと思いましたが、作者を見てぶっくり ファンと名乗れ るほど吉田さんの作品を読んではいませんが、このコミカルなタイトル とスタイリッシュな文体を操るの吉田さんが結びつきませんでした。 さて、そんな本書は主人公の横道世之介が大学進学のために長崎か ら上京してきたところからはじまる典型的な青春小説です。 当時と現 在を交錯させたり、世之介の人物像を本人ではなく、周囲にいた人物 たちの視線で立体的に描くという手法が用いられていますが、主人公 が作家のプロフィールと重なるところや、コミカルな展開は奥田英朗さ んの『東京物語』に似ていると感じました。 それを吉田修一らしくない。 軽すぎる・・・・・などというのは簡単ですが、ともすれば純文学色の強か った過去の作品をキャラクター小説として読んでいた私はそれほど違 和感なく読み進めることができたし、登場人物たちの現代を描く筆はま ちがいなく吉田修一さんのものです。 主人公たちが生きた時代や、その行動範囲がぴったりと重なる私は涙 が出ちゃうほど懐かしく感じました。 西武新宿線・中央線沿線。 村上 春樹にかぶれていると思われる従兄弟。 当時十人に一人ぐらいの割 合でいたバブル長者のお嬢様。 スカイメイト。 ハチ公物語。 カウチ ンセーター。 ぴあ。 そしてアマンド前(←ちなみに今も営業してます)。 とはいうものの、特定世代だけではなく、主人公に草食系男子という現 代風のキャラクターが与えられているので、世代を問わず楽しめる青春 小説に仕上がっているように思います。 世之介と出会った人生と出会わなかった人生で何かが変わるの だろうかと、ふと思う。 たぶん何も変わりはない。 ただ、青春 時代に世之介と出会わなかった人がこの世の中に大勢いるのか と思うと、なぜか自分がとても得をしたような気持ちになってくる。 というわけで、すべての方におススメです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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