猫の為に時折鶏肉を買う。猫はチキンが好きで、今朝の食事もチキンである。
チキン、ことにから揚げなんか見ると、私はいつもケンタッキーフライドチキンのことを思い出す。
私は魚肉類はほとんど食べずに生きてきて、チキンも例外ではないが、ケンタッキーフライドチキンには一度だけ入ったことがある。
まだ結婚したてでどこにでも遠出していた頃のこと。
渋滞をやっと抜けたからか妙におなかがすいて、どこかの店に入ろうという話になった。
こういう所だけはすぐ意気投合する二人だったが、入るのは大抵珈琲ショップである。
しかしその日は国道沿いでもあったので気の利いた珈琲店なく、主人はフライドおじさんの店に入りたがった。私は鶏肉は食べないので、ヘンな所の食の好みの似ている主人が、本当にこういうものを食べられるのかどうか疑問だったが、チキンは食える というので渋々ついて入ったのだ。
私は飲み物だけたのんで、主人は手羽先をたのんだ。
ところが運ばれてきたものを見て主人は息を飲んだ。
でかい!いっぱいありすぎる!
主人はおちょぼ口。おまけに少食。何を食べたかすぐわかるくらい口の周りを汚す人で、大きなものにかぶりつくのが大の苦手。よって手羽先を引き裂こうとした。
私は気味悪くて目をそむけた。その途端、主人は悲鳴を上げた。
びっくりして目を向けると、鳥が羽をひろげているみたいな姿で皿の上にのっているではないか。
「生きてる!これ羽広がった!」
生きてるわけはないっちゅうに。
「これはチキンちゃう!これはダチョウや!」と、主人は蒼ざめた顔でそそくさと席を立った。
今なら、ダチョウの効能少し知っているから、ダチョウってちょっといいらしいよ、などというところだが、私もジュース飲み残して店を出た。
まーそういうわけでチキンは一口も食べずじまい。
ケンタッキーにはそれ以来一度も行ったことがない。
主人は今でもあそこの鳥はなんの鳥かわからん、などと怖がっている。
そのくせフライドおじさんは大好きで、看板見ると喜んでいる。
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最終更新日
2012.07.03 08:30:35