修羅雪姫
小池一夫と上村一夫による漫画の映画化。 監督は佐藤信介。釈由美子、伊藤英明、佐野史朗出演。 ハリウッド大作「ブレイド2」でアクション監督を担当したドニー・イェンが本作のアクションシーンを担当した。粗筋「その国」では、500年にも及ぶ鎖国政策が未だに続いていた。そこに隣国から流れ着いたのが建御雷族。隣国では特殊部隊だった建御雷族は、雇われの暗殺組織へと変わっていく。その中の一人の雪(釈)は、自分の母の死の真相を知り、組織から逃亡する。組織は、裏切り者は例外なく始末するのが掟だった為、雪は自分が属していた組織に狙われる羽目になった。 雪がふとして逃げ込んだのは、反政府組織の活動家(伊藤)の家だった……。感想 ……面白い要素が色々あったのに、制作側の力不足で面白い作品になり損ねた映画の典型的な例と言える。 最大の失敗がキャスティングだろう。天然ボケを売り物としているアイドル釈由美子を、なぜこんなシリアスな役に抜擢したのか理解に苦しむ。普通のアイドルでも映画の主役を務めるのは大変で(役者としては大根が多いから)、大抵は失敗するのだ。ましてや天然ボケアイドルとなれば……。 仮に釈が天然ボケでなかったとしても、あの愛くるしい(?)顔で説得力ある演技ができたかは疑問。いくら凄みを利かせて睨んでみせても、そこに転がってる女の子が生理痛に苦しんでいるようにしか見えなかった。あんな細い腕で剣が振り回せるかよ。 彼女はこの映画で大根振りをご披露して、飽きられた為か、その後テレビの登場もめっきり減ってしまった感じがする。「天然ボケアイドルから脱出する絶好のチャンス!」と思ったのかも知れない。脱出できたのは確かだろうが、それと引き替えに人気も減らした。役をもっと慎重に選ぶべきだった(後に出演したテレビ番組・映画が当たり役とされたが)。 制作者もいい加減に話題のアイドルさえ使えばどうにかなると考えるのはやめてほしい。 ハリウッドの第一人者を使った割には、アクションシーンは迫力がなかった。一週間前に観たVERSUSより二、三段落ちる。これはアクション監督のせいだけでなく、上記にも述べたように主役自体の問題だろう。細過ぎる、ての。やはり女にアクションシーンは無理。 無意味な効果音もゲンナリさせる。 ストーリーも首を傾げたくなる部分が多かった。 雪は優秀な刺客、という設定の割には弱い。コテンパンにやられる。あの細い腕じゃ、当然か。 また、雪は信じられないほど鈍い。ふと気付くと組織が差し向けた十人近くの刺客に囲まれていた……、という場面が一度ではなく二度もある。ここまで鈍い女がよく刺客なんてできたな。 建御雷族は凄腕の暗殺集団ということだが、それはどうかな、と疑問に思った。 女刺客の一人は、あと一息というところまで雪を追い詰めた時点で、行動が鈍くなる。さっさと殺せばいいのにそうしないから、雪に逆襲されて倒されてしまう。馬鹿女、とろとろしてないでさっさと殺せや、と思わず叫びそうになった(主人公が死んでしまうので、それはそれでまずかっただろうが)。こんなのが優秀な暗殺集団だと説明されても納得しがたい。 後味も非常に悪い。ハリウッド映画みたいにハッピーエンドへ無理矢理持っていくのもどうかと思うが、本作品のように無意味な悲劇を最後にとってつけるのも違和感を抱く。続編があるかのような結末だ。興行的にはあまり成功しなかった(というか始めから無視されていた)ようだから、続編なんて有り得ないのに。 本作品では釈がトップレスになるシーンが盛り込まれている。何度も言うが、撮影現場で脱がせるならわざわざ金を払って観に来た連中にも見せろや。てめえら(制作者)だけで楽しんでるんじゃねえ。背中だけなので、脱いでなかった可能性もなくもないが。いや、替え玉だった可能性もある。 制作開始段階では高いポテンシャルを持ちながら、制作が終わった頃には「何だこりゃ」になっていた……。 映画というのは魔物である。追記: 釈由美子は後に天然ボケキャラを返上。普通の女優に。バライエティ出演は減ったが、テレビドラマ出演は逆に増えている。 その意味では、本作は天然ボケアイドルから一般女優への転身の足がかりだったようだ。人気blogランキングへ関連商品:修羅雪姫梶芽衣子/修羅雪姫