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非常に適当な本と映画のページ

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2006.11.29
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カテゴリ:邦書

 島田荘司のデビュー作。元は江戸川乱歩賞応募作品だったが、受賞には至らず、加筆の末1981年に発表された。本作品はマニアの間で大評判となり、作者は本格ミステリ界の寵児となった。


粗筋

 昭和11年。画家梅沢平吉は、奇妙な手記を残した。肉体の各部はそれぞれ星座によって支配されている。六人の若い女性から必要な各部を切り取れば、新たな不滅の肉体(アゾート)を合成することができる。自宅には六人の若い娘が住んでいた。前妻の間にできた娘一人と、後妻の間にできた四人の娘の中の三人、そして弟の娘二人である。幸い、六人の娘は星座が上手い具合に異なっていた……。
 平吉は、この手記を残して自宅で殺害される。事件現場となったアトリエでは、平吉は裸婦のモデルを描いていた。このモデルが事件解決の鍵となる筈だったが、絵が未完成だったので、誰か分からない。モデルは名乗り出ることはなかった。
 その一ヶ月後、別の家に嫁いだ平吉と後妻との間にできた長女が、殺害される。当初は強盗と思われていた。
 そしてその直後、六人の娘が消え、死体となって日本各地で発見される。その六体の死体は、平吉の手記が示した通り、各部が切り取られたようになくなっていた。
 平吉は手記通りアゾートを作成する為に六人の娘を殺したのか? しかし、本人はいわゆるアゾート事件前に殺害されている。長女を殺した理由も分からない。実は平吉は生きていて、平吉の死体は替え玉ではないか……。
 警察は、結局平吉の後妻を最重要容疑者として逮捕した。後妻は無実を訴えながら獄死した。
 しかし、後妻が犯人だとしたら、なぜ六人の娘(その中に実の娘も含まれる)を殺し、夫まで殺したのか、なぜ娘の身体の一部を切り取ったのか、動機は何か……、などの疑問点が残り、事件は納得のいく解決がなされないまま40年が過ぎた。
 御手洗潔が、この事件のことを知り、真相を解明しようと考える。そんなところ、ある警察官の妻が訪れた。彼女によると、夫の父親も警察官だった。その父親は既に死んでいたが、残した手記によると、彼はアゾート事件に関わっていたという。
 その警察官は、平吉が死んだ直後、その長女と一夜を共にした。それで心を痛めていたところ、政府からの極秘使命の手紙が届いた。六体の死体を指定した場所に埋葬せよと。その警察官は指示通り六体の死体を埋葬した。大戦直前という時代だったので、逆らえなかったのだ。後で長女が直後に殺された上、自分がアゾート事件に加担したと知って、驚愕するのである。
 この手記を読んだ直後、御手洗はふとしたところで一週間で事件を解決する、と確約する羽目になる。
 御手洗と助手ともいえる石岡は、事件解決の鍵は京都にあると感じ、京都へ飛ぶ。
 捜査はまるで進まなかったが、タイムリミット直前に、御手洗は偶然にも解決の糸口を得る。そこから僅か数時間で事件のトリックを解き、犯人を割り出すどころか、犯人の現在の所在地まで調べ上げ、犯人と会った後、東京へ戻って真相を語る。
 ……アゾート事件では、肉体の一部が切り取られた死体が六体あると考えられていた。実際には、一ヶ所ずつで切断された五体の死体だった。五体の上半身と下半身をずらすことで、六体の一部が切り取られた死体ができあがった。こうすると、六体の内一体は首がないものになる。首がないとされる死体こそ、犯人が用意した「自分」の死体だった。その首のない死体と考えられたのが、平吉と前妻の間の娘時子だった。時子が一連の事件の犯人だったのである。
 平吉のアトリエでモデルをしていたのは、時子だった。隙を見て実の父親を殺したのである。
 平吉と後妻との間の長女を殺したのも時子である。元警察官が一夜を共にしたと思っていた女は、長女ではなく時子だったのだ。無論、極秘使命と称された手紙を送り付けたのも時子である。その警察官を事件に巻き込むことで、自分で六体(正確には五体)の死体を日本各地に遺棄しないで済んだのである。
 平吉が残したとされる奇妙な手記も、時子が書いたものだった。平吉はあまり手紙を書いていなかったので、筆跡が比べられる心配はなかった。
 動機は簡単。時子は、平吉の家で、腹違いの姉妹らから虐められていた。しかも後妻からも虐められる。姉妹や、自分の母を捨てた父親を始末し、その罪を後妻に着せようと考えたのだ。


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解説

 最初に読んだ時はアゾート事件のトリックに圧倒されて、史上最高のミステリだと思っていた。が、母は面白くないとこき下ろした。なぜだか分からなかった。こんな面白いミステリをなぜこき下ろすのか、と。
 今読み直すと、母の言い分も理解できる。
 アゾート事件とその解決法は鮮やかだが、他の事件は特に面白くはないし、ストーリー構成も無駄が多い。主人公の御手洗も、当初はシャーロック・ホームズみたいで面白いと思ったが、読み直してみると偏屈屋にしか見えない。
 時子は危険な綱渡りをしてばかりいた。「使命」を受けた警官が手紙通りに動いて死体を遺棄したのは幸運に他ならない。警官が上司に報告していたらどうしていたのだろうか。
 作中では、この事件は40年もの間マスコミに騒がれ、本が多く出版されていたというが、そうだとすると事件が解決されなかったのがおかしくなる。
 平吉の前妻(時子の実母)は、平吉に捨てられた後、平吉の家を訪れられなかったこともあって容疑対象外とされ、つつましく暮らしていた。戦後になって大陸にいた遠縁の娘が現れ、老いた前妻の世話をするようになった。前妻は、その遠縁の娘に財産を残したという。無論、この「遠縁の娘」こそ、前妻の実の娘で、アゾート殺人の被害者の一人とされた時子だった。
 40年もマスコミで騒がれていたという事件なのに、突然現れ、最終的には前妻の財産を相続してしまった「遠縁の娘」に対し誰も疑問を持たなかったのはおかしい。数百人の研究家の内、少なくとも一人は「この遠縁の娘は、実の娘時子では? しかし、時子はアゾート事件で死んでいる筈。生きているということは、犯人なのでは?」と考えるだろう。身元調査をすれば、遠縁の娘でないことが判明したのではないか。
 つまり、アゾート事件や、平吉殺しや、長女殺しの真相は分からなくても、真犯人は掴めた筈なのである。なぜ40年間もそのことに誰も気付かなかったのか。
 アゾート殺人のトリックは、最近になって少年漫画「金田一少年の事件簿」で使われてしまい、インパクトが薄れてしまった。島田荘司はなぜ漫画の作者を訴えなかったのだろうか。この漫画は、島田荘司の「奇想、天を動かす」のトリックもパクッている。こんなことが許されていいのか。占星術殺人事件は金田一少年と同じ講談社から出されていた、ということもあり、裏で取引があったのかも知れないが。
 御手洗に対しこの事件を解いてみろと挑戦するのが竹越刑事。彼はここでは御手洗と敵対するが、後の小説では助手の石岡以上に酷使されるのだから面白い。
 作中で、御手洗は自分のホームズ論を述べている。ホームズは麻薬付けのほら吹きだ、と。「まだらの紐」は嘘ばかりだし、ホームズ物語でワトソンが「ホームズのボクシングの腕は超一流」と言っているのも麻薬でラリッているホームズに殴られたことを皮肉っているのだと言う。
 御手洗はホームズやワトソンが実在した人物だと信じているのだろうか。ホームズとワトソンはドイルが創造した架空の人物で、無論作者はワトソンではなくドイルだと素直に認めるホームズファンはいないのか。
 1979年の事件とされている。




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Last updated  2006.11.29 10:44:42
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