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非常に適当な本と映画のページ

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2018.10.13
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カテゴリ:洋書

 イアン・フレミングが創造した世界的に有名なスパイ007の小説。
 フレミングの著作権を管理する Ian Fleming Publicationsの要請で、ベストセラー犯罪小説家のジェフリー・ディーバーが執筆した。
 原作の007は1950年代から1960年代に活躍しているが(したがって、原作に忠実だと007は現在90歳くらいになる)、本作では原作の設定を活かしつつも、21世紀で現役バリバリで活躍するキャラにしている。
 邦題は「白紙委任状」、原題は「Carte Blanche」。


粗筋

 ジェームズ・ボンドは、イギリスの特殊作戦部隊ODGに属する工作員で、007のコードネームを与えられていた。
 ある日、ODGは、「セルビアにてイギリス全土を揺るがすであろう大事件が起こる」という通信を傍受。
 ODGはボンドをセルビアに派遣し、事件の阻止を試みる。
 事件とは、テロリスト「アイリッシュマン」が、劇物を輸送する列車を脱線させ、ドナウ川を劇物で汚染させ、東ヨーロッパに被害をもたらす、というものだった。
 ボンドは、列車をテロリストが想定した場所より先に脱線させ、劇物がドナウ川を汚染するのを阻止した。
 アイリッシュマンは、ボンドの追跡をすり抜け、逃走。
 事件を未遂に防げたが、アイリッシュマンのテロ活動がここで終わるとは思えず、寧ろより大きな計画の一部に過ぎないのでは、と読んだボンドは、アイリッシュマンの摘発に動く。
 アイリッシュマンに関する数少ない情報を追った結果、ボンドは廃棄物処理請負会社のグリーンウェイ社に行き着く。グリーンウェイ社はイギリスに本部を置いていた。近々、陸軍基地の廃棄処分を担当するという。
 ボンドは、ここで壁にぶち当たる。何故なら、0DGは海外での作戦しか出来ず、イギリス国内での活動は禁止されていたからだ。
 そこで、ボンドはイギリス国内の諜報活動を担うMI5のスミスと組む事を強いられるが、早くもアイリッシュマンの目的の解釈で意見が衝突する。ボンドはスミスに偽の情報を与え、スミスが偽情報を追っている間に本人は陸軍基地に潜入する。
 基地に潜入したボンドは、不審者の潜入に気付いたアイリッシュマンことナイアル・ダンによって閉鎖された陸軍施設に閉じ込められる。ダンは施設を爆破してボンドを殺そうしたが、ボンドは辛うじて脱出し、爆死を免れた。
 これにより、ボンドはダンとグリーンウェイ社が共に何か企んでいる、という確信を得た。テロ組織の隠れ蓑であろうグリーンウェイ社に目を向ける。
 グリーンウェイ社は、オランダ出身の実業家セバラン・ハイドによって経営されていた。ハイドは廃棄物処理で一財を成した人物で、経済界では名士とされていたが、その裏で死や死体に性的興奮を覚えるという異常な性癖を持っていた。
 ODGはハイドの身元を調査。ハイドは、傍受した通信によると「ノア」と呼ばれていて、セルビアの脱線未遂事件に深く関わっていて、しかも100人の死亡者が出るであろうテロ計画「ゲヘナ」を企てているらしい、というのが判明し、ボンドがダンとハイドの監視を続ける事を許可する。
 ハイドはイギリスからドバイへ移動。
 ボンドも後を追ってドバイへ向かう。
 ドバイで、ボンドはアメリカの諜報局CIA局員で、旧友のフェリックス・ライターと再会。二人で、ハイドを追う。
 ハイドは、人が大勢集まる博物館を訪れていた。ここを襲撃するのか、とボンドは危惧したが、ハイドは単に博物館の展示物である1000年前の死体を見に来ただけだった。
 ハイドはドバイを後にし、南アフリカのケープタウンに向かう。
 ボンドも後に続いた。そこで、現地の女性刑事ジョーダンと共に、ハイドを監視する。
 ハイドの標的が何か一向に掴めないボンドは、偽名を騙って直接接触する事にした。ハイドは、イギリス諜報局が自分の後を追っているのは知っていたが、ボンドの顔は知っていなかったので、ボンドが騙った偽の身分を信じ、事業に参加させる。
 ハイドは、「飢餓撲滅の為の国際組織」が主催する資金集めパーティーに足を運び、ボンドを同行させる。ボンドは、その会場で組織を率いる女性活動家フェリシティ・ウィリングを紹介される。二人は意気投合し、交際を始める。
 ボンドは、ハイドの南アフリカに於ける活動を調べるが、ゴミ処理事業の話ばかりで、不審な部分は浮かび上がってこない。ハイドはグリーンウェイ社をどうやらテロ組織の隠れ蓑としてではなく、合法的な事業として運営している様だった。
 一方、「ゲヘナ」の決行日は着実に迫っていた。
 イギリス政府は、「ゲヘナ」とハイドは無関係と見なすようになり、ODGに対しボンドをアフガニスタンへ急行させるよう、要求する。「ゲヘナ」はアフガニスタンで起こる可能性が高い、と見ていたからだ。
 ハイドは「ゲヘナ」に関与している、と信じて疑わないボンドは、ODGに対し、自分をアフガニスタンに向かわせないよう、懇願する。ODGはボンドの懇願を受け入れ、イギリス政府の要求を蹴る。これにより、ボンドは成果を何が何でも挙げないと、ODGが存亡の危機に危機にさらされる事となった。
「ゲヘナ」の決行日当日、ボンドはテロの対象はヨーク市だとの情報を得る。金属片を高速でまき散らす爆弾を使って、癌治療の研究者を殺す、と。ハイドは、ある製薬会社から、その研究者を殺害するよう、依頼されていたのだ。その研究者は癌治療の新たな方法を発表する目前だったが、発表により製薬会社が損害を受ける、というのが理由だった。ハイドがセルビアで列車を脱線させようとしたのは、劇物でドナウ川を汚染しようとしていたのではなく、脱線して大破した列車から、爆弾の製作に必要な金属を回収するのが目的だった。
 ボンドの情報提供により、爆弾テロは未然に防げた。ボンドはハイドを拘束する。しかし、ダンはその場から逃走。それだけでなく、ハイドを遠距離から狙撃し、射殺した。
 ダンを逃してしまったものの、「ゲヘナ」は防げた、とODGは満足する。
 しかし、ボンドは納得がいかなかった。未解明の部分が多過ぎる、と。
 ボンドはこれまでの情報を再検証する。
「ゲヘナ」の計画段階でハイドには「ノア」の呼び名が与えられていた、とODGは当初考えていたが、これは間違いだったのでは、とボンドは思う様に。ハイドは「ゲヘナ」とは無関係だったのでは、と。「ゲヘナ」を計画していたダンがハイドと行動を共にする事が多かった為、ハイドも「ゲヘナ」に関与している、と思ってしまったが、ダンは「ゲヘナ」と、ハイドによる爆弾テロという、別々の計画を同時進行していただけなのでは……。
 そうとなると、「ゲヘナ」はこれから実行に移される事を意味し、全く解決していない事になる。
 その時点で、ボンドは「ノア」の本当の意味に気付く。「ノア」は人ではなく、ある組織の略称だ、と。「飢餓撲滅の為の国際組織(International Organization for Hunger, IOAH)」の前身組織「(National Organization for Hunger, NOAH)」こそ「ノア」だった。
 ダンは、IOAHの統括者であるフェリシティ・ウィリングと、深い関係にあった。IOAHは、発足当初は単なる慈善団体だったが、国際的な組織になると同時にその影響力も肥大化し、アフリカに送られる食糧支援物資全体の1/3を掌握するまでになっていた。ウィリングは、その影響力を使って、食糧を戦略的に配布する様になり、自分にとって都合の良い政府には食糧を与え、そうでない政府には食糧が行き渡らない様にし、紛争の種を撒いていた。アフリカでの影響力を高めたい中国は、スーダンで紛争が起こる様、ウィリングに依頼。ウィリングはその計画を実行に移そうとしていた。その計画が実行されると、紛争により多数の死者が出て、結果的にイギリスが不利益を被り、中国が利益を得る。
 ボンドは、ウィリングを欺いて、自白させた上で拘束。ダンが現れ、ウィリングを連れて逃れようとするが、ボンドが射殺する。
 ウィリングはイギリスに輸送される。ウィリングは、自分は慈善団体の統括者として世間の評価が高いので、いつまでも拘束するのは無理だと嘯く。しかし、イギリス政府はウィリングが自身の組織の運営資金を持ち逃げして行方をくらました、との偽の情報を流し、ウィリングの名声を潰すのと同時に、いつまでも拘束出来るようにした。



解説

 ジェフリー・ディーバーは、ミステリー作家として評価が高いらしいが、彼の著作を読んだのは本作が初めて。
 イアン・フレミングが1950年代に創造したキャラを、21世紀で活躍させる為に、相当の努力や配慮をしたのは読み取れる。
 では、成功したのか、というとそれはまた別の話。

 1950年代はイギリスが超大国としての地位をアメリカに奪われ、ソビエト連邦が台頭し、西側諸国と対峙した時代。
 核戦争がいつ起こっても不思議ではない、という緊張感にあった。
 21世紀の現在、核戦争は全く有り得ない、という訳ではないが、1950年代の程の緊張感は無い。
 現在は、国家対国家との衝突より、テロとの戦いの方がより現実的。
 そんな訳で、本作の敵も、国家ではなく、テロとの戦いになっている(テロの裏には国家が絡んでいる、という事にはなっているが)。
 テロ組織がいかに資金が潤沢で、様々な手段を駆使出来る立場にあったとしても、国家の財力には及ばないし、国家が打てる手段の選択肢には遠く及ばない。
 結局巨大組織対小組織との戦いを描くだけになっているので、どうしても小粒になる。

 ディーバーはミステリ作家とあって、本作をミステリ仕立てにしている。
 そんな事もあり、ハイドとダンが起こすとされるテロの全貌がなかなか掴めない、という形で物語は進んでいく。
 テロの標的が漸く判明するものの、実はその裏により大きなテロが計画されていた、というどんでん返しが用意されている。
 ただ、このどんでん返しが弱く、効果を発揮出来ていない。

 本作では、ハイドの異常性(死体に異様に興味を持っている)をひたすら強調。物凄い事を企てていて、ボンドにとって手強い敵である、と思わせておきながら、結局ハイドが企んだテロは物凄く限定的で、「イギリスを揺るがす」とは程遠いものだった。ハイドは善人ではないが、所詮小悪党で、最終的には協力者のダンにあっさりと殺されてしまう。
 何故ボンドはこの程度の敵、この程度のテロ計画の解明に手こずったのか、イギリスやドバイや南アフリカまでの大追跡劇を繰り広げる程の事だったのか、と思ってしまう。

 ハイドの異常性が前面に押し出されていた為、ダンはあまり目立たない存在になっていたが、実は彼こそが大規模テロの首謀者で、黒幕には慈善団体の創立者がいて、更にその裏に中国が絡んでいた、という展開になっている。
 著者はこの真相を、読者の誰もが予想出来なかったであろう大どんでん返しであるかの様に描いているが、これも結局ハイドのテロ計画より若干規模が大きい、という程度に留まっていて、物語の冒頭で語られている様な「イギリス全土を揺るがす大事件」ではない。
 400ページに亘って引っ張りに引っ張ってきた割には大した真相ではなく、肩透かしを食らった気分。
 映画版007の「ムーンレイカー」の様に芸術を愛するあまりに下等な人類を滅ぼし、自ら選別した上等な人類で地球を復活させるという、奇想天外な計画を企てるメガロマニアを登場させろと言わないが、映画と違って小説は派手な展開にしたところで制作費(執筆に掛かる費用)は変わらないのだから、もう少しスケールの大きい悪者を登場させられないのか。
 また、非情なテロリストの裏には、愛する女性がいて、彼は実はその女の為に動いていた、という展開は、映画版007「ワールド・イズ・ノット・イナフ」そっくりで、新鮮味に乏しい。ディーバーは、「ワールド・イズ・ノット・イナフ」と同じ展開になってしまう事を知りながら本作を執筆したのか、もしくは映画シリーズは観ていなかった為、気付かなかったのか。仮にディーバー本人が気付かなかったとしても、出版関係者の誰も指摘せず、そのまま世に出した、というのは不思議。出版関係者にも映画シリーズに精通している者がいなかった、という事か。
 ボンドはこの真相を解明した事で自身は勿論、ODGを組織解体の危機から救った、めでたしめでたし、となっているが、この程度の小事件でセルビア・イギリス・ドバイ・南アフリカまで飛ぶ必要があったのか、という疑惑を打ち消せない。

 ディーバーはグルマンで、本作ではその知識を発揮し、料理に関して色々描写している、という事だが、原作のフレミング程のこだわりには達しておらず、単に料理名や食材の名を連ねているだけ。
 そもそもフレミングは小説の流れを完全に断ち切って(1章をわざわざ割いてまで)、料理やその他に関する情報を延々と綴る作風が特徴。現在の小説ではなかなか有り得ない作風で(編集者が「無駄」と判断して全て削除させてしまう)、それ故にフレミングの後を引き継いだ007小説シリーズは、単に「ボンド」という人物を登場させただけの、全く別の小説群になってしまっていて、正当な007の感じがしない。

 フレミングのボンドはイギリス情報局MI6に属する工作員という設定になっているが(シリーズで「MI6」と実際に述べられた事は無かったらしいが)、本作では架空の情報局ODGに属している。
 MI6所属にすると自由度が低くなるから、という著者の考えからそういう設定になっただろうが、原作を改変し過ぎの感が。

 また、本作には、ボンドの父親が実はソ連の為に動いていた二重スパイで、それが遠因で事故死に見せ掛けて殺されたのでは、とボンドが探るサブプロットも盛り込まれている。
 終盤で、父親が二重スパイだった可能性が否定され、実は母親がソ連によるイギリス国内のスパイ網を摘発しようとしてソ連側に消されたのでは、という疑惑が浮上する。
 作品に厚みを持たせ、続編の可能性を残す為のサブプロットらしいが、単に物語全体のペースを落とすだけになってしまっている。

 続編の可能性をほのめかしておきながら、原作ではお馴染みの準レギュラーキャラ(フェリックス・ライター等)がガンガン登場してしまい、全て書き切ってしまった感もある。
 フェリックス・ライターの登場と退場のさせ方が中途半端なので、寧ろ登場させなかった方が良かったのでは、と思った。

 タイトルの「白紙委任状」は、ボンドが手段を選ばず自由に行動するには白紙委任状が必要で、これ抜きではODGの活動が制限されているイギリス国内での捜査は無理だった、という事になっているが……。
 ボンドがイギリスに留まったのはほんの僅かで、それ以降は白紙委任状を必要としないイギリス国外で動くので、何を意図したタイトルだったのかね、と思ってしまう。

 007の映画シリーズと、小説シリーズは、現在は全くの別物として展開していて、フレミング以降に出版された007シリーズの小説は、既にフレミングが出した本の数を上回っているが、映画化されたのは1作も無い。
 本作はどこまで映画化される事を期待して執筆されたのかは不明だが、忠実に映画化したら退屈なものになりそう。

 ディーバーは、自身が創造したキャラの小説シリーズではヒットを連発するベストセラー作家らしいが、本作を読んだ後、他の著作を何が何でも読んでみたい、という気は起らなかった。
 Ian Fleming Publicationsは何を期待してディーバーに執筆を依頼したのか。








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Last updated  2018.10.13 19:09:48
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