3144892 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

星見当番の三角テント

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

プロフィール

歌織@星見当番

歌織@星見当番

フリーページ

カテゴリ

カレンダー

日記/記事の投稿

キーワードサーチ

▼キーワード検索

2010.09.14
XML
第九部からの続きです。
『ムーミン谷の冬』から最終巻『ムーミン谷の十一月』まで。
いわゆる「冬のムーミン」と呼ばれる後半四冊です(前半は「夏のムーミン」)。

6『ムーミン谷の冬』1957年刊行

息子ムーミントロールがひとりで冬の世界に立ち向かう物語。
ムーミンパパの出番、まったくありません。しかし、この作品には
後述のムーミンパパによく似たキャラクターが登場します。
7の『仲間たち』で一緒に解説します。

7『ムーミン谷の仲間たち』1963年刊行

短編集。「ニョロニョロのひみつ」でパパが主役を張ります。
謎めいた生きもの・ニョロニョロに惹かれ、そのひみつを知りたくて
家出してしまったムーミンパパの物語です。ニョロニョロを追って、
彼らの船に無理矢理乗り込み、ニョロニョロの島まで行ったものの
そこで知った事実は…

一見、『小さなトロールと大きな洪水』でムーミンパパが失踪していた期間を
書いた物語のように感じられますが、確証はありません。
別の時期の話だとすればムーミンパパは、『洪水』『仲間たち』
『パパ海』で計三回、趣味に走って妻子を置き去りにしたことになります。
『洪水』と『ニョロニョロのひみつ』が同じ時期の話だとしても、
確実に二回は妻子を置き去りにしています。

獅子座ボーイのムーミンパパは、家庭に安住していることができません。
いつも、今自分がいる場所以外の場所、自分が送っている暮らし以外の暮らしが
刺激的に見えるという困った性格です。

マイホームパパなんて、かっこ悪いとムーミンパパは思っています
(パパの言い回しによれば「ベランダ・パパ」です)。
物言わぬ放浪者・ニョロニョロたちは、パパの眼には
この上なくかっこいい冒険者のように映っています。
スナフキンに憧れるムーミントロールと同じです。

ニョロニョロみたいな放浪者になりたい、と憧れて。
家庭に自分の心を知るものはいない、ニョロニョロならば、
冒険と大海原に焦がれるこの気持ちをわかってくれるに違いない、と
勝手に思い込んで。ムーミンパパは、なんとかしてニョロニョロに
「私はお前たちと同類なんだ、仲良くして」と伝えようとします。

隣の花はあくまで赤く、隣の海はこよなく青い、という困った性質は
獅子座に限ったことではありません。実のところ他の火のサイン、
つまり牡羊座や射手座にもそういうところはあります。
ただし、牡羊座と射手座は獅子座ほど「同類」を求めません。
憧れの相手なら自分をわかってくれる、と過大な期待もかけません。

他の火のサインと比べると、獅子座は飛びぬけて寂しがりです。
牡羊座や射手座は自ら選んだ結果であれ、なぜかそうなったのであれ
一匹狼であることを辞さないサインですが、獅子座は違います。
獅子座は他に抜きん出ることを望みますが、一匹狼にはなりたがりません。

憧れのあの人なら自分をわかってくれる筈。どうか僕をわかって、と
アピールを繰り返すのは『ムーミン谷の冬』に登場する、
小さな犬の「めそめそ」も同じです。

「めそめそ」は自分がただの犬であることに不満で、狼に憧れています。
彼は狼を「いとこたち」と呼びます。彼は、彼を犬扱いする人々に背を向け、
ひたすら狼たちに仲間として受け入れられる日を夢見て生きています。
みにくいあひるの子が実は白鳥の雛であったように、僕は狼の筈なんだ、と。

「めそめそ」は『ムーミン谷の十一月』に登場する「ホムサ・トフト」にも
ちょっと似ています。トフトもまた、自分の憧れの対象であるムーミンママとだけ
かかわりを持ちたいと願い、それ以外のかかわりを拒んでいます。

「めそめそ」は、ひとりで狼の住む山へ行き、「いとこたち」に呼びかけます。
しかし狼たちは彼のことを飛んで火に入る真冬の小犬としか見てくれません。
めそめそは突然、狼が自分を仲間に入れる気なんてないのだとさとり、
愕然とします。胃袋に入れる気はあるけれど(^^;)☆\(--;)
ぼくは狼じゃないんだ。狼として受け入れてはもらえないんだ。
そんなこともわからずにぼくは、自分のことを犬として受け入れようと
声をかけてくれた人に背を向けて、報われない恋をしていたんだ。

ニョロニョロ島に上陸し、ニョロニョロのひみつを知ったムーミンパパも
この「めそめそ」と同じようなショックを経験します。ニョロニョロへの憧れ、
パパとニョロニョロが同じ冒険的放浪者だという考えは、思い込みでした。
ニョロニョロは、パパが考えているようなものでは全然なかったのです。

愕然としたムーミンパパは雷雨の中、我に返ります。
「私はニョロニョロなんかじゃない、私は、ムーミンパパなんだ!」
めそめそと同じですね。ぼくは狼なんかじゃなかったんだ!犬と狼は、
全然違う生き物だったんだ!なんだってぼくは、彼らにこのぼくのことを
わかってもらおうなんて思ったんだろう。彼らはぼくへの関心なんか
これっぽっちも持っていないというのに。

めそめそとムーミンパパは、二人とも孤独です。
自分で自分が嫌いだから。めそめそは狼ではない犬の自分が嫌い。
ムーミンパパは、マイホームパパになってしまった自分が嫌い。

自分が嫌いだから、今の自分は世を忍ぶ仮の姿だと思おうとしている。
自分が嫌いだから、今の自分を好いてくれる人のことが嫌い。
今の、理想じゃない自分を好きだと言うような人の愛なんかほしくない。
理想の自分に似ているような気がする人の方ばっかり見つめている。
彼らなら、自分をわかってくれるような気がする。だって自分は、
本当ならあのきらきらした彼らの同類の筈だから。

めそめそは吹雪の中で、ムーミンパパは嵐の中で、
嫌いな自分がやっぱり自分だったということを思い出します。
そして、同時に「そんな自分に構ってくれてた人がいたなあ」と
いうことも思い出します。自分は結局、そう孤独でもなかったのに、
彼らに背を向けて、こんな所まで来ちゃったんだなあと気付きます。

「ニョロニョロのひみつ」を読むときは、ぜひ『ムーミン谷の冬』の
めそめそと狼のことを思い出しながら読んでみてください。
彼らが我にかえり危機から脱した後、それぞれどんな行動をとったか
比べながら読むとまた面白さが増すと当番は思います。
当番は、救助されためそめそのその後の話が大好きです。
もちろん、ムーミンパパのその後の話も、ですが。

8『ムーミンパパ海へ行く』1965年刊行

パパ獅子後半の四篇でたんと語りましたから、パス。


9『ムーミン谷の十一月』1970年刊行

ムーミン一家がまったく登場しないムーミン谷の物語。
『ムーミンパパ海へ行く』でムーミン一家が灯台島に滞在中、
留守宅となったムーミン屋敷で何が起こっていたか、というお話です。

なので、ムーミンパパ登場の余地はありません。
そのかわり、ムーミンパパに憧れる「ヨット持ちヘムレンさん」が登場します。

ヨット持ちヘムレンさん(シリーズ中に「ヘムレンさん」と呼ばれる人は
数多く登場するので、区別を付けるために仮にこう呼びます)は、
「ニョロニョロのひみつ」のムーミンパパや『ムーミン谷の冬』のめそめそと
同じような心理状態にある人です。つまり、今の自分のことが嫌い。
自分に自信を持っているようで、やっぱり自分が嫌いなんです。

ヨット持ちヘムレンさんは、義務ばっかりの自分の人生をつまらないと感じて
もっと楽しく自由に過ごすためにムーミン屋敷にやってきます。
ヘムレンさんの計画では、そこにはよきホストであり冒険家でもある
ムーミンパパがいて、ヘムレンさんとパパは「男同士の話」をして
仲良く楽しく過ごせる筈でした。

ところが、ムーミンパパは留守。一家もろとも留守。
代りに集まったのは奇妙な相客たち。総勢六名の客のうち、
ヘムレンさんを含めて四名が、ひそかに「自分で自分が嫌い」な人たちです。

がっかりしたヘムレンさんは、では自分がムーミンパパになりかわり、
擬似家長として相客たちを仕切ろうと考えます。しかし、彼の努力は空回り。
ムーミンママのように「夫」を立ててくれる筈の女性客はヘムレンさんに張り合うし、
自分を父と慕ってくれてもいい筈の子供の客はむっつり黙って心を閉ざしてるし。
(また、にぶちんのヘムレンさんは「子供が自分に対して心を閉ざしてる」
ということさえわかってないし)。

これはヨット持ちヘムレンさんをムーミンパパの位置に据えて
『ムーミンパパ海へ行く』の変奏曲を奏でているようなものですね。
ムーミントロールのポジションにあるトフトがヘムレンさんに反発するのも
『パパ海』と同じだし、ヘムレンさんがムーミンパパと同じように海と向かい合い、
自分勝手な思い込みを捨てた後にトフトと「親子の会話」をして
少しだけ心を通わせあう場面も『パパ海』と同じです。

なお、『十一月』と『パパ海』の登場人物は、
おおむね以下のように対応しています(当番の私見です)。

『パパ海』のムーミンパパ≒『十一月』のヨット持ちヘムレンさん

『パパ海』のムーミンママ≒『十一月』のフィリフヨンカ

『パパ海』のムーミントロール≒『十一月』のトフト

『パパ海』でムーミントロールが憧れる「うみうま」
≒『十一月』のトフトの心の中にいる「想像上のムーミンママ」

『パパ海』の謎の漁師(実は記憶喪失の灯台守)
≒『十一月』の「何もかも忘れてしまった」スクルッタおじさん
≒『十一月』の「ムーミン谷にメロディを忘れてきてしまった」スナフキン

『パパ海』のちびのミイ≒『十一月』のミムラねえさん

『パパ海』のモラン≒『十一月』のトフトが心の中で育てた「ちびちび虫」

そんなわけで、ムーミンパパは登場しないけれど、
『パパ海』のムーミンパパを思い浮かべながら読むと二倍楽しめるのが
『ムーミン谷の十一月』です。ぜひ、二冊合わせてお楽しみください。

さて、これでムーミンパパと獅子座の話はおしまいです。
ここまでお付き合いくださった皆さま、ありがとうございました。
太陽が天秤座に移る前、つまりお彼岸よりも前には
乙女座篇(フィリフヨンカの話)をお届けする予定です。

フィリフヨンカは当番が個人的に大好きなキャラクターです。
シリーズ中で当番に一番近いキャラクターは彼女だと思っています。
あの性格、他人とは思えません。なので、フィリフヨンカと乙女座の話、
略してフィリ女もパパ獅子並みの長篇になることが予想されます。
覚悟してくださ(^^;)☆\(--;)






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2010.09.15 03:53:47



© Rakuten Group, Inc.