|
カテゴリ:検察とマスコミ
あなたも無実で刑務所行きになる可能性がある(3)
●悔し涙の虚偽の自白 伊藤:これから否認し続けて、だんだん夜が暗くなっていってどうなってしまうんだろうと思いましたか。 菅家:どうなるとかというのは全然分からなくて、ただ悔しくてどうなってもいいやと、そういうふうに思いました。 伊藤:殺人事件というのは大きな事件なので、もしかしたら死刑とか、無期懲役とかになってしまうかもしれないと。認めたら大変なことになってしまうというふうには思いませんでしたか。 菅家:私はそういうふうには全然思ってませんでした。 伊藤:それはなぜですか。 菅家:私は、この事件には全くかかわっていないのでそういう頭は全然なかったです。 伊藤:いつか誰かが無実をはらしてくれるんじゃないかと思ってたんですか。裁判官が分かってくれると思ってたんですか。 菅家:裁判官は必ず私のことを分かってくれると、それは思ってました。 伊藤:自白を最終的にしてしまったとき、悔しくて涙を流されたという、そのときの心境をもう少しお話ししていただけませんか。 菅家:やはり、私は無実ですので悔しくてどうしようもなかったんです。それで、長い時間泣いてました。それで、刑事が反省したと、そういうふうに取ってたと思うんですが、それは私は違います。絶対やってないですから悔し涙でした。 伊藤:その日は自白をしてしまったわけですけれども、それから自白調書を作るようになりますよね。 菅家:はい。 ●刑事に迎合し、創作するストーリー 伊藤:自分がやってない犯罪について詳しい説明をしなければならないわけですね。 菅家:ええ、そうです。 伊藤:どうやってそんなことができたんでしょう。 菅家:そうですね。1日目の夜なんですが、寝たときに、やったと言った以上はどうやって説明をしようかと思ってました。それをずっと一晩中考えて、当時、私は自転車を使っておりました。その自転車を頭に浮かべながら、じゃ、自転車を使ったことにしてパチンコ屋さんから交換所まで行って、それでM ちゃんがいたことにして「乗るかい?」と話して、それで自転車の後ろに乗せて土手のほうまで行って、土手から下って野球場のほうへ向かっていったと。それで真っすぐ行って、ネットがあるんですよ、野球場の後ろに。そのネットの裏をずっと行きまして、それで河川敷まで行って、そこでM ちゃんを殺して首を締めたと、そういうふうに話したんです。これは自分がつくったことですけどね。 伊藤:自分がつくった話なんですね。 菅家:そうです。 伊藤:自白しちゃったけれども、一晩寝て翌日はやっぱり違うんだと否認をすることは考えられなかったのですか。やってもないストーリーをつくるのは大変だと思うから「やってないです」というふうに言うということは考えられなかったですか。 菅家:いや、そのときはそういう頭は全くなくて、刑事のことがすごく恐かったんです。それで「やってない」ということは言えなかったんですね。 伊藤:じゃ、そうするとひたすら恐い刑事が納得してくれるように話を考えたということですか。 菅家:そうですね。もし、何も言わなければどんどんどんどん追い込まれて……。私としては刑事たちが本当に恐かったんですね。 伊藤:じゃ、あなたが黙って何も言わないと「ちゃんと話すんだ」というふうに……。 菅家:そういうことです。 伊藤:そうなんですね、分かりました。取調べは長いこと続きますよね、何日も何日も。やってないからこんなことをやめたいというふうに思わなかったんですか。 菅家:全然思わなかったですね。 伊藤:それは恐いからですか……。 菅家:はい、そうです。もし話したら何か言われるんじゃないかと。本当に恐かったです。 ●別件2件での虚偽自白 伊藤:菅家さん、この事件以外にも報道によると2件、別の本当にやってない事件について自白をさせられてたということですけれども、それはどうしてそういうことになったんですか。 菅家:その2つの事件ですけども、刑事が「ほかの事件の取調べをされると思っていたよな」と言いました。「え?」と思いました。それから、その事件の取調べが始まりまして自供したんですよね。それで「それはお前、やったんだろうな」と。「いえ、やってません」。それが何回も続く。「違う」と言っても。それで、体を揺すぶられたり、何回もですよ。「やりました」と言うまで何回も何回も揺すぶられて「お前だろう、お前だろう」と、こう言うんです。それで、私はだんだんだんだん本当に恐くなっちゃったんです。 伊藤:それで、2件ももう言うしかないというふうになって自白してしまったんですね。 菅家:そういうことです。 ●無実だからこそ想像できない将来の刑罰 伊藤:3件も殺人事件の自白をしたら、本当にどういう結果になるんだろうとは思わなかったですか。 菅家:そのときは、やっぱり死刑とか、そういう頭は全くなかったです。 伊藤:何で、死刑という頭が全くなかったんですか。 菅家:やっぱり、私は事件と全く関係がありませんので、死刑とかそういうのは全然頭にありませんでした。 伊藤:いつになったら、こういう取調べのつらい状況が終わるんだろうということは考えていましたか。 菅家:いえ、それは考えていなかったですね。全然考えていませんでした。 伊藤:もし、当時のことを考えて、またほかに全く関係ない事件についてもまたやったんじゃないかというふうに言われたら、それも自白をしなきゃならないような、そんな状況だったんですか。 菅家:ええ、そうですね。本当に恐いのが先立ってしまいました。 伊藤:弁護士というものがいて、被告人の立場に置かれた状況の人の権利を守ってくれる存在のはずなんですけれども、弁護士に頼って自分は無実だということで主張するということはできなかったんでしょうか。 菅家:そうですね、やはり弁護士の先生自身も何か恐かったような顔でした。本当に恐かったです。普通じゃないですね。どういう仕事をするとか、自分としては全然分からなかったんですよ、警察官とか、弁護士の先生がどういう仕事をやる人だか全然分かっていなかったんですよ、まるっきり。 伊藤:菅家さん、これまで警察事とか、あまり厄介になったこともないんじゃないかと思うんですけど、警察とか、検察庁とか、裁判所というものがそもそもどういうものかよく分かっていたのですか。 菅家:全然分かりませんでした。 伊藤:弁護士が自分の味方になってくれるかもしれないと、そういう存在だということ自体が分からなかったんですか。 菅家:全然分からなかったんです。 伊藤:そうすると、弁護士の前でも自白をしていないといけないんじゃないかと思ったということですか。 菅家:そういうことですね。 伊藤:それで、菅家さん、裁判になりますよね。 菅家:はい。 ●公判で自白を維持した理由 伊藤:裁判になって「あなたはやってるんですか、やっていないんですか」というふうに裁判官に最初に聞かれると思うんですが、そのときも自分がやっていますということをおっしゃったということですよね。 菅家:はい、そうです。 伊藤:裁判というのは1番大きなチャンスで、そこで認めてしまったら有罪になってしまうというふうに思うものだ、と思うんですが、そこでもどうして「やっていない」となかなか言えなかったんでしょうか。 菅家:やはり、裁判が始まりまして、傍聴席に刑事たちがいるのではないかと私はびくびくびくびくしておりました。だから、時折後ろを振り向いて刑事がいるかどうか確かめました。しかし、いるかどうかはちょっと分からなかったものですから、その時点でもまだいたら嫌だなと思っていました。 伊藤:もし、刑事があなたがやっていないということを言ったのを聞きつけたら、どういうことになると思ったんですか。 菅家:傍聴席から刑事が怒鳴ったりなんかするんじゃないかと思ってました。 伊藤:傍聴席から怒鳴られたりするのは恐いということですか。 菅家:そうですね。私としては、無口で気が小さかったものですから本当に恐かったんですね。 伊藤:ただ、裁判でずっと認めていると、今度こそ本当に死刑になっちゃうんじゃないかとか、刑務所に行くんじゃないかとか、全く思わなかったんでしょうか。 菅家:全く思わなかったですね。 伊藤:もしかしたら、自分は刑務所に入ってしまうんじゃないかと思うようになったのはいつごろなんでしょうか。 ●耳を傾けられなかった無実の訴え 菅家:そうですね、求刑の前だと思うんですが、そのあたりから認めませんとか、やってませんとか、話したと思います。 伊藤:それは、弁護士に対して話をしたということですか。誰に対して話をされたんですか。 佐藤:第1回公判の前に公判では認めているんですけど、家族にあてては「私は無実です」という手紙を書いてたんですね。それで、お兄さんがおかしいと思って弁護士に届けたんです。弁護士もその意味が分からないで、法廷でいきなり「ここに無実と書いたのはどういう意味なんだ」というふうに聞いたんです。そこで「無実というのはやってないということです」と言いまして、そうしたら今まで嘘をついてたことなのかというふうに法廷で言って「いや、そうです」というふうに言ったのが最初のきっかけなんです。ところが、弁護士は、弁護士の失態なわけですけど(法廷がそれで終わりましたから)、信頼関係を傷付けられた思いがあると、このまま否認を続ければ辞任もありうるというふうに述べられまして、それで2日後に拘置所で面会をするわけです。弁護士は怒ってますけど、本人がまた「知りません」と言っちゃって、裁判長に上申書を書こうと。それで「やってませんと言ったんですけど、私がやりました」ともう1回とらされるんですね。それで、年が明けてまた自白を始めちゃって、論告求刑のとき。ですから、彼が言ったちょっとだけ論告求刑の前にやってませんと言ったのは、今の場面のことです。弁護士も甚だ反省しなきゃいけないんですけど、本来はね。 <転載終了 続きは上記リンク先(2)で> 恐ろしい事ですね。 検察は「初めにストーリーを作って」突き進む傾向にあるのでしょうか? 何が起きるか分かったもんじゃありません。 一般市民だったら菅家さんのように「自白」してしまう可能性があります。 だって、刑事や検察はこんなに怖いのですから! 足利事件では、菅家さんは命は助かりました。 けれども、17年間も刑務所で過ごした事、家族が亡くなられた事などを考えるとただ事ではありません。それに対しての「刑事、検察」側の対応はあまりに酷い。 今回の小沢事件でもかなり強引な行動をとっているようです。 検察の姿がこのようなものであれば、この強引な捜査がどのようなものであるのか、うかがい知れるような気がします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010.01.23 18:58:15
[検察とマスコミ] カテゴリの最新記事
|
|