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全て | 日々の日記 | 小説
December 21, 2009
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カテゴリ:小説
「あの堅物、兄さんの一目惚れしたお義姉さんは可愛いんだよね!あれで、結婚した当初は、一歩でも近付こうものなら、半殺しに遭い掛ける者も少なくなかったし、さり気なく、牽制していたしね!かなりベタベタしまくってたからね!あれは、本当にムカついたな。毒を盛ってやりたかったな。」

私達は、この腹黒い発言に寒気がし、隅で震えながら、心の中でまた、突っ込む。

“和秋伯父様が怖いよ!というか、とても腹黒いよ!毒を盛るとか、なんて恐ろしい発想をしているんだ!聞き間違いだよね?”

「それに、他の男に触られたかもしれないくらいで、触るの我慢しまくるなんて、馬鹿だよね?悶々しているのを修行で誤魔化している間に口説きまくってしまえば良かったかな?あっ、それとも、桃やお義姉さんと二人で写真を撮って、見せ付けるのも良いよね?」

沸々と沸き上がる伯父様の陰謀に、和宏伯父様が不憫に思えてきた。

「和久様。和宏伯父様がお父様で良かったですね!」

「僕もそう思うよ!厳しいけど、理不尽さがないし。和秋様じゃ、“首の皮、一枚繋がる”程の恐怖体験をしそうだし。」

「まあ、そうだな。でも、ある意味、敵に回したくない人であり、迂闊に手を出せないよな。」


私達は、敵に回さないようにしようと話していた。

「お義姉さんを初めて見た時、蝶のように綺麗な人だと思った。兄さんを帰ったら、締めなくちゃね!」

和秋伯父様の発言は、やっぱり恐ろしい。

「...御婆様、怒ってるかな?」

ふっと思ったのは、御婆様のこと。この騒動ですっかり忘れていた。

「ヤバいな...」

和久様と私は危機感を憶えた。

「最悪、うちにお出でよ!御婆様に話は通してあるし、力になってくれると思うから。」

楽観的な辰之介様に、和久様は嫌そうな雰囲気。

「最悪の事態の時は宜しくお願いします。」

私が頼み込んだことが、和久様は気に食わなかったようだ。




 ーIN 藤崎家

私達が帰ってから、暫く、奈緒子ちゃんは寂しくて、泣いていた。

「...奈緒子。お兄ちゃん達、また、来るって言っていたでしょ。泣かないのよ!そんなに泣いてたら、お兄ちゃん達を困らせちゃうでしょ!」

そうは言っても、彼女は、泣き止む様子もない。

「...お兄様達、また、逢えると言っていたけど、まだ、先なんだもん...。」

「奈緒、奈緒子。篠山様から、今、お菓子を戴いたから、お茶にしましょう。哲様もいらしているし...」

「本当に?!じゃあ、行く!」



 ー奈緒様視点

涙を拭い、パタパタと走って行く。紗々お義姉様と私は現金だなと思った。

「...奈緒子。元気になって良かったわ。それに奈緒が戻って来てくれて、嬉しいわ。今は......辛いかもしれないけど、きっと、忘れられるわ。こんなことなら、もっと反対するんだったわ!私の可愛い義妹の奈緒を蔑ろにしるなんて、許さないんだから!奈緒、後で、買い物に行って気分転換しましょう。」

「そうですね...」

少し寂しげに、答えた。

“夢でも良いから、逢いたかった...”

私は、そう心の中で思ってしまった。



 もう一つ、願ってしまった。

“もし、奇跡が起きるなら、もう一度、あの方に愛されたい。”

門の中に入ろうとすると、馬の鳴き声が聞こえ、振り返ろうとするとフワッと誰かに誰かに抱き締められた。

「...奈緒。帰って来てくれ...」

低く、少し甘い声。そして、疲れ気味な感じだった。

紗々様は、振り返り、あっけらかんとしていた。

「...すみません。お騒がせいたしまして...」

薫さんが馬車から降りてきて、謝る。門にゾロゾロと藤崎家の者達が出て来ていた。その中に、奈緒子とその隣に客人として訪れた哲兄様の姿があった。

「あっ!和宏!」



天敵が現れたのか様に、直哉兄様は言った。

「離れろよ!お前なんか、ささっと帰れ!奈緒は渡さないからな!家の敷居を跨ぐなんて許さない!」

そう言う。

「貴方様には聞いて下りません。」

和宏様らしい冷静な発言だが、未だ、腕の中にいるので、どうして良いのか、困ってしまう。

「...ねえねえ、あのお母様の後ろにいる格好良い方は、誰なの?」

奈緒子が哲兄様の着物の袖を引っ張り、訊ねた。

少し躊躇いながら答える。

「......あの方が、君の本当の...父君だよ。」

「嘘...。じゃあ、お母様は、また...」

奈緒子は、その答えに表情を曇らせた。

「...あの、一旦、離して下さい...」

娘の表情の曇り方が気になり、そう言うとハッとしたように離され、私は娘の元に向かう。

「...どうやら、嫌われたようだな!ハハハ」

ざまあみろと言わんばかりに高らかに笑う。

「...奈緒子。大丈夫よ!奈緒子を置いていったりしないわ。奈緒子は、私の大事な娘だからね!」

彼女を強く抱き締める。

「さぁ、帰れ!奈緒はお前なんかに未練なんてないぞ!哲さんがいるからな!」

かなり嫌いなのが、解る直哉兄様。

「和宏様。貴方様は、この母娘を引き離すつもりですか?」




紗々様は訊ねたが、和宏様は答えられない。

「奈緒子は、和久君を思うように、奈緒子も大事に思ってる。それなのに、再び引き離すのは、そちらの勝手じゃありませんか?奈緒子に寂しい思いをこれ以上、させたくありません。そちらの考えはどうなんですか?」

「俺は...」

「北条和宏様。長い間、お世話になりました。私は、貴方様が訪ねて来られただけで、満足でございます。ですから、もう、私なんぞ追わず、離縁して下さい。私は、今まで、貴方様の傍にいたのは、愛していたからでございます。その愛故に我が子を兄様夫婦に預けて暮らし、貴方様は何も言わずに傍に長らく置いていただきましたが、もう、終わりにしましょう。私のこれからの人生は、奈緒子と過ごす為にありたいのです。最後まで、我が儘でごめんなさい。和久を宜しく、お願いします。」

離縁する覚悟は出来てはいたが、私の女としての感情が離れることを拒んでいた。だけど、今度こそは、もう悩まず、さようならを決めた。

「...それが、君の答えなのか?」

「ええ、そうです。母親として生きるんです。だから、お別れです。さようなら...」

風が吹き、髪が乱れる。その答えを通すように、門に向かって歩き出した。




もう、逢えないと想うと辛かった。だけど、心を鬼にしなければ、前に進めない。

「...今更、こんなことを言っても、しょうがないかもしれないが、奈緒のいないと何にも出来ないと気付かされた。君に触れたい衝動を抑え、芸をしてきたが、父が言うように未熟者だ。君を愛するあまり、嫌われるのが、怖かった。君の妊娠だって、嬉しかった。だけど、君すら、護れない俺が、自分の子を護ることなんて...」

「何を言おうとも無駄だ!さぁ、帰ろ!奈緒、早く中に入って、温まろう。」

直哉兄さんは、戸惑う私を中へと促す。

「...和宏様。お母様を泣かせる方は許しません!私は、お母様や皆も大好きです!だから、争って欲しくない。優しいお母様が悲しむなら、私は、お母様と離れて暮らしても大丈夫です!だから、お母様を幸せにして下さい!」

奈緒子は、和宏様の前に現れ、そう言った。

「...君が奈緒子か?」

「はい。」

「...不甲斐ない父で、すまない。ずっと、この手で抱き締めたかった。愚かな私を許してくれないだろ...。君から、母を奪った私が憎かろう...」

「そんなことないです!私は、寂しくありません!ただ、私の存在を忘れずにいてくれただけで、嬉しいです...」

涙を零す



「...ありがとう。こんなに立派に育てくれてありがとう。」

奈緒子をそっと、抱き締める和宏様

「お父様って、呼んでも良いですか?」

「ああ、構わない。奈緒子。好きなだけ、呼びなさい。私の可愛い娘よ...」

「貴様!」

「兄様。止めて...。私、やっぱり、和宏様の傍にいたいの。ごめんね...」

「奈緒?!」

走り出していた。




 「...和宏様。」

「奈緒?!」

「傍にいたいです...ダメですか?」

片手で奈緒子を抱き締めたまま彼は、私を引き寄せ、抱き締めながら、口付けた。


「和宏ー!!貴様ー!!」

直哉兄様は切れた。私は、顔が真っ赤になり、腰が抜けそうだった。

「何か?奈緒は、俺の女だ!」

挑戦的な態度、その言葉で、幸せ過ぎて、倒れそうだった。

「...伯父ちゃん!私もお父様ともっとお話したい!」

直哉兄様が嘆き悲しんだ。

「...ああ、奈緒達のバカ!お兄ちゃんは悲しいぞー!!和宏なんか!和宏なんか顔だけのくせに!」

負け犬の遠吠えのごとく、嘆く。そのまま、どこかに逃走してしまった。

「...ここでは、なんですから?お入り下さい。」

お父様は、家に招き入れた。




 私と奈緒子は別室で、お義姉様とお茶をすることになった。




「...さぁ、どうぞ~。召し上がれ。さぁ、薫さん達も遠慮なさらずにいただいて下さいませ。」

薫さんや樹さんも一緒に、お茶を飲む。

「...慌ただしくて、すみません。薫さん達も遠い所から、ごめんなさいね。ゆっくり休んでね。」

「はい。突然、お邪魔してすみません。大奥様の命なので、お気になさらないで下さいませ。大奥様より手紙を預かって参りました。」

「お義母様から...」

差し出した手紙を恐る恐る、受け取り、封を開ける。

「...大奥様は、旦那様の煮え切らない態度にお怒りになっておりましたので、私めに引き吊ってでも、こちらにお連れするように命じられました。」

「えっ、お母様が?!」

私には、謎だった。封の中の手紙な目を通し始めた。

「なっちゃんは、やっぱり、あっちに帰ってしまうのかい?」

鉄兄様は寂し気に、そう言った。

「分からないわ。旦那様と居たいけど、私の様な嫁に敷居を跨ぐことをお許しにならないような気がするの。散々、迷惑を掛けてきたし...」

泣きたくなった。

「...失礼ですが、恐らく違いますよ!咲様は、厳しい方ですが、奈緒様のことを誉めてましたよ!照れくさくて、言えないけどねって、お茶目に笑いながら仰ってました。」




薫さんの発言に耳を疑った。

「奈緒は、どんな風に言われてるのかしら?」

お義姉様は突っ込む。

「優しくて、清楚で、可愛い方というのが、私達、仕える者達の中での評判です。咲様曰わく、気が利いて、和宏様をよく支えている良い嫁だと言ってましたよ!私の祖父の話じゃ、咲様の若い頃は、お転婆で、大旦那様がヒヤッとすることも暫し、あったようです。北条家に嫁いでからは、厳格な方になったようです。ただ、そんな咲様だから、優し過ぎる奈緒様が心配なんだと思います。奈緒様は、ホンワカしているので、時々、私達も心配に...」

皆、納得していた。

「奈緒は、癒し系なのよね!だから、悪い男に引っ掛からないか、心配なるわ!」

「お義姉様まで、何を仰られているんですか!」

お義姉様は溜め息混じり言ったが、私は自覚がない。

「なっちゃんの良い所だけど、もう少し、危機感を持った方が良いよ。」

哲兄様にまで、忠告された。

「奈緒様みたいな女性を目指しなさいと、私は言われました。私もどちらかと言えば、落ち着きがなく、女性としての魅力をまだまだ発揮できていませんわ!」

「私は、貴女の様な何時も明るい所が羨ましいわ。」

薫さんにそう返すと照れてた。





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Last updated  January 8, 2010 09:58:44 AM
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