カテゴリ:小説
もし、許されるなら君を愛していたい。
優しい天使だったあいつは、今、死せる場所を探す旅人。 あいつを追い詰めたのは、俺か....? あいつを護る為に堕天使になり、魔王様に仕える身の俺は、まだ、あいつを... 穢れた俺には、あいつが眩しくて、触れることすら、許されない。 もし...もし、許されるなら、一瞬だけで良い、この恋を大事にしたい。俺は、愚かだろうか... 「...ねぇ~、ラピスvvクリスマスのパーティーの衣装、どっちが良いと思う?」 仕事のパートナーのラフェール・ニールが、楽しそうに話し掛けて来るが、俺は、あいつのことしか考えていなかった。 「もう、止めなよ!どんなに思ったて、あの娘は、ラピスの想いは届かないのよ!」 「...ラフェール、悪いが、仕事が終わったら、俺は先に休ませて貰う。だから、君は楽しんで!」 「嫌よ!ラピスと一緒に行くんだから!」 彼女は、キスを強引にしようとするが、拒絶した。 「私、あんな小娘に負けないくらい好きよ!ラピス、私だけを見て...貴方が好きなのよ!」 「...悪いが、君じゃ、セレアの代わりにならない。」 彼女は泣きながら、頬を叩くが、彼女の想いに応えられない。 人間界では、クリスマスと浮かれているが、悪魔達の仕事は大忙し。というのも、魔界のパーティーの準備やら、不幸せな人間が溢れている為、仕事が多いのだ。 ラフェールともぎこちない関係が続くが、あまり気にならない。 ふと、気が付けば、まだ、天使だった頃、後輩のセレアと立ち寄った教会の空上にいた。降りることは出来ないが、賛美歌が響いているのが、ひどく懐かしく感じた。 ー 回想 ー 「...ラピス様。今日は、お祈りする人が多いのですね。」 「イエス・キリストの誕生日前夜だからな。色々、あるんだ。セレアが行きたいなら、立ち寄るか?」 「えっ!良いんですか?!//////」 とても嬉しそうなセレア。彼女は、ドジで、不器用な娘だけど、一生懸命で、でも、一番大事な優しい心を持った新米天使。俺は、彼女の天職だと思っている。 二人で、教会で祈った。俺は、全ての人に祝福と彼女の夢が叶うようにと願った。 「...ラピス様。また、ここに来たいです!」 彼女はとても気に入ったようだったので、また、来ようと約束を交わした。しかし、叶わない願だった。 「...セレア。どこにいるんだ...。」 彼女の消息は掴めない。 死に場所を求め、人々が聖なる夜と呼ぶ前夜に教会に辿り着いた。 「...懐かしい。偶然とはいえ、ここに来るなんて...」 ーIN 魔界 魔王様の開催のクリスマスパーティー。ドクロや不気味とも言える置物が飾ってある。毎年のことであるが、馴れない。 飲み物も血だったりとかするが、俺はあまり好めず、皮肉を言われてしまう。 今宵のパーティーに参加したものの、俺は隅で黄昏ていた。 「...ラピス。そんな隅に居らずに、中央に参れ?それとも、あの娘が気になるのか?」 魔王様に話し掛けられ、注目の的に 「...すみません。私は、元々、この様な場は苦手あります。魔王様、お気遣いありがとうございます。私なんぞ、気にせず、お楽しみ下さいませ。私は、あいつを護れなかった奴です。私が楽しむ資格はありません。」 「ラピス。わらわは、冷酷非情で、よく仕事をこなす、ソナタを気に入っておる。皮肉だが、人間界で言う聖夜の奇跡を信じてみるのは、どうじゃ?わらわもあの娘を仲間に引き入れたいが、神を裏切れんと言うのじゃ!それは兎も角、逢いに行ったらどうじゃ?」 魔王様には、お見通しのようだ。一礼し、会場から走り抜けた。 「実に面白い男じゃ!」 寒いと思えば、雪が降っていた。あの天使さんは、大切な人に逢えただろうか? 翼を貰った少年は、セレアを心配していた。 時刻は、零時前だった。 「...神様。ごめんなさい。私は、神様も欺き続け、大切な方すら護れませんでした。どうかあの方が幸せでありますように...」 セレアは、まだ、自分を責め、懺悔と祈りを捧げていた。 「...やっぱり、ここしか思い当たらない。しかし、私は入ることなぞ...」 躊躇いながら、教会の中に入ろうとし、電撃を体中に受けるように、傷を受け、何度も繰り返し、ボロボロに、寿命が削れていく気がした。 教会の扉の前で、倒れ、意識が朦朧とする中、あいつの名を口にして、願ってしまった。 「...セレア。セレア、逢いたい...」 意識が途絶えた。 微かに懐かしい声が響いた。 「...お兄ちゃん!お兄ちゃん、大丈夫?!」 少し目を開ければ、真っ白な羽に、泣き出しそうな可愛い俺の妹、セフィアがいた。 「...セフィア...セフィアなのか...?」 「そうよ。お兄ちゃんに、ずっと、ずっと、逢いたかった...。」 やっとのことで起き上がり、彼女を見つめる。彼女の隣には、神様の使い魔の星獣ペガサスがいた。 「...ラピス殿。情けない!神様からの伝言を承っている。」 ペガサスにすら、バカにされている。俺達はもう相容れない関係だが、ペガサスは、昔のまま、気高く、口が悪い。 「...どうして、ここに、いるんだ?」 普通に考えれば、悪魔の味方する俺に逢うべきじゃないはずであり、セフィアの体調も心配だ。 「...お兄ちゃん。私が神様にお願いしたの!お兄ちゃんに逢うこと、そして、お兄ちゃんをセレアさんに逢わせてあげたいって...」 「セフィア...。ごめん。無茶させて、一人ぼっちにして...。神様に今更、合わせる顔もない。お前にも迷惑を掛け放しで...」 「神様は、それを見越し、我を下界に下ろしたのだ!さあ、覚悟を決めろ!」 何の覚悟と突っ込みたいが、ペガサスが後ろに下がり助走を付け、走って来る。何となく身の危険を察知し、避けようとするが、セフィアが、腕を掴み、ウルウルした目で訴え掛ける。 「お兄ちゃん。少しの辛抱だから我慢して!」 そうは言われても、本当に死の淵際に立たされそうで怖い。あと数mの場所で、彼女は離れた。そして、思いっきり、ペガサスの角が腹に刺さり、あまりの痛さに声も出せず、悶えてしまった。 「これで良いだろう。見て見よ!」 やっとのことで、立ち上がり、見渡せば、黒かった羽が真っ白に、体も軽い。 「...聖夜だけ、浄化した。」 「お兄ちゃん。これで逢いに行けるね♪」 セフィアが抱き付いてきた。触れても、大丈夫みたいだ。 「...聖夜の奇跡か?」 零時を知らせる鐘がなった。 「...今日、1日は入れるが、ここから出れば、いつでも、元に戻れる。」 「ありがとう。頑張るから...」 セフィア達に見護られる中、ドアを開いて中に進む。 誰かが、お祈り中だったので、音を立てないように近付けば、そこにいたのは、セレア。恐る恐る近付くが、気が付く気配がなく、いきなりパタリと倒れた。 驚いて、駆け付け、抱き起こすと泣いた痕があった。 「...ラピス様...ごめんなさい...」 自分の名を呼ばれ、ドキッとしたが、寝言だったようだ。頭を撫でながら、上着を掛け、そのまま、立ち去るつもりだった。 離したくないが、フェアじゃないことはしたくなかった。 「...ん...ん...ラピス...様?」 彼女は目を覚ました。抑えていた感情が抑えられなくなりそうだった。 「...ラピス様?どうして...?」 泣き出しそうな彼女の問いに応えられないから、黙って立ち去るつもりだった。 「...待って...」 まさかの一言に止まった。 「夢で、ラピス様に逢えるなんて嬉しいな。」 彼女は、夢だと思っていた。 「夢じゃない。セレア。ごめん...」 気持ちが、もう、抑えられずに、彼女を抱き締め、強引に口付けていた。 抑えていただけに衝動が止まらず、息をするのさえも忘れ、貪る。その間も彼女は激しく抵抗する。 やっと、離した時、自分のしたことに、ハッとした。 「...ごめん。忘れてくれ...」 「ラピス様のバカ...どうして、こんなことを...天使の姿のラピス様に拒めない...」 「セレアが好きだ...。離したくない。だが、それは叶わぬ夢。せめて、まだ、死なないでくれ...。お前が死んだら、俺は...俺は...」 「...今は、止めます。こんな形であの約束が叶うなんて、皮肉です...。」 「そうだな...。魔王様と神様に助けられるなんて、まだまだだな...」 セレアは驚いていた。 「セレア...。今夜だけは、俺の想いに応えてくれないか?拒絶しないでくれ...」 「...ラピス様。愛してます。だから、今だけは離さないで...」 神様、魔王様。許されないと解っていますが、今だけは俺達をどうかお許し下さいませ 抱き合い、甘い口付けを交わす。 こんなに温もりが愛おしい思ったのは、初めてだ。 彼女の手は 冷たかった。その手をそっと握れば、握り返され、彼女は腕の中で眠りに落ち掛けている。 「...ラピス様。私、ずっと叶わないと思ってました。一緒に居られるなんて奇跡みたいですね。」 そんな彼女を強く抱き締めた。 「...出逢えたのも、奇跡だ...。羽をもがなければ、いけないほど、苦しませてごめん...」 「そんな風に言わないで下さい!悲しくなるから...。ラピス様...好きです...」 何回目だろうか、不安になる度、そう呟く。だから、その返事の代わりにキスを何度もする。 “行くな。俺の傍にいろ”と言う言葉を何度も飲み込んで、触れる熱で、全てを満たそうとする。 きっと夜が明ければ、今宵の逢瀬など幻の様に霞んでいってしまうのだろう。 手放したくないけど、彼女を引き止めるにはまだ足りない。 全てを棄てても、セレアを愛している。どんな姿になっても、愛し続ける。 「...ラピス様...ずっと、一緒にいたいです...」 「ずっと、一緒にいよう...お前が望むなら...」 強く抱き締める。本心だけど、死に急ぐ彼女の気持ちは変わらないだろ。だから、彼女が深い眠りに落ちる前に、渡そう。 「...セレア。これを...。」 包装も何もしていない、ネックレスを渡す。 「これは、ラピス様が大事にしていた物じゃ...」 「母からの贈り物だ。ラピス・ラズリの宝石入りだ。セレアに持っていて欲しい...」 「貰えません!それに、私は...」 躊躇う彼女の首に手を回し、付けた。 「...簡単になんて死なせない。本気で死ぬ時は、お前を一人にしないさ。それに悪魔の俺が持っていてもしょうがない。俺の分身だと思え。」 言っていることは、勝手だが、だけど、好きな女を二度失う目に遭いたくない。 「ラピス様...」 抱き締め、優しくキスをした。 夜明けと共に、俺は彼女を起こさないように、起きて、眠る彼女にそっと口付けて、囁く。 「愛してるセレア...」 小さなメモを残し、教会から立ち去った。 「...お帰り。早かったな。あの娘を引きずり込めば良かったのに。」 魔界の入り口で、悪魔の友が待っていた。 「...あいつには、合わないさ。だけど、いつかセレアを...」 「馬鹿馬鹿しい。その甘チャンな性格じゃ掴めないぜ!」 呆れていた。 ーIN 教会 目を覚ましたセレアは、夢だったかと思ったが夢じゃないと実感しながら、旅立つ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
January 8, 2010 09:57:12 AM
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