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全て | 日々の日記 | 小説
December 24, 2009
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カテゴリ:小説
 もし、許されるなら君を愛していたい。




優しい天使だったあいつは、今、死せる場所を探す旅人。

あいつを追い詰めたのは、俺か....?

あいつを護る為に堕天使になり、魔王様に仕える身の俺は、まだ、あいつを...

穢れた俺には、あいつが眩しくて、触れることすら、許されない。




もし...もし、許されるなら、一瞬だけで良い、この恋を大事にしたい。俺は、愚かだろうか...




 「...ねぇ~、ラピスvvクリスマスのパーティーの衣装、どっちが良いと思う?」

仕事のパートナーのラフェール・ニールが、楽しそうに話し掛けて来るが、俺は、あいつのことしか考えていなかった。

「もう、止めなよ!どんなに思ったて、あの娘は、ラピスの想いは届かないのよ!」

「...ラフェール、悪いが、仕事が終わったら、俺は先に休ませて貰う。だから、君は楽しんで!」

「嫌よ!ラピスと一緒に行くんだから!」

彼女は、キスを強引にしようとするが、拒絶した。

「私、あんな小娘に負けないくらい好きよ!ラピス、私だけを見て...貴方が好きなのよ!」

「...悪いが、君じゃ、セレアの代わりにならない。」

彼女は泣きながら、頬を叩くが、彼女の想いに応えられない。




 人間界では、クリスマスと浮かれているが、悪魔達の仕事は大忙し。というのも、魔界のパーティーの準備やら、不幸せな人間が溢れている為、仕事が多いのだ。

ラフェールともぎこちない関係が続くが、あまり気にならない。




 ふと、気が付けば、まだ、天使だった頃、後輩のセレアと立ち寄った教会の空上にいた。降りることは出来ないが、賛美歌が響いているのが、ひどく懐かしく感じた。




 ー 回想 ー

「...ラピス様。今日は、お祈りする人が多いのですね。」

「イエス・キリストの誕生日前夜だからな。色々、あるんだ。セレアが行きたいなら、立ち寄るか?」

「えっ!良いんですか?!//////」

とても嬉しそうなセレア。彼女は、ドジで、不器用な娘だけど、一生懸命で、でも、一番大事な優しい心を持った新米天使。俺は、彼女の天職だと思っている。

二人で、教会で祈った。俺は、全ての人に祝福と彼女の夢が叶うようにと願った。

「...ラピス様。また、ここに来たいです!」

彼女はとても気に入ったようだったので、また、来ようと約束を交わした。しかし、叶わない願だった。





 「...セレア。どこにいるんだ...。」

彼女の消息は掴めない。


 死に場所を求め、人々が聖なる夜と呼ぶ前夜に教会に辿り着いた。

「...懐かしい。偶然とはいえ、ここに来るなんて...」



 ーIN 魔界

魔王様の開催のクリスマスパーティー。ドクロや不気味とも言える置物が飾ってある。毎年のことであるが、馴れない。

飲み物も血だったりとかするが、俺はあまり好めず、皮肉を言われてしまう。
今宵のパーティーに参加したものの、俺は隅で黄昏ていた。


「...ラピス。そんな隅に居らずに、中央に参れ?それとも、あの娘が気になるのか?」

魔王様に話し掛けられ、注目の的に

「...すみません。私は、元々、この様な場は苦手あります。魔王様、お気遣いありがとうございます。私なんぞ、気にせず、お楽しみ下さいませ。私は、あいつを護れなかった奴です。私が楽しむ資格はありません。」

「ラピス。わらわは、冷酷非情で、よく仕事をこなす、ソナタを気に入っておる。皮肉だが、人間界で言う聖夜の奇跡を信じてみるのは、どうじゃ?わらわもあの娘を仲間に引き入れたいが、神を裏切れんと言うのじゃ!それは兎も角、逢いに行ったらどうじゃ?」

魔王様には、お見通しのようだ。一礼し、会場から走り抜けた。


「実に面白い男じゃ!」




寒いと思えば、雪が降っていた。あの天使さんは、大切な人に逢えただろうか?

翼を貰った少年は、セレアを心配していた。




 時刻は、零時前だった。

「...神様。ごめんなさい。私は、神様も欺き続け、大切な方すら護れませんでした。どうかあの方が幸せでありますように...」

セレアは、まだ、自分を責め、懺悔と祈りを捧げていた。




 「...やっぱり、ここしか思い当たらない。しかし、私は入ることなぞ...」

躊躇いながら、教会の中に入ろうとし、電撃を体中に受けるように、傷を受け、何度も繰り返し、ボロボロに、寿命が削れていく気がした。

教会の扉の前で、倒れ、意識が朦朧とする中、あいつの名を口にして、願ってしまった。

「...セレア。セレア、逢いたい...」

意識が途絶えた。




 微かに懐かしい声が響いた。

「...お兄ちゃん!お兄ちゃん、大丈夫?!」

少し目を開ければ、真っ白な羽に、泣き出しそうな可愛い俺の妹、セフィアがいた。

「...セフィア...セフィアなのか...?」

「そうよ。お兄ちゃんに、ずっと、ずっと、逢いたかった...。」

やっとのことで起き上がり、彼女を見つめる。彼女の隣には、神様の使い魔の星獣ペガサスがいた。



「...ラピス殿。情けない!神様からの伝言を承っている。」

ペガサスにすら、バカにされている。俺達はもう相容れない関係だが、ペガサスは、昔のまま、気高く、口が悪い。

「...どうして、ここに、いるんだ?」

普通に考えれば、悪魔の味方する俺に逢うべきじゃないはずであり、セフィアの体調も心配だ。

「...お兄ちゃん。私が神様にお願いしたの!お兄ちゃんに逢うこと、そして、お兄ちゃんをセレアさんに逢わせてあげたいって...」

「セフィア...。ごめん。無茶させて、一人ぼっちにして...。神様に今更、合わせる顔もない。お前にも迷惑を掛け放しで...」

「神様は、それを見越し、我を下界に下ろしたのだ!さあ、覚悟を決めろ!」

何の覚悟と突っ込みたいが、ペガサスが後ろに下がり助走を付け、走って来る。何となく身の危険を察知し、避けようとするが、セフィアが、腕を掴み、ウルウルした目で訴え掛ける。

「お兄ちゃん。少しの辛抱だから我慢して!」

そうは言われても、本当に死の淵際に立たされそうで怖い。あと数mの場所で、彼女は離れた。そして、思いっきり、ペガサスの角が腹に刺さり、あまりの痛さに声も出せず、悶えてしまった。

「これで良いだろう。見て見よ!」


やっとのことで、立ち上がり、見渡せば、黒かった羽が真っ白に、体も軽い。

「...聖夜だけ、浄化した。」

「お兄ちゃん。これで逢いに行けるね♪」

セフィアが抱き付いてきた。触れても、大丈夫みたいだ。

「...聖夜の奇跡か?」

零時を知らせる鐘がなった。

「...今日、1日は入れるが、ここから出れば、いつでも、元に戻れる。」

「ありがとう。頑張るから...」

セフィア達に見護られる中、ドアを開いて中に進む。




 誰かが、お祈り中だったので、音を立てないように近付けば、そこにいたのは、セレア。恐る恐る近付くが、気が付く気配がなく、いきなりパタリと倒れた。

驚いて、駆け付け、抱き起こすと泣いた痕があった。

「...ラピス様...ごめんなさい...」

自分の名を呼ばれ、ドキッとしたが、寝言だったようだ。頭を撫でながら、上着を掛け、そのまま、立ち去るつもりだった。

離したくないが、フェアじゃないことはしたくなかった。

「...ん...ん...ラピス...様?」

彼女は目を覚ました。抑えていた感情が抑えられなくなりそうだった。

「...ラピス様?どうして...?」

泣き出しそうな彼女の問いに応えられないから、黙って立ち去るつもりだった。



「...待って...」

まさかの一言に止まった。

「夢で、ラピス様に逢えるなんて嬉しいな。」

彼女は、夢だと思っていた。

「夢じゃない。セレア。ごめん...」

気持ちが、もう、抑えられずに、彼女を抱き締め、強引に口付けていた。

抑えていただけに衝動が止まらず、息をするのさえも忘れ、貪る。その間も彼女は激しく抵抗する。



 やっと、離した時、自分のしたことに、ハッとした。

「...ごめん。忘れてくれ...」

「ラピス様のバカ...どうして、こんなことを...天使の姿のラピス様に拒めない...」

「セレアが好きだ...。離したくない。だが、それは叶わぬ夢。せめて、まだ、死なないでくれ...。お前が死んだら、俺は...俺は...」

「...今は、止めます。こんな形であの約束が叶うなんて、皮肉です...。」

「そうだな...。魔王様と神様に助けられるなんて、まだまだだな...」

セレアは驚いていた。

「セレア...。今夜だけは、俺の想いに応えてくれないか?拒絶しないでくれ...」
「...ラピス様。愛してます。だから、今だけは離さないで...」

神様、魔王様。許されないと解っていますが、今だけは俺達をどうかお許し下さいませ



 抱き合い、甘い口付けを交わす。



 こんなに温もりが愛おしい思ったのは、初めてだ。
彼女の手は 冷たかった。その手をそっと握れば、握り返され、彼女は腕の中で眠りに落ち掛けている。

「...ラピス様。私、ずっと叶わないと思ってました。一緒に居られるなんて奇跡みたいですね。」

そんな彼女を強く抱き締めた。

「...出逢えたのも、奇跡だ...。羽をもがなければ、いけないほど、苦しませてごめん...」

「そんな風に言わないで下さい!悲しくなるから...。ラピス様...好きです...」

何回目だろうか、不安になる度、そう呟く。だから、その返事の代わりにキスを何度もする。

“行くな。俺の傍にいろ”と言う言葉を何度も飲み込んで、触れる熱で、全てを満たそうとする。



 きっと夜が明ければ、今宵の逢瀬など幻の様に霞んでいってしまうのだろう。
手放したくないけど、彼女を引き止めるにはまだ足りない。

全てを棄てても、セレアを愛している。どんな姿になっても、愛し続ける。


「...ラピス様...ずっと、一緒にいたいです...」

「ずっと、一緒にいよう...お前が望むなら...」

強く抱き締める。本心だけど、死に急ぐ彼女の気持ちは変わらないだろ。だから、彼女が深い眠りに落ちる前に、渡そう。



「...セレア。これを...。」

包装も何もしていない、ネックレスを渡す。

「これは、ラピス様が大事にしていた物じゃ...」

「母からの贈り物だ。ラピス・ラズリの宝石入りだ。セレアに持っていて欲しい...」

「貰えません!それに、私は...」

躊躇う彼女の首に手を回し、付けた。

「...簡単になんて死なせない。本気で死ぬ時は、お前を一人にしないさ。それに悪魔の俺が持っていてもしょうがない。俺の分身だと思え。」

言っていることは、勝手だが、だけど、好きな女を二度失う目に遭いたくない。

「ラピス様...」

抱き締め、優しくキスをした。




 夜明けと共に、俺は彼女を起こさないように、起きて、眠る彼女にそっと口付けて、囁く。

「愛してるセレア...」

小さなメモを残し、教会から立ち去った。




 「...お帰り。早かったな。あの娘を引きずり込めば良かったのに。」

魔界の入り口で、悪魔の友が待っていた。

「...あいつには、合わないさ。だけど、いつかセレアを...」

「馬鹿馬鹿しい。その甘チャンな性格じゃ掴めないぜ!」

呆れていた。




 ーIN 教会

目を覚ましたセレアは、夢だったかと思ったが夢じゃないと実感しながら、旅立つ。





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Last updated  January 8, 2010 09:57:12 AM
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