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あの仔がウチに来たのは、昨年の今日だった。
白黒の鉢割れ模様で、賢しげな黄色い目をした仔だった。 ハチ朗と名付けた。 私が外出先から帰ってきたら、相棒が保護して、既に暖かくしつらえた寝床で気持ち良さげにまどろんでいた。 前日からこの界隈に現れて、外猫のハウスやごはんを拝借していたので、気がかりになっていた仔だ。 とても小さな身体は、汚れて力無く、ガリガリに痩せ細っていた。 すぐに医者に見てもらい、処置をして見守ることになった。 歯から年齢をみるに、5~6ヶ月だという。 なのに3ヶ月の仔のように小さく、早いうちに親からはぐれてしまったのかもしれない。 この寒さで、どうやって今まで生きてきたのだろう。 点滴をしてもらったその晩は食欲があり、それなりに食べたが、 食べたものは直通で、あっという間に下してしまう。 1~2時間おきに流動食とミルクを少しずつシリンジで与えるが、やっぱり同じ様子。 飢餓状態からの給餌なので、きっと少しずつ回復していくだろう。 3日目、医者に何度連絡しても通じず、翌日は休診。5日目にやっともう一度見てもらう。 なんとか自力でトイレにいくようになり、相変わらず下痢は続いているものの、時間はかかろうがきっと良くなると思っていた矢先、もって2日だという。 初診の段階で、これほどもつとは思って無かったという。 突然の宣告。 元気になったら里親を探し、その前にノミ退治やワクチンやエイズ検査やらといろいろしなければならない。これは忙しくなるぞ。 鉢われの小さな頭を、フリースの山の中からちょこんとだして、 黄色い目でじっと見つめてくる。 お腹がすいたらご飯をねだる。 投げ出した小さな手。 夜中におき出して、私の顔の横に蹲る。 体験したことの無い何かが込み上げて、何としてでもという気にさせる。 小さな命が消えようとしているなど思いもよらなかった。 先住猫のビットだって、似たような状態で拾い上げ、今まで元気に生きてきたのだから。 思えばビットは春に生まれた仔だった。 秋に生まれて、幼い体で冬を越えなければならない仔達の過酷さを その時初めて知った。 猫は寒さに弱く、栄養状態が悪ければ肝臓や腎臓があっという間にやられてしまう。 診立てでは、恐らく肝機能は40%以下だという。 助かる見込みはまずないであろう。 山に備えて下さい。 酸素吸入とマッサージも敢え無く、潮が一番引く時間、あの仔は連れ去られてしまった。 最期の数時間、まるで大人のような顔で戦っていた。 花で囲んだなきがらは、以前と同じ、小さな仔の寝顔に戻っていた。 最初にゴリ押しでも入院させるべきだったとか、 遠くてもセカンドオピニオンを受けるべきだったとか、 自分の甘さ、情報収集の不備、判断力の弱さをあれこれ思い、 2~3日泣き暮れていたら、 辛いことばかりじゃなかっただろう。可愛かった、本当に可愛かったなあ。 と相棒が言った。 もう一年経ってしまった。 今日からお香を焚いて、花と美味しいものを供えてあげよう。 今でも、逢いたくて、寂しい。 そしてこの寒空に何とかして生き抜こうとしている子猫達がいるのかと思うと、切なくて仕方がない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012/01/27 10:20:24 PM
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