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2006年03月12日
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カテゴリ:カテゴリ未分類
  マキを玄関において学校に出かけました。
  父も母も兄も何も言いません。
  わたしも何も言いません。

  学校でどうやって過ごしたのでしょうか?
  何を考えていたのでしょうか?
  分かりません。

  世の中はいままでと変わらず、その場にあるのに、わたしはその
  中にはいませんでした。まるで、バリヤーか何かがあるように、
  わたしと世の中に隙間があるのです。その隙間は、もがいても、
  もがいても、決してなくなることはありませんでした。



  家について玄関を開けました。
  朝と同じように、マキがそこに横たわっています。

  頭を撫でてあげました。
  朝と違って、首が力なく動きます。木の人形から、いまは動かな
  くなってしまった、マキの形をした肉の塊になってわたしの所に
  戻ってきました。

  朝は気がつかなかったけれど、眼が少し開いています。
  その眼は力なく、今はどこも見ることなく生気もありません。

  その眼を両手でそっと閉じさせてあげました。
  まだ口も開いています。
  その口を手で閉じようとしても、閉じようとしません。
  まるで何か訴えでもするかのようです。

  そしてまたマキをしばらくそのまま寝かせてあげました。

  マキをどうしようか。

  頭の中を、色々なことが駆けめぐります。
  ちょっとおばかだけど、頭を少し横にかしげて、いつもわたしの
  ほうを見ていました。

  海の砂浜に埋めようかしら。

  布団の中で、一緒に寝ていた日々が懐かしく思い出されます。
  いつもわたしの横で、首を伸ばして布団にあごをのせて寝ていま
  した。
  そして朝になると、せっかく用意したトイレで用を足さずに、兄
  の布団に用を足してしまう、そしてわたしがそれを片付ける。

  海だと、夜になると独りぼっちになってしまうな。

  車のタイヤを見ると、頑として動かず、四肢を突っ張って、必死
  に抵抗していたマキ。そしてそれを引きずって行くわたし。
  それが日課の散歩。

  毛を刈り込んでいないので、プードルと言うよりは、ヨークシャ
  テリアみたいな感じだったマキ。

  お別れです。

  その頃には帰っていた兄と一緒に、家の横の、あの低いブロック
  塀のすぐ横に、埋めてあげることにしました。
  もともと鳩の小屋があったところです。

  どうしてだろう。
  どうしてわたしが何かやると、気づいてやって来るのでしょうか。

  低いブロック塀のお姑さんが、マキを埋めようとしているわたし
  のところに、ブロック塀越しにやってきました。

  「なんだい、死んじまったのかい」

  他にも何か言っています。

  「やだよこの子は、それをここに埋めるのかい、よしてくれよ。
   うじが沸いて汚いだろう。臭ったらどうするんだい」

  わたしの目から涙があふれてきます。洟がたれます。
  嗚咽が漏れます。

  それを聞いて、少し声が小さくなったようです。
  さっきよりは小さな声で、

  「まったくやな子だよ」

  ところがそこにヒステリーおばさんがやって来ました。
  本当になんで分かるんだろう?

  「なんだい、そんな汚いもん、そこに埋めるのかい」

  「よしてくれ、うちの子が病気にでもなったらどうすんだい」


  お前のとこのガキが、マキをこうしたんじゃないか!

  わたしは反論をしようと試みます。
  でも嗚咽が激しくなり、胸が大きく波打ち、息をするのさえ苦し
  くなります。声を出したくても声がでないのです。
  まるで誰かが、わたしの胸を握りつぶし、大きく揺さぶっている
  ようです。

  わたしは下を向き、もくもくとマキを埋めていきます。
  最後の別れさえも、辛く苦しい思いに苦しみ、わたしの心の中に
  湧き上がる、どうしようもない暴力への渇望にさいなまされ、ま
  るで頭全体が脈打っているように、どくどくしています。

  それでもマキの体が、土に覆いかぶされ見えなくなってしまうと、
  興味がなくなってしまったかのように、二人は離れていきます。

  ヒステリーおばさんが、隣のお姑さんに

  「でもこれで、うるさく吠えられることもないし、大体汚らしか
   ったじゃない、うちの子供のことを考えると、気が気じゃなか
   ったわ」

  その間、マキがなぜ死んでしまったのか、また誤るというそぶり
  も一切ありませんでした。
  こうしてわたしの心に、澱のような傷を残し、マキはわたしの元
  を去っていきました。



  今回、マキのことについて触れました。
  わたしにとっては、本当に辛く悲しい記憶です。
  ただ、書いたことがすべてあっているのかどうかは分かりません。

  わたしに大きな傷を残したこの事件は、わたしに正常な記憶を残
  しているとは思えません。
  近所のおばさんたちのことも、かなり悪く書いています。
  これは自分の心の中で、大きく誇張されて記憶に残っている可能
  性もあります。

  ただ長い生活の中で、ここでの生活は、周りから受けた干渉が強
  かったことも事実です。
  他にもあったのかもしれませんが、この時期は中学生で、人間と
  して形成されていく大事な時期でもあり、記憶が鮮明になったの
  でしょう。

  今回のマキの事件は、我が家がろうあ者の家庭であったことも、
  ひとつの要因ではあります。
  しかし、我が家の前に住んでいる、ヒステリーおばさんに端を発
  しているのが原因ではないでしょうか。

  いま考えてみれば、この人の心は病気だったのでしょう。
  いつも猜疑心の塊で、誰にも心から話すこともなく、びくびくし、
  自分が少しでも優位に立てることがあれば、それにすがりつき生
  きていたのでしょう。

  でもわたしはその人を許す事はありませんし、可哀想とも思いま
  せん。確かに病気なのでしょうが、自分で自分をそのようにして
  しまったのではと思います。

  人の生活や心にずかずか入ってくる、そんな人でした。

  またしばらくは、この記憶は心の奥にしまっておきます。




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最終更新日  2006年03月12日 23時02分40秒
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