1576585 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
2007年07月06日
XML
 投資の世界は、数字のデータが豊富であり、何よりも、そこで成功することが、大きな経済価値につながることもあって、昔から、理論的な研究が盛んに行われている。過去から、今までの間に、数多くの投資の理論が生まれて、あるものは残り、あるものは廃れてきた。

 そこで、主に株式投資に関係するものを中心に、過去から今までの投資の理論から、10個を選び出して、これらのポイントを説明し、それが役に立つか否か、また、関連して、これからの投資に役立つヒントはないか、と考えてみたい。

 なお、以下の文章は、楽天証券八周年記念講演会で「個人投資家のためのホンネの投資理論」と題して、私がお話しさせて頂いた内容を叩き台にしているが、講演会では話しきれなかった内容で、是非、お伝えしておきたいことが多数あるので、講演会にお見えになった方のご参考にもなると思う。3、4回に分けて、書く予定だ。



■その1.「成長株理論」

 株式投資に関する「考え方」で、時間の順序から見て一番で、且つ、画期的に重要なのは、「成長株理論」と名付けるのがいいかどうか自信はないが、「債券よりも、配当利回りが低くても、将来に成長性があればいい」ということと、「将来の成長性が確からしいなら、現在の株価が高くてもいい」ということを、理解するようになったことだろう。

 これが歴史的にいつ頃、どこで、確立した考え方なのか詳しくは知らないが、大恐慌の前にはブームが必要で、ブームのためには、こうした考え方が必要だから、20世紀の割合早い時期には、確立されていたはずだ。

 インカムゲイン(株式の場合配当)とキャピタルゲイン(値上がり益)とを、合わせて価値判断を行う、というのは、経済常識としては、当然のことだと思うが、近年の日本での分配金だけを強調した毎月分配型ファンドの隆盛を思うと、必ずしも常識とはいえないのではないかと、こちらの常識が揺らぎそうになる。しかし、両者を併せて考えることは、損得の上では、当然のことだから、自分で意思決定する投資家は、かくありたいものだ。

 とはいえ、「配当」というものに対する、投資家の執着の重要性も無視はできない。相変わらず、配当があってはじめて株主に報いているというような書き方をするメディアは多いし、株式の場合に配当を、投信の場合に分配金を特別視して、過大評価する投資家は少なくない。これらは、最近のファイナンス研究の文脈で言うと、金銭的な収入は、脳にとって「報酬」と判断されることと、時点として近くにある将来価値が遠くにある将来価値よりも過大評価される傾向(現在価値のグラフが双曲線的になるので「双曲割引」という)で説明できる現象だが、あたかも野生動物のようにインカムゲイン(特に頻繁なインカムゲイン)を喜んでだけいないで、キャピタルゲインとインカムゲインを統合して損得を考えられる程度には脳を鍛えて、経済的損失や単純な錯覚に陥らずに現代社会に適応したいものだ。

 ただし、本来、マーケットでは、こうした誤解ないしバイアス(偏り)を持っている参加者は、その行動パターンを利用して、別の誰か(たとえば、今、拙文を読んでいられる読者の、あなた!)に、いわゆる「カモ」にされてしまってもおかしくない。しかし、簡単にそういった戦略(たとえば高配当銘柄を空売りするような戦略)が成功しないところが、ファクターが多様で、不安定な、株式市場というフィールドの面白さだろう。とはいえ、多数の人間がこれに従う結果、金融商品を供給する側は、トータル・リターンを改善しなくても、分配金で顧客を釣ることが出来るので、このバイアスは、広い意味でのマーケットでは、立派に収益獲得に役立てられている(顧客側から見ると、純粋経済的には損をしており、「カモにされている」といって良い)。

 ところで、配当に関連して、一つ言っておきたいことがある。「株主優待は、子供だまし程度のものだ」というのが、それだ。株主優待ファンには、心外かも知れないし、他方、株主優待ごときで喜ぶ者の例にされては、賢い子供にとっては、かなり迷惑かもしれないが、筆者は、基本的に、株主優待という制度そのものに反対だ。

 実は、株主優待は、機関投資家や外国人投資家にとっては、迷惑なのだ。近年の、機関投資家の場合、株主の権利によって手に入れた「優待」は、換金して、ファンドに入れねばならない。わざわざ「近年の」という理由は、かつては、投信会社が、たとえば、ファンドのお金で航空会社の株を買って、株主優待券を、社員の出張の際に使っていた、というような、一種、牧歌的な時代があったのだが、近年、こんなことは許されない。

 あえて考えるとすると、株主優待は、株主という特定の集団を有望な潜在市場と見た、たぶん、それなりに有望な、宣伝行為であるといえなくもないが、株主と会社の関係を考えると、株主優待にコストを使うことよりも、株主のために少しでも多くの利益を稼ぐこと(配当をすることではなくて、利益を稼ぐことが、経営者の第一の義務だ)が、必要だ。投資家の側も、「株価では儲かっていないけれども、優待があるから、まあ、いいや」的な退嬰的な自己満足に陥らずに、株式でリターンを稼いで、欲しいものは、買えばよい、と割り切るのが賢い態度だろう。

 株主間の立場によって、損得の差がつく、というような制度は、なるべくない方がいいと思うし、株式投資の判断材料は、なるべくシンプルである方が、正しい価格が実現しやすくていいのではないかというのが、筆者の意見だ。

 株主優待品のコレクション、といった特別な理由がある場合は、好きにすればいいが、株主優待で投資を考えることに対して、筆者は、反対だ。いわゆるマネー誌も、年に一度くらいは、株主優待の特集号を出すが、ある程度投資に詳しい編集部のメンバーが、誌面的には賑やかでも、内容的には意味があるとは思えない「株主優待特集号」を、毎回満足して作っているのか、いつも、いぶかしく思う。

 成長株投資という点に関して、是非言っておきたいのは、結果的に何年間も優れた成長を続ける企業があるとしても、数年先を見越して投資する、ということは、概ね有効ではない、ということだ。

 業績をある程度の具体性をもって予測できるのは、せいぜい2年先くらいまでのことだろう。3年以上先の、業績は、「予測する」というよりは、「想像する」ものだ、という方が実態に近い。そして、市場の参加者は、直近の過去の業績と、ごく近い将来の業績予想と、将来のイメージを、主な情報セットとして判断して、株価を形成する。そして、時間の経過(たとえば、半年経った、と考えてみて欲しい)と共に変化する条件で、多くの参加者に共通の影響を与えるのは、近い将来の業績予想の変化だ。

 結果的に成長株であっても、途中の株価は、市場を常にアウトパフォームしているのではない。アウトパフォームは、収益予想の上方修正が連続するような時に起こり易く、結果的には、こうした一連の上方修正の初期にこの銘柄に乗ることが出来た投資家が、大儲けできる。

 これだけではない、とは思うが、思い切って言い切ってしまうと、上手く行った成長株投資の正体は、アノマリー効果で言えば「収益予想のトレンド効果」(trend in earnings estimates revision;トレンド・イン・アーニングス・エスティメイツ・リビション)である。従って、成長株投資で、本気で情報上の優位を求めるなら、5年先の業容の予測ではなくて、主に、1、2年先の収益予想に影響する情報を、他人よりも先に掴まえることが重要だ。また、仮に、「5年後に花開く好材料」が予測できたとしても、それが市場参加者に知れ渡るのに3年も4年も掛かると、それまでの間に、別の重要要素が登場することがよくある。

 成長株投資の目線の置き所は1、2年先だ、と言うと、ロマン派(?)の投資家は、現実の世知辛さに、がっかりされるかも知れないが、株式投資をゲームとして、シビアに競うなら、この理解が正解だと申し上げておく。


その2.「配当割引モデル」へ  >>





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2007年07月06日 13時32分24秒
[ 「ホンネの投資教室」] カテゴリの最新記事


PR

プロフィール

ホンネの投資教室

ホンネの投資教室

ニューストピックス

カレンダー

バックナンバー

2024年05月
2024年04月
2024年03月
2024年02月
2024年01月

コメント新着

コメントに書き込みはありません。

日記/記事の投稿


© Rakuten Group, Inc.