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2011.12.31
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カテゴリ:植物
一夢庵 怪しい話 第4シリーズ 第303話 「ホウレンソウ」

 私的には、ほうれん草といえばTVアニメ(米)の”ポパイ”ですが、ポパイ(Popeye)は、ポパイのアニメを見たことが無いため”ポパイとは何者か?”という説明が必要な若い衆が増加中だったりします(遠い目)。

 基本的にポパイは船乗りで、偶に海軍の水兵賭して飯を食べていたりすることもあれば、海から離れてカーボーイもどきになっている作品もあり、まあ、なんでもやってきた不死身の超人とでもいったことになります。

 一つの特徴は、ほうれん草を食べると独特なテーマ曲が鳴り響いて一時的に超・パワーアップすることで、それはスーパーマリオにおけるマリオと食用茸との関係にも影響を与えていますが、当時の亜米利加や船乗り業界、あるいは軍隊でほうれん草の缶詰がポピュラーだったかというとそんなこともなかったそうです。

 瓶詰めや缶詰の話は以前に触れたことがあるので今回は省略しますが、大航海時代が到来し、数ヶ月という単位で遠洋航海をするようになった船乗り達の間で深刻な問題となったのがビタミンCの不足によって生じる”壊血病”だったというのは比較的知られた話になります。

 もっとも、船乗り達に多かった病気としては”壊血病”だけでなく”脚気(かっけ)”も知られていて、いずれも配給された食物しか食べることが無いために生じる病だったのですが、ビタミン不足と特定の病気の関係が認識される端緒になっていきました。

 というか、コロンブスの頃の遠洋航海を行う船で下っ端の水兵達に配給されていた食事というのは悲惨の一言で、硬く焼いたビスケットやパンの類と塩漬け肉と豆(を使ったスープ)が基本だったようですが、冷蔵庫が無い時代に肉を長期保存しようとすればとんでもない量の塩を使っていたようです。

 一つの逸話として、塩漬け肉を食べられる程度まで塩を抜くためにロープで縛って海水に漬けて塩を抜いていたという話がまことしやかに伝わっているくらいで、海賊などがやたらとラム酒に象徴される酒を飲んでいるイメージがあるのも、常温だと水は腐るから腐りにくい酒で代用していたとされています。

 もちろんというか、酒は水が主成分ではあるものの炭水化物ですから完全に水の代用品にはならないのですが、当時の航海技術や機材の精度で島影一つ無い未知の大海を航海するとなると、”飲んでよっぱらってないとやってらんねえ!”という人の方が多かったのかもしれません(笑)。

 意外なことに、海賊達は愛飲するラム酒などに常温でも比較的日持ちのする果実で香味が強いライムや檸檬を絞り込んで一種のカクテルを造ることが多く、そういった果汁入りの酒を飲んでいる人というか船で壊血病の発症率が極めて低いことが経験的に知られるようになり、理屈は良く分からないけれど壊血病を防ぐ意味でも定着していった節があります。

 幸か不幸か、新大陸を代表する芋の一つである馬鈴薯(じゃがいも)はビタミンCを意外と多く含んでいて、皮ごと塩ゆでにして食べて入ればそれまで遠洋航海で問題になっていた病気をかなり防ぐことができるのですが、常温でも日持ちがすることもあって船乗りの食事を劇的に改善という変えていき、遠洋航路となると馬鈴薯の皮むきが定番ネタになっていきます。

 ちなみに、ポパイは1929年に、エルジー・クリスラー・シーガー (Elzie Crisler Segar)が描き始めた”シンブル・シアター(Thimble Theatre)”という作品に登場する脇役の一人で、本来の主人公はハム・グレイヴィ(Ham Gravy)で、その恋人がオリーブ・オイル(Olive Oyl)、オリーブの兄がカスター・オイル(Castor Oyl)という布陣でした。

 ポパイの登場は10年程経過してからですから、マンネリ打破のテコ入れ目的だったと考えられるのですが、漫画だけにマルチに難事を解決し不死身な所が読者に受けて人気が上昇し、主人公のハム・グレイヴィから主役の座と恋人のオリーブを奪い去ってしまい、1930年代に短編アニメとして(いわゆる”カートゥーン”)映画がフライシャー・スタジオで作成される頃には、完全に作品を乗っ取っています(笑)。

 私の世代が知るポパイは、このアニメ版以降の話になり、ポパイの基本設定である”ほうれん草を食べると超人的パワーを出す船乗り”と、恋人なのか夫婦なのか事業家なのかよくわからない恋人のオリーブ、そしてポパイの同僚にして恋愛でも宿敵の大男ブルート(ブルータスという表記もある)の三人を基本にコメディというのはアニメ以降の話になります。

 その意味で、何かといえば”助けてポパイ!!”と叫んでいる印象が強いオリーブ・オイル(Olive Oyl)は、ハム・グレイヴィをあっさりと見限ってポパイに乗り換え、ポパイに一筋なのか?と思えばブルートと浮気をする話も珍しくありませんから、当たり前のように二股をこなしている恋多き女性というか節操のない女性というかは好き好きですが、少なくとも人生をエンジョイしているなあと(大笑)。

 日本に紹介されたのは戦前の話で、雑誌”新青年”に翻訳された漫画が掲載されたのが始まりで、1959~1965年まで”不二家の時間(TBS)”で映画版やテレビアニメ版(亜米利加のTVアニメ放送とほぼ同時期)が放送され、日本でもあっというまに人気者となるのですが、太平洋戦争中にポパイが日本海軍と戦ってこてんぱに叩きのめしている話は(日本に置いては)無かったことにされたようです。

 もっとも、戦争中に日本軍と戦う亜米利加の人気漫画のヒーローというのはポパイに限った話ではなく、スーパーマンも米軍の手先として暗躍し日本軍に壊滅的な被害を与えているのですが、こちらも戦後の日本では”その手の話は無かったこと”になっていたりします。

  いずれにしても、ポパイの歴史はぼちぼち百年になろうとしているだけに、無かったことにされている設定も多く、初期には”ほうれん草”ではなく”キャベツ”を食べるとスーパーマン化していたという設定は、手軽に食べさせるために缶詰を思いついたあたりで切り替わったようですが、当時の技術で缶詰したほうれん草が緑色だったかどうか?は微妙な話になるようです。

 では、日本における”ほうれん草”の歴史は?進駐軍が持ち込んだ文化なのか?というと、そんなこともなく、日本には16世紀末の南蛮貿易によって渡来したのが始まりとされ、その意味では唐辛子と同じ頃に渡来した外来植物ということになるのですが、ほうれん草の特徴としてアルカリ土壌を好むことがあり、石灰を播いて栽培することもあるのですが、その為か、シュウ酸が多く含まれるため生食には向きません。

 文献への登場は、江戸時代初期に林羅山の”多識篇”が初めてという説が有力ですが、少し後の”料理物語”などの料理本に登場するようになることから、江戸時代の庶民の食卓にほうれん草が普及していたことがうかがわれるのですが、当時の日本人の好みに合っていた野菜と書いて良さそうです。

 が、江戸時代に普及したほうれん草は、現在出回っているほうれん草より葉が小さいタイプで、現在主流の大葉のほうれん草は幕末の頃に仏蘭西から輸入されて以降広まったタイプで、時代的には玉葱と同じ頃に普及が始まったことになるのですが、茹でてしまえばわかりにくい特徴かもしれません(笑)。

 ちなみに、シュウ酸を含む生のほうれん草を多量に摂取し続けた場合、カルシウムの吸収が阻害されたり、シュウ酸が体内でミネラルと結合して腎臓や(膀胱というか)尿路に結石を形成しやすくなることが知られているのですが、対策としてカルシウムを多く含む食品と一緒に食べたり、多量の水で茹でてシュウ酸を茹で汁に溶け出させる(まあ、普通に茹でれば十分ですが)とよろしいようです。

 その意味で、缶詰のほうれん草というのはシュウ酸の害を(茹で汁まで飲まなければですが)心配しなくて良いことになり、ポパイは意外と賢明なほうれん草の食べ方をしていたことになります ・・・ 偶に、生えているほうれん草を生で食べている話がありますが。

 ほうれん草は、雌雄異株のアカザ科の野菜ですが、原産地は中近東のイランの辺りとされ、イスラム教徒の間では古くから食べられていたのですが、西方への普及は早く7世紀には中国へ布教のために訪れたイスラム教の僧侶によって持ち込まれて定着したようで、その時、イスラム僧が原産地を”ポーリン”と紹介したのが”ポーロン(菠薐)”として定着し”菠薐草”になったとされています。

 なぜかこのルートのほうれん草は日本まで普及しなかったか、日本に持ち込まれていたとしても定着しなかったようで、前述したように16世紀末まで待つことになるのですが、欧羅巴への普及は11世紀末の十字軍遠征の時とされ、英語のspinachの語源はペルシア語という説が有力ですが、欧羅巴では瞬く間に普及し定番の葉野菜として食されるようになり品種改良も行われるようになります。

 中近東原産でありながら、ほうれん草は意外と寒波に強く、収穫前に冷温に晒して甘みや栄養素を増す”寒締め(かんじめ)”が行われることが珍しく無いのですが、東北農業試験場(現・東北農業研究センター)が理論的に体系付けて確立した方法として知られるのですが、低温ストレスによって糖度が上昇し、ビタミンやミネラルの濃度の上昇が起こるとされています。

 なお、日本のサラリーマンの業務における基本にも”ホウレンソウ”があり、「報告」「連絡」「相談」の頭文字を一文字ずつを取った”報連相(ほうれんそう)”を新人教育で教える企業は珍しく無いのですが、IT時代が本格化してくると、情報はリアルタイムで処理し同時に共有するのが当たり前になっていきますから、そういった習慣を持たない年輩者の再教育が必要な時代になってきていると言えます。

 逆に言えば、特定の情報を個人や小集団で秘匿する環境を限りなくゼロに近づけていかないと会社が知らない内に大きなダメージを被るリスクを抱える時代に急速に移行しているのですが、これを書いている時点では、下っ端の情報隠匿よりも上層部が情報を隠匿し違法行為を繰り返して優良企業を破綻に導く騒動の方が目に付いていることは御存知の通り。

初出:一夢庵 怪しい話 第4シリーズ 第303話:(2011/12/26)





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Last updated  2011.12.31 00:30:35
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