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帰ってきた怪しい話　第0019話　「パスワードは123456789＿正気か？」

帰ってきた怪しい話　第0019話　「パスワードは123456789＿正気か？」　義務教育の国公立の小中学校に”一人に一枚のタブレットPC"が配布され、2022年を目途に国公立の高等学校にも入学時に事実上の必須教材として教職員側が使いたがっているアップルのタブレットPC（とオプションの純正キーボード、価格に疑問符の付く学校側が指定する故障時や破損時の保障契約などなども込々で）を8万円以上の値札で事実上強制購入させる方向で京都では話が進んでいるといった主旨の話を以前に欠いたことがあるのは御存知の通り。　で、そうした学校側が指定して配布したり購入させたタブレット端末というハードを媒介にして発生した”いじめ”から6年生の女子児童が自殺にまで追い込まれたと推測される事件が2020年11月に発生（タブレットの配布は2018）し、当然、学校側の責任問題も追及されている。　事件の推移と概要をざっと読んでいて、”正気か？”と思ったのが、１．必要のない（授業で利用しない）プログラムをインストールしたままで配布し運用させていること。２．”いじめ”の舞台になった掲示板というかチャットルームというか、必要性がそもそも微妙な電脳空間に”時間制限”や”入場制限”などを設定していないこと。３．上記２の電脳空間への保護者など学外からの閲覧（監視）のアクセス・ルール（と権限の設定）などをしていないこと。４．なによりも、利用頻度が高く共用利用が前提のネットワーク絡みの管理IDやパスワード設定がザルというか、”１２３４５・・・”とか”ABCD・・・”といった馬鹿が設定しがちなパスワードや管理IDの例題に頻出している設定を”PCを使えるように教える側”がやらかして事件が発生して指摘されるまで”それが問題だと自覚していない”こと。といった、素人丸出しのPC利用環境だったこと。　パソコンのパスワードに限らず、ATMで利用する金融系カードや各種の会員カードなど、（4ケタ～６ケタ程度の）暗証番号が利用時に必要なカードが社会に普及して既に半世紀以上が経過していて、契約時に”こういった暗証番号に設定しないでください・・・”といった注意を目にした人の方が多数派ではないかと　・・・　学校の先生の住んでいる星では別のルールのようですが。　というか、授業でというか学校側が生徒の利用をコントロールするためには、”最初に管理し利用する先生たち（役職、年齢、性別などとは無関係に）全員で利用環境の枠組みは利用する前に設定して、情報は共有しておくというのが最低限の事前準備ではないかと。　他の職種の地方や国の公務員にはほぼ存在し無い、夏、冬、春の（累計で2カ月近い）長期休暇期間中に学校の先生は（本業である）授業もせずに何をやって時間を潰しているのか？といった”素朴かつもっともな疑問”に対して、教員免許更新制度が不要であるとする根拠の一つに上がっていたこともありましたが、”新しい知識や技能などを習得するために各種講習会などに参加”しているので長期休暇中でも遊んでいるわけでは無い　・・・　・・・　ウインドウズ９５の普及（＝インターネット環境の一般への普及）開始からカウントしても四半世紀以上既に経過しているのに、先端の教育を行っていると（教職員の間では）自他ともに認め知られている学校でさえ、この危機感が皆無の猿管理というか　・・・　何が問題か根本のところで分かってないことが恐ろしい。　以前に少し触れたことがあるけれど、（その時点で）最先端のパソコン環境は金さえあれば猿だって手に入れることができる（＝金で時間が買える部分）　・・・　が、そのハードで運用するシステムや利用するソフトなどことなどは一朝一夕で身につくものではない（＝金で時間が買えない部分）。　小学生にコンピュータプログラミングの授業を必須とすると文部科学省がぶち上げって実施へと進んでいるのですが、その話を最初に聞いた時に不思議に思ったことの一つが、”誰が誰に教えるの？”ということで、　1980年代の中頃に8ビットパソコンが（少し無理をすれば）学生たちの手の届く玩具になりはじめた頃からこれを書いている時点まで、「学生のパソコンリテラシー＞学校の先生のパソコンリテラシー」という法則は、人数でも知識や技能でも日本においては一度も覆ったことがない現実があるんじゃね？とも。　既に教え子の小学生の中に、教職員なんかより達者に既存（のユーティリティーを含む）ソフトやネット環境を使いこなしている子が複数いるというか、教職員以下の知識や技量の生徒の方が少ないんじゃね？そんな子たちにジャバとかC＋＋あたりを教えるとすれば、週に４コマ、1コマが1時間程度の授業を半年くらい実施（して、後は休日に自主練）すれば4月に入学した新一年生が夏休み明けの9月くらいには下請けでバイトができるレベルに辿り着ける　・・・　ような気もするけどなあ？何を実機を使うプログラミングそんなに小学生にだらだら教えるんだろ？？。　実際、自殺者まででた一種の裏・掲示板化したネットに関して、実際に利用していた生徒側からのコメントも加味してあれこれ見ていると、やっぱ管理する側の先生の知識が正気を疑う基礎的な部分で既にザルで、生徒たちに手玉に取られているのに対応するだけの技能を持ち合わせていないんじゃ？　というか、裏・掲示板への悪口、中傷カキコといった打ち込みは、授業中に先生の目を盗んでやっていた。といった生徒側の自白にしても、前述したように、事業時間中はそもそも入室できないか入室できてもカキコできないように利用者権限を設定しておくか利用可能時間を設定しておくだけでいいのではないかと。＊私なら、クッキーを自作するか？既存のトラッカーの類を延々と自動で仕掛ける仕様にして、いつ、どこから、だれが、どこに書き込み、どのデータを閲覧したか　・・・　という程度の仕掛けくらいは運用前に検討し、上司の反対で導入しない場合は経緯を含めて公文書で残す方向で暗・・話を進めるでしょうなあ。＊＊学校側が上位の管理者権限を持って運用しているネットワークシステムで、単なるユーザーに過ぎない生徒たちに好き勝手やられて、どの生徒の犯行かさえ特定できません・・・とか、保身目的でなく、真顔で教職員側が主張しているとすれば、「その程度の技能しかないのに、今日日の小学生たちに何を教えることができると思っていたのか？」＊＊2023年頃から、人の言葉を話せるようになるよりも早い時期から、スマートフォンやタブレットPCを巧みにフリップしてお気に入りのユーチューブ動画やネット配信番組を見ている連中というか世代が、続々と新・小学一年生になっていくという現実もあるんですが、危機感が足りてないんじゃね？　インターネット空間のような、24時間営業で匿名、匿住所でも大丈夫な代物を、たかだか”利活用の方法を０から教えていく前提の”一つの小学校の”授業”でなぜ必要とするのか？極論すれば、マナーやセキュリティ関連の知識を身につけるためだけの閉鎖型ネットワーク（＝学内のサーバー内だけで完結している電脳空間が利用できるだけで義務教育の小学生には十分な環境ではないかと。　ある意味で、小学校という一種の自動車学校の教習場を卒業すると同時に”仮免許を習得した”とみなし、義務教育の中学を卒業するまでに（指導者の管理下で）本免許を取得すべく段階を踏んで技術と知識、経験を積んでいく　・・・　・・・といった、小学校入学から中学校卒業までの制度設計と言いうか、9年間で一貫しているカリキュラムが不在で、”（現場で）なんとなく詳しいと思われているものの客観的なコンピュータ関連の技能資格の類は持っていない人”とか”君、若いんだからこういうの得意でしょ？お願いするね！とか諸先輩に有耶無耶の内に押し付けられただけの人”とかいった現場の素人がなんとなくずるずると関わっているような匂いがするのは気のせいか？＊タブレットPCを使って、宿題の類をすると誰か一人が終らせれば一瞬でコピペできるので無意味だ云々といった生徒側の主張に関しては、”それって先生の側が紙が前提だった宿題の時代からアップデートできてないだけなので、コピペで浮いた時間で他の技芸や知識を体得しておかないと、卒業して学校の外の社会で生きていくようになると困るのではないかと。＊＊　学校と言う閉鎖空間で、大学を卒業した直後に採用され配属され定年まで余計なことはせずに淡々と採用された都道府県内を移動しながら働き続ける人生を良くも悪くも選択し、働きに応じた退職金と年金を手にしていく学校の先生という存在は、あなたが何をしようと何をされようと、在学中はもちろん卒業後は特に、あなたの人生の成果にただ乗りすることはあっても責任をとってくれる存在ではありませんから、在学中から「学校の外の社会では必修かつ必要とされている知識や技能の類を習得しておくこと」を心がけるべき時代ではないかと。＊＊＊　既に、教職員の側が言ってるでしょ？犯罪行為や何らかのトラブルが学内で発生したからといっても、教職員だけに対応を求められたり責任を追及される現状はおかしい。我々はモンスターペアレントへの対応や生徒の問題行動への対応などなどで手いっぱいだ。そこに、体育会系の部活動の顧問など授業以外の採算効率の低い業務を引き受けると過労死するレベルになる。コンピュータ関連の知識や技能は生徒たちの方が達者に使いこなしていますからなんとも　・・・　で、育児休暇やプライベートの時間を使って描きあげた自分自身の子育て漫画を出版して印税収入など副収入を手に入れる権利を認めろと裁判を起こす時間はある先生も実在する時代になっているわけだ。　以前から何度となく書いてますが、10年後、15年後の世界で”国力を左右するコンピューターは従来のノイマン型コンピュータから量子型コンピュータ（か、更に次世代型）に移行している”と考えられ、演算能力などが桁違いというか段違いの量子コンピュータのプログラミングを人力だけでこなす時間はほとんどなく、プログラミングは特化型人工知能の利活用が前提となる。　その場合、総人口が100億人を越えている可能性がある人類の中で、量子型コンピュータのプログラミングを行う人工知能に”仕様書”や”リクエスト”の類を提出できる頭脳の持ち主は　・・・　たぶん、これを書いている時点で、億単位の年収を手にしているユーチューバーより少ないのではないかと。　シンギラリティポイントがどこというか、いつになるのか、これを書いている時点では、不明ですが、人工知能たちがネット上で収集したビッグデータなどを自動的に集計して理論上の最適解や対応策などを立案し、一番、無駄なく効率の良い資源配分が実行されるようにシステムを自動更新しながら管理していく　・・・　人の政治家や官僚といった既存の行政システムが不要になる世界への移行というのはドラえもんが誕生するよりも早い時代の話になるかもね（ま、どのみち、その頃まで私が生きている可能性は極めて低いと推定してますが）。　ただ、2022年以降に日本の小学一年生になるであろう世代の子が約20年後に社会人になる頃に、”ｈんんと振り返ってみたら、なんて無駄なことを時間とカネをかけて勉強してきたんだ！”と大多数の若い衆が叫んでいる光景が今の段階で見えるような気はしています。　もっとも、あれこれ書いている私が未だにガラケーを愛用していることは御存知の通り（笑）。　では、また～。

2021.09.25

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帰ってきた怪しい話　第0010話　「文部科学省解体論（笑）」

帰ってきた怪しい話　第0010話　「文部科学省解体論（笑）」　10年に一度の頻度で実施されていた小中高の教員免許の更新制度を早ければ2023年に廃止する方向で話が進んでいるそうな（溜息）。　興味深かったのは、このニュースが流れたときのネットの反応で、明らかに教員免許を取得していると推定される人の書き込みが圧倒的に多かったことで、彼等彼女等の主張を整理すると、１．新規大卒者の教職員志望者の減少が止まらない。その原因は過酷な職場環境にある。２．職場や職域で定期的な研修を実施しているので免許を更新する必要は無い。３．日常用務が多岐に渡る（生活指導や部活動などへの対応等）ことでそもそもの業務負担が大きい。４．免許更新時に、試験を受けるために年休を取得して対応する必要がある上に試験費用（だけで3万円）が自弁（個人負担）であることが納得できない云々。といったあたりか？　面白かったのが、５．定年退官後も更新手続き不要で教員免許を永年で有効にしろ云々。といったカキコが意外と多かったこと。　で、”やっぱ日本の教職員の知的水準の低下には酷いものがあるな～”とか”結局、どうこう勿体を付けても教職員の利権保護を主張してるだけで、我が身を切ってでも本気で子供たちの為に教育改革をする気でいるわけじゃないってことね？”とか、私は、思ったのでした。　教職員を一つの商売と考えると、扱っているのは”子供の命”であり”子供の将来”というのがかなり上位に来ると私は考えているのですが、小学一年生を6歳とすれば、社会に本格的に出ていくのは高校を卒業する18歳くらいとなり、現行の制度だと、６－３－３の12年間が事実上の義務教育状態になっていると書いても過言ではないかなと。　実際には、高卒で就職する人よりも、さらに専門学校や短大、4年制大学、大学院などへ進学して専門性を高めた上で就職する人の比率の方が年々高くなって来ているのは御存知の通りですし、それに伴い、国立大学教育学部卒程度の人材の知的水準や知識量の相対的な地盤沈下が止まらないでいることも比較的知られた話になります。　で、教職員と推定される人たちのカキコを読んでいて、この根拠のない自己陶酔とも思えるような”私たちは賢いのだから優遇されて当たり前で、職場に競争原理を持ち込むこと自体がけしからん”とでもいった主張　・・・　某・教職員団体が主張してきた”我々は教職員ではなくサラリーマンである（から勤務時間外に銭にならない学校関係の仕事はしない）”も、そこに加味すれば、”サラリーマンなら仕事の結果が給料（教職員の場合は給与）や昇進などに反映されるのが当たり前”という民間の視点はあいかわらず抜けてるなあと（大笑）。　前回（第0009話）でも触れたように”過労死するほど過酷な職場だと主張するわりに、金になる副業に勤しんでいる高校教職員が東京都だけでも1800人以上いるじゃん？”とか、”定年まで勤務した場合の退職金や年金に関して平均値でいいから毎年公表した上で「低賃金で過酷な職場」云々”は主張しないと、既に一般的なサラリーマンの正規雇用比率が低下し退職金が数十万～200万円程度とか、そもそも退職金制度の対象外といった非正規雇用のままで定年年齢に達する人の比率は増大中じゃね？＊教職員が満期で退官する場合、定年２～3年前あたりで管理職（教頭、校長、教育委員会への出向云々）といった管理職手当が加算される役職になぜか昇進して、平の教職員のままで退官する場合よりも明らかに退職金や年金が高額になる、サラリーマンとしての実績もなにもあったもんじゃない慣習と言うか温情と言うより不正行為が横行しているといったあたりについて”不合理な慣習を廃止すべし！”と主張する教職員は”教員免許の更新制度を廃止すべし！”と主張する教職員より明らかに少数派である。＊＊退官前の意味不明な管理職への昇進が慣習化している弊害として、以前に某・公教育の高校でなぜか一人でいいはずの校長先生が書類類上は4～6人いることになっていて、教頭先生などのポストも空位にならず満席以上になっている事例がある（或いは”あった”）ことは言うまでもありますまい、といった解説をしたことがある（過去話参照のこと）。それはそれとして、「仕事が過酷でプライベートの時間もほとんどなく低賃金だから新規就労者が慢性的に不足している云々」といった教育関係者側の主張に関しては、”それって事実誤認ですぜ旦那方（笑）”としか言いようがないなと。過酷な労働で低賃金低収入だから後継者の減少が止まらない云々といった話は、それこそ1970年代から全国の農山村で主張されてきた代表的なロジックの一つですが、約半世紀ほど時間が経過し、”新規就農者数は某大手スーパーマーケットの新卒採用者数より少ない”と指摘された時期を過ぎ、それに伴う人口減少が、いわゆる”地方消滅”の主因の一つになっていることは比較的知られた話というか知っている人は知っている話かなと。しかしながら、では”過酷な労働環境で低賃金低所得な職場”だから”後継者が不足したり、新規就職者の減少が止まらないのか？”と聞かれれば、”その職場や職業に「未来や希望が無い」と思う人が増加すればするほど志望する人は減少する”だけのことではないかと。その観点だと、学校の教職員と12年程度は関わった生徒や学生が「あんな職場では働きたくない」と判断した結果として教職員志望者の減少に歯止めがかからないということになるかなと　・・・・　なんちゃことない、現役の教職員の指導の結果として”あんな先生になってみたい”という子供より、”あんな連中と一緒に働きたくない”という子の方が多くなっただけのことじゃね？と、私は、思うわけです。”我々は教師ではなくサラリーマンである”と主張する諸先輩に囲まれながら、浮世離れした教育を閉鎖空間で延々と続ける職場に、魅力を感じる子が減少してるだけじゃね？ということ。実際の職場環境は”そこで働いてみないとホントのところは分からない”としたものですから、本当に問題になるのは”就職してから5年以内にどのくらいの人材が離職しているか”という”新規就労から5年程度の期間の離職率”と”離職を決断した主因”に求めるべきだと、私は、思いますし、少なくとも「過酷な労働環境で低賃金だから云々」といった明快なエビデンスを示さずに結論ありきで「だから教職員の成り手が減少している（＝現役で就労している教職員の給与を上げて教職員としての稼働時間を減少させろ）」と言われてもねえ？それって労働組合運動のスローガンのような気がしないでもないなあと。さて、半世紀ほどの間に超・激減した全国の農家（人口）ですが、それでも後継者がいたり年収が一千万円を越えている農家が実在している現実もあるだけに、”結局、従来と同じことを繰り返しているだけの農家は衰退して、社会の変化に対応できた農家が残った”と大枠でまとめることができるかなと。ちなみに、私の実家は愛媛の柑橘（いわゆる蜜柑）農家だったのですが、1970年代に始まったグレープフルーツ輸入自由化と他の新規産地の勃興などで斜陽産業化してしまい、1980年代の牛肉オレンジ輸入自由化騒動のあたりで人口の減少が本格化したというか”不可逆的な人口減少状態”に入り、2040年頃にはおそらく限界集落化の加速ないし集落崩壊に至るだろうなあと（あくまで個人的な推計値予測によればですが）。オレンジ輸入自由化などに際して、”オレンジや牛肉を犠牲にしたとしても、米の輸入自由化は阻止した（のだから文句はないだろう）”と政府もマスゴミも主張してきたのですが、あいにくと実家の周辺には”そもそも田圃が無いので米を栽培しておらず。蜜柑を売ったお金で米を買っていた”ので、”米こそ輸入自由化して安価にしろ！”と、家として廃業を決断した当時はもちろんのこと今でも思っています。＊温州ミカンの栽培農家数そのものが1980年代と比較しても、１／８程度に減少しているといった数値もあるのですが、新規就農者の減少もあって各地で高齢化も止まらず、小学校の統廃合が進んだことでも不可逆的な人口減少地域と化していった地域の増加もまた現在進行形。話を戻すと、”本業か過酷で低賃金だから新規就職者が減っている！だから副業の範囲を拡大した上で公認しろ！俺たちは賢いんだから第三者によって客観的に教職員としての能力が維持できているかどうかをチェックする（教員免許の更新）制度は不要というよりけしからん！”と主張していると解釈されてもしかたがない主張を繰り広げている教育関係者がいる一方で、日本の教育の”学力養成”の部分を支えてきた「学習塾」の対応は？といった視点で見ていくと、”やっぱ公教育の学校の教職員たちって浮世離れしていて、既得権益の保全と拡大には熱心で閉鎖空間で、自己陶酔してるよなあ～”と。というか、大前提として日本人は既に毎年数百万人単位の人口減少に直面していて、その減少分を海外からの移民や（国籍の変更を伴わない）就労者の増加で補うようになっている現実がある上に、日本人の出生率や乳幼児死亡率などなどでも日本人2人から2人以上の子供が産まれなくなって久しいことは比較的知られた話になります。前述したように、人口の減少に伴い地方崩壊は小中学校といった義務教育の教育機関の統廃合にも直結していて、いわゆる”平成の大合併”と呼ばれた地方の市町村などの広域再編時に消滅した市町村や行政範囲が激変した地域が珍しく無かったのは比較的知られた話と書いていいかなと。いずれにしても、日本人の人口が中長期でも（私の予想だと総人口が6千万人程度の日論戦争当時の人口規模になるあたりまで）減少が続くのは不可避の状況であり、新生児出生率の観点からも、日本人の生徒や学生の人数は減少が続くこともまた不可避の状況という認識が必要不可欠ではないかと。その意味で、既に公教育の教職員の総数というのは”過剰”になっている上に児童総数の減少に比例して教職員の総数も減少させていかなければならない時間帯になっている　・・・　その意味で、そもそも教職員の新規採用を計画的に削減することが必須の政策と言えるのではないかと。しかしながら、学校の先生たちは”仕事が過酷でやることが多すぎる。プライベートの時間を増やして副業もしたいから部活動の顧問なんかの余計事には関わりたくない！”とのたまい、”公教育のIT化というかIT化を前提とした広域ネットワークの構築と情報の共有化は、人事評価と定員の削減に直結するため可能な限り反対！（と主張して、事務処理などを手作業で延々と行いたがる　・・・　ようにしか見えない）”という、まあ、いやはやなんともな対応というか現状維持のためのサボタージュ行為を1995年からカウントしても四半世紀以上続けているな～と。当然、児童数が（というか学校の数も）減少しているのだから教職員の数も計画的に減らすべきじゃん？と指摘した人達も少なからず存在しているのですが、それに対して既存の教職員側の主張は”きめ細かい教育のために40人学級制にすべき”とか”学習やいじめ問題などへのきめ細かい対応のために副担任制度やOB教職員の活用。常設カウンセラーの増員云々”といった、私に言わせれば”それって焼け太りじゃね？”には熱心ですな。もっとも、”きめ細かい教育”を主張して、40人（以下の）学級制に邁進したり副担任制度などを導入した結果として、いじめ問題はかえって深刻な事例が増加し、学校ぐるみでのイジメ問題の隠ぺいが（露見することを含めて）増加し、小中学生の不登校や登校拒否児童などがかえって増加していることは比較的知られた話かなと　・・・　民間企業だと、自信満々で導入した新規事業が延々と赤字を拡大している上にそれに対する有効な対策が無ければ、少なくともその新規事業導入を提案し主導した人（達）の責任問題にはなるんじゃないかと思いますが。その一方で、大手の学習塾などでは平成の後半から人口減少を念頭に組織改編と事業内容の変更というかテコ入れを実施するようになり、分かりやすいところだと”スタディアプリ”の類の導入と利活用の増大、生身の”塾の先生”の減員に既に舵を切って久しいことは御存知の通り。もちろん、かっての貴族教育オンリーの時代のように、限られた富裕層や特権階級の子弟を顧客とする”個人的な家庭教師（プロフェッショナル・プライベート・ティーチャー）”といったジャンルもネットの利活用といったアップデートを加えながらも残り続けるというか、このまま公教育の機能不全が続くようなら成長産業になりかねませんし、AI（人工知能）の進化や量子コンピュータへの本格的な移行、超高速通信網の低価格化などなどが進めば進むほど、”能力不足の生身の学校の先生より、電脳空間のAI先生に教わった方が・・・”という声が（2040年頃には）大きくなっているだろうなあ。なお、私は現職の先生にも教員免許を取得しているだけの人にも、第三者の監視を伴う教員免許の更新制度が必要不可欠と考えていますし、そこに、”一年間、実際に教わった生徒たちの評価”も加味して免許の更新の可否を決めるべきだと思います。また、少なくとも現役の教職員の教員免許の更新に関しては”業務遂行のために不可欠なチェック”なわけですから、必須の業務として更新のための（交通宿泊費などを含む）費用を公費として支給するか、ネットで免許更新試験のペーパーテストに該当する部分は受験できるようにすべきだと思います。その意味で笑ったのが、教員免許の更新制度に関するカキコをしている現役の教職員と推定される連中のほぼ10割が、”どこかに生身で集まって一定の期間（というか時間割で）で更新試験を受ける制度”そのものに疑問さえ持っていないこと　・・・　VR技術も活用すれば生身で対面方式の集団研修を受ける必要が既に無くなって来てるんじゃないかと。というか、コロナ騒動で、世界的な規模でインターネット利用を前提とした（ある意味でスタディアプリ方式の）電脳利用授業が試行されるようになり、特定の学校という場所に集まって一人の（生身で能力にバラつきの有る）先生に一度だけ授業を受けるという従来型の”黒板にチョーク方式”の学校教育が、大きな転換点に直面しているという現状認識が出来ていない「学校の先生」に、十年程度後のことでしかないの2030年代に社会人になる子供たちの教育を任せていいのか？＊まあ、こう書くと、”今は、黒板にチョークで授業なんかしてなくて、電子黒板やタブレットを使った授業が云々になっている。これだから現場を知らない素人は云々・・・。”と言い出す間抜けが必ず、現場の教職員からでさえ、出て来るとしたものですが、電子黒板にタブレット云々といっても結局、従来と同じスタンドアローン型の授業ですし、授業内容の蓄積も広域情報共有もやってないというかそういった既得権が激変する制度の構築整備や移行が四半世紀以上も進んでないことに危機感を感じて対応を求めている現役の先生が皆無に近いことが深刻な問題ってことなんですけどねえ？書くだけ無駄かもとは思いますが。教員免許更新制度のカキコで笑ったことの一つに、現役の教職員でない（＝定期的な研修等を受けてアップデートしていない）、昔々に教員免許を取得しただけで教員として教壇に立ったことも無いようなぺーーパードライバーならぬペーパーティチャーまで”教員免許更新制度が廃止されるなら、私の教員免許も死ぬまでノーチェックで永年有効（資格）にしろ”と言い出していること　・・・　ある意味で教職員より直接”国民の生命財産の保全保護”に関わる自衛隊の自衛官でさえ、退役後に予備役自衛官に登録すると年に一定の期間の（再）訓練参加した人材が非常時などに現役復帰できる制度になっているだけに、そのノー天気さと認識の甘さがなんとも。故に、産休時などの代用教員制度を廃止して、教職員として恒常的に就労することがないまま、教員免許を維持したい場合は、予備役教職員として登録し、年に一週間程度の研修受講に毎年参加するか現役教職員が産休・病休など合理的かつ犯罪行為に関連しない理由で中長期に休職する場合に教職員として一定期間就労することに制度改変すれば、免許だけは維持したいけど（短期間であっても）学校の先生になる気は爪の先ほども無いような人材を排除できるんじゃなかろうか？というか、小中学校（そこに高校を含めてもいいとは思いますが）の学校の先生の大半は、（地元の）国立大学の教職員養成学科や教職員免許取得が可能な学部や学科の卒業生ですから、その養成段階というか教員免許を取得するまでに多額の税金が投入され、奨学金などの借り入れや返済免除の規定などでも教職員に就労した卒業生と他の産業に就労した卒業生とでは明快な優遇制度の差があるあたりでも、”そもそも、教職員免許を取得しながら、卒業後に教職員として就労しないのなら（授業料が免除されていた場合は）授業料相当額の支払いや一定期間経過後の教員免許の（自動）失効を制度化すべきでしょう。教員免許の更新制度に関して、やはり一定期間で更新試験に合格しないと失効する自動車運転免許制度と比較してあれこれ主張する人（というか現役の教職員と推定される人達）も目についたのですが、教員免許は取得するための教育段階（自動車免許でいえば自動車学校で受講している段階）で既に多額の国費という名の税金が投入され、教育実習などで生徒や学生にも負担や不利益を強要しているだけに、自腹で全額負担が主流の自動車学校とを同じ土俵で論じたがるあたりで、”これだから学校の先生たちは浮世離れしている”と私なんぞに書かれてしまうわけです。また、日本国民の場合、小中学校は義務教育とされ食事費用を除く教育費は基本的に無償か公的な補助が支給され、国民皆兵ならぬ国民皆学生（あるいは生徒）を9年間は経験している　・・・　”ゆたぽん”のような自ら国民としての義務を放棄する人も少数ながら実在しますが”義務を放棄するなら”権利”も放棄するということでいいんでしょうなあ？　・・・　だけに、”なんで此の程度の能力しかない人や人格や言動に明らかに問題がある人が辞めさせられず、民法どころか刑法の犯罪者に該当するような人でさえ「学校内のことだから」で処罰も収監もされない”といった事例に遭遇することが珍しくない現状を改善する手段の一つとして教員免許更新制度は有効というか、そのために活用する制度だとも思います。大学だと、特定の”受講したいと思う先生の授業”を学生の側が選択できる余地が広がり、”人気のある先生の講座と人気の無い先生の講座”が分かれてしまうことが珍しくなくなるのですが、なぜか小中（高）の学校の先生たちは”上から目線”というか、”客観的な（進学実績といった）指標で評価されて、その評価が給与や昇進などに反映される制度”への改変を拒み続けてるよな～と。この四半世紀の間に、コンピュータ関連の専門学校は増加し、そこからの卒業生や教職員は増加しているのですが、昔ながらの高等師範学校用の教員養成教育が主流というか（私学も国立も）大学の教員養成課程は十年一日というか何がやりたいのかよくわからんなあ？まあ、20世紀の終わりころというか21世紀初頭の”学校教育の専門家”や”現役の教職員”の大半というか”ほぼ全員”が”コンピュータ関連技術や関連知識の素人集団”でしたし、その後も他の先進国どころかアセアン諸国や中国、印度などと比較しても”教育におけるコンピュータ（やインターネット）の利活用及びそれに携わる専門教職員の養成”に消極的というか、そもそも”自分が知らないことを後輩たちが知っていると不利になる”と言わんばかりの対応を続けている内に、コンピュータ関連教育の後進国というか2周目、3周目の周回遅れになったなあと　・・・　もちろん、個人的な私見にすぎませんが。ここのところ、おっかないなあと思うことが多くなっているのが”ゆとり教育世代”が教える側の中堅どころにぼちぼちなっていることで、彼らの理想とする教え子たちが（昭和の悪ガキ世代からすれば）よく言えば”自発性に乏しく、おとなしい”、整体師としての視点だと”動物としてのエネルギーに欠ける個体がやたらと多い”かなと。商売柄、乳幼児というか小学校に入学する前くらいまでの小さい頃から、社会人になるあたりまで関わることがままあるのですが、平成の頃までだと”なんか、あれほど活発で素直だった子が、小学校にあがると途端に不機嫌で消極的になっていくなあ～”という気がするくらいだったのが、平成の終わりころから”なんで保育園児や幼稚園児という、本来、野蛮と言うか野生動物に近いのが当たり前の連中が消極的というよりエネルギー不足みたいになって増えてるんだ？”と感じることが多くなり、”これってかっての食肉用の養鶏場で、明るいと暴れるからと場内を暗くして、鶏に専用のピンクのコンタクトレンズをさせて、多頭飼育してたのとどこか同じ匂いがするなあ～”と。今思い出しても、薄暗い場内で専用のピンクのコンタクトレンズを着用した鶏たちが鳴くことも騒ぐことも無いままで林立していた光景には違和感というか”商業主義というか効率を優先させた先にあるもの”という気がすると同時に、保育園や幼稚園まで教育関係者の合理的な管理の先駆的な光景があそこにはあったのかもなあという気がしますな。それはそれとして、公教育はもう当てにできないと考える人が富裕層や一部の（私学系や学習塾などの）教育関係者などから出るようになって久しいというか、”ゆとり教育”より”受験戦争教育”の方がましじゃね？という人たちが”大学教育は海外の有名校への進学を前提にした高校教育から”という流れを生むようになってからでも久しく、その流れは中高一貫校などでも加速しているなあという気がしていますが、結局のところ”文部科学省を解体して教職員などの既得権益を破壊しないとどうしょうもないところまで来ている”んじゃないかなと。その昔、”勉強は学習塾で。道徳教育や社会常識は家庭で。”と学校の先生たちが言い出して唖然としたことがあったのですが、”じゃ小中（高）学校って何を教えるとこなの？卒業証書を配布するのが主な仕事ってこと？”と思ったのを覚えているのですが、平成の中頃から”勉強は学習塾で。道徳教育や社会常識は家庭で。”に加えて”専門性の高い、野球やサッカー（そこにテニスやゴルフなどを加えてもいいと思いますが）は、学外のクラブチームなどで専門家に。”という時代になったなあと。ある意味で、学校の体育会系の部活動で将来的に（プロやセミプロ、インストラクターなどとして）飯の喰える人材になりたければ、従来の公教育の学校の部活動に関わるのは時間の無駄という時代に既になってるのに、なんか学校の先生達って体育会系の学校の部活動すでに時代遅れになってるのにしがみついているような気がしないでもない。柔道や剣道の類だと、（三段以上の）地元の有段者、警察や自衛隊などなどと連携した方が、”授業の為になんとか初段（黒帯）を取得した”程度の学校の（体育の）先生に教わるより安全かつまともだと思いますし、将来的に、警察、消防、自衛隊などへの就職を考える場合も護身や自衛目的でも現実的じゃね？なんで学校の先生たちって実質的に素人同然なのに抱え込んで既得権益化を試みておきながら”大変だ大変だ！過労死しそうだ”と、この世の中で自分たち程大変な思いをしている職業人はいないかのように主張するのかなあと。以前から、世界を舞台に活躍する音楽家でも公教育の学校の音楽の先生に師事してプロになるピアニストやバイオリニストの類は稀でしたが、プリプリ（プリンセス・プリンセス）あたりがバンドで活躍したあたりから高校生世代でも学校の音楽の授業の必要性は揺らいでいたというか、高校くらいからプロ化した宇多田ヒカルやADOのような人材が世に出たり、芸能界のアイドルグループの活躍の場が電脳空間にまで広がったことでもまた、プロやセミプロで飯を食う気でいるなら特に、学校の音楽の授業って時間の無駄じゃね？どの分野でも、プロやセミプロとして飯を食ったり関連産業に就職する気でいるなら、ユーチューブの各種動画講座よりも教えられるレベルが低いままで安住している”教員免許を持っているだけ”の人材に自分の将来を託すことがかなり危険な時代になっていると、若い衆は考えた方がいいんじゃなかろうか？・・・・・・と言いながら、もちろんというか、”死にかけている時代遅れの爺の戯言なんぞは信用しない。学校の先生の言うことや教えてくれることこそが真実にして唯一無二の指標だ！”という若い衆はそれはそれでいい人生かもねと思いますし、そもそも関わる気もありませんが（大笑）。では、また～。

2021.08.24

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帰ってきた怪しい話　第0008話　「過労死すんじゃなかったの？」

帰ってきた怪しい話　第0009話　「過労死すんじゃなかったの？」　都立高校で正規雇用されている教員（地方公務員ですな）が自らの育児経験を漫画化した作品をネットで公開していて、出版社から書籍化（いわゆる紙の本）の打診を受けたことから都の教育委員会へ副業として許可してちょと学校（校長）経由で申請して却下されたことで”不許可とした判断基準を明確にしろ”と裁判沙汰にしたそうな　・・・　あれ？高校の先生に限らず学校の先生って本業が”過労死するレベルで忙しい”とか言ってなかったっけ？　副業で漫画を書籍化して印税が生じる場合は、通常業務＋執筆活動ということで更なる浪々時間が加算されるだけに、”教職員の本業とは無関係な自分の私的経験を漫画化して印税を手にするという自分がやりたいことをやる分には過労死するから嫌だとは言わないのか？　ちなみに、漫画を書籍化した場合の初回の印税というのは実際に売れた冊数ではなく出版社側がこれくらいは売れるんじゃね？と見込みを立てて算出した（見込みで初版1万部とか）冊数に相当する印税＋じ実際に販売してみて予想以上に売れた場合の歩合に相当する印税という風な契約になると考えておくと分かりやすい　・・・　つまり、ほとんど売れなくても初版で印刷された冊数分の印税は最低保証として支払われ、実際に売れたのが10冊で1冊の売価が千円だから印税は3００円とかいった計算にはならない契約の方が多いということ。　国家公務員の場合でも、”自分の本業の職務や仕事に関連する専門知識を前提とした書籍の出版などで印税を手にする”人というか、実際にはそういった職場のポストは少ないながらも存在しているのですが、基本的に本業と関連し無かったり関連性の薄い分野の書籍を出版して印税を手にすることはほぼ不可能です　・・・　通常業務をこなしているだけでも、本業と関連しない書籍の出版をやっている暇はありません（笑）。　前述した都立高校の先生の言い分としては、”2017年に取得した育児休暇中に執筆を始めた漫画を基に、復職した後も子供が寝静まった後に１～２時間かけて趣味として執筆をつづけている”作品だそうな　・・・　趣味の作品なら個人ブログなどで無償公開するだけで終わっていればいいんじゃね？と思ったのは私だけか？もっとも、明日の仕事（授業など）の準備もした上で、子供が寝た後にコンスタントに１～2時間趣味に費やせる時間があるのに過労死する謎の職場ってか？？（大笑）　その時間を使って”自分の授業の動画ファイル化”とか”生徒の成績管理の電子化”とか、2022年から都立高校も新入生に自腹でタブレットを購入させる方向で話が進んでいる御時世だけに、”趣味の漫画を描いて副業の銭儲けに邁進する暇があるなら、本業絡みでやっておかなきゃならない個人の（コンピュータ絡みの）技術や知識の習得を優先すべきなんじゃね？　ちなみに、都の教育委員会が2019年度に許可した兼業は約1900件で、内容は教科書の執筆、講師といった本業絡みの兼業に認可されることが多いというか、”本業絡みだし、仕事からみで断りにくい作業などで印税収入が発生するけど許可してちょ”というのが、従来から許可がおりている（或いは許可がおりやすい）公務員の印税収入が生じるような兼業で、反復して（業として）継続して本業とは無縁の印税が生じる執筆活動を行うようだと”あなたの本業は片手間で済むくらい暇なの？”と言われやすい職場や職域の方が多い　・・・　多かった（笑）。　ちなみに、公務員の給与は従業員が1万人（以上の）規模の比較的規模の大きな企業で支払われた給料や諸手当などを参考にして算定され支給される（ことになっていて）上に、学校の先生の場合は他の公務員よりも（夏休みや冬休みといった）事実上の長期休暇が公認されていて、以前にも書いたように理論上の年間稼働率は約５４％でしかない　・・・　そもそも本業が週休3日～週休4日ということ。　もちろん、約５４％の稼働率というのはあくまで理論値の話で、担当する授業科目によっては言いたいことのある先生がおいでなことは承知していますが、”学校の先生たちって夜の8時頃までには帰宅（ないし学校から退出）していてそれ以上の残業をしている先生って少数派じゃね？”と。　公務員の印税が発生するような兼業で公認されているものの大半が”過去の実績から印税の上限が（本業の年収よりも低額といった）ある程度事前に推測できる”もので、作家と呼べるレベルで本業よりも兼業の方が年収が多くなるようだと”ぼちぼち退官されたらいかが？”となりかねない（笑）。　というか、霞ヶ関でも”目指せ夢の印税生活”とばかりに懸賞小説の類に投稿する人はそれほど珍しい話ではないものの、プロ作家になって退官できた人は皆無に近い　・・・　ある意味で堺屋太一さんが作家転身の成功事例になるくらいか？　もっとも、プロ作家に慣れるレベルの公務員の場合、大学の教授に転身したり、作家に転職して退官された後もかっての本業の分野の絡みで行政に関与されることが珍しくないものの、ごく一部に作詞作曲で成功する人材も出ていることは比較的知られた話かもねと。　ある意味で、不思議だったのが児童文学（？）の分野でシリーズ化された作品群を長期間執筆しつづけた”はやみねかおる”などの長らく作家と学校の先生の二足の草鞋を履き続けていた存在で、よくあれほど副業で稼いでいたのに教育委員会は兼業を公認し続けたよなと。　現役の先生の時代に、趣味が高じて１～5冊程度の小説や漫画を書籍化してそれなりの印税を手にする程度の話に目くじらを立てる方がおかしいという人もおいでかもしれませんが、”でも、最近の学校の先生たちって本業をこなすだけでも過労死するとか業務が過酷で精神を病むレベルなのでなんとかしろ！”とか公の場で主張してるじゃん？それほど過酷な職場で副業で印税を手にできるレベルの漫画や小説の類を執筆してる暇はあるの？と、私は、思ったわけです。　体育会系の顧問を引き受けて”過労死する”とか”残業代も出ない”と主張する学校の先生のいる一方で、趣味の小説や漫画を執筆して一山当てて（笑）副業の印税収入だけで億を越える単位になったので定年を待たずに中途で退官して悠々自適の生活に　・・・　という場合でも、公的年金は勤務した期間分は加算され、定年を迎えて満期で退職する場合ほどではないものの10年も務めていれば数百万円単位の退職金が支給され、退職した後にハローワークに行って手続きをすれば失業保険の給付も民間に準拠した金額で支給されるという。＊（特に若い現役の公務員の方、”民間と違って公務員は失業保険に加入していなから退職しても失業保険の給付対象にはならない云々と言われた経験があるかもしれませんが、それは、都市伝説というかほとんどの場合「嘘」とか「ペテン」と言われても不思議でない話で、実際に公務員の失業給付を受給するための手続きの詳細は法律にも明記されています）。　それはそれとして、自分の子育て記録を漫画化したものを大手出版社から書籍化して（数百万円の単位で印税を手にする行為を”公務員の副業として公認し（＝売れ行き好調の場合、続編の刊行や重版、アニメ化などメディアミックス展開に至った場合の収入も公認しろ、もちろん、教職員としての身分や本業収入、昇進、転勤、退職金や年金などに不利益が生じないように）しろ！”と過労死しかかっていると主張する地方公務員であるところの都立高校の学校の先生が少なからず実在するらしい職場というか職域に在籍している現役の都立高校の某・先生は主張しているわけです。　ここまで書くと、なぜ都の教育委員会が安易に副業を公認しなかったのか理解された人が増えたと思いますが、余程のヒット作に恵まれない限り、サラリーマンと作家の兼業の道を選択されている作家さんというのは珍しい話ではありませんし、そんな兼業サラリーマンが退職してプロ作家に転身する目安がサラリーマンとして定年まで勤めた場合の生涯年収を税引き後の印税収入が越えかほぼ同額になったあたりという説もあります。　昭和の終わりころから、漫画やラノベのヒット作がメディアミックス展開する事例は珍しくなくなり、例えば「なろう系小説→漫画→深夜アニメ→劇場版アニメ→実写版映画→ゲーム化」といった展開になると最終的に印税の類が億単位（になるといいなあ～）ということもありうる時代に私たちは生きているわけです。　が、繰り返しになりますが、2022年度くらいから都立高校でも新入生に強制的に指定したタブレット端末セットの購入を実施する方向で話が進んでいる、ある意味で高校の授業内容が従来とは大きく変わっていく転換点に2021年はなっているだけに、自分の趣味の漫画を書籍化して印税を手にするという副業を公認させるために奮闘する暇があるなら、本業の方の”インターネットの利活用を前提とした教育の（或いは授業内容の）コンピュータ化や電子化授業の教材や資料作成”に時間を割くことの方が優先順位は高いんじゃないの？　学校の先生の場合、生徒の成績の電子化やデータベース化、それを前提としたデータのクラウド（というかネットワーク上の専用サーバ管理の類）を用いた広域共用などなど学校の先生の大半が学生時代に学校の授業で教わらなかったり学校のテストの対象でなかった　・・・　それでいて、民間のサラリーマンや自営業者だと年々”対応できて当たり前”の技術や知識のレベルが上昇を続けている　・・・　コンピュータ関連の技術や知識が未熟なまま「あっはっは、私より生徒たちの方が達者につかいこなしているんですよ」で四半世紀に渡って先送りを続けてる人材の方が多数派のままじゃね？と疑われていることを自覚して知的エリートのカテゴリーに含まれなくなって久しいことにもっと危機感を持つべきでしょうなあ。　まあ、自分の子育て漫画の書籍化を副業として公認しろと裁判沙汰にまでする都立高校の現役の先生が実在する辺りで、本業の方は”勤務時間内だけ対応すればいい”話で”勤務時間外は本業関連の技術や知識の習得などに自腹や時間を割くべきではない”と、某省庁でも四半世紀前には大手の組合活動に熱心な人ほど大声で主張していましたけど（遠い目）、さすがにこの御時世ともなると日常業務レベルのコンピュータ（ネットワーク）処理に対応できない知識や技術レベルの職員に任せられる仕事がどんどん皆無に近くなっていると書いていい状況になってきたようです。　皮肉なことに、学校を卒業して就職した後、一番本業関係の勉強をおろそかにしているのが”学校の先生”というのが現実なのかもねえ？まあ、それ故に生徒の側から”あの先生って俺っちより情弱じゃん？あんな先生よりネット経由で〇〇先生の授業動画で勉強した方が効率よく勉強できるし、ネット経由で〇〇塾の広域（全国）テストやドリルでチェックして弱点を解消した方が・・・”と言われる時代に既にい恋しつつあるという自覚があれば　・・・　ま、そんな自覚があって自腹を切ってでも対応を進めている学校の先生が多数派なら、日本の公教育が亜細亜圏でもこれほど低ランクに転落することもなかったでしょうけどね（溜息）。　わかりやすいところだと、以前は”日本の教育水準は高いから日本の大学に進学するのなら中学くらいまでに子供だけでも帰国させて日本の学校の授業を受けさせて・・・・”といった選択をする海外赴任や海外転勤をしていたサラリーマンが珍しく無かったのですが、2015年頃から”中国の小学校の算数の教科書と日本の算数の教科書を比べてみると、日本に子供を返すのは高校からでも十分間に合うというか、中学だと日本の方がレベルが低くなってる云々”といった話を聞くようになり、次第にシンガポールなどアセアン諸国の教科書の内容も日本の同学年（或いは同世代）の教科書よりレベルが高くなってきているなあと　・・・　このコロナ騒動でインターネット経由の動画利用授業を中国、アセアン諸国、印度などなどで「日本を教育水準で突き放して人材の競争力を更に高めるチャンス」と判断し実行に移す指導者が出て来るとすれば（そして、おそらく少なくない国がそちらに舵を切ると思いますが）、私が今の段階で何を案じているか10年くらい後には誰でもわかるようになるんじゃないかと。　まあ、都立高校の先生の側の見解というか主張を読んでいて思ったのが”自分の先生としての本業である授業とは直接の関係が無い、個人（夫婦）による二人の子育て記録を漫画化し書籍化することで個人の育児経験が男性の育児参加を促すことに役立つ云々（だから印税収入を伴う副業を公認しろ）”といった主旨だと、私は、認識したこともあって、”この時代の転換点に本業がお留守になってるあなたは何のプロフェッショナルを目指しているんだ？”とか”大ヒットして億単位の印税収入を手にした後も学校の先生を続けるのか？”とか、素朴な疑問を感じました　・・・　ま、赤の他人事なんで単に”まあ、プロでない学校の先生の（今の時点では）小遣い稼ぎがしたいと言う主張にあれこれまともに考えるのは野暮だよなあ”と。　ホント、なんでこの都立高校の先生は無料で個人の漫画をネットで公開するより、書籍化して印税を公認で手にできる体制にしないと”男性が子育てに参加することを促進する”ことにならないと考えたのか？ネット上にいろいろなジャンルの漫画が無料で公開されている御時世だけに、やっぱ”どう考えても学校の先生の副業としては不適切な事例”じゃね？　もっとも、ネット上で有料で公開されている漫画の方が紙媒体で世に出る漫画よりも多くなって久しく、最近だとスマートフォンで読むことを前提にした（描き方の）電子化漫画も順調に数を増やしていますが、税金で生活を保障されている学校の先生が本業に支障のない範囲で趣味で描いたというのなら無料で公開するのが筋ではないかと　・・・・・・　でなければ、学校の職員室を覗いてみたらほどんどの先生が小説を書いたり漫画を描いたり、作詞作曲に勤しんだり、作陶したりシルバーのアクセサリーを製作していても”休息時間だから”、”勤務に著しい支障が生じていないから”、”副業で稼ぐことを促進するための事例を増やすため”とか真顔で主張しても、”そうですね、それが正論ですね”ということになるんじゃないかなと。　ま、それ故に「学校の先生を常勤職員として正規雇用し老後の生活まで税金で手厚く保障する時代は終ったし、コンピュータ時代に対応できない（そもそも積極的に対応する気が無い）従来型の教職員は必要は無い」と以前から書いているわけです。　少数の超プロフェッショナルな先生とペッパー君やネット端末を利用する方が効率よく学習が進む時代になっていて、コロナ騒動で先進国だけでなく亜細亜諸国もそちらに舵を切り始め、夜郎自大化だけは止まらない日本の公教育と学校の先生たちだけが自分たちがまたまた周回遅れになっていること危機感を持つどころかそもそも気が付いてもいないあたりが、なんともなあ（大笑）。　ここの所、子供を日本の学校に進学させるべきか？インターナショナルスクールに進学させるか、いっそ海外の親族などに頼って国外の学校に進学させるべきか？どう思われます？といった意見を求められることが地味に増えてきているのですが、「この子が社会に出るであろう１０～15年後の世界を考えると、日本の教育を盲信することは悪手だし、親や祖父母の世代の（世界における）日本の教育水準の高さが現在でも既に維持されていないどころか下から数えた方が次第に早くなて来ていると思うので、海外で小中学校の段階から現地の学校に進学できる選択肢があるのなら真面目に検討した方がいい時代になってきたのではなかろうか。」といった話を今のところする頻度が増えています。　まあ、日本の学校の先生に”あんたたちは携帯電話よりもガラパゴス化しているけど自覚してる？”と言うだけ野暮で時間の無駄というか不毛な行為というのは意外と確かな話ではないかと思う今日この頃。　では、また～。

2021.05.31

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帰ってきた怪しい話　第0006話　「ゆたぽん学」

帰ってきた怪しい話　第0006話　「ゆたぽん学」　小学校への不登校を３年生の頃から売りにしていた某・小学生（職業：ユーチューバー）が２０２１年３月をもって目出度く小学校を卒業し、卒業後の個人的なイベントとして卒業証書を自ら破いた（もちろん、それをネタにネットで一稼ぎしたそうな）上で、中学校も引き続き不登校を続ける宣言をネット上でも表明したそうな（賢いのか馬鹿なのか？）。　ちなみに、革命家を自称する彼の個人名を揚げる気は無いので通称というか俗称というか自称というかこれまた微妙な”ゆたぽん”と表記していきますが、知り合いでも何でもありませんので”彼が今後どうなろうとしったこっちゃない”というのが、私の、立ち位置になることをここで明記しておきます。　”ゆたぽん”の言動に関しては、”ごもっとも”と思うところもありますし、それに対して激論を繰り広げている暇な人達の持論にも”ごもっとも”と思うところがあります。　しかしながら、怪しい話で何度となく取り上げて来たネタにも”別に学校に行かなくても、ネット経由で学習動画などを利用して効率よく勉強した方がいい時代になっている”という分野の話があるのですが、”黒板にチョークで板書していた時代の呪縛”に日本人はここまでとらわれているのか？”の方が、自ら学ぶ権利の一つを放棄している赤の他人の言動をあれこれ斟酌するより優先して考えてみる必要があると、私は、思います。　義務教育制度の裏側にはとんでもない利権構造が存在していて、その利権構造を死守することが何よりも優先されている　・・・　それこそ”子供たちを一人前の社会人に成長させていく”という（私に言わせれば）学校教育の最優先事項よりも”教育関係者にとって何かとおいしい既得権や利権構造を維持する”ことの方が優先され続けているんじゃね？ということ。　一番わかりやすいのが、スポーツや芸術の分野などで「将来、プロとして飯を食っていく（つもりでいる）子供」は「学校の体育の授業も部活動もあてにしなくなって久しい」という現実があり、世界規模で稼げる、ゴルフ、テニス、・・・、サッカー、野球といった辺りを思い浮かべてもらえればわかりやすいかなと。　野球やサッカーなんかは学校の部活動を経由してプロになってる人が多いんじゃね？という人もおいででしょうが、野球やサッカーで将来的にプロになるような子たちは「学校の外のクラブチームの類にも小学生の頃から所属している」割合が年々高くなって来ている現実がある　・・・　学校の体育の授業や部活動で指導する”学校の先生”達の技術や知識は総じて低く、考え方にしても大東亜戦争当時の新兵訓練の残滓が延々と継承され続けていることは比較的知られた話になりますな。　もっとも、学校の先生自身が「部活動の顧問を引き受けても時間外手当がまともにつかない上に過労死するレベルで過酷（なのでやりたくない）」と声を上げる光景が珍しく無くなってきているのも御存知の通り　・・・　教える側の技術や知識などの水準の低さといった辺りを自省する声がほとんど聞こえてこないあたりで「学校の先生って自意識過剰というか自己評価だけ高すぎじゃね？」という気が、私は、してきてるんですが？　別の視点では、日本の学校の先生たちが「部活動の顧問をすることに不平不満をぶちあげる」ようになる直前、某・大陸国家が「なぜ亜細亜の小国である日本が（我が国と比較して）オリンピうれックで好成績を上げることができるのか？」と疑問を持って研究した結果として「日本では学校の部活動を通じて優秀な人材を発掘して効率よく養成している。故に、我が国においても学校教育への部活動制度の導入を検討すべきである云々」といった主旨の結論を公式に公表したというのは実話です。　逆に動制度”を崩壊させればよいということですが、某国の研究結果が公表された時期と日本の学校の先生たちが唐突に部活動の顧問は嫌だ過労死しかねないと全国一斉に騒ぎ始めた時期から邪推すれば”ある意味でとてもわかりやすい”現象だと、私は、考えていますし、少なくともそうした邪推が成立するくらい胡散臭い話だったなあと。　少なくとも公立の学校の先生の多くは地方公務員ですが、暗黙の了解事項として”地元の国立大学の教育学部を卒業して教員免許を取得した者”から優先的に採用され、一定の年数を勤務するだけで奨学金の返済が免除される制度などなど一般的な地方公務員よりも優遇されている雇用体制だったりしたものですが、ま、学生時代から外の世界というか一般的な労働環境を知らないまま定年を迎える人材が珍しくないかなり閉鎖的な職場というのは２１世紀に入ってからも確かな話かなと。　　というか、前職の頃から学校の先生たちが「いかに自分たちは過酷な労働をしているか！」と熱弁をふるっても、霞ヶ関の中央官庁でまともに勤務したことのある国家公務員からは特に「すげ～楽な職場じゃね？？どこが過酷なの？？」という感想しか上がらない　・・・　たぶん、２１世紀になって以降も（暗い笑）。　謎なのが、国家公務員に限らずサービス残業や休日出勤の類が常態化している私企業などで勤務した経験のある人達でも、「学校の先生達って夜の８時過ぎまでどのくらいの割合で残業してるから過労死するとか言っているの？」といった「素朴な疑問」を持つことと、「週休二日で、祝祭日は公休。それに加えて、エアコンが完備された後も夏休み（７月中旬～８月）、冬休み（１２月末～１月初旬）、春休み（３月末～４月初旬）といった”勤務を要さない日というか生徒や学生が学校に登校してこない日”があるじゃん？？しかも、（利用できるかどうかはともかく年に２０日程度の）年休とか病気休暇とかはそれとは別枠でしょ？？　・・・　・・・　と、考えると、”学校の先生たちが授業を実施するという本業に限定すると年に何日というか年に何時間働いてるの？そう考えると４０歳くらいの小学校の（或いは中学校の）平均的な先生の”授業一コマあたりって時間給与に換算したらどのくらいになるの？？と思うようになるわけですな。＊大雑把な単純計算だと、土日祝祭を除くと勤務を要する日が月に２０日程度。春夏冬の長期休暇の累計を２カ月とすれば、１０カ月×２０日＝年に２００日　となる（200／365日だと年間稼働率で約５５％）。＊或いは、４０～５０歳くらいの小中学校の一般的な先生の平均的な年収がどのくらいで、それを２００で割って日給換算をしてみると・・・（以下略）。　まあ、こう書くと「生徒や学生たちの長期休暇中でも研修とか自己研鑽とかなんとかを行っているので、学校で授業をしていないからといって遊んでいるわけではない云々」といった声が上がることがままあるようですが、別に学校の先生に限らず休日に自腹で知見を広げたり自腹で学習して各種の資格を習得したりする行為は民間のサラリーマンでも珍しくありませんし、自営業者に至ってはそもそも公休もなければ飯の種絡みで自腹で研鑽するのは現役でいる限り当たり前のことですがなにか？？　或いは、ごく普通の学校の先生が定年まで勤めて手にする給与総額、退職金の額、公的年金の月額っていくら？といった視点で考えると、”そりゃあ、（計算上は年間約５５％の稼働率ですが）過労死するかもと思うレベルで働くことには一定以上の合理性があるんじゃね？”　・・・　と。　ま、学校の先生の待遇が過労死するレベルでブラックならば、”なんで学校の先生の子供や親戚の子の中から学校の先生になる子があんなにいるの？？”という疑問を持つ人が珍しくないんじゃなかろうか？　・・・　少なくとも「ユーチューバーより学校の先生の方が堅実な職業」だと、私は、思っています。　それはそれとして、先生の側からだと”小学校だと６年、中学校だと３年我慢すれば、いかなる問題児も卒業して関係がなくなる。”というのも日本の義務教育制度の良い点で、よほどのことが無ければ小中学校で留年という経験をする子は極めて稀なことは御存知の通りで、逆に言えば”ゆたぽん”が泣き叫んだとしても３年後には目出度く中学卒業となる可能性が高いわけです。　では、”ゆたぽん”が高校以上の学歴を取得できないのか？と聞かれれば、抜け道の一つとして”海外移住”や”海外留学”という手があるなあと、で、海外の高校を卒業ないし経由して「帰国子女枠」や「一芸入試」、「外国人留学生枠」などなどを使って大学に入学すれば、いけるんじゃないかと　・・・　そのために必要な金はユーチューバー活動などで稼ぐとすれば、妄想でも絵空事でもないよねと。　単純に、日本人の平均的な生涯収入などから考えると、正規のルートで進学して２２歳前後で大学を卒業してそこそこの会社などに正規雇用できた場合で２～３億円程度とすれば、”ゆたぽん”が２２歳までに３億円以上稼げて実質的に20代で早期リタイアできる資産も形成できたとすれば、”ゆたぽん”の方が正論を語っていて、正規ルートで大学を卒業した末に非正規雇用のまま定年を迎えて生涯収入は2億円にも届かない上に、現役時代はしたくもない仕事で過労死寸前までサービス残業をしている内に定年を迎えた人は　・・・。　日本の教育制度と教育関係者は”可能な限り現状維持”が大好きで”日本の国としての国際競争力を削ぐことに熱心”な言動を繰り広げているなあと、私は、思っていますし、”過労死するくらい忙しいのなら、なぜ1990年代からでも積極的にコンピュータを使った事務処理とかインターネットの利用を含む広域情報共有や累積型データベースの構築といったIT化を進めなかったのか？”を常々謎に思っています。　実際、2020年初頭から急速に深刻化していった武漢肺炎のパンデミック現象に伴う社会の変化の中でも、”あれ？従来型の黒板にチョークで板書するタイプの、教室で一斉に受ける授業でなくても学力ってつくじゃん？”というか、”ネット経由で配信される塾や予備校などの授業動画の方が分かりやすいし、テストもタブレット端末で受けた方が採点が早い上に弱点の克服するための補習用動画やドリル問題なども再テスト時の得点上昇に直結してる！”といった経験をする人を増加させているなあと。　正確には、武漢肺炎騒動以前から、”学校の授業より塾や予備校などがネット経由で提供してくれる授業の動画ファイルやドリル問題なんかの方が学校の先生の授業や学校の補習プリントなんかよりよほど分かりやすいし、適切に指導してくれるから短時間で学力も伸ばしやすいということに気が付いた人が増えてはいました　・・・　その意味で、従来型の一つの教室に知能も学力も不揃いな生徒を詰め込んで同じペースで授業を実施するタイプの義務教育って小学校3年生くらいまででいいじゃね？と私は考えています。　興味深いのが、小中学校に”電子黒板”を導入したり生徒に”タブレット型端末”の類を配布することをもって”授業の電子化”だと学校の先生側が主張していることで、いやいやそれは単に学習教材のハード面での電子化であって、肝心の授業は黒板にチョークで板書の時代と大差ないというか、IT系ハードの導入で学習効率などがアップしないのなら無意味というより税金の無駄遣いじゃね？　実際、高額な電子機器の類を公費を使って大量導入しておいて、一つのクラスの生徒の数を（45人学級から40人学級へ、40人学級から35人学級へとか）減らす（＝少子化が進んでも可能な限り先生の数は減らさない）という主張は、日本の義務教育や公教育の制度が世界標準からまたまた周回遅れになるというか実質的に放置されたまんまで可能な限り現状維持で先送りが続くってことじゃね？　担当する生徒の数が少なければ（一人当たりの指導時間を長く取れるだけ）生徒指導が上手くいくので、授業の落ちこぼれ生徒を減らせるし、いじめ問題などを解決しやすくなる云々といった主張も、”それって、小学校の高学年以上になれば必要な授業を24時間視聴できるタブレットを渡して物理的に学校へ登校しなくてもよい体制にするだけで解消される案件だし、そうする方が、生徒の側は授業内容を理解できる機会が増えるし、学校での”いじめ”や”先生からのセクハラ”の類も発生しないんじゃね？　ある意味で、従来も”保健室登校”などと呼ばれた”学校には登校しているけど教室にはほとんど入らず、保健室や校長室などで過ごす”ことで、登校拒否や不登校をなんとか回避して卒業に辿り着く迂回方式を、”それってクラス全員でやっちゃなぜ駄目なの？”という　・・・　学習の到達度などはタブレット端末で全国一斉のテストを行って、大学などの単位認定のように一定の得点に達していれば卒業資格を認める制度にするだけで一挙に解決すると思いますが？　というか、日本の教育制度で長年放置されてきたのが海外の先進国の教育制度では珍しくもない”飛び級”制度で、日本だといくら優秀でも飛び級はほとんど不可能で、海外の有名大学ではちらほらと”10代前半で入学した天才”といった話があるのですが、日本の国立大学から同じ話が発信されることは皆無という現状を異常だと思いませんか？ということ。　既存の制度である高校卒業程度の学力認定試験の類にしても、その試験に合格すれば年齢に関係なく大学受験を認めればいいと長らく思っているのですが、なぜか年齢制限が撤廃されないままずるずると来ていて、結局、正規ルートで高校を卒業した人と同じ年でなければ大学に進学できない　・・・　私が若かった頃（遠い目）から、IQが150～200くらいの子の中に、高校に進学して大検に合格して受験資格を取ったら高校を中退して大学受験が可能になる年齢までぶらぶらするといった選択をする子が実際にいましいた。　そういった子を実際に知っていると、産まれた年が近いからというだけで、6歳から18歳くらいまで同じ学年で同じペースで同じ教室で同じ授業を受けさせられるというのは、一種の拷問というか虐待、難行苦行の類ではないかと思ったことがあるのですが、日本の教育制度に従う限りそういった子たちが”飛び級”や”年齢制限なしの大学受験”といったことで救済されることは無かったわけです。　スポーツの世界だと、日本人でも小学生の頃から世界を目指して練習を続けて国際大会などでも結果を出し、10代半ばくらいから世界チャンピオンや大きな大会の常連メダリストになって、20代前半で世界基準で成功者となるような人生は歩めても、10代半ばで大学生になり20代前半で世界的な学者や研究者として評価され公的なポストを手に入れるような人生は、日本の教育制度の中にいる限り絵空事の類　・・・　・・・　それ故に、優秀な連中ほど高校に進学した時点から日本の大学ではなく海外の有名大学に返済不要の奨学金を貰いながら進学する進路を選択するという意味での”頭脳流出”も珍しく無くなって久しいのですが。　あれこれ考えると、”ゆたぽん”の人生の選択を一概に否定する気は私にはありませんし、これだけ社会の移り変わりが激しくなると、親の世代の常識や正解で模範解答だったものが子供の世代にとっては有害とか役立たずな代物と化していることも珍しくありませんし、誰も自分が何歳の時に死ぬのかを知らないことにも留意が必要ではないかと思います。　ちなみに、私が小学校に入学した頃から実母に”あんたは、字が汚い、算盤ができない、風呂敷が結べない、卵を上手に割れない、そんなことで大きくなってどこに勤めるつもりでいるのか！秘書でも雇えるのか！！”　と何度となく罵られたことがあったのですが、晩年の実母の技能といえば”ワープロの類は使えない、パソコンどころか電卓も操作できない、携帯電話の受発信もできない、料理は（自炊で鍛えた私より）下手なまま　・・・”でしたから、学生時代の成績が優秀だったと言われてもねえ？と、私は、思います（笑）。　一方で、こちらも故人になられて久しいのですが、戦後の混乱期に地方の国立大学を出て日産に勤めて、かなり出世もした母方の叔父に進路相談をしたときのこと、”私の時代だと地方の国立大学の工学部卒でも日産に勤めることができて、高度経済成長なども経験して、ここまで出世もできたけれど、最近の新規採用希望者の履歴書の最終学歴はとんでもないことになっている。うちに限らず大手企業だと一定の学歴が無ければ採用選考以前のスタートラインにも立たせてもらえないというのが現実だし、採用段階だと一定の大学を卒業していても、例えば受験浪人はよくても入学後に留年しているようでは大幅減点・・・”といった話になったことがありましたなあ（遠い目）。　ま、叔父とそんな話をしたのはもちろんバブル経済が到来する以前のことでしたしカルロス・ゴーンのゴの字も耳にしなかった頃のことでしたから、パソコンやインターネットなどのIT関連知識が普通のビジネスマンにとっても必須となる以前の話になるのですが、それ故に、”10年後、20年後の社会がどうなっているのか？”を抜きにして勉強しても”学生時代は優秀だった”だけのネタ話が残るだけかもねと。　正直なところ、”ゆたぽん”の選択の結果がどのように結実するのか私にはわかりませんし、”ゆたぽん”の寿命にしてもいつまであるのか私にはわかりませんが、　白骨の御文書にいわく、「朝に紅顔の少年、夕べには白骨となれり。」ということで、”ゆたぽん”に限らず、”生きている内に人生を楽しめ。死は常に近くにいる。”と私は考えていますというあたりで、今回はお仕舞。

2021.04.20

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帰ってきた怪しい話　第0002話「ひろゆき氏『古文・漢文オワコン』」論の闇

帰ってきた怪しい話　第0002話「ひろゆき氏『古文・漢文オワコン』」論の闇　ざっくりと、「人生において古文・漢文の知識は大学入試以外に必要でないから中学、高校で古文・漢文を教えるのは時間の無駄である」と主張する一群があり、インターネットの黎明期に大型掲示板を立ち上げて（いわゆる）”２ちゃん”まで育て上げ、日本の法律の隙間を付いて、時に海外に逃亡して実刑というか裁判の審理を免れた”ひろゆき”の持論（ひろゆき氏の２００１年2月19日のツイッターへの投稿）もそれに近いようです。＊　ひろゆき氏の投稿から抜粋しておくと「古文・漢文は、センター試験以降、全く使わない人が多数なので、「お金の貯め方」「生活保護、失業保険等の社会保障の取り方」「宗教」「PCスキル」の教育と入れ替えたほうが良い派」とのこと。　しかしながら、ひろゆき氏が古文・漢文を廃止してまで入れ替えるべきと例示した”教育”が前述した「お金の貯め方」～「PCスキル」というあたりで「阿保か？それらは現行の教育制度なら小学～中学校の義務教育で追加して教えるべき”実学”であって、「大学入試」と絡める必要がそもそも無い」と、私はですが、思ったのでした。　というか、センター試験以降云々という指標で考えるとすれば、大学で何を専攻するかにもよりますが、理系を象徴する数学の数一～数三の内容もまた”全く使わない人が多数派”になるんじゃね？少なくとも私の場合はですが、高校を卒業して以降”微分・積分”との遭遇は”古文・漢文”との遭遇よりもレア・ケースですけど（大笑）。　エクセルに代表される”表計算ソフト”の高機能化や廉価化などが、紙と鉛筆を用いた筆算＋暗算を前提としている従来の”数学教育”を無用の長物としたにもかかわらず、教える側の生活を保護するためか「コンピュータの利用を前提とした新しい数学教育への移行”を少なくとも学校の理系の先生や教職員の側から聞くことは稀である　・・・　と、私は、思う。　ちなみに、センター試験レベルを突破するために必要な”古文・漢文”の知識量は、A4の紙１枚に納まる程度なのでそれを中学・高校の６年間に暗記する手間暇が苦になるような知能なら、そもそも大学で何を専攻できるのか？　というか、本当に不思議なのは「なぜ大学入試は、いつまでも手書きで良し」とされているのか？の方が先に解決すべき大問題で、それこそ社会に出て”手書きで（報告書や稟議書などの）文書を作成する頻度はウインドウズ９５が登場し一般社会へのインターネットやパソコンの普及が本格化していった１９９５年末頃と比べても明らかに減少している。　私の世代は「大学の卒業論文は紙とインクを用いた手書きのみ」という時代だったのですが、誤字脱字の類にページの終わりの頃に気が付いたときの絶望感や修正液のありがたさといえば未だに夢に見るくらいというと大袈裟ですが（大笑）。　公文書の電子化云々が１９９５年以降も遅々として進まない一方で、公文書を紙に出力するという意味での公文書の電子機器の事務利用への促進は進んだわけですが、”同じ文字数の場合、手書きの文書作成は、パソコンを用いた場合の３倍以上の時間が必要”なため作業効率に直結しているのですが、公務員のような「定型文書」の事務処理が多い職場の場合は”一度作成した文書の再利用が可能な場合や雛型が存在する場合の事務処理の効率化”がそこに加わりますから、”手書きしかできない人材”と”パソコン処理がそれなりにできる人材”という指標だけでも、事務処理を行う下っ端ほど給与は単位時間当たりの処理能力や処理実績に応じて３倍以上の差を・・・本来は・・・つけるべきだと、私は、思いますが？　もっとも、従来の主流であるノイマン型コンピュータから量子コンピュータへの移行が始まったのと同時期に人工知能の実用化というか”人間越え”も一般に知られるような御時世となり、そこからこれを書いている時点から約20年後の2040年頃の社会を想定する場合、大学でも「高校生は古文・漢文を学ぶより、英語と理系教育を充実させるべき」と主張する関係者がいる、と論ずる人たちの「周回遅れ」感は半端ないというか、その程度の人材しかいない大学って存続させる意義が既に無いんじゃないかと。　文部科学省は解体して、科学の分野は情報システム系の省庁と統合して科学省として独立させ、文部の部分は庁に格下げした上で厚生労働省の下部組織として独立させるか、段階的な民営化か、将来的に廃止するかしないと、この国の”ゆとり教育”の頃から続く時代錯誤な教育（で飯を食っている連中）は時間と巨額の税金を浪費しながら”周回遅れ”を加速させるだけではないかと。　幸か不幸か、2020年から始まった「武漢ウイルス騒動」の余波で、義務教育を含む学校教育が「実は学校に通わなくても問題ない」ことが露呈したわけで、日本政府が企業や社会人の実務の大半が「テレワーク」で代替可能でありそれを促進すべしと主張していることと併せて考えると、学校教育こそ”さっさとテレワークに移行”し、小中学校の”託児所”としての機能は保育園や学童保育の拡充で十分ではなかろうか？　チョークと黒板が前提だったが故に、物理的に”一人の先生が教えることのできる生徒や学生の人数の上限”とか”優秀な教師の授業を受けることのできる生徒や学生の人数の上限”が生じていたわけですが、その辺りは”優秀な先生の分かりやすい授業を動画化”して”スマートフォンやタブレットを用いて生徒や学生は視聴する”体制を整備するだけで解消する上に、そうした”教育関連動画ファイル”やそれを用いて学習した場合に生じる”QアンドA”などのデータベースは時間が経過するほど充実しシェイプアップも進むわけで　・・・　対応できない教職員が失業するデメリット以外は金銭的な負担を含めて一般社会にはメリットしかないじゃんと（笑）。　学校を卒業した人でも、現在の公教育の学校で行われている授業ないし過去の授業動画の類を無料で視聴できるようになれば、”生涯学習”の意味もコストもおのずと変わってくるわけですし、閉鎖空間で”裸の王様”と化して久しい学校の先生というか教育関係者の大半も”広域ネットワークの構築と人工知能が普及することで消えていく職業”に従事している人材であることを自覚できるのではあるまいか？　話を戻すと、21世紀の日本において”古文・漢文”というのは、”日本史”の授業のコマ数を増やしてそこで教えた方が効率が良く、大学入試で”漢字検定試験の結果を云々”という方が授業で古文・漢文を教えなくなるより学生への負担は大きくなる　・・・　学校を卒業した後、漢字を手書きすることはほとんどない時代に既になっているだけに。　というか、私が大学生だった頃（遠い目）、独逸語が必須単位（試験などに合格してないと専門課程に移行できず留年。専門移行後だと卒業できない。）の科目で同期に実際に独逸語の単位が一つ足りないだけで留年となり専門移行できず1年を某に振った人がいましたが、専門移行後の大学在学中も卒業後も独逸語の授業以外で独逸語に遭遇することがないまま今日に至っています　・・・　入試における古文・漢文不要論なんかよりよほど理不尽が大学教育でまかり通っている（いた）と思うのは気のせいか？　外国語教育と言えば”英語”を主張する教育関係者が多いのですが、それは既存の英語教育で飯を食っている人が多いということとほぼイコールで、今後の20年で、亜米利加や欧羅巴諸国が衰退して、中国が世界の覇権国家となった場合、”なぜあの時に英語教育ではなく中国語教育を導入し拡充しなかったのか”と嘆く人が多くなるのではないのか？　・・・　まあ、その頃まで私が生きているかどうか微妙ですが。　ちなみに、私は大学時代に（自由選択の）第三外国語として中国語の授業を選択して無事に（イロハのイのレベルでしたが）単位も貰ったのですが、必須の第二外国語だった独逸語よりはその後の人生で遭遇し、漢文の知識と併せて少なからず役に立つことがありました。　また、同世代の人材と比べれば達者にコンピュータを使えるものの、大学を含めて”学校で先生に教わった”事は一度もなく、社会人になって（当時、大森で開催されていた）日立の講習会に職務の一環として参加したことがあるくらいですが、文字と数字が読めればテキストや専門書の類があれば”コンピュータ教育”とか”プログラミング教育”とか大上段に構えなくても十分に独習が可能ですというか、そもそも最先端に近くなればなるほど”誰かに教えてもらえる”機会は減少していきます。　本当に不思議なのが、人工知能と量子コンピュータが手に手を取って人間を既に越え始めている御時世に、20年前にスマートフォンが存在しなかった歴史を知りながら、１０～20年後の社会に出ていく若い衆にノイマン型コンピュータを前提としたプログラミングを義務教育で教えたがるのか？人工知能であければプログラミングが困難というか事実上不可能な時代がすぐそばまで来ている気がするのは、私の、気のせいか？　ちなみに、古文で約2000年、漢文で約3000年程度の社会や技術革新などの変化に耐えて残ってきた民族の知恵を含んでいる上に、そこにユダヤ教、イスラム教、キリスト教などの宗教から生じる宗教バイアスはほとんど無い（景教が流行したように皆無ではもちろん無い）という”根底から異なることから生じるメリット”があると私は思いますし、それは、かって明治維新の頃に、儒教に象徴される中国文化を至上としていた日本のインテリたちが、オランダ語、英語、・・・、仏蘭西語、露西亜語などに遭遇してカルチャーショックを受けた故事と類似した、人工知能を前提としたコンピュータ世界の知識が至上となっていく時代の過渡期にいるということ　・・・　従来のインテリたちの知識が急速に役立たずとか時代遅れになっていく時間帯ということですな。　既存のインテリたちは、自らが役立たずや時代遅れになっていくことで社会的な優位性が保てなくなることを恐れるが故に、上級国民から転落することを恐れるが故に、可能な限り自分たちの知識や知能が優位に立てる社会体制を維持しようとし、自分たちが理解できない知識体系の本格導入や移行を妨害し遅滞させようとしているという側面もありますが（笑）。　わかりやすく書けば、会社の相談役などで月に何度か半日程度、会社の車やタクシーなどで出社している人たちに、ノートパソコンをぽんと渡して”今後は、出社されなくてもパソコンを使ってインターネット上の会議や打ち合わせだけで十分です”となった場合、既得権を多く持っていた人ほど反発が大きく、会社の経費削減効果もまた大きくなり、方針や意思決定までの時間と経費は大幅に短縮することが可能になるということ　・・・　可能にはなっても利用する人が旧態依然であればあるほど効率は上がりませんけどね。　さて、最後に書いておくと、「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」と言う名言があるのですが、”未来”というのは”未だ来たらず”だから未来なわけで、経験や歴史などから予測や予想はできても、確定された事象ではありえません。　また、”先々のことを考えて選択し行動する”動物は人間くらいのものですから、人と動物の大きな違いがそこにもあるわけですし、先人たちの選択とその結果を”歴史”とすればですが、アドリブを加えながら私達もまた選択とその結果を受け取り続けるしかないとも言えます。　古文・漢文に凝縮された歴史的な知恵や教訓を学ぶ機会を切り捨てるメリットが、生活保護の申請の仕方を学ぶメリットより大きいという人たちを説得する気は、私には、ありませんので念のため（笑）。

2021.03.10

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帰ってきた怪しい話　第001話　「AIの普及と13個問題」

帰ってきた怪しい話　第001話　「AIの普及と13個問題」　とあるネットニュースを読んでいて、”私の高校時代の数学の先生たちは授業中に何度となく「数学は暗記だ」と放言して、数学のテストで点が取れない奴は勉強（＝問題の暗記）が足りていない云々」とのたまわっていたけどなあ？と思ったのでした　・・・　今を去るコト半世紀近い昔の話になってしまいますが（笑）。　私が高校時代に”数学一”で躓いて、高校二年の最後というか高校三年になる春休みの時期に開眼していわゆる”数百人を越える牛蒡抜き”を達成し、共通一次テストの類では得点源にさえなったという自慢話（大笑）は以前に書いたことがありますが、（特に私の得意科目を知っている）高校時代の同級生たちからすれば、卒業後の私が統計処理関係でしばらく飯を食べ、インターネット黎明期にある意味で国のインターネット最前線で飯を食べていたというのは”何かの冗談？なろう系のネタか何か？”と思うのではないかと（しみじみ）。　そういった過去の経験が言えばですが、”AIを含めてコンピュータを利用することに日本の数学の先生が教えたがる数学的な素養と言うのは不要”だと、私は、思いますし、”プログラミングにも数学的な素養は不要で、敢えて言えば6ケタくらいの算数は真面目に勉強しておいた方がいい”と思います　・・・　物理学を専攻したり高度な数学の専門家を目指す人はこの限りではありませんが。　念のために書いておくと、6ケタくらいまでの四則計算の習熟が主眼になるのが”算数（さんすう）”で、公式や定理といった先人たちの計算に関するショートカットの習熟が主眼になるのが中学～高校の”数学（すうがく）”だとざっくりと考えて置いてください。　従って、AIどころか、初期の表計算をメイン機能としていたソフト”ロータス１２３”が登場し普及が本格化した1980年代前半に、”表計算ソフトの機能が向上した上で社会に普及し定着した場合の数学教育”とでもいったことを当時の文部省の偉い人達は考えるべきだったと、私は、思うのですが、彼らが考えて実行したのは”（暗記主体の受験戦争時代の教育を全否定した上での）ゆとり教育”だったわけです。　それはさておき、小学校では公式や定理を用いた数学の手法で”さんすう”の問題を解いてはいけないというのがこれを書いている時点まで続いている学校の先生サイドの暗黙の前提のようで、結果的に、”のび太が受けている算数のテスト”のような珍問といか難問というか正気を疑うような算数のテストがネットでもちらほら話題になることがあるのは比較的知られた話になります。　極論すれば、日本の小学校の算数教育というのは”いかに早く正確に四則計算をこなす能力を習得させるか”に特化しているわけで、中学以降で学ぶ数学の定理や公式の類を用いれば簡単に解答を得られる問題を”あえて鶴亀算だけを用いて解答させる”ことさえ真顔でやりかねない風土があるとも言えます　・・・　筆算や暗算の計算速度は練習すれば大半の人が上昇してしまい”団栗の背比べ状態”になるためか、有名中学などの算数の入試問題で、（言語的なロジックまで駆使する）ひっかけ問題や珍問の類が頻出し続けていることは比較的知られた話かもねと。　そう考えていくと、”あれ？じゃあ算数って100円ショップで電卓が買える時代になった頃には既に6ケタくらいの四則計算を筆算や暗算でできるようになれば、それ以上の学校教育は不要な時代になっていたってこと？”と勘付いた人こそ数学的な素養があるんじゃなかろうか？　その延長として、”じゃあ、早く正確に四則計算を筆算や暗算で行う力が前提になっている中学以降の数学っで、数学の授業の時に電卓が使えれば楽に習得できたというか、電卓やコンピュータを使わない数学の授業って意味が無いってことじゃん？”と勘付いた人は、賢いなあ～。　これを書いている時点で上級国民を形成している”学校の成績の良かった人達”というのは、電卓やコンピュータを用いた学習をしていない人達が大半ですが、電卓やコンピュータを用いると”筆算や暗算だけを前提とした数学教育のテストで高得点をマークして成績上位者に”なっていた”人の優位性というか”頭の良さ”とされてきた能力が既に大暴落しているということ。　さて、冒頭の”13個問題”というのは、”外見からは見分けのつかない13個のオモリがあるとして、その内の一個だけは重さが違っている。3回だけ重さを（天秤などで）量って重さの違う一個を見つけるにはどうすればよいか？”とでもいった問題のことになります。　まあ、えてして、数学的な考え方云々とか暗記では対応できない問題云々といった話で持ち出されることが多く、元ネタは”ハノイの塔”のような気がしないでもありませんが、”だから暗記主体の数学学習では駄目なんだ云々”と思考誘導したいときに乱用されるタイプの設問かもなと。　私に言わせれば、典型的な”正解を知っていれば圧倒的な短時間で正解を提示できるタイプの頓智問題”で、解答に正解がないというか、複数の正解があるのが特徴ではないかと、一休さんかきちょむさんあたりを呼んで来いと言いたいですな（笑）。　素直に考えると、13個を２分して、６個と７個の集団に分けて１回目の計量を行い、重かった集団を更に・・・と、考えてしまうのですが、”あれ、これって最終的に一個を特定すればいいんだから、最初に一つを取り除いて１２個にして、６個と６個の集団に分けて１回目の計量を行ってそれが均等の重さだったらば、その１回だけで唯一重さの違うオモリって（最初に取り除いた一個だと）特定できるんじゃね？”とか思いつくことこそが、私に言わせれば、頓智の類ではないかと。　さて、最初に除外した１個が異なる重さの１個で無かった場合、６個と６個に分けた集団では重さに違いが生じているハズですが、このあたりで”あれれ、これって問題文で異なる重さの一個が他より重いか軽いかの記述が必須じゃね？それが明示されてなきゃ不可能問題じゃね？”とか考えた人は学校の優等生タイプかもねとか思うものの、”解答方法をその場でアドリブで考え付け”と言うならそもそも学校教育そのものが不要じゃん？とも（大笑）。　まあ、比較検討するために、集団Aを幾つかの小集団に再編して例えば、２つの集団BとCに分けて比較計量していくとか考えると、A=B＋C＝13、13＞B>1、13＞C>1　といった具合に前提や状況を整理することもできます　・・・　この辺りの状況整理はプログラミングの出発点と言えなくもないかなとも思いますが。　ちなみに、この手の問題で異なる一個は他より重いとも軽いとも明示されないというのが一つの出題パターンだったりしますが、”複数のコップを使った水の計量問題”より悪辣なポイントと申せましょう（笑）。　もっとも、ここまで書いておいてなんですが、”１個を取り除いて１２個にし、６個と６個で重さを比較した場合。１３分の1の確率で１回目で異分子を特定できるのですが、異なる１個が他より重いか軽いか分かっていないと残り２回で正解に必ず辿り着くというのは（私には）不可能だったりします。　ここで思考を整理するためにも、設問における「解答の条件」に戻っておくと、”３回計量して、異なる重さの１個のオモリを特定する”ことですから、異なる１個が他より重いか軽いかが不明という前提下の３回目の計量に際して”１個と１個の比較”状態になっていては理論的には不可能問題の類だったりします。　ということは、”これって、幾つかの集団を３回計量することで、特定の異分子を一つだけ炙り出すにはどうするか？ってことじゃね？？”とか”集団と集団を計量することと構成している要素を計量することとは分けて考えればなんとかなるんじゃね？”とか、あれこれ設問の裏側まで考えるようになるとプログラミング思考入門にもなるわけです。私だと、考え始める大前提として、＊１回目。（１）１３－１。で考えるんだろなと見当をつける。まず比較や計算がしやすいように１個を除く。１２を幾つかの集団に個数で均等割りし、その集団の重量を計量して均等なら最初に除いた１個が異分子で確定。（２）均等割りした集団どうしが重量比較で均等でなかった場合は、最初に除いた１個は標準の重量。異分子は均等割りした集団の方にいることが確定。＊２回目。逆からも何をどうするか考えた方がよさそうだな。＊３回目。最初に除いた１個は標準値の重さなので、それと比較して重いか、軽いか、同量かで異分子が特定できるため、２回目の計量が終了した段階というか３回めの計量に臨むときに２～４個までに個数を絞り込んでおけばよい。とか考えた場合の流れだと、１３－１。１２／３とし、A、B、C　の３集団と番外の１個。として炙り出す。＊１回目（３）A集団とB集団の比較。　AとBが均等ならA=BなのでC集団（の４個）か番外が異分子。　AとBが均等でなければ、AかB、いずれかに異分子。番外は標準値が確定。＊２回目（４）A集団とB集団が均等だった場合の２回目。　A集団とC集団も均等ならば、A＝B＝Cとなり番外が異分子で確定（解答ルート１）。　（５）A集団とB集団が均等でなかった場合の２回目。　A集団とC集団も均等でなかった場合。自動的にB＝CとなるのでA集団（の４個）に異分子がいることが確定。＊３回目（６）A集団の４個から１個を除いた３個と番外の１個とで２個と２個の集団を形成して重量を計量。均等なら除いた１個が異分子。（解答ルート２）。均等でなければ、番外を加えた２個集団の方の番外以外の１個が異分子。（解答ルート３）。かなと。つまり、（６）の段階で一度も計量していないものの番外１個と、４個で形成されているA集団の内の３個の重さは同じなわけですから、全部で５個あるものを１回計量して１個の異分子を特定する問題、になるわけです　・・・　私に言わせればですが。＊－－－－－－－－－－－－－－－－（６）を細かく書くと、n13・A集団は、n1、n2、n3、n4とでも区分できる個体の集合で、この中の一つだけが重さが異なる異端の個体。・最初に除外したn13の重さは標準重量。n1～n4の４つの個体の内のいずれか３つも同じ重量。なので、天秤の左の皿にまずn1を、右の皿にn2を置いた場合、釣り合ったら、続いてどちらかにn13を乗せ、反対側にn3（かn4)を乗せます。それでも釣り合ったら残っているn4（かn3）が異端の個体。で、n1とn2がつり合わなかった場合、異端の個体はn1かn2のいずれかに特定されると同時に、重量的には n3=n4=n13 となります。また、n1（あるいはn2)はn13と重さが、”同じ”、”軽い”、”重い”のいずれかが該当することにもなります。そうした前提の下、n1がn2より重かったとして話を進めると、重いか軽いかは別としても、n1かn2のどちらかがn13と同じ標準の重さということになり、それは残りのn3、n4とも同じ重さということにもなります。では、n1とn2のどちらが標準の重さなのか？と検証する場合、既に天秤に乗せたn1とn2ではn2の方が軽いわけですから、そちらに標準の重さであるn13を加えます。そうすると、n13をn2に加えてもなおn1の方が”重い”か”つり合いが取れた”場合、n1が異端の個体と特定されます。残りの可能性の、n2にn13を加えたらn1よりも重くなった場合は、n1の側にn3（かn4）を加えてみてn1＋n3（かn4）の側がn2＋n13の側より重くなるようならn1の異端が特定となります。つまり、４つの個体の内の３つが同じ重さで１つだけが異なっていることがわかっている上て、既に二人はどちらが重くてどちらが軽いか計量が終って判明していて、残っているまだ天秤に乗っていない２つの個体は同じ重さであると同時に既に天秤に乗って計り終えているいずれかの個体とも同じ重さということも分かっているわけです。文字だとややこしいですが、この場合、４人の内の３人が同じ体重という集団で二人組を２つ作るとその内の一つの組は必ず同じ体重となりますから、＊標準の重さをｗ、wとの重量差を（＋α）とすれば、重さだけだと２組の間には、W＋W（＋α）＞W＋Wという不等式が成立し、（＋α）の付いてる重い個体が異端になることが分かります。まあ、Wはn1～n4の内の３つとn13が該当、W（＋α）はn1～n4の内の他の３つと共通していない１つという視点も使って、n1～n4の中からW(＋α）に該当する個体を天秤を使って計量しながら絞り込んでいけばいいわけです。ーーーーーーーーーーもっと別のロジックももちろん存在すると思いますが、爺的にぱっと思いつくのはこんなところかなと　・・・　しみじみと学校を既に卒業していて良かったと思います（大笑）。ただ、ここで指摘しておきたいのは、”これこれこんな風に考えてみればいんだよ”と一緒になって一度でもこの手の問題を解いた経験がある子と無い子とでは、類似の問題が出題された場合の解答に至る速度に顕著な差が生じやすい現実があるということ。その意味では、”パターンを知っているか知らないか”の差は大きいということで、その意味でも”数学は暗記”だと私は思いますし、この手の学校の授業ではあまり熱心に教えていないタイプの設問に解答する能力を要求するのならば、まずは高校や大学の入学試験に電卓やパソコンの持ち込みないし、入学試験をパソコン端末から行う改革の方が先ではないかと。マークシート方式の是非論はともかく、表計算ソフトの類は会社の仕事のレベルで使いこなせるのが日常の風景になっているのに、筆算や暗算が前提と言うか、（数学に限らず）手書きでいつまでテストの解答を書かせているのか？大学入試で”漢字検定”や”英語検定”などの成績も加味する云々と言い出した、教育関係の偉い人たちの言動を見聞きするたびに、”ようは、自分たちが一番、コンピュータの利用が当たり前になっていく社会の変化に対応する気が無いってこと？”と思うのですが、中学校より上の学校の先生の正規雇用は廃止して、結果報酬のパートタイム制か、（累積型データベースと広域ネットワークを使った）AI先生に切り替えた方が安価で教育効率もいいんじゃね？なんか、文部科学省や学校の先生の主張しているAI時代の教育云々を聞いていると”一度、問答無用で例外なしに全員を解雇して、パソコン検定の類で一定以上の資格を取得できない人材は再雇用しない”くらいのことをやらないと、いつまでたっても”うちの英語の先生は駅前留学（さえしない）”のままなんじゃねえかと思うわけです。学校の先生が一番、コンピュータ関連に疎いことで定評のある日本の政治家たちよりも、IT化が進む社会に取り残されているホワイトカラーというか、ブルーカラーよりもコンピュータ社会に対応できないホワイトカラー人材の宝庫になってしまいつつあるんじゃなかろうか？しみじみと、今、学生でなくてよかったと思ってます　・・・　若い子ほどたいへんだねえ（笑）。

2020.09.09

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オはオタクのオ　第0053回　無人島に何か一つ持参。

オはオタクのオ　第0053回　無人島に何か一つ持参。　無人島で生活する際に、何か一つ持参できるとすれば、何を持っていくか？　という問いかけは、日本では意外と昔から（確認できた範囲だと幕末の１８５０年代後半頃には）行われている一種の思考実験で、英吉利のダニエル・デュソーの書いた”ロビンソン漂流記（ロビンソン・クルーソーの生涯と奇しくも驚くべき冒険、１７１９）”が底本になっています。　もちろんというか、ロビンソン・クルーソーというのは架空の船乗りの名前で、無人島に漂着して独りでサバイバル生活するのは三部作の第一部の話になるのですが、途中でフライデー（金曜）という現地人を助け出して召使にするものの、帰国するのは漂着から２８年後だったりします。　ロビンソンは架空の人物でロビンソン漂流記も架空の航海記ですが、執筆された当時に知られていた漂流記録というか複数の航海記や、実際に船が難破して漂着した無人島で数年間のサバイバル生活を繰り広げ、たまたま立ち寄ったバッカニア（まあ、海賊ですな）などに救助されて帰還した実話などを下敷きにしていることでも知られています。　そんな背景がありますから、実際には”無人島に漂着しても助からなかったロビンソン”の類も少なからず実在したというか、そういった知られていない死亡事例の方が多いかもな～と、私は、考えています。　明治の頃には、ダイジェスト版や児童向けに改変されたバージョンなども日本では発刊されていて、実際に難破して無人島に漂着した船乗りたちがサバイバル生活に突入したときに、本の内容を思い出しながら参考にした実話もあるのですが、実際に無人島に漂着して生き残った人達がやったことは”難破した船から回収できるものは可能な限り何でも回収する”ことや”海岸に漂着したものはこまめに回収する”ことだったりします。　瀬戸内海の無人島に限定した場合、単独でサバイバル生活を行うとすれば何が最大の問題になりますか？と某・常連さんから聞かれたことがあるのですが、「”退屈”してしまうことかなあ？」と答えたことを覚えています（笑）。　海賊の末裔としては、無人島に漂着して生き残ることはさほど難事とも思えないのですが、個人的な経験からすれば退屈は人を殺すよなあ～と。　ちなみに、無人島に何か一つ持参できるとすれば？という質問への回答として、戦前に教育を受けた世代では意外と多数派を形成していたのが”万葉集”などの個人的なバイブル本で、明治生まれの世代だとサバイバルビリティがかなり高い人が多いので、無人島に漂着した後の生き残り生活に関してはさほど難事と思えなかったのかも知れません（笑）。　まあ、羆などが生息する北海道は例外として、日本国内の山岳地帯や島嶼部において単独で遭難したとしても、ある程度の経験と知識があれば死ぬ方が難しいと、私は、思いますが、昭和も４０年代以降に生まれた世代ともなると、サバイバル生活と言うか野外生活の経験も知識も（明治～大正生まれと比べると）格段に不足している人が多いなあと思うことがしばしばありました。　それはそれとして、何か一つ持参できるとすれば何？と聞かれれば、”折り畳み式のノコギリ”が一押しで、次点としてなら”鉈（なた）”かなあ？　映画「ランボー」などの影響か、いわゆるサバイバルナイフの類を選択する人が意外と多いのですが、あれって空調の効いた部屋でソファーにでも寝ころびながら眺めて楽しむもので実際に使うものじゃないような気が、私は、していますが？　実際に米軍の特殊部隊などで私費で購入したり標準装備として採用された軍用ナイフだと、初期のバックマスターが肉厚でナイフとしては比較的汎用性が高かったですが、サバイバル生活が複数年に長期化するとすれば、中～大型ナイフより鉈、鉈よりノコギリの方が”何か一つ可”というのなら、あればありがたいと、私は、思います。　まあ、サバイバルの前段として、飲料水の確保は長く見積もっても三日以内、食べ物の確保は一週間以内というのが一つの目安と考えているのですが、気温と湿度などの外部環境の状況によってはもっと短時間で確保しないと死亡することが珍しくありません。　最近では、災害に被災したとき”三日分の水と食料は自前で備蓄しておきましょう”とかいった説が定着しているのですが、この三日分の水というのは、四日目からは生き残るのに十分な水が確保できるという前提での話ですから、そのめども立たないのに”備蓄してある三日分の水”を三日で飲み干してかまわないと考えているようでは、野外サバイバルはかなり厳しいかもなあと。　ちなみに、三日分の水という場合、一つの目安は”一人の成人男性が一日に消費する最低ラインの水の量は２リットル程度”という暗黙の前提があるのですが、世界各国の軍隊の研究や実地検証などの資料も加味してシビアに考えると、春、秋といった比較的条件の良い季節で激しい野外活動をしないのなら一日二リットル程度の水分補給で存命できることが多いという程度に考えて置いた方が現実的です。　冬場は、他の季節よりも水の消費が抑えられる代わりに、食べ物からの熱量の確保が課題になりやすいのですが、夏場は逆に水の消費が増大しやすく、外気温が２８度を超えたあたりから一日の水の摂取量が二リットルでは不足しがちになる人が増加するようです。　最高気温が３５度を超え、夜温が２５度を下回らない熱帯夜という状況だと、一日の水の消費は最低で３～４リットル程度を見込んでおく必要があり、最高気温が４０度を越え（従来は”砂漠”を想定する気温）湿度も低い状況だと１日に８リットル程度の消費を見込んでおく必要が出てきます。　実際には、夏場の節水と体力温存ということでは、”暑い時間帯には日陰で風通しの良いところで寝て過ごす”のがベストの選択で、朝の４時くらいから１０時くらいまでを基本的な野外活動時間と考え、１０～１８時くらいまでは睡眠にあてるか水の確保などの軽労働にとどめた方が無難ではないかと。　ちなみに、一日に６～８リットルの水をコンスタントに消費していると問題になるのが、ミネラル分の不足ですが、無人島の場合は周囲が海ですから、飲み水に適量の海水を加えるだけで対応できるだけ山間部より楽です　・・・　山間部では、特に夏場は、塩分などミネラル成分の日常的な確保が生き残りの課題になるということですが。　一つの目安として、水１リットルに対して５０ミリリットル程度の海水を混入して飲料水にしても、私は、大丈夫でしたが、実際には体質、体調、体重、性別などなどの個人差で許容範囲は違ってきますのでご注意下さい。　もちろんというか、海水をそのまま飲むと、海水に含まれる塩分などを体外に排出するために水が浪費されることになり、一説には、海水を５００ミリリットル程度飲んでしまうと、その（余剰）塩分の排出だけで真水を２～３リットル程度消費する羽目に陥るという話があり、経験的にも”そのくらいは最低でも飲んでしまう”人が多いと思います。　では、無人島で一日に８リットル程度の飲料水をコンスタントに確保するためにはどうすればいいのか？と聞かれれば、一番手軽なのは湧き水か川を見つけることで、そのためにも”島の外周にそって一周して地形を確認する”ことが体力が残っている早い時期にやらねばならないことになります。　それなりの太さの樹木が生えていて、外周が２キロ以上あるような無人島ならば、それなりの水源が期待できるのですが、それ以下の岩礁レベルだと飲み水を確保するハードルはぐっと高くなります。　というか、十分な水源が確保できる島が人跡未踏の無人島という可能性はかなり低く、現在は無人でも過去に入植を試みた人たちがいた痕跡が残っていたり、漁師などが嵐の際に一時避難するための簡単な避難小屋（シェルター）を設置した（ことがある）可能性も高くなります。　場合によっては、夏場など特定の時期にだけ利用する個人所有の別荘の類が建設されていることさえありますから、飲料水の確保を前提にした島の地形の確認は早い時期に基本的に島の外周に沿って行うべきことだと、私は、思います。　ただし、明らかに島が大きく、地形が峻嶮で、一周するのに半日以上かかりそうな場合は、山というか丘に登って高い場所から俯瞰するのも手で、ある程度の知識と経験のある人なら、島の地形を高い場所から俯瞰するだけでも湧水や池などの水源の候補地を推定できます。　ちなみに、夏場だと１～２カ月程度は降雨量が０ということが瀬戸内では実際に珍しくありませんから、雨が降った時に雨水をいかに確保し保存するか？の対応準備の優先度は意外と低くなります　・・・　だからと言って天水を確保するチャンスを無駄にする必要もありませんが（笑）。　正直なところ、野外活動の素人で都会で生まれ育ったという人達を引き連れてサバイバルするよりも、単独でサバイバル生活をした方が生き残る確率は高くなるのですが、単独での無人島サバイバルに立ち塞がる最大の難問は、繰り返しになりますが、”退屈”だろうなあと。　島嶼部の場合、食糧の確保は案外と簡単なことが多く、基本的に砂浜があれば浅利などの食用二枚貝が期待できますし、５～７メートルくらい潜れる人ならサザエやアワビの類も期待できます。　岩のごつごつしている岩場や磯の場合は、亀の爪や食用の巻貝、季節によってはカキ、岩海苔やワカメといった海藻の類、或いは（食べるところはほとんどありませんが手軽に採取できる紫や馬糞などの）ウニなども期待できます　・・・　ある程度の知識があればですが（笑）。　ちなみに、魚は目の前を大群で泳いでいたとしても、それなりの竿、網、銛の類といった漁具がなければ捕食対象にはまずなりません。　海岸の地形によっては、潮の干満を利用して岩や石を積んで壁を作って一種の生け簀状態にすることもできるのですが、これも手間暇と労力を考えると”暇すぎたらやってもいいんじゃね？”程度の机上の空論に近いところがあります　・・・　一度、作ってしまえば後は楽ですが。　漂着した島に樹木だけでなく竹も生えていれば、ぐっと生活水準が短時間で上昇するのですが、竹の伐採や加工を考えても、やはりノコギリや鉈の方がナイフより便利ではないかと思うのですが、素材としての竹の性質をある程度でも知っていたら、水筒などの日用品から住居までノコギリ一つあれば作り出すことが可能で、木材だけしかない状況と比べれば極楽状態ではないかと（笑）。　サバイバル生活の明暗を分けるということでは、無人島の場合は海岸部への漂着物の存在があり、ゴミと考えるか、燃料や加工素材と考えるか　・・・　その辺りも、事前の知識と応用力の有無で大差が生じかねませんが。　意外かもしれませんが、海が荒れたり、季節によっては、魚やイカなどが生きた状態や食べることが可能なフレッシュな状態で海外に打ち上げられていることがありますから、朝一でやることは（特に砂浜の）海岸チェックで、ある意味で海岸のゴミ拾いをコンスタントにするかしないかで生死が分かれかねないところがあります。　破れた漁網の断片でも漂着していたら、食糧確保は縄文時代から江戸時代くらいまで一気に文明化が進む（笑）のですが、そういったラッキーに恵まれなければ、植物を利用して漁労用の道具を小まめに自作していく必要があります。　ただ、事前に考えているよりもハードルが高いのが釣り竿で、特に釣り糸をどうするか？は、吊り上げる魚のサイズにもよりますが、釣り針よりも難易度が高くなりますから、その意味でも海岸のゴミ拾いは熱心にやって損はないと思います。　ちなみに、釣り針に関しては、弾力のある植物性の素材や貝がら、魚の骨などを加工して自作しても、それこそ”釣れてしまう魚は意外と多い”ので、それほど心配しなくても大丈夫ですが、ルアー（疑似餌）の知識もあった方が釣果は期待できます。　釣り竿に”浮き”は必要か？と聞かれれば、必ずしも必要ではありません　・・・　あえて言えば”重り”の方があった方が便利ですが、適当な形状の石や金属片でも十分かなと　・・・　まあ、市販されているフル装備の釣り竿でも魚が釣れるとは限りませんが（笑）。　まあ、魚介類に限らず、動植物に関する”食べられるかどうか？”とか”加工の仕方”とか”毒の有無や毒の部位”といった知識の有無が生き残りの明暗に直結しやすいので、事前に経験をどのくらい積んでいるかという話になります。　サバイバルの基礎というか定番に、火を起こす、ことがあるのですが、実際には優先度が低く、飲み水を確保した後でも十分に間に合いますが、火口（燃えやすいもの、ティッシュペーパー的なものが一つの目安）、小枝、（小枝より太い）薪（まき）といった燃やすものを事前に一定量確保してから火を起こした方が効率がよろしいかと。　基本的に、硬さの違う木の棒と板をこすり合わせれば摩擦に伴う熱で火は起こせますが、１００円ラーターの類が漂着していれば一気にハードルが下がりますし、ガスの有無にかかわらず密閉性が高いせいか意外と浮力があり、津々浦々の海岸に漂着しています（喫煙者が減少しているので、いました。か？）。　まあ、着火もまた、知識として知っているのと実際に成功することとの間にはかなりの高さの壁があることが多いので、いろいろな着火方法を事前に試しておいた方が、いざというときに戸惑わないで済む可能性が高いかな？と　・・・　実際、机上の空論のような奇抜な着火法を持ち上げる人も珍しくありませんし（笑）。　そういえば、サバイバル・グッズの中に、マグネシュウムの塊に火打石（というか火打ち棒）を埋め込み、使う際には塊をナイフで削って粉末を着火剤とし、そこに火打石とナイフをこすって起こした火花で着火するといった代物があるのですが、かなりの”慣れ”が必要ですから、１００円ガスライターで着火した方がよほど楽で確実です（大笑）。　なにはともあれ、無人島に何を持っていくか？と聞かれれば、そもそも無人島なんかに漂着したくありませんな。

2019.08.24

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オはオタクのオ　第0051回　表現の自由　・・・　ただし、オタク文化は対象外（大笑）

オはオタクのオ　第0051回　表現の自由　・・・　ただし、オタク文化は対象外（大笑）　愛知県主催で億単位の税金を投入して実施された催事「あいちトリエンナーレ２０１９」の目玉企画展である「表現の不自由展」が３日にち程で閉鎖され、良くも悪くも大炎上している（今この辺）。　ちなみに、名古屋市長は現地を視察した上で「税金を使って行う内容ではない」と反対し展示の中止を毛愛知県知事に求め、それに対して反日活動家側の愛知県知事は”展示内容の是非には触れずにおいて”「反発が酷いので止める」として即刻中止した上でなぜか「名古屋市長の言い分は憲法違反（表現の自由の侵害）」だと言い募っており、日本ペンクラブや半島系の団体も「表現の自由の侵害」とか「公権力による検閲だ”を大合唱している。　ちなみに、従軍慰安婦像（彼らは”平和の少女像”だと主張しているが、なぜその像が平和を意味しているのかの説明は無い　・・・　韓国で米軍に轢殺された少女像→遊軍慰安婦像→平和の少女像と名前を変えてきた像なんだから、そりゃあ無いでしょう。）、と、”昭和天皇の肖像写真をバーナーで炙って燃やし靴で踏みにじる動画”が問題視されていると表現の不自由展の関係者各位は分析しているようで、その手の発言が多い。　笑ったのが、「昭和天皇の写真は燃やしていない（コラージュ写真を燃やして踏みにじっただけだ）」という関係者の反論で、そこまで言うのなら、あの動画をノーカットで公式に愛知県の公式ホームページで公開するなり、NHKにかけあって全国放送でノーカット版を流して日本国民の反応を見てみればよろしいのではないかと。　実際、これを書いている時点での日本のマスゴミの報道は、あたかも従軍慰安婦像が問題視されて展示会が中止に追い込まれたかのような誘導を露骨に行っていて、昭和天皇の写真を燃やして踏みにじる動画に関しては触れないか、昭和天皇の写真があったと触れている場合も燃やしたり踏みにじったりしている動画という具体的な（確実に大多数の日本人が反発するであろう）点には触れないか大幅にぼかした表現で誤魔化している。　昭和天皇の肖像画をバーナーで炙て燃やし靴で踏みにじる行為のどこが”芸術”なのか、芸術家でもない私には理解不能ですが、名古屋市長の主張するように、税金を使って行う公的な展示会に相応しい内容とは思いませんし、やりたければ私費で展覧会を開催されればよろしいと思います。　というか、”あいちトリエンナーレ２０１９”に関しては、詳細な会計報告を愛知県民と文部科学省は受け、その詳細な内容を愛知県は県のホームページで開示する義務が生じたと私は思います。　理由は簡単で、”どの国の国籍を有している誰に、いくらの日本の税金が渡った”上で、表現の不自由展が開催されたのかによって”芸術”か”芸術に名を借りた反日プロパガンダ活動”になると考えているからで、それくらい”日本国の象徴”たる”天皇”の”肖像写真をバーナーで炙って燃やして靴で踏みにじる”ことを日本人である私は公序良俗に反すると判断しますから、日本国憲法の保障する”表現の自由”の範疇にあるという主張に反対し支持しません。　繰り返しますが、それほど芸術作品としての自信があり、憲法の保障する”表現の自由”の範疇に含まれるという自信があるのならば、愛知県知事は愛知県の公式ホームページのトップページで”昭和天皇の肖像写真をバーナーで炙って燃やし靴で踏みにじる”動画をノーカットの音声付で公開した上で、「私はこの動画が税金を使って愛知県が主催する催事において公開展示することに何の問題もなく、憲法の保障する表現の自由の範疇にある芸術作品だと考えている云々」という公式コメントも付けて、愛知県民の審判を仰ぐべきでしょう。　もちろん、監督官庁である文部科学省が文部科学省ホームページのトップページで同じように該当する動画を公開し、文部科学大臣が同様の内容のコメントを付けて国民の審判を仰いでもいいと思いますが、愛知県でも文部科学省でもどちらでもいいから”憲法の保障する表現の自由の範疇に含まれる芸術作品”だたと主張するなら、さっさとやってもらえませんか？今回の騒動に関して責任を有する行政団体の長が”騒動の主因を公開しない”まま国内の混乱を放置するのは無責任だと思いますが？　まあ、実際には、既にネットのあちこちで該当する”昭和天皇の肖像写真をバーナーで炙って燃やして靴で踏みにじる”動画は拡散しまくっていて、その気になれば検索して視聴することが可能ですから、実際に表現の不自由展の展示会場へ行かなかった人でも内容の検証は可能です。が、議論の公平を期すためにも、表現の不自由展で流していた動画をそのままの形で・・・愛知県知事は問題が無いという立場で発言を続けておいでですから・・・直接の暴力被害が生じないインターネット上の愛知県知事が決裁権を持つ愛知県の公式ホームページのトップページで「愛知県知事が支持する芸術作品」として提示する責任と義務が生じています。　それはそれとして、表現の不自由展騒動が勃発する直前といっていい時期に、とあるデパートの催事に自衛隊の広報活動も参加することになっていたら、とある婦人団体など民間団体からのクレームが入ったことで自衛隊の参加が拒否されて話題になったのですが、それに対して日本ペンクラブも愛知県知事も「抗議活動によって展示が断念に追い込まれる憂慮すべき事態」とか「特定の思想を有する集団による事前検閲」といった抗議を行っていません　・・・　というか、左系の団体が右系の広報活動を妨害するときに彼らの口から「表現の自由を守れ」とか「事前検閲はけしからん」といった発言が出ることはまずありません（大笑）。　ちなみに、騒動が大炎上した後の某・責任者の発言で昭和生まれの私の目が点になったのが、昭和天皇の肖像写真を燃やして靴で踏みにじっている動画に関して”二代前の天皇だから問題と考えていない”という発言で、ならばこいつは北朝鮮国内で、将軍様が主催する芸術祭で初代の将軍様の肖像写真をバーナーで炙って燃やして靴で踏みにじる動画を流すことも実行できるし、何の問題もない芸術活動ということなんだなと。　海外では、様々な（政治・宗教などの対立が絡む）抗議活動で、抗議対象の国の国旗を破ったり燃やしたり、相手国の元首などを模した人形や肖像写真（あるいは肖像画）の類を燃やしたり吊るしたりして気勢を上げる行為がしばしば勃発することがあるのですが、そういった世界基準だと”国辱行為”に該当すると考える人の方が多い行為も”芸術活動で何の問題も無く、表現の自由の範囲内の行為で税金を使って行政の長がその行為を公認して主催することを日本国憲法は保障している”と日本の左系文化人は考えているということです。　オタク視線だと、今回の左系が主張する「表現の自由」が笑い話になるのは、”非実在存在少女の人権を守れ！”と言って漫画、アニメなどの内容に露骨に圧力を加えて規制強化を主導してきた団体に左系の団体が多く、特に某国籍のキリスト系宗教団体関係者がなぜか規制強化を主張する日本の某団体に入り込んでいたこと　・・・　二昔前の話なので全部実名で書いてもいいんですが（笑）。　日本国憲法で表現の自由が保障されていると左系は主張するものの、アニメで女性の乳首を描くことに圧力がかり、血の色として赤色系を使うことはけしからんと圧力がかかり、実際に現実社会で発生した犯罪行為に類似した描写があると（事前検閲で）して放送中止になったりお蔵入りした事例も枚挙にいとまがないのは比較的知られた話で、その手の騒動に嫌と言うほど遭遇してきたオタク第一世代からしてみれば、”まあ、彼らの言う「表現の自由」は彼らの主張に沿ったものにのみ保障された表現の自由であって、端書に「・・・ただし、オタク文化は対象外。」と書いてあるんだろうなあ。”と。　というか、ある時期まで”下の毛が写真に少しでも写り込んでいたら猥褻図画で違法である”とされていて”芸術か猥褻か”で（ヌード系）写真家と警察関係者が攻防を繰り広げて、実際に逮捕されたり発禁になったりする写真（集）の騒動が珍しく無かったのですが、別に日本国憲法が改正されたわけでもないのに、いつの間にやらなし崩し的に下の毛が一定のガイドラインを設定した上で事実上解禁されて今日に至っていたりもしますが、だからといって、税金を使った展示会に美術品として奥の奥まで丸見えになっている写真を公認展示することを「表現の自由であり、費用を負担して主催している行政の長が展示会を中止させることは憲法違反」と主張してきたのか？という観点でも考えるべき騒動ではないかと。　まあ、その意味で「こいつら馬鹿か？」と思ったのが、表現の不自由展関係者側の主張に「金を出している人に従わなければならないのか（いやそんなことはない）！」といった主旨の発言があったことで、「金を出してくれる人の意向に沿ったり便宜を可能な限り図るのはプロの芸術家なら珍しくもなんともない当たり前のこと」で、採算を度外視して売れない芸術作品を創り続けている限りそれは素人ないしアマチュアじゃね？　もちろん、誰にも金を出して買ってもらえない芸術作品を生涯に渡って創り続け、極貧の中で誰にも看取られず餓死していった芸術家が皆無だとは言いませんが、死後に評価された芸術家たちでも「芸術作品が評価され（売れて）金持ちになりたくない」と生前に考えていた人は更に少数派で「なんで売れないのかな～。売れてほしいなあ～。」と考えていた人の方が多数派であることは指摘するまでもありますまい。　芸術家というのは、その作品に金を払う人がいて成立する商売というか職業で、歴史を振り返ると王侯貴族の"お抱え"になったり、宗教団体や豪商といった富裕層からの注文に応じることで生計を立て名声を得ていた現実があり、そういったパトロンやスポンサーに生活を支えられていない芸術家の多くは本人が富裕層に属していて生活のために作品を創る必要に迫られていないような人物だったと書いても書き過ぎではないでしょう。　わかりやすいところだと、例えば”肖像画”で名声を得て発注が途切れないような画家がいたとして、彼らが実際よりも意図的に醜く描いていたか？少し美しく補正して描いていたか？と考えるとき、金を払ってまで自分で見ても威厳も無く不細工に描かれることを良しとする人が多かったとは私には思えませんし、過去も現在も肖像画で飯を食っている画家が「なんでスポンサーの意向を伺ったり、斟酌して盛ったりする必要があるのか！私が行っているのは芸術活動で何人の介入もお断りだ！！」とどのくらいの割合で主張して営業しているだろうか？ということ。　ま、大衆がスポンサーとなることが珍しくない民主国家においても、特定の国の国民の大多数が不快どころか殺意を覚えるような芸術の名を借りたヘイト作品に金を払う価値があると考えるかどうかはとても重要な指標だと私は思いますし、日本以外の大半の国では自国の国旗を損傷する行為を法で明確に（多くの場合は罰則付きで）禁じていることが多く”これは芸術だから”と主張しても処罰対象になります。　故に、表現の不自由展に展示された、自称・美術作品の中に他の美術館や展示会などでは展示を拒否された”（亜米利加合衆国の正式な国旗である）星条旗を損傷し侮蔑する”作品も含まれていた点などでも、この表現の不自由展が「特定の政治的な信条に基づいて」「複数の実在する国の国旗や国の象徴とされる特定の人物の肖像写真などを」「破損ないし焼却した上で踏みにじる等の侮蔑的な加工を行い」「税金を使って公共の場で公開展示」した行為に反対しないということは、自国のみならず他国の象徴を侮蔑する行為を黙認するどころか積極的に支持していると言われてもしかたのない行為であるということ。　某国が旭日旗を国際社会で延々と批判し、あちこちに掲示しないようにクレームを付けまくっているのも「特定の国の象徴を侮蔑する行為」であるとは認識されるものの、そういった侮蔑行為に対して何の反論もしないでいるということは「そうした侮蔑行為を真実で理があると認めている」と解釈されるようになり、そうした認識が定着した後で何を言っても無駄なだけに日本の外務省が”大人の対応”と嘯いて何もしてこなかった罪は重かったりします。　あるいは、特定の商品のデザインなどが”旭日旗を連想させる”というだけで某国の大学教授や民間団体、或いは個人から大量のクレームが送り付けられて撤回させられたり販売中止となった事例は珍しくもなんともなくなっているのですが、そういう対応をした企業に対して「なぜ旭日旗を連想させるからといって撤回したのか。納得できる理由を提示することなく日本を侮蔑するのなら不買運動を行う。」といったクレームを日本の大学教授や民間が大量に送り付けて潰してこなかったのも、私に言わせれば「他人事じゃないのに馬鹿じゃねえのか？」と考えていることの一つだったりします。　まあ、「あいちトリエンナーレ２０１９」に関して言えば、愛知県知事は自らが公認した表現の不自由展の作品に対しての反論や大炎上している批評に対しては”「表現の自由を侵害し、（事後なのに）検閲行為」で圧力をかけるとはけしからん！”と主張していながら、「あいちトリエンナーレ２０１９（もちろん”表現の不自由展”も含む）」に関するマスゴミ関連（というか身内以外の）記事の内容には事前に検閲をして不愉快なものは公開させないとする旨を明文で提示していて、とても左翼っぽい”自分の表現の自由はフリーハンドだが、お前らの表現の自由は俺が検閲して制限する”とブーメランをやらかしています（笑）。　以前にも書きましたが、愛知県知事が反日活動家ならば、彼の言動はとてもよくわかるのですが、同時にというかここのところというか、そういった愛知県知事を支持している愛知県民って反日国民の集団なの？とも思うようになってきています　・・・　ま、それはそれで思想信条の自由だとは思いますが（大笑）。　日本の場合、国の象徴として、天皇（制度）、国旗、国歌が存在していても、他国では大問題になる国旗に対して文字通り”唾を吐く”行為を左系の教育関係者が推奨し、他国の旗や政治信条を絶賛する行為が長らく放置されてきたのですが、これを書いている時点で亜細亜というより世界規模で国や国境の再編作業が本格化してきていますから、”自分がどこの国の国民であるか”というアイデンティティをしっかりと持っていないと、どこにも所属できなくなる時代になってきていると考えて置いた方がいいと思います。　もちろん、一部の長富裕層のように、複数の国籍を有していて、数十億円以上の資産を世界のあちこちに分散して所有していれば今後も「グローバル経済万歳！」と主張し続けてもいいのかもしれませんが、肝心のグローバル経済の拡大で儲けていた連中が、ここの所、急に口を閉じ始めて利益を確定して表舞台から姿を消したり、静かになってきていることには留意が必要ではないかと　・・・・・・　ま、彼らの場合は、月でも火星でも移住して新世界を築いてしまうだけの財力も能力もあるので、私なんぞがあれこれ考えるだけ野暮ですが、彼らの行動を見ていると、やはり情報の拡散速度がＴＶや新聞が頼りの連中の比ではなく、既存のインターネット（ＳＮＳなどを含む）も相手にしなくなってきているな～としか思えなくなってきています。　そういえば、某国の国民のネット上の発言で、第二次世界大戦中に日本（軍）に強制徴兵された云々という寝ぼけた発言があったのですが、戦前の日本では徴兵検査を受けることは日本国民の権利であり、甲種合格すれば一人前、乙種合格だと一人前とは地域社会で認められず、甲種合格した上で志願した者だけが徴兵の対象となっていました　・・・　実際、極めて少数ですが甲種合格していながら徴兵に応じなかった人も実在します。　そして、台湾、朝鮮半島を含むいわゆる”外地”の日本人に関しては（敗戦まで）徴兵検査の対象外であり、兵役の対象外とされていましたから、自ら積極的に志願する志願兵でなければ兵として採用されていませんが、自らの意思で士官学校に進学して士官として日本軍人となった外地出身者は珍しくありません。　徴兵検査を受け、甲種合格していれば召集令状（いわゆる一銭五厘の赤紙）が届けば兵役に応じて軍務に就くことが内地の日本国民の義務であり権利であったということですが、日清、日露という経済規模で１０倍前後の超大国との全面戦争で「負ければ国が無くなる」経験を経た上で成立した制度でもあったけです。　少なくとも、そういった戦前の日本の兵役制度の対象外だった朝鮮半島の住人に強制徴兵とかいう寝言を言われる覚えはありませんし、彼らの主張するところによれば、”反日（抗日）活動を積極的に行って日本の戦争継続を妨害して足を引っ張り続けた”のが現在の大韓民国の国民ということになります　・・・　戦前に、日本軍に志願兵や士官として従軍された朝鮮半島出身の方々は彼らにとって親日派の国賊ということになるのでしょう。　戦前の日本の場合、「死んだら靖国で会おう」というのが別れの言葉になって戦場で散っていた兵や士官が珍しく無く、戦死する前に靖国での合祀を拒否していた軍人は極めて稀というか事実上皆無ですが、戦後に宗教上の理由などで合祀から外すことを求めた遺族は存在します　・・・　ただ、どこぞの国の国民のように靖国で放尿したり放火した人は、実際に戦場で敵対していた中国の国民党軍関係者にも共産党軍関係者にもいません　・・・　その意味でも、朝鮮半島人とは中国人以上に価値観が根底で違うと私は思います。　戦争を美化するとかいう以前に、戦争と言う状況では「嫌でも、どの旗の下に属しているか」が問われるということで、「どちらともいえない」とか「戦争反対で兵役にも応じない」人は国民と見做されなくなっていき国民としての義務も権利も失っていくのが歴史の示す庶民の直面する現実ということです。　左系のダブルスタンダードということでは、日本の憲法九条を大絶賛し永久不変にすべし！と主張していながら、他のどの国も日本国憲法９条と同じ内容の憲法の条文を制定していないことには口を閉じている現実には言及しないことがあり、自分たちは日本の憲法九条の条文を採用しないが、日本は採用しつづけろ！と朝鮮半島の北と南だけは延々と主張しているのに対して、日本にその戦後憲法を押し付けた米国さえ、”そろそろ現実に対応して（ある程度）自立しろ。何時までも肩代わりしないぞ。”と言い出していることは御存知の通り。　日本の軍事的なモラトリアムは既に終わって、世界の枠組みも急速に変わっている現実を前に「自分はどの国の旗の下に属する国民なのか？」と考えず、中二病傾向の現実を見ない売国行為や国辱行為で悦に入っている左系の言動を支持していると、日本に限らず国が亡くなっても不思議ではない状況に陥るだろうなあと考えてるのですが・・・・・・、戦前を知る世代や戦中派に育てられた世代も、後１０年もすればほぼ全員が定年を迎えたり社会から消えていきますから、若い世代が腹を括るために残されている時間はそれほど残っていないとも思います。　まあ、日本に限らず、自分の所属する国や国の為に散った先達を、他国の価値観で誹謗中傷し、具体的な対案を示さず妨害することにだけ熱心な連中を信じているような国に先は無いとも、私は、思いますが、あなたにも”そう思え”と説得する気はありません　・・・　良くも悪くも、自分の運命は自分の頭で考えて選択できるようになりなさいな（笑）。

2019.08.09

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オはオタクのオ　第0050回　表現の不自由展（笑）

オはオタクのオ　第0050回　表現の不自由展（笑）　愛知県知事って反日活動家ですか？それなら価値観や言動が私にも理解できます。　表現の不自由展ということで愛知県で、ざくりと１０億円程度の税金を使って”反日プロパガンダ活動”が絶賛開催され、愛知県知事はこれを支持し、名古屋市長は実際に現場を視察した上で”億単位の税金を使って行う公共事業”に値しないと反対の立場を鮮明にし、日本ペンクラブはすかさず名古屋市長の反応に”表現の自由に対する弾圧だ”といった主旨でクレームを付け、マスゴミは”自分たちにとって都合の悪いことには「報道しない自由」を駆使しながら印象操作を実行（今この辺）している。　ちなみに、私が考えるところの”マスゴミにとって都合が悪くて彼らが「報道しない自由」を駆使しているなあという点は、そもそも表現の不自由展で展示されている物は、基本的に他の場所では展示を拒否されたことになっている”わけあり物品”で、韓国が国を挙げて海外に輸出している従軍慰安婦像も含まれているが、”昭和天皇の肖像写真を燃やした上に靴で踏みにじる映像”もアートだと主催者側が主張し名古屋県知事もそれを公認して、総額で１０億円近い日本の税金を使って展示していたことは（少なくとも従軍慰安婦像が展示されていたことほど熱心には）ほとんど報道していない点。　が、日本で従軍慰安婦像として知られ、韓国国内では国内の路線バスの座席に常設展示されたことでも知られている少女像は、これまでに何度か名前が変わっていることでも知られている”わけあり物品”であることは、少なくとも今回の愛知県知事公認の表現の不自由展ではそうした”少女像の歴史的な変遷”は解説されていない。　そもそもは、韓国国内で米軍が韓国人の少女を轢殺した事件に抗議するという主旨で表舞台に登場したのが少女像の始まりですが、韓国政府が亜米利加（軍）への配慮をしたのか、米国大使館前にその像が設置されたり世界のあちこちの国に輸出されることもなく事実上立ち消えとなったことで知られる。　その”わけあり物品”が、”従軍慰安婦像”として後にリサイクル利用され、反日活動のシンボルと化し、日本大使館（敷地というか跡地）前に設置され、日本政府の再三の国際法や外交的な慣例に基づく抗議にも関わらず、韓国政府がそれを撤去するどころか公然と支持し反日活動を煽ってきたことは御存知の通り。　まあ、その頃から日本のマスゴミの印象操作は絶好調で、従軍慰安婦像が設置されたときには既に老朽化などに伴う建て替え目的のため日本大使館が解体され更地状態になっていることには触れず、”日本大使館前に従軍慰安婦像が常設展示され毎週定期的に市民活動家たちが（大規模な）抗議集会を行っている云々”と事あるごとに大声で日本国内に報道したことは御存知の通りで、その”抗議活動の様子”を報道する際に更地状態になっている日本大使館の敷地が映り込まない角度で撮影した映像を使っていたことも比較的知られた話になってきました。　もっとも、何年も続いた”日本大使館前に設置され抗議活動の象徴と化した従軍慰安婦像”報道は、韓国政府が日本大使館の建て替えに関する許可申請に難癖を付け続けたことで日本側が大使館の建て替えを断念して（当面）建て替えまでの間を前提に仮移転していたビルを継続利用することを日本政府が公式発表したことで、”え？それじゃあ、日本のマスゴミが日本大使館前に設置された少女像に集まって熱烈に開催されていた抗議集会における活動って、更地に向かって罵声を浴びせるという間抜けな行為だったの？”と、新聞とTVのワイドショーが主力の情報源である団塊の世代にさえ動揺を与えることになったのでした（笑）。　ここで、ざっと明治維新の頃からの朝鮮半島と日本の歴史を解説しておくと、明治の頃の朝鮮半島は李氏朝鮮王朝の支配する国で、彼らがしばしば当時を偲んで口にする”小中華”が示すように、中国を支配していた”清”王朝の実質的な属国でしたし、その間の”清”と”李氏朝鮮”の関係といえば、清側は塩などに課税し（だから家庭菜園でも栽培できる唐辛子が、それなりの施設が無いと製造できない塩に代わって調味料として普及した）、これといった産業の発達していない李氏朝鮮側は自国の女性を清国に貿易品として輸出している。　韓流歴史ドラマと現実の歴史はかなり違っていて、清側は特に衣服用の布を色染めすることを贅沢行為として禁止しており、李王朝関係者など国の特権階級以外は原則として染めていない白地の布の服しか着用が許されていなかった（・・・使っている間に汚れていくこともあって純白とは程遠い）りするのですが、庶民の女性でも清に輸出される際には李王朝の所有物ではなくなり清側に所有権が移るといった理屈で色染めされた服の着用が認められるようになっていたりもしました。　このことは、日本に併合される直前といっていい時期に日本から朝鮮半島に渡った日本人写真家に限らず、当時、朝鮮半島を訪れていた外国人の撮影した写真などに残っている歴史的な現実だったりするのですが、韓流歴史ドラマを真実だと思い込んでいる日本のお嬢様方などが知らない現実かもなあ？と思わないでもありません　・・・　張りぼての作成に金と時間を投入して”こうだったらいいのにな”を捏造している間に、自分でも張りぼてが実物だと思い込んでしまうあたりは半島思考の伝統芸かもしれませんが（笑）。　さて、清王朝は鎖国していましたから、当然、その支配下にあった李王朝も鎖国していましたし、同時期に鎖国状態というか徳川幕府が海外貿易を基本的に独占して長崎の出島に海外との直接窓口を集約していた日本と違って、少なくとも朝鮮半島に出島に相当するシステムは登場せず、清王朝経由の清王朝側が検閲済みの情報しか持っていませんでしたし、地理的に考えても清王朝や日本より欧米列強の知識や情報が朝鮮半島にどこよりも早く伝播するわけがないのは理屈というものでしょう　・・・　日本国内の左派系歴史学者は針小棒大の解釈が大好きな上に徳川幕府も海禁ではなく鎖国していたことにしたがります（笑）。　もっとも、鎖国していた清王朝でしたが、世界中に植民地を求めて勢力を拡大していた欧羅巴諸国と地理的にも、中国、日本、朝鮮半島の中では最初に接触して鎖国体制が崩れ、アヘン戦争に象徴される欧羅巴勢の武力を伴う侵出に国土が蚕食されるようになていきましたし、徳川幕府の幕藩体制が崩壊していった理由の一つに”あれだけ強大な清国がアヘン戦争で数隻の軍艦を送り込んできた英国に負けた”という精神的なショックが（漢文を教養としていた）日本の支配者階層である武家や公家の間に生じたことがあったのは確かな話だったりします。　ま、清国の軍事的な敗退に伴い上海などにヨーロッパ諸国の租借地が誕生したことや、実際に薩摩藩や長州藩などが英国や仏蘭西などとの局地戦を経験したことで、自分たちの学んで信じて来た中国伝来の（軍学を含む）学問や、戦国時代の弓、槍、刀、火縄銃などを想定した軍事力が時代遅れの代物になっていることにも危機感を持ったということですが、具体的にはキルレシオに極端な差が生じている現実をどのように打開するか？考える人が武家を中心に短期間で増加したということ。　ここでいうキルレシオというのは、例えば１００人対１００人で、欧羅巴勢の軍隊と日本の軍隊が、思い思いの武装をしそれぞれの戦術で戦争をした場合、欧羅巴側の兵士が一人戦死するとき日本側の兵士は何人戦死するか？と言った比率のこととざっくりと考えてもらえれば十分ですが、一般論として、優秀な武具で武装し、無駄を省いて洗練された高度な戦術を使いこなせる側の方が死亡率は低くなります。　中東あたりで、ゲリラ勢力と亜米利加の正規軍が戦争すると、米兵側一人の戦死に対してゲリラ側に２００名程度の戦死者が出る事例さえ実際に生じているのですが、幕末の頃の主力火器は日本側が弓矢に火縄銃と小口径で先込め式の大砲（？）程度だったのに対して、欧羅巴側は薬莢を使い銃身内に螺旋状の溝（ライフリング）を切ることで弾丸の破壊力と飛距離を伸ばすことに成功した軍用ライフルを実戦配備し大砲もアームストロング砲に象徴される改良が進んだ大口径で飛距離も破壊力や命中率も日本側の主力火砲を圧倒する代物が主力になっていたのでした。　つまり、日本の主力兵器が２０～３００メートル程度を有効射程距離として停滞していたのに対して、欧米列強の軍隊ではそれよりも有効射程距離も殺傷力も高い武器が普及していて、日本側の攻撃が届かない離れた距離からでも一方的に弾丸や砲弾を正確に撃ち込むことができるワンサイドゲーム的な様相を呈していたということで、少なくとも日本では、そうした現実に直面した武家勢力から開国して欧米列強の情報を収集し、軍事的な劣勢を打開するしかないと考える人が短期間で増えて主力になり、徳川幕府の大政奉還から明治政府の成立あたりまでの内戦が短期間で終息したわけです。　明治政府が自らの正当性や功績などを主張するときに、意図的に敵役的な存在である徳川幕府を誹謗中傷することは”勝者が歴史を作る”という現実からしても分かりやすい話ですが、近代的な軍事関連以外の江戸時代の文化文明の水準に関して言えば”（産業革命の原動力となった）蒸気機関の発達と普及以外は、ほぼ遜色がない水準”であったことと”文盲率は欧米の方が高い（＝日本の方が寺子屋や手習いといった庶民教育が普及していた）”といったことは否定するだけ野暮でしょう　・・・　これも左系の歴史学者などは否定したがりますが（笑）。　いずれにしても、欧米の軍事力に実際に触れた日本では開国に舵を切り、従来の中国文化から欧米文化へ急速に乗り換える決断をし、富国強兵、殖産興業といった当時の明治政府のキャッチコピーというかスローガンが分かりやすいですが、国の近代化を進めることで欧米列強の植民地と化すことを回避する道を歩むことを選択したわけですが、同時期に清国や李氏朝鮮はそうは考えなかったし、日本のように欧米列強の文化を急速に受け入れ普及させる選択もせず、昔ながらの社会体制や学問などを可能な限り堅持することを選択したわけです。　ちなみに、清朝末期の清国と江戸時代末期の日本の経済力を比較すると、清国は日本の約１０倍を誇る世界屈指の経済大国で、人口は（だいたい何時の時代でも）日本の１０倍以上という人口大国でもありましたから、当時の小日本のような危機感を国のトップが持ちにくかったのかもしれませんが、当時は良くも悪くも”弱肉強食”を旗印に欧米列強が武力を背景に世界中を植民地化していった時代ですから、欧米列強に軍事的に対抗できなければ、早晩、植民地化される時代だったと言えます。　ここで極東地域の地理的な不幸として、帝政露西亜の領土と国境を、日本も清国も接していたことがあり、帝政露西亜が勢力を拡大するとき、北は氷に閉ざされた北極圏ですから論外として、西に覇権を求めれば先進地域である欧羅巴諸国と武力衝突して劣勢に追い込まれることが多く、南のアラブ勢力圏は（十字軍以降の宗教戦争の色合いもありますが）植民地獲得競争で先行していた他の欧羅巴勢力やイスラム勢力の抵抗があることではかばかしくなく、消去論的に、比較的文化が遅れていて産業革命も生じていなかった極東方面へ活路を見出すことになったと言えます。　ただ、清国は帝政露西亜から見ても大国でしたし、モスクワから極東まで、飛行機が実用化されていない時代だと陸路にしても海路にしても首都から遠すぎて移動に時間がかかることで、大規模に軍を派遣しようとすればするほど、時間と金が立ち塞がることも難点となっていたのですが、清国が英吉利や仏蘭西といった欧羅巴勢力の軍事侵攻と植民地化政策によって弱体化してくると、清国など国境を接している極東地域の植民地化競争に乗り遅れることは、欧羅巴における相対的な地盤沈下を意味することにもなるだけに、本格的に極東地域にも手を伸ばすことを決断することになります、　具体的には、シベリア鉄道の延伸と複線化などによる輸送能力の向上強化で、シベリア鉄道の敷設が経済発展もさることながら植民地獲得競争を念頭に置いた軍事利用（＝兵員、兵器、軍事物資などの高速大量輸送）の為の国策事業であり、採算を度外視した大陸横断鉄道網を構築したわけです　・・・　少なくとも、帝政露西亜時代に、旅客からの乗車券収入や商用物資の運送料だけでシベリア鉄道を敷設し、維持運営するための費用などは賄えていません。　別の視点だと、明治政府が日露戦争をあの時期に開戦した理由も”シベリア鉄道が極東まで全線開通してしまうと欧羅巴の露西亜軍の精鋭が短期間に大量に送り込まれるようになり、後方からの補給物資なども大量に輸送することが可能になるため、ただでさえ低い勝ち目がさらに低くなる”といった判断が支持されたためだったりします。　つまり、当時の極東地域は北からは帝政露西亜、南からは英吉利や仏蘭西といった欧羅巴勢力、東からは亜米利加という植民地獲得競争のホットスポットになっていたということで、軍事的、経済的に対抗できなければ何れかの勢力の軍門に下って植民地化を受け入れるしかない状況に　・・・　と少なくとも同時の日本の首脳部は考えていたということですし、私もその考えに納得しています。　ここで、興味深いのは、現在進行形の中華人民共和国の”一路一帯”政策が、帝政露西亜のシベリア鉄道敷設政策と大差が無いというか逆方向へ鉄道網を拡張してゆく焼き直しということですが、経済大国を自負する中華人民共和国をしてもその建設費用や維持管理費を単独で負担することは難しいようで、経済活性化を前面に諸外国の金を使って計画を進めようとしていることは比較的知られた話になりますが、中国高速鉄道が敷設されたということは時速３００キロを越える速度で完全武装した兵員が送り込まれるインフラが整備され、その運用管理権は出資者ではなく中華人民共和国というか中国共産党と人民解放軍が持ち軍事利用を否定していないことは御存知の通り。　新幹線の発祥国である日本でさえ、旅客収入や民間物資の運送などで生じる利益だけで新幹線を延伸し維持管理を行うためにどのくらいの年月が必要となったか？とか、新幹線でさえ東海道新幹線に代表されるドル箱路線とミニ新幹線に象徴される採算が厳しい路線が生じていることを考えるとき、短期間で採算を度外視してユーラシア大陸横断鉄道の南側路線として延伸している中華人民共和国の新幹線は、主に軍事利用を想定したシステムであるからこそ採算を度外視することができていると考えた方が自然だと、私は、思います　・・・　日本の左系はそう思わないとは思いますが。　それはそれとして、幕末の頃から開国に転じて海外の情報を直に積極的に導入するようになった日本からすると、清国や李王朝の中華思想や儒教思想などは浮世離れした現実味に欠ける思想と考えられるようになり、こんな連中に付き合っていると国が亡ぶと判断した知識人たちが”脱亜入欧”を唱えるようになり、単独で生き残る道を模索するようになっていくのですが、そうなると亜細亜の盟主を自負している清国からすれば小日本ごときが生意気なということで何かとぶつかる頻度が上昇していったのでした。　当然のように、朝鮮半島の李王朝は盟主であると同時に、国力を比較すると経済的にも人口の面でも（＝投入できる兵員数なども）１０倍を越えている清国が日本なんぞに負けるわけがないと考える人が多く、日清戦争が勃発すると李王朝の首脳部は清国側に付いたのですが、その時点で、”Kの法則”が発動したと言えます。　日清戦争の前夜、清国の海軍が独逸から輸入した世界最高水準の戦艦である定遠などを日本などに”親善”目的で送り込んで武力を誇示し、日本海軍は定遠、鎮遠など主目標を絞り込むことになったというのは比較的知られた話で、日清戦争における”まだ沈まぬや定遠は、・・・”の逸話を産むことにもなります。　日清戦争といっても、陸戦では朝鮮半島から撤退したものの北京が陥落したわけではなく、海戦で大敗したといっても日本側の経戦能力では長期戦はまだまだ無理な時期でしたから、清国側からすれば局地戦で負けて、朝鮮半島の利権が怪しくなった程度の認識だったのかもしれませんが、”日本程度の国に負けた”ことで欧米列強の清国に対する圧力は増大していくことになりました　・・・　逆に言えば、当時の欧米列強で日清戦争で日本が圧勝すると考えていた人が少数派だったということですが。　ただ、近代国家へと急速に進化してゆく日本は、極東地域における植民地獲得競争の覇権争いをしていた欧米列強にとっても目障りな存在となっていったということで、英国のように日英同盟を締結して日本を極東におけるイギリスの大番頭扱いにする組み込み懐柔派と、帝政露西亜のように武力で押しつぶして植民地化してしまう武断派などに対応が分かれていくことになります。　もちろん、国際政治ですからそれほど単純な話でもないのですが、既に清国の領土に入り込んでいた欧羅巴列強と帝政露西亜では立ち位置が異なっていたのは確かなことですし、七つの海を制覇して世界帝国を構築していた英吉利にしても極東地域で（空軍の存在しない時代に）制海権を確保することの難しさは看過できず、帝政露西亜の極東地域における南下政策にも釘を刺したかったという程度のことは書いていいかなと。　日清戦争が終結した後、三国干渉などもあり、日露戦争が不可避の状況になっていったのですが、その際、また李氏朝鮮は”帝政露西亜という大国と小日本が全面戦争を行ったら小日本なんぞが勝てるわけがない。日本と言う国は無くなってロシア領になるだろう”と考えて行動し、またも”Kの法則”を発動させたのでした。　そのおかげもあって、日本海海戦でバルチック艦隊を潰滅させて圧勝し、陸戦でも善戦して露西亜軍を敗退させた段階で亜米利加の仲介で戦争を終結させて講和を結ぶことに成功するのですが、軍事的に圧勝状態で戦争が終結したにも関わらず外務省の読み違えというか害夢省の売国行為で戦後賠償などがロシア側が驚くくらい日本にとって不利な条件で妥結することになり、日比谷焼き討ち事件のような暴動が発生したりもしたのですが、極東地域における覇権を日本が掌握することを欧米列強がとりあえず承認することにはなったのでした。　ま、確かなことは、日清戦争でも日露戦争でも李王朝は旗色を鮮明にして参戦することもせず、元祖蝙蝠外交を繰り広げたのですが、日露戦争の終戦協定におけるポーツマス条約（１９０５）で国際社会が日本の保護国とすることを承認するに至り、後に盟主の清国が滅んで、孫文の率いる中華民国が建国される頃（１９１２）には主要国からは独立国として相手にされなくなります。　清国が滅んで中華民国が建国したことで中国は体制の立て直しと近代化にやっと本格的に着手することになるのですが、だからといって欧米列強が植民地獲得競争を止めたわけではなく、亜細亜だと、タイ王国と日本、中華民国くらいしか独立国として欧米列強が承認する国が無くなっていました。　実際、第二次世界大戦前夜の世界地図を見てみれば、日本が南方の東南アジア諸国を侵略しようとしてもそこには欧米列強の植民地しかなかったということで、日本と朝鮮半島の併合を国際社会が公認したというのも日本が朝鮮半島を領有することを欧米列強諸国が認め、その一つの見返りとしてフィリピンをアメリカが実質的に支配することを認めたということにもなります。　というか、日本の亜細亜進出や朝鮮半島併合が侵略戦争だというのなら、カメハメハ王朝が統治していたハワイ諸島をアメリカが軍事占領して王政を廃止させ（１８９３）て自国の州に組み込んだ行為（１８９８）も亜米利加の海外植民地獲得行為であり侵略戦争以外の何物でもないと、私は、思いますし、ハワイを中継基地にしてフィリピンを亜細亜の拠点にしていったというのも、亜米利加が実際にやった侵略行為ということで、そう考えていくと、中国大陸の植民地化を亜米利加が考えるとき、日本を懐柔するか軍事的に制圧して前線基地化することは不可避の戦略になることが分かります。　まあ、そう考えると、朝鮮半島を露西亜か中国が領有することをアメリカが黙認し、その見返りとして台湾の独立国としての地位の回復を国際社会が公認し、亜米利加が日本～台湾ラインの実質的な支配を確立する程度のことは既定路線になっていそうな話ですが、露西亜の北方領土絡みの言動なども考えると、朝鮮半島は従来のような南北ではなく少し歪な東西に分かれた独立国に再編成することで話がまとまっているのかもしれません。　つまり、韓国と北朝鮮の併合騒動の結末は、西側を中華人民共和国が東北側を露西亜が保護国とすると言った形で周辺諸国の間で話が付いているのではないか？ということで、その前提として、韓国経済を破綻させて北朝鮮の経済水準に近づけ、経済的にバックアップしていた日本と軍事的にバックアップしていた亜米利加は朝鮮半島から手を引き、それに見合った見返りを手にする再編計画が実行段階に入っている可能性があるということ。　それが邪推のしすぎであったとしても、既に韓国の言動に日本人の大半がマジ切れして久しい状況になっていて、亜米利加もメリットよりデメリットが大きくなり過ぎたと判断した上で日本や台湾の上層部には従来とは異なる指示を出している節があるだけに、何も知らないで踊っているのは韓国の国民と日本の左派勢力だけなのかもな～と。　で、愛知県知事が公認した表現の不自由展に話が戻るわけですが、日本国の象徴である天皇陛下の肖像写真に火を放った上に土足で踏みにじる映像が従軍慰安婦像と同列の芸術作品であり、それを日本人の税金を使って公開展示させないことは表現の自由に対する弾圧であると主張する連中に居場所は無くなっていくだろうなと。　政治的なメッセージ性の高い物品を芸術作品と考えるかどうかという話より、日本人かどうか？というアイデンティティや価値観の問題が今後は優先して考えられるようになるくらい、激動の変化がそこまで迫っていると、団塊の世代以降の日本人は考えておくべき時期に入っているということですが、国際的な陰謀は存在しないという人には荒唐無稽な話かもしれませんし、私も他人を（特に一部の団塊の世代を）説得する気は爪の先ほどもありません（笑）。　が、再び、サヨウナラ、坑道のカナリアたち。サヨウナラ、韓国。　そして、日本の若い衆には、平和ボケしていてもよかった時代は終わってますよと。

2019.08.05

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オはオタクのオ　第0049回　明日は学園祭の初日ですから。

オはオタクのオ　第0049回　明日は学園祭の初日ですから。　京都アニメーションへの放火殺人事件（2019/07/18）は、これを書いている時点で３４名の死者が出ており、重軽症を負った人も多数に上っていることから、本来はもう少し事態が鎮静化してからの方が何を書くにしても無難なのかもしれません。＊２７日までで、死者は３５名になった。　実際、「後になって”洒落や冗談”では済まない」発言をネット上に既に残している人も目に付いていらっとして書いているということですが、私としては私なんぞよりよほど若く、夢を形にできる才能を持ち合わせていながら、志半ばで夢を絶たれて亡くなられた被害者各位には哀悼を、一命はとりとめたものの心と体に大きな傷を負われた被害者各位には心からの御見舞の意を述べさせていただきたいと思います。　事件の直接の加害者が、心神耗弱などで免責され法的に処断されない可能性を含めて、今回の日本の明治以降の犯罪史でも稀有な大量殺人事件がどのような結末を迎えることになるのか、正直、これをかいている時点では見当もつかないのですが、先の話になるとは思いますが”小林さんちのメイドラゴン”の続編などが世に出ることがあれば、その時点でやっと京アニが復活したと言えるのかもしれないなあとかあれこれ考えてはいます。　それはそれとして、京都アニメーション放火殺人事件に関して、明らかな釣りというか逆張りをすることで閲覧数を稼ぐとかいった”まあ、やらかす鬼畜系は多かれ少なかれ出て来るだろうな”と予想していたネットの反応とは別の意味で、イラっとしたというより、その社会的な立場などから考えても人間性を疑ったのが、「インサイトナウ」に2019年7月21日付で掲載された純丘曜彰（すみおか・てるあき）大阪芸術大学教授の「終わりなき日常の終わり：京アニ放火事件の土壌」というコラム。　一応、大阪芸術大学の教授というのは、専門分野の研究者であると同時に教育者でもあるハズだと私は思ったのですが、彼のコラムでは、　京都アニメーション作品に多い「学園物」ジャンルがヒットした理由を、中学・高校生活が大半の人にとっての「共通体験」だからだと指摘した上で、「学園物は、この中高の共通体験以上の自分の個人の人生が空っぽな者、いや、イジメや引きこもりで中高の一般的な共通体験さえも持つことができなかった者が、精神的に中高時代に留まり続けるよすがとなってしまっていた」と作品ファンの心理や言動を独自の視点で推測した上で、　さらに、「終わりの無い学園物のアニメにうつつを抜かしている間に、同級生は進学し、就職し、結婚し、子供を作り、人生を前に進めていく」「こういう連中に残された最後の希望は、自分も永遠の夢の学園祭の準備の中に飛び込んで、その仲間になることだけ」と続けて、「人生がうまくいかなかった連中は、その一発逆転を狙う。だが、彼らはあまりに長く、ありもしないふわふわした夢を見させられ過ぎた。だから、一発逆転も、また別の夢。かならず失敗する。そして、最後には逆恨み、逆切れ、周囲を道連れにした自殺テロ」といった調子で、京都アニメーションとアニメファンと、昨今の連続殺傷事件や今回の放火殺人事件を大阪芸術大学教授ならではの視点と論理展開で結びつけて文章化している（＊これを書いている時点では、初回掲載のコラムは削除されている）。　まあ、ここまでならば、もっとひどい独断と偏見に満ちた誹謗中傷の類を浴びせられつづけてきているオタク第一世代としては、”はいはい、さすがは年収が1千万円を越えておられる大学の教授様からすれば、自分より稼げていない下々の者なんかゴミムシ以下の存在なんでしょうなあ～。特にこれだけのことをおっしゃられるこの大学教授様は人生で失敗したことも挫折したことも無く、当然、どん底から一人で他人からすればささやかなナニカを心の支えにして耐え忍んだり這い上がったりした敗者の経験なんてないんでしょうな～。とかいったネガティブシンキングでブラックな思考を誘発する程度のコラムに過ぎないと言えなくもないかなと。　が、　この大学教授様は、そうした理論展開の上で、京都アニメーションについても続けて言及し、「いくらファンが付き、いくら経営が安定するとしても、偽の夢を売って弱者や敗者を精神的に搾取し続け、自分たち自身もまたその夢の中毒に染まるなどというのは、麻薬の売人以下だ」と記述し、「まずは業界全体、作り手たち自身がいいかげん夢から覚め、ガキの学園祭の前日のような粗製濫造、間に合わせの自転車操業と決別し、しっかりと現実にツメを立てて、夢の終わりの大人の物語を示すこそが、同じ悲劇を繰り返さず、すべてを供養することになると思う」と、思わず目が点になる理論展開の末にコラムを結びやがったのでございます。　大阪芸術大学の学長様たちが、34人も死者が出た放火事件を受けてこんなことを書く人物を”教授”で雇用し続けるのならば、世界中のオタクの少なくとも２／３は敵に回すことになるのではないかと　・・・　・・・　ま、アニメの製作なんぞ我々の対象としている芸術に比べれば格下どころか、芸術とは無縁で無関係な代物でしょ？と大阪芸術大学の上層部は真顔で反論するのかもしれませんが。　私的には、芸術家として不世出の天才だとしても人間として失格しているこの教授を”教育者”として容認しがたく、研究者としての資質にも致命的な欠陥があると思いますが、資質と言動に問題ありということで懲戒免職にされて、社会的な地位と高収入、老後の安定した年金を失った上でなお、この上級国民の教授様が同じ内容のコラムを書けるのか？全てを無くした後に底辺から這い上がって来ることができるのか？どうかを見てみたい。　夢の終わりの大人の物語を示せ？と御高説を垂れているこの教授様が提示した、夢の終わりの大人の物語の一つの断片が、”老後資金２０００万円（以上必要）騒動”であり、幸いにして2000万円を超える資金の目途がついている場合でも、すべての前提を覆してしまうであろう”地球温暖化（或いは寒冷化）に伴う極めて短期間の内の地球環境の激変”などではないかと。　明日のことがわからない激変の時代ということでは、戦前、戦中、戦後の混乱期といった、それこそ今日食べるものにも不自由し、明日まで生きていられるかどうかもわからないような日々の中、特に都市の大半が廃墟と化した敗戦直後の日本で日本人の先達たちが、それでもなお立ち上がってくれたのは、目の前の光景の中には”ありもしないふわふわとした夢”を見てくれた人たちがいたからではないのか？　第二次世界大戦が日本の敗戦で幕を閉じた直後から、餓死者が出るレベルで戦後の食糧難時代が始まったのですが、その際、海外に移民していた日系人の有志が祖国の窮状を知って”自分たちが食べる三度の御飯を二度にして”、彼ら自身も大戦中に敵対し戦後は敗戦国となった日本からやってきた日系人として扱われ苦労しているのに、できる限りの手を尽くして食糧援助をしてくれたことを思うとき、この大阪芸術大学の教授様は”（芸術家としてどうかは知りませんが）人として駄目な部類で、教育者たる資質がそもそも欠落している”としか私には思えません。　現実が苦しい時ほど、笑って明日を夢見て踏ん張って生きていくしかないのが人間であり、それを第二次世界大戦の敗戦という経験で嫌でも体現してきたのが日本人ではないかと私は思うのですが、この大阪芸術大学教授様の言動を目にしたとき、こんな思考をする人物が学生を教えて人格形成に関わる教授でいられる芸術系大学の廃止や大幅な公的補助の削減は必然というより必要不可欠の教育改革の手段ではないかと。　実際、大阪芸術大学の教授様のコラムの内容で、一応、専門分野といえば専門分野だろうし、調べればすぐに分かることなのに、この人は調べて裏付けをとることもなく、個人的な思い込みを前提に理論展開をするという、学術論文の類を書く上で絶対にやってはいけないことをやらかしているという点でも研究者失格だなあと。　具体的には、京都アニメーションでヒットして、ちょっとした社会現象にまでなった作品といえば”涼宮ハルヒの憂鬱”、”らきすた”、といったあたりで、学園もののジャンルではあるのですが、前者はSF系のライトノベルが原作で、後者は漫画が原作といった具合に、京都アニメーションのオリジナル作品ではないという明確な事実があります。　というか、京都アニメーションの作品が社会現象になるレベルでヒットして以降の大半の作品が”原作あり”で、京都アニメーションはそうした原作作品を丁寧にアニメ化していくことで評価を上げ、ファンを増やしていった会社ということもできます。　そして、原作の小説や漫画で描かれている学園生活というのは、既に原作の段階で浮世離れしている代物で、それをもって”ああ、自分たちの中学、高校時代にこんなことがあったよな～”と真顔で言う人がいるとすれば、それこそあぶない薬をやりすぎて脳味噌がどうかしているのではないかと私は思います。　つまり、原作で描かれている学園生活というのは”こうだったらいいのに”とか”こうだったらおもしろいのに”といった「実際の中学、高校生活ではありえない」世界を描いた　・・・　オタク第一世代的には”スクールファンタジー”に区分される話と言えます。　それこそ、リアルな高校生活を描けとか、現実に根を下ろした作品をとかいうのなら、”ドラゴン桜”でも読んでいればよろしいのではないかと。　理論展開で、さすがは大阪芸術大学の教授だけあって現代国語は赤点レベルだと思ったのが”イジメや引きこもりで中高の一般的な共通体験さえも持つことができなかった者が、精神的に中高時代に留まり続ける”という部分で、本当に一般的な共通体験さえ持つことができないレベルでイジメにあったり、イジメなどが原因で引き籠った連中が、それが起こった中高時代に留まりたいと思うだろうか？さっさといろいろな意味で卒業して不愉快な経験をなかったことにしたいと考えているとなぜ大学教授様には思えないのだろうか？　というか、この思考展開、理論展開を読んでいて”ああ、この大学教授様は、イジメる側でさんざんいままでイジメてきた人だからこう考えるのか”と妙に腑に落ちたのですが、京都アニメーション作品の学園ものが支持された一つの理由が、”ああ、こんな自分の現実の中高生時代には無かった学生生活をすごせたら面白かったろうなあ～”と思った人が、イジメ被害者や引きこもりに陥った人に限らず多かったからではないかと。　日本の社会に限らず、ピラミッド構造の組織においては、成功を手にする人は必ず失敗を手にする人より少なくなりますから、大阪芸術大学の教授様のように、失敗も挫折もせずに人生を過ごす人よりも、失敗し踏みつけられそれでも生きていかなければならない人生を過ごしている人の方が多くなるのも道理ではないかと。　大学と言う箱庭社会の中に隔離されている大阪芸術大学の教授様ならではの人生観だよな～と思ったのは、”終わりの無い学園物のアニメにうつつを抜かしている間に、同級生は進学し、就職し、結婚し、子供を作り、人生を前に進めていく”という部分で、これはそのまま大阪芸術大学の教授様は御自分が書かれた通りの順風な人生を計画通りか計画以上に歩んでこられたのだろうなあと。　進学したものの、留年したり退学したり、時には別の学校を受験しなおしてみたりする人も実際に出てきますし、就職してもブラックすぎて退職したり転職する話も昨今では珍しく無くなり、結婚に（金銭面などの障壁で）たどり着けない若い衆が社会問題になっていて、子供をつくりといっても不妊で悩むカップルは増加の一途で、・・・・・・、といった現実もある上に、それらをクリアして全てが順調に行っていても、定年制度が崩壊したり年齢不問で肩をたたかれて早期退職したり、不倫やら熟年離婚のどんでん返しに遭遇したり、親の介護問題、自分自身の老後問題、重大な後遺症の残るような病気や怪我がある日突然降りかかったり、育てた子供が金属バットで殴りかかってきたり他人様を殺傷したりする話も絵空事では無く実際に起こった事件であることは言うまでもありますまい。　人生には、思い通りにいかないことが山のように押し寄せて来るだけに、とあるヒット曲のように一歩進んで二歩下がりどころか、圧倒的な理不尽の前に立ちすくむしかない状況に追い込まれることも珍しくないと、私は自分自身のささやかな半生を振り返ってみるだけでも断言できますが（笑）、そういった人生の停滞期に、雨宿りのできる”帰ることのできる世界”を持つことを芸術家が否定するとすれば、それはもう魂の声を何らかの形にするのが天職である芸術家にとっては自己否定であり自殺行為ではなかろうか？　産まれてから死ぬまでの間に人の心に生じる喜怒哀楽、人生で嫌でも遭遇する老病死苦、そうした人生のはざまに目にする花鳥風月といった人知を超える天然自然の類などなどに誘発されて、古来、どのくらいの人が詩を残し、唄を口ずさみ、舞い踊り、楽曲をつくり捧げ、彫像や絵画などを残してきたことか？　或いは、大阪芸術大学の教授様がコラムで力説される”偽の夢を売って弱者や敗者を精神的に搾取し続け、自分たち自身もまたその夢の中毒に染まるなどというのは、麻薬の売人以下”の部分に至っては、古文も漢文も人間性も赤点だなこの人はと思いました。　では、大阪芸術大学の教授様は、さんざん罵倒している弱者や敗者に対して、京都アニメーションが与えた夢以上の何かを与えて来たのか？ということで、自分は弱者や敗者を罵倒するだけで手を差し伸べることも道を示すこともせずにおいて、大学教授様の言うところの”偽の夢”であったとしても、手を差し伸べてきた（それこそ、”おもしろいでしょ？”、”よろこんでくれるかな？”、”どうだすごいだろ～！”と同族たちに祈りを込めながら作品を送り出し続けてくれた）京都アニメーションのスタッフたちを麻薬の売人以下と言い放つ人物が、芸術家である以前に人間として失格していると私は思いますし、なぜ大阪芸術大学はこういった人物を”人を教え育てる教育者”でもある教授として雇用しているのかわかりません。＊当該コラムが大炎上したことで、大阪芸術大学の教授様は自身の文章が下手で誤解を招いたと主張した上で、「私は心の底からこの度の放火事件を悲しんでいます。悲しんでいないわけがない。こんな形で命が奪われ、壊されていいのか」とし「間違っても京アニは『麻薬の売人以下』ではありません。京アニはそれと戦ってきた会社です」とも述べた。＊が、大学教授の看板を掲げてコラムを書いておいて、それが大炎上すると、文章が下手だから文章中には書いていない真意の類を誤解されたとか言い出すのはいかがなものかと私は思いますし、初回に掲載されたコラムの内容や炎上後の弁解だと、”学園もの”アニメの制作に関わっている業界の多数派がコラムで批評した対象であり、京都アニメーションを除く他のアニメ製作会社やアニメの制作にかかわってきた関係者は”麻薬の売人以下”ってことになるんですが？＊「そもそもこの（”麻薬の売人以下”の段落において）比喩の主語に『京アニが』とは書いていません」と反論することは無理筋で、”京都アニメーションなど幾つかのアニメ制作会社は含まれていないが”とも書いていない以上は、冒頭から末尾までの文章の流れなどから解釈すれば、京都アニメーションと名指しでは書いてないだけで京都アニメーションを含むアニメ制作会社やアニメ業界全般を対象にしての考察であり評論であると解釈するのが筋ではないかと。　偽の夢というけれど、漢文の”胡蝶の夢”や”一炊の夢”などで昔から語られてきたように、或いは昨今のバーチャルリアリティ技術の躍進の成果としても、夢と現実の境目は実は明確なものでは無く、夢を仮想現実と言い換えてもいいですが、人工知能が加速的に発達を続けている世界で人工知能が最後まで手にすることができないのが”夢を見る”こと”夢を託す”こと”夢を継ぐこと”ではないかと。　フィリップ・K・ディックの”アンドロイドは電気羊の夢を見るか？”ではありませんが、ほとんどの能力が人間以上となったレプリカント（人造人間）と人間を見分ける術は？と考えたとき、人工知能が夢を見るようになったとき彼ら彼女らは人類を越えていくことになるのではなかろうか？そして、大阪芸術大学の教授様のコラムを読む限り、その頃の社会的に成功している上級国民は人工知能よりも弱者や敗者のことが理解できなくなっているだろうなとも。　まあ、いみじくも大阪芸術大学の教授様が”永遠の夢の学園祭の準備の中に飛び込んでその仲間になることだけ”とか”ガキの学園祭の前日のような粗製濫造”と揶揄するのは、オタク第一世代に対しての論評ならば、言いえて妙というもので、確かに１９８４年の、あの”明日は学園祭の初日ですから”という前夜は、ず～っと”思い出せば帰ることのできるあの日あの時”であり、そこでは永遠の友引高校の生徒でいられることは、少なくとも私にとっては幸運ですけどね。　いくら当時でも、そんなSFちっくな高校生活が実際に日本のあちこちであったわけではないのだけれど、アニメ映画”ビューティフルドリーマー”をリアルタイムで映画館で見たオタク第一世代にとっては、実際の高校生活よりも”こうだったらオモシロかった”高校生活の一コマですし、次の世代の世界中のオタッキーな人達にとっても、何かの折にくすっと思い出し笑いをして”先輩たちの高校時代がうらやましい”と少しでも思ってもらえているとすれば嬉しいですけどね。　大阪芸術大学の教授からは”麻薬の密売人以下”と切り捨てられた、夢半ば志半ばであまりに早くあちら側に逝かれた３５名の京都アニメーション関係者の皆様には、或いは既に鬼籍に入られて久しい先達の方々にも、私も時期が来れば嫌だと言われてもそちらに参りますから、今しばらく新作を作り込みながらお待ちいただければと思います。　では、いずれ夢の続きで。

2019.07.26

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オはオタクのオ　第0048回　吉本事変（そこじゃないでしょ）

オはオタクのオ　第0048回　吉本事変（そこじゃないでしょ）　韓国が法律よりもローソクデモに象徴される国民感情を優先して政策を捻じ曲げたり、平気で過去に確定した法律の裁定を引っ繰り返したりしがちなことから”国民情緒法”が優先される国と揶揄されているのは比較的知られた話ですが、吉本興業と所属タレント（宮迫、田村亮）の２０１９年７月２１～２２日にかけての攻防を見ていると・・・”日本も大差がないというか、日本のTVも「Kの理論」全開じゃん？”と思ったのでした。　これを書いている時点で、なぜか吉本興業の社長と会長が謝罪して給料を期間限定で半減させる云々とし、解雇を宣告されていた宮迫、田村の処分は取り消しという、”はあ？”という超展開になっているのですが、宮迫、田村が２１日に自ら主宰して行った謝罪（？）会見において、具体的には何一「物証」を示さずにおいて、”こういうことがありました”、”彼らはこう言いました”、”私たちはこう思います”と涙ながらに一席ぶっただけですべてがチャラになるとは悪い冗談でしょうに。　そもそもの事の発端は、吉本興業に所属している芸人の”闇営業”と呼称される、反社会的集団（暴力団、半グレ、窃盗団などなど）なども開催する宴会等に出向いて司会をしたり芸を披露して報酬を受け取る行為が発覚したことで、直接の窓口になっていた吉本所属の芸人に関しては今回の闇営業騒動が表社会に露見した直後に解雇されています。　ちなみに、芸人が興行を行う場合、場所、日時、参加する芸人の名前、料金といったことを、興行を行う地域で告知し集客を行う必要が昔からあり、雑多な客が集まればなにかと暴力沙汰を伴う騒動や詐欺、盗み（置き引き、巾着切り、強盗などなど）といった雑多な揉め事が発生しやすくなる現実があり、良くも悪くも興行をスムーズに行うために興行先の（いわゆる”地回り”の）地域を縄張りにしているヤクザ屋さんなどが興行をしきってきた歴史が　・・・　遡れば平安時代の頃から　・・・　あるわけです。　逆に言えば、ショービジネスというのはヤクザ屋さんたちにとっては、ほぼ合法的な商売のジャンルと言えなくも無く、少なくとも受け取ることのできる利益に見合った分の働きだけでなく、ヤクザ屋さんが仕切っているから悪さをしたときに警察に突き出してもらえるとは限らないという（心理的な）抑止効果も期待できていたと言えます　・・・　まあ、大金が絡めば絡むほど、ヤとヤの間でトラブルが発生する可能性も出て来るそうですが、その場合も基本的に裏側だけで話が終わることになっているそうです。　が、近年、暴力団対策法が分かりやすいですが、ヤクザ屋さんを駆逐してクリーンな社会を作りましょうと公安、警察、司法関係者が昔ながらのヤクザ屋さん組織を合法的に取り締まり強化した結果、ヤクザ屋さんが手を引く現場が増加し、目端の利くヤクザ屋さんたちは東南アジアなど海外へ活路を求めて侵出し、既にあちこちで基盤形成に成功している組織も珍しくなくなっていたりもします。　この場合、日本では法律で犯罪とされ懲罰対象となる行為が、海外の国や地域によっては完全に合法とか、現地の法律が未整備の間に荒稼ぎして合法的に資産形成をしてしまう、一種の”時差”を利用して現地で短期間の内にのし上がった経済に強い連中が勝ち組になってようです。　まあ、亜米利加におけるマフィアの発展の歴史を早回しで見ている気がしないでもないのですが、当初は黒かったりグレーゾーンの事業で荒稼ぎしたとしても、ある程度の資産形成に成功したら、その金を表の社会で合法的に運用して合法的な資産家になると同時に、黒やグレーな事業は売却するか畳んで足を洗ってしまえば”現地に顔の効く有力な資産家”しかいなくなるわけです。　そうなると、日本で法律でがちがちに固められて従来のグレー判定だったシノギまで黒とされて先細りになっていく上に、部屋を借りることさえ難しく、子供を学校に通わせることも何かと揉めるような日本にあえて戻る必要ってないんじゃね？と考える人が増加し、生活の拠点を海外に移しリッチな生活を享受する人生の選択が何も一流企業を定年退職してウハウハな年金生活を送っている人だけのものではなくなっている現実があるわけです。　歴史的には、第二次世界大戦直後、亜米利加軍が敗戦国の日本に進駐して占領政策を実施したとき、日本の（”オイ！こら！”の”特高警察に象徴される）公安、警察活動もまた占領軍の前に何もできない局面が多発し、外国人犯罪者を日本の警察官が取り締まって処罰することさえ事実上不可能だった時期さえあったのでした。　そうなると、犯罪被害者となった日本人は”泣き寝入り”するしかなかったわけで、それこそ現在も残る日米地位協定がもっと亜米利加にとって有利かつ強力に機能していたため、日本人の警察官は目の前で同胞が犯罪被害を受けていても”見て向ぬふり”を実際にしていた時期があったわけです。　もちろん、米軍の治安維持機関であるMP（ミリタリー・ポリス）なども稼働していたのですが、昨日まで殺し合っていた敵国の国民の権利と自軍の戦友の権利のどちらを優先したか？をここで解説する必要は無いでしょうし、敗戦国の民というのはいつの時代でもまともに扱われることがない存在で、それが嫌なら再度の戦争を行って戦勝国の国民になるしかないのですが、日本人が敗戦国の民でありつづけた方が自国にとってとて便利で何かと有利と考える国ほど”憲法９条を死守せよ！（＝間違っても日本人が第三次世界大戦などで戦勝国になるな）”と他国の憲法にまで口出しをしていることは御存知の通り。　まあ、日本の外務省が国連の定めた”敵国条項”から日本を除外しょうとしないでいるあたりで、身内に売国奴がいる日本という国は既に詰んでいるとも言えるのですが、日独伊三国同盟という第二次世界大戦における”（いわゆる）悪の枢軸国”の内、大戦中に散々足を引っ張った伊太利は真っ先に敵国条項の対象外となり、続いて西ドイツもNATOに加盟した段階で敵国条項の対象外となり東ドイツと統合した後も引き続き対象外となっていて、なぜか日本だけが未だに国連が公認している敵国条項を適用する対象国のままでいる現実があるわけです。　この敵国条項のおっかないところは、第二次世界大戦の戦勝国に対して日本が軍事行動を行ったと戦勝国側が判断した場合、一方的に敵性国家として処分できるという点だと私は考えているのですが、自由民主党などが改憲を行って憲法９条などを改訂して更新しよう！そのために国民投票を云々と言われても、”国連の敵国条項の対象国のままで何を寝言を言っているのか？憲法改正より前に敵国条項の対象外にならなければ地図から日本と言う国が消えやすくなるだけ”だと私は思います。　これを書いている時点だと、日米軍事同盟のおかげて国連の敵国条項の適用を免れているところがあり、日米軍事同盟を解消して日本がスタンドアローン状態になったときに敵国条項の対象国のままだと、たとえば中国が尖閣諸島周辺に送り込んだ公船という名称の軍艦や艦艇に対して、海上保安庁がピストルを一発撃ちこんだだけでも、中国が敵国条項の発動を宣言し、多国籍の有志連合軍で日本を袋叩きにして、再度、国連軍の名のもとに全面占領しても、戦勝国で分割して地図から消してしまってもどこからも非難されない国連公認の合法的な活動になるということで、いわゆる常任理事国の審議や”拒否権”の対象外だったりもします。　話を吉本興業の騒動に戻すと、暴力団対策法の強化などで暴力団に象徴されていた反社会的な組織は表社会から締め出されていったのですが、ヤクザ屋さんからすれば、日本がGHQの占領下にあって日本の警察組織が機能せず、日本人が犯罪の被害者になっても泣き寝入りするしかなかった時期に良くも悪くも治安を回復させ国民の権利を守ったのは法律の外側にいた俺たちであんたたちじゃなかったでしょうにと少なからず思っているのではないかと。　まあ、良くも悪くもヤクザ屋さんは受け取った金額分の仕事はかっちりこなす（ことで信用を得る）ので、無料で対応してくれるとは言うものの中・下級国民と上級国民とでは明らかに態度も対応までの速度も、対応手段も違う某・国営組織より頼りにする人が少なからず存在していたのですが、規制の強化でヤクザ屋さんが表立って揉め事に介入しなくなった結果として、不良少年が組織化された半グレやら、外国人犯罪組織などに対する裏社会の抑止力が事実上無くなって昔の常識が急速に通用しなくなったなあと。　で、吉本芸人の話ですが、芸人はかって京都を流れる河川の河川敷に仮設の（竹とか筵などで簡易に仕切った）小屋で興行を行っていた連中が最大勢力というか、出雲の阿国あたりが確立した阿国歌舞伎の頃から芸の一つの分野と認識されるようになったこともあって”河原者（かわらもの）”と呼称され、江戸時代に入って士農工商といった身分制度が厳しくなったとき、”どの身分に属するのか？”が問題となり、身分制度の外の存在とされ、ある意味でヤクザ屋さんと同じカテゴリーに区分されたわけです。　そして、芸事でも上流階級が保護育成した能や狂言などが演芸の一つの頂点とすれば、歌舞伎は庶民が支持して上流階級にも支持が広がったこともあって時代が下がるほど家元制度に準じた組織化が進んだのですが、庶民の娯楽の域を出なかったというか”寄席”などが主戦場となった落語や漫才、手品などなどの演芸は明らかに格下扱いされ続けた歴史があると言えます　・・・　ざっくりした話ですが。　もっとも、演芸というカテゴリーで底辺のままでいるか、能や狂言のような一種の芸術活動に準ずるところまで精進するか？は関係者の長年の努力に左右されるところが大きく、例えば、（古典）落語の業界で”闇営業”が話題になるか？と考えると、漫才ブームからこちらの漫才系の精進不足には酷いものがあるのではなかろうか？　全国各地で興行を行う場合、どうしても興行を行う現地の有力者の助力が不可欠だった時代が長く、そこから裏社会と芸能界のずぶずぶの関係が２１世紀に入っても続いた主因があるのですが、某・国民的な歌手にしても広域暴力団関係者と深い関係があったことは公然の秘密だったわけで、”反社会的な集団との関係を、大っぴらにしているようでは一般人から同じカテゴリーの人たちに区分されるリスクとデメリットがある”ので、芸能人は一般社会に属している堅気の衆から”見て見ぬふりをしてもらえる程度のグレーな交際を裏社会の住人たちとの間では心がけ”、そうすることで芸能人は一般人よりも巨額の金を手にしていながらも、その巨額の金の出所を深く追求されなかった”とも言えます。　実際、私が宮迫、田村の私的言い訳会見を耳目にして疑問だったのが”闇営業の１回のギャラとして１００万円貰った”のに当初は”知り合いに頼まれてノーギャラだった”と主張したことで、これって、普通の副業を認めてない大手企業で闇で犯罪組織を相手にアルバイトを１回して１００万円もうけていたことを、写真週刊誌にすっぱ抜かれて会社に知られたときに”知り合いに頼まれてノーギャラだった（から問題ないでしょ）”と言い訳して会社関係者にその筋書きで外部対応をさせたのと同じってことでしょ？　意図的に偽情報を流して会社関係者の対応をミスリードさせたのが宮迫のやったことで、その後、どうも写真週刊誌が他の犯罪組織を相手にしたアルバイトの情報なんかも握っている可能性が高く誤魔化しきれないと判断してから、会社関係者に”実は、１回で１００万円を受け取った闇営業でした”と告げたわけですわ。　そうなると、闇営業では無かったという前提であちこちに根回しをしたり火消しに走っていた会社側が、”金銭の絡む闇営業ではなかったので一定期間の謹慎”で幕引きを図ろうとするのは当たり前といえば当たり前で、今になって”闇営業でした”と当事者が言い出して、”弁解のための記者会見を開かせてくれ”と言われても、”お前、黙っていたことはそれだけか？他に隠し事があるのならそんな中途半端な記者会見を会社が公認した席でさせるわけにはいかない。”となるのも、ある意味で納得できる展開ではないかと。　そして、ここで”宮迫って阿漕なことやるなあ”と私が思ったのが、宮迫のやらかした闇営業がそもそおもギャラ１００万円が写真週刊誌報道から発覚した騒動の１回だけの話なのか、恒常的に多年に渡って複数回行っていた（単発のアルバイトの類ではなく法律で言う反復継続して行う”業”に相当する）行為なのかに関しては口を閉じて、”１００万円のギャラを貰った闇営業に関して正直に言いたかったのに会社に口止めされた、そもそも吉本興業は会社組織として普通の会社と違いすぎる云々”と話をすり替えたこと。　宮迫の嘘で騒動の沈静化の対応をミスリードされながらも、なるべくことを穏便に収めようと奔走していた会社関係者を後ろからばっさり切りつけて、自分の立ち位置だけは確保するやり口と、話の筋を意図的に自分の犯罪行為から会社の管理体制問題にすり替える超展開ぶりが「Kの理論」そのまんまじゃね？　というか、宮迫が過去５年程度の間に期間を限定してもいいですが、闇営業で手にした金の総額って１００万円ぽっきりなんですか？と普通は考えるでしょうし、１００万円だったとしても、それって確定申告してませんよね？脱税という犯罪行為じゃないんですか？ということ。　宮迫にとっては、”たかだか１００万円ぽっち（＝1回、数時間程度の宴会芸の披露で簡単に手に入る金額だからたいしたことないじゃん）”と考えているのでしょうが、月収14万円程度の非正規雇用者の場合、年収が１６８万円ですし、国民年金の満額の年額が100万円に届いていないことを考えると、”１００万円を所得として意図的に申告しない脱税行為”はかなり悪質ですし、それが年中行事と化していたとすれば、謝罪会見するより前に税務署に修正申告すべきではないかと、私は、思いますが？　というか、国税局は宮迫個人に対してでも吉本興業に対してでも、どちらでもいいですが、一般人や普通の会社にも行うような税務調査の類を実施すべき案件ではないかと。　これだけ公共の電波で、”自分は（一度の）闇営業で100万円のギャラを貰っていた”けど会社にも届けていないし、（記者会見などの発言によれば）確定申告も行っていないと公言している人物を野放しにして不問にするのなら、誰も一度で100万円以下の収入にしかなっていない副業の収入を確定申告しなくなるのではないかと愚考するのですが、宮迫は日本の法律が適用できない特殊な外国人特権でも所有しているのでしょうか？　吉本興業において、過去に島田が暴力団関係者との不適切な交友を糾弾されて引退に追い込まれたとき、自分の常識が世間の常識とずれていたという主旨の個人の見解を述べ、自分の非を認めた上で個人の責任問題（であって会社側の管理責任の問題ではない）として引退を宣言したのですが、島田が引退したときには、宮迫のような明らかな脱税行為は行っていなかった（少なくとも具体的な脱税疑惑は浮上していなかった）ことを考えると、”なぜ、吉本興業は、明らかな犯罪行為を行った宮迫の解雇処分を撤回し、社長や会長が減俸を受け入れた上に、公の場で不特定多数の一般人と所属している芸人に謝罪したのか？それって筋が違うんじゃね？”　つまり、明らかな犯罪行為を行っていた宮迫と田村を解雇するなり謹慎させるなり何らかの処分を行うことは雇用していた会社のガバナンス管理の観点で不可欠の対応であり、そのことと、会社と所属している（芸人を含む）社員の雇用契約の不備問題などは別の話であり、宮迫は意図的にその辺りをすり替えて処罰から逃げたんじゃね？ということ。　また、吉本芸人の”会社がギャラをほとんど（中抜きして）払わない”のが”闇営業の原因（で宮迫は悪くない）”とでもいった主張も、”それって仲間内だけで通用する理論じゃね？”と、私は思いますが？？何かビートたけしあたりが世に出た漫才ブームの頃と比較しても、TVでワイドショーなどの司会をしたり、知識人ぶって評論したりしている内に、彼らは何か自分たちが”従来のような芸を売って身を立てる芸人”ではなく”正規の入社試験を潜り抜けて正規雇用されているTV局のアナウンサーや製作会社の社員と同じカテゴリーに区分される労働者とでも思うようになったのだろうか？　別の視点だと、TV放送とはほぼ無縁の、下北沢あたりの小劇場などを主戦場にしているような小規模劇団に所属している俳優志願の連中に至っては、トップクラスでもなければ、劇団からの給料だけで家族が養える人の方が稀（というと書き過ぎか？）で、副業収入の方が多かったり親族の援助を受けながら活動している人が珍しくない（と書くと書き過ぎか？）けれど、そういった人たちが所属している劇団に最低賃金保障をしてくれないなら辞めるとか、劇団からの給料が安いから反社会的集団相手の闇営業が恒常化するのは仕方が無いし、それは闇営業をしている人の問題ではなく劇団の問題だ！と言うだろうか？　基本的に、”自分の提供している労働に見合った対価を会社から受け取っていない”とか”自分の書z区している会社の体制は時代遅れで我慢できない”とか思うのなら、さっさと他の同業他社に勤め変えるなり、別の職業に転職するか、自分で理想の会社を起業すればいいだけのことで、特定の会社に所属しながら辞めていないということは、所属することで手にしているメリットがデメリットより大きいと判断してのことではないのか？　そうしたとき、”労働者の雇用と権利を守れ！”と雇用されている側がごねても、”それやると、会社が倒産して元も子もなくなるんだけど・・・”と会社側からすれば言うことになるでしょうし、そもそも論として、吉本の芸人って社員として雇用されているのか、個人事業主として契約しているのか、そもそも単に吉本興業は登録した個人に座敷を貸して仕事を斡旋しているだけなのか、はっきりしていないところがありますから、普通の企業に勤めているサラリーマンというか労働者とはまったく労働者としての立ち位置が異なるのではないかと。　あえて近いところだと、少年漫画雑誌などで連載を持っている漫画家と雑誌を出版している出版社との労働契約が比較的近いのかもしれませんが、この場合も、人気が無くて連載が終わると漫画家の側がいくら出版社に継続雇用を主張しても無駄ですし、出版社に正規雇用されている社員並みの最低賃金を保障しろと主張しても無駄ですし、”お金が欲しければ、ヒット作を描いて下さい。ヒット作が出れば億万長者も夢ではありませんよ。正規雇用されている社員では億万長者は難しいですけどね～。”とか言われて個人事業主として個別に契約していることは比較的知られた話ではないかと。　或いは、アニメのアニメーターとして制作会社に正規雇用されて最低賃金は（一応）保障されているような職場でも、慢性的なオーバーワークと拘束されている時間で割り戻すと最低賃金を割り込んでるんじゃね？と疑いたくなるような低賃金で、描いたアニメがヒットしても著作権料や印税の類の恩恵とはほぼ無縁で、現場監督やチーフ級でも過労死や突然死の話がちらほら流れる過酷な環境　・・・　だからといって彼ら彼女らが会社に内緒で反社会的集団を相手に闇営業を恒常化しているだろうか？　一攫千金を夢見たり、採算を度外視して夢を仕事に選んでいる人や業界は、別に”お笑い”業界だけでもなければ、お笑い芸人だけでもないのが現実世界ですし、お笑い芸人の場合、自分の名前が付いた冠番組を持てば1回の収録で中堅サラリーマンの月収を越える数十万円のギャラが提示されることも珍しく無く、大手企業のCMのギャラだと1本で週百～数千万円が相場となることを考えると、そうした”おいしいところまで成り上がった芸人”が、”涙を流して謝罪会見を開いた”からといってその発言を全て額面通りに受け取って、物証も無いのに信じ込む赤の他人（＝TVの向こうの視聴者）って、いろいろな意味で大丈夫かいな？　実際、謝罪会見というより釈明会見における宮迫の発言を素直に聞くと、”自分がやらかした会社側は非公認の反社会的集団を相手の副業で（発覚しただけで）100万円の現金を受け取り、その副業の実態が写真週刊誌にすっぱ抜かれた当初は、会社側に金銭は受け取っていないという虚偽の説明を行い、会社側がそれを前提に対応を始めた後で、写真週刊誌側は物証も第2弾以降の新ネタも握っているようなので言い逃れができないと思い直し、会社側に”実は現金をこれだけ受け取っていました”と申告し直しました。”　”そうしたら、既に関係各所に手を回し始めていた会社側は騒動を自分からこれ以上大きくせず、しばらく（どのくらいまで暴露されるのか）事態を静観し、謹慎していろ、下手なことを言わないためにも（今の時点で）謝罪会見などするなと指示をしてきたので、正直者の僕としてはそういった犯罪を隠匿するような行為には納得も賛同もできませんでした。”　”正直者の僕としては、さっさと会社公認の場で謝罪会見を行って”謹慎”で幕を引きたかったのに、会社側の対応に従って後手に回って、第2弾以降が暴露されてしまうと”引退”するしかなくなり、折角、濡れ手に粟の大儲けができていた職場を失ってしまいかねませんでした。僕はこんなにも熱心に正しい（と自分が思った）ことをしようとしたのに会社側に反対されて出来なかったのです。”　”正しい（と自分が思った）ことをしようとしたら、それをやるというのなら”解雇”するので（吉本の看板を使わずに）個人で謝罪会見をしろと言われたんです、これって酷いですよね、会社の方が悪いですよね、そもそも僕が反社会的集団から現金を受け取っていたことを会社側に隠していたのも、会社からのギャラが安いから副業するしかなかったからで、それは会社の仕組みが前時代的なままなのが原因で僕は悪くないんです。だから謹慎はしても（島田先輩のように個人の責任を認めての）引退はしませんし、ほとぼりが冷めたらまたギャラが美味しいTVの冠番組に復帰したいです。”ということを、涙ながらに語っただけじゃね？と、ひねこびている自覚のある爺の私は思いましたが？　闇営業のギャラを最初に虚偽申告するような男が、年収で数千万～億単位になるようなTV関連の仕事がチャラになるかどうかの瀬戸際で、なぜ無垢な天使のように真実のみを語ると思うのか？　漫画”ナニワ金融道”で、借金に追われている奴は親兄弟でも親友でも最後は平気で売るようになる話が続出し、主人公の灰原君はそういった事例に遭遇して経験を積みながら人の本質を理解して”金貸し”として成長していきましたけどね。　また、身内の問題としてなるべく穏便に対応しようとした会社側に対して、最初に弁護士を同道して対応を迫ったのは宮迫の側で、企業からすれば問題が発生したときに関係者同士の話し合いがこじれにこじれた最終局面の法廷闘争も辞さない段階になって、協議の場に同道するのが弁護士というのが一般的な認識ですから、逆に言えば、協議の場に（それも事前通告なしで）弁護士を同道して現れた段階で会社に対して”裁判沙汰上等”を宣言したようなものではないかと　・・・　その意味で、会見でしおらしいことを言っているようでいて、実際にやったっことは少なくとも恩義を感じている会社や穏便に事を収めようと奔走している社長などに自分から喧嘩を売って会社側の対応を全てチャラにして自分の思い通りのシナリオになるようにゴリ押ししようとしたってことじゃね？　過去に、反社会集団関係者との不適切な交友が問題視されて引退した芸能人は吉本興業に限らず複数存在するのですが、今回の宮迫騒動の場合、１　高齢者相手の巨額詐欺事件を起こした反社会的集団の宴会に会社に内緒で参加して芸を披露して１００万円単位の現金を受け取った。２　上記１の事案が写真週刊誌の報道で表面化した当初、所属していた会社に対して”現金（というか報酬）は受け取っていない、知人への義理でパーティに顔を出しただけという主旨の事実と異なる説明を行い会社の対応をミスリードさせた。３　会社への説明後、現金を受け取った事実が言い逃れできない状況になっていることに気が付いて、会社に対して修正申告を行い、自らが考えた幕引きを提案し、会社側に却下されると、謝罪会見を試み、それを察知した会社側に謝罪会見を行う前に解雇を告知される。４　当然、闇営業で手にした少なくとも話題になった100万円に関しては、会社を経由しない個人の副業収入であるにも関わらず、副業収入としても雑所得としても確定申告で申告していない明確な脱税行為を行っている。５　闇営業が、自らの謝罪会見で主張したように、会社側の不明瞭なギャラ支払いシステムに起因する恒常的な習慣として吉本興業の複数の芸人に定着していた行為とすれば、宮迫が闇営業で手にした税務申告が必要な（会社が感知していない個人的な）所得が、発覚している１００万円だけとはとても考えられず、謝罪会見時の発言内容とも理論的に矛盾しているため、ここまで社会問題化した以上は、個人の大型脱税事件としての徹底的な捜査が税務当局には求められる。＊　消費税の増税は必要不可欠と主張する一方で、個人の1度で１００万円を越えるような副業収入を恒常的に隠匿していたと疑うに足りる事例が公共の電波を通して全国に露呈しているのに、宮迫の闇営業脱税は問題ないと税務当局は主張し、調査しないで見逃すのかということ。６　前述の５に関連して、宮迫の行った反社会的集団を含む闇営業の実態は、年に何回（月に何度）くらい行われていて、何年頃から恒常化し、税務申告はどのように処理していたのか、あれだけのことを謝罪会見で主張し、社長、会長に頭を下げさせ減俸まで飲ませて自分への処分は取り消させた以上は、説明責任が生じたと、私は、思います。＊会社側の落ち度と、宮迫、田村の脱税を含む犯罪行為は別の話で、一応、日本が法治国家を自称し消費税増税が必要不可欠なほど税収が逼迫していると国民に対して説明している間は、有耶無耶にしてはいけないことではないかと。　意味不明だったのが、芸人の大御所クラスになっているダウンタウンの松本の言動で、私の疑問を個整理すると”松本は宮迫の犯罪行為は不問とし、処罰は不要で、会社の管理責任だけ問題ありとし、会社のトップの謝罪と減俸で幕引きにするのですか？”となります　・・・　それって、見方によっては犯罪行為の幇助じゃね？　まあ、TVを所有しなくなってからでも久しく、TVに出るようになった芸人が冠番組を持ったり年収が数千万円を超えるようになるとピタッと現在の所得に関して口を閉ざすくせに、売れなかった頃の貧乏話は延々とネタにして、売れた後も貧乏生活が少しマシになった程度ですよと言わんばかりの庶民派アピールを行い、あたかも庶民の視線であれこれ批評しているかのような厚かましい芸人の言動を１から10まで信じる人しかTVって見なくなったのかもねえとか思ったのでした。　ま、陰謀論者の発想としては、宮迫のバックにそれなりの組織が付いていて、裏では裏で動きがあったのではないかと邪推の虫が動きたがるのですが、写真週刊誌が頑張って、涙の謝罪会見で宮迫が口にしなかった他の闇営業とかいった記事を世に出すと、また流れは変わるかもなあとか、財務大臣が”宮迫君は上級国民なので過去に遡って脱税疑惑は追及しません。する必要がありません。”とか発言すれば、それはそれで話が広がるかなとか、あれこれ考えないでもありません。　が、別に吉本にもお笑い芸人にも、知り合いも顧客もいないので、結局のところ、別の世界のどうでもいい話ですし、日本のお笑い業界が隆盛しようが滅びようが関係ないだけに、単純に発言内容の不備しか気にならないなあと思っています　・・・・・・　ただし、脱税行為を支持するというか、そもそも納税義務を考えてもいない、自分の発言が脱税の恒常化も意味していると認識していない芸人の言動を公共の電波で垂れ流して、一応、知識人を自称するTVのコメンテーターが支持するのはいかがなものかと思いますし、TVのコメンテーターたちも”お車代”なんて名目で手にした収入を申告せずに脱税するのが恒常化していて納税感覚が麻痺してるんじゃなかろうか？（変なとこへ飛び火）。

2019.07.22

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オはオタクのオ　第0047回　長友本シリーズ

オはオタクのオ　第0047回　長友本シリーズ　ここで言う”長友本”というのは、サッカー選手の長友佑都の名前が冠せられた本のことで、ヨガ、体幹トレーニング、飯、といったジャンルがあるのですが、著者が長友佑都となっていても実際は監修・長友佑都というのが実態には近いだろうと、私は、考えています。　そう考えている理由は簡単で、ワールドクラスのプロサッカー選手に（内容は置いておくとして）２００ページを越える文字が主体の本を１から書き上げるだけの（文章力や文才などはともかく）時間があるとはとても思えないからですが、昔だとカセットテープに音声で吹き込んだ大本のゲラをゴーストライターが文字に起こして読める文章に構成し直し、ある程度の形になったら本人もチェックして完成といった本の書き方（？）をする人がいました。　ホリエモンなどの著作の大半もこの手の手法で本になっているようで、私も別に本人が鉛筆を片手にうんうん唸りながら原稿用紙を埋めて元原稿を書き上げてないといけないとか、パソコンやスマートフォンを使って作った元原稿をゴーストライターが仕上げていくやり方が邪道だとか言う気はさらさら無く、限られた時間で貴重な情報を分かりやすい文章で書籍化してくれるのはありがたいことだと考えています。　ただ、ゴーストライターが有能だと、ある意味で機械翻訳された文章のように感じることがままあるのも現実で、文筆活動の玄人でもないのに整理が上手すぎるというか、素人なりの熱意のようなものがこそげ落とされているが故に、つるつると読めてしまう（＝個性を感じにくい）あたりを是とするか否とするかは人それぞれかもしれません。　ヨガ本や体幹本の時は、モデルとして長友佑都がポーズをとっている写真などが掲載されていましたから、著者・長友佑都でも納得したのですが、”長友佑都のファットアダプト食事法”に至っては、さすがに”これって、著作・山田悟、監修・長友佑都、じゃないの？”と思ってしまいました　・・・　まあ、失礼ながら、著作・長友佑都、監修・山田悟の方が本が売れるとも思いましたが（笑）。　ちなみに、山田悟先生は北里大学北里研究所病院の糖尿病センター長を務めている（ファットアダプト食事法、P-65）ドクターで主に医学的なエビデンスの面からアドバイスをされているようで、”エビデンス編”などはこの先生が著述されている。　個人的には北里大学北里研究所病院といえば前職の時に胃カメラを呑みに行ったことがあるな～と昔昔のことを思い出したりもしたのですが、”ファットアダプト食事法”の内容に関して言えば、”エビデンス編”が理路整然としていてわかりやすく、本文（？）の方は少しとりとめが無く雑多な感がすることが否めませんでした　・・・　お前の読解力が低いからだと言われればそれまでですが。　それはそれとして、トランス脂肪酸の健康リスクに関して怪しい話でネタにしたのが年のことで、それ以降、体に良い油脂の摂取とは？ということが一つの課題になっていて、２０１５年頃に”とりあえず、サラダ油を食卓から追放しよう”とか”菓子パンは買わない食べない”とかいった私的な食事改善（？）を始めたりはしていたのですが、いかんせん医学的な根拠が明確なデータの入手が困難ですし、食品業界側のガードも硬く暗礁に乗り上げていたのでした。　しかしながら、２０１８年９月末に脳出血で死にかけて、ほぼ一カ月ほど墨東病院に入院し、かなり強引に退院して自宅療養を始めたものの、”さて、脳出血を起こしてしまった後の油脂の摂取はどうしたもんかいな？”と避けて通れない課題になってしまったのでした。　サラダ油やマーガリンなどは既に購入しなくなって４～５年経過していたというか、そもそも食用油を購入しなくなっていたのですが、四肢など運動機能系に後遺症が残っている回復期に油脂を摂った方がいいのか？悪いのか？摂った方がいい場合は何の油脂がいいのか？とあれこれ考えたり調べたりしながら、退院して３カ月程はブロッコリーを湯がいたものと鶏肉（胸、腿、ササミなど）を茹でたものを主軸に食生活をとりあえず組み立てていました。　ざっくりと、ボディビルダーの食事をサプリメントの類は抜きにして参考にしていたのですが、困ったことに体質が変わったのか”白米”を体が受け付けにくくなってしまっていて、炭水化物（主食ですな）を小麦や雑穀、芋類に頼ることになってしまったのですが、白米オンリーで半合も食べると胸やけや吐き気がするという困った状態は半年くらい続きました　・・・　というか、今でも一度に白米を一合近く食べると胸やけがしていますが。　その一方で、塩分的には難のある小麦系のパンや麺類は食べても以前と変わらず、一度に食べる量を控えることで小麦系を主食にしたのですが、料理のレパートリーが少ないこともあって副菜（オカズですな）をどうしたもんか？副菜に油脂は何をどのくらい使ったらいいのか？と悩みが増えるのにさほど時間はかかりませんでした。　とりあえず、オリーブオイルを使ったプレーンオムレツの類は４か月目くらいから解禁したのですが、ボディビルダーの食事と世間一般の食事は似て非なるものですし、そもそも体を作ることが主目的の食事が美味しいとは限らないことは御存知の通り（笑）。　これを書いている時点でも、四肢などに後遺症が残っていますし、視床下部周辺の出血でしたから再出血のリスクをあれこれ考えてしまうと、いわゆる運動の強度をどうするかというよりも、現実問題として右脚などがまともに動かない部位をなんとか実用レベルで動くようにするところから自主リハビリをスタートさせていたのでした。　具体的な運動は以前にも書いたことがあるのでざっと振り返っておくと、２リットルのペットボトルを二本入れたリュックサックを背負って近くの地下鉄の駅から次の駅を目指して（一日に信号機のある交差点を一つずつクリアしながら）まずは午前中だけ歩き、慣れてきたら午後は逆方向の駅に向かって時間を（２０分とか３０分とか）決めて歩くようにしたのでした。　雨の日などは近くの地下鉄の駅やスーパーなどの階段を利用して階段の上り下りを中心に時間を決めて練習して距離を歩くことはしなかったのですが、退院後に初めてエスカレーターやエレベーターを乗り降りしたときのドキドキ感というか心理的なプレッシャーにはすごいものがありました　・・・　まあ、退院から約１カ月程で地下鉄を乗り継いで新宿の牛込界隈まで行って試験営業をして無事に帰着できるところまで回復していたので私的には自主リハビリの目標はクリアできたのですが、食事の問題は積み残していたのでした。　退院して半年ほどの間の自主リハビリでウオーキングシューズが一足、デニム生地のズボンが一本、駄目になって、リュクに重りとして入れていたミネラルウオーターのペットボトルの底に（こすれたためか）穴が開いて水が漏れだしたこともあったのですが、退院して半年くらい経過したときに墨東病院でMRIを使った診断を受けて（いわゆる経過観察）、再出血などは見られず他の脳の血管にも目立ったトラブルはないといったことになったので、運動強度的には問題が無かったのではないかと思います　・・・　いろいろな前提の異なる他人様には勧めませんが。　運動機能はある程度であっても回復してきたものの、右の顔面麻痺や右の掌の麻痺などは麻痺の範囲が小さく痺れは弱くなりながらも未だに取り切れていませんし、右脚の右膝、右足首の可動域や筋肉の反射的な運動などでは”歩いている分には問題がほぼ無くなったものの、小走りは１０メートル程度が同世代の男性と同じくらいの速さで走ることのできる上限”というのがこれを書いている時点の現状ですから、先はまだまだ長いかと。　で、ある意味で走ることも商売であるプロのサッカー選手の長友がどのような食事を推奨しているのか？フィジカルエリートである彼が実践してみて体調が良くなったという食事法は自分のような脳出血後の後遺症を抱えながら体調を回復させている人間にとっても有益なのではないか？とか考えたわけです　・・・・・・　まあ、ヨガ本の頃から長友本は読んで何かと参考にしていたということもありますが。　今回の食事法の本は、ネットで長友佑都が食事法に関する本を出したことでインタビューに答えている記事を目にしたことで”書店で見かけたら購入しよう”と考えた本ですが、近所の蔦屋でも銀座の丸善でも秋葉の書泉でも見かけないままずるずると日にちだけが経過し、やっと中野の（ブローウエイの）明屋書店で残り一冊になっているのを見つけて購入したのでした　・・・　素直にアマゾンで買えってか？（笑）。　読み進めて、油脂問題にもある程度納得のいく指針を立てることができ、後は実際の食生活に落とし込んで自分の体で検証してみるだけだよなあとか思いながら読了したのですが、４０を過ぎたあたりから炭水化物の摂取量は意識して減らして（それで減った分のカロリー補填などを）油脂の摂取を増やし、タンパク質は筋肉の量に応じて必要な量を摂取するとでもいったことでいいのかなと　・・・　ま、私自身は半世紀を越えて生きていますが。　まあ、一口に油脂といってもいろいろな種類があり、油脂の特性や効能、具体的な取り方や料理のレシピの類は”ファットアダプト食事法”を参照した方が間違いが無く理解も速いと思いますが、ココナツオイルに関しては、私は、あまり推奨しませんし、青魚などから摂取しやすいDHAなどの（健康に良いとされている）油に関しても大量に摂ればいいというものではなく、個人差はもちろんありますが、適量というか一日の摂取量に上限が存在することには留意が必要だと思います。　過去に、DHAなど魚由来の油に体に良いものがあり、マグロの目玉などにも豊富に含まれていると聞きつけた某・お金持ちの男性がひたすらマグロの目玉などを食べて体調を病気のレベルで崩し痛風なども併発したという実話がありまして、過ぎたるは及ばざるがごとしを地で行く人は意外と珍しく無かったりしますので御注意下さい。　まあ、一般人が病気になるレベルでマグロの目玉を大量に偏食しようとしても、体よりも財布の方が先に音を上げてしまうとは思いますが（笑）。　この手の、プロスポーツ選手や武道家などが自身の食生活をベースに食事法の本を世に出したといえば、空手家の故・大山倍達（強くなれ！我が肉体改造論_1985）、プロレスラーの船木誠勝（ハイブリット肉体改造法_1996）あたりが先駆的な存在ではないかと思うのですが、医学的なエビデンスがどうこうというよりも、経験的にどうこうという部分が意外と多いのが難点かもしれませんし、２１世紀に入って少ししたあたりから栄養学にも地殻変動が生じ始めて昔の常識が通用しなくなった部分がいくつか出てきています。＊大山館長は肺癌で亡くなられたそうです。　今となってはネタの類になってしまいましたが、私の学生時代だと主に硬式野球部が”いくら苦しくても練習中に水を飲むな！”と真顔で監督やコーチに指導され脱水症状で倒れたりしていましたが、医学的な根拠のない根性論だけの無茶なトレーニングを続けていると、命に係わることさえあるのは御存知jの通り。　もっとも、実際には”そうは言われても、いかに目を盗んで要領よく水を飲むか”を考えて実行したような人たちが残り、真面目にそういった指導に従った人は体を壊して辞めていったというのが現実で、オリンピックのメダリストになったような人でも”やってらんねえぜ”と上手にさぼったり息抜きをして自分で体調管理をした要領の良い人が体も心も壊さずに済んで最後まで残ったと書いていいようです（黒い笑）。＊生まれながらに、遺伝子レベルで一般人より先天的に頑強という人は一定数存在するのですが、そういった人たちと同じことを一般人が行うと、ケガや病気で済めばまだしも、生死に係わる事態に陥ることが実際にあります。　実際、練習中に水を飲むなといった根性論の指導に真面目に従い続けたり、休息無しの過度な練習を続けたことで、内臓を痛めてしまって腎機能や肝機能などが低下してしまい、学校を卒業した後など”その後”の人生に支障をきたした人は珍しくないのですが、そうなったからといって監督やコーチが責任を取って損害賠償に応じたという話は、私はですが、知りません。　もちろん、学生時代の体育会系の部活で肘や膝を痛めたり、手首や足首などがまともに動かなくなってしまったとか、腰や肩を痛めて慢性的に痛いままだといった人はもっと多いようで、本業の方で遭遇することも珍しくないのですが、一握りのメダリストの陰に屍が累々だなあと思わないでもありません（しみじみ）。　しかしながら、長友のようなプロとして活躍して高給を手にしているフィジカルエリートが、一般人ではとても無理な費用を使って自分の体を整えていく過程や、その際に手に入れた知識などを参考にすることは一般人にも可能なことですし、とてもありがたいことだと私は思っています　・・・・・・　まあ、実際にファットアダプト食事法をやってみてどうなったかに関しては、また別の機会に書くことがあるかもしれませんが、ファットアダプト風食事法にならないように気を付けたいとは思います（大笑）。

2019.07.18

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だから”学校の先生”は駄目なんだ（笑）。

だから”学校の先生”は駄目なんだ（笑）。　日本の学校の先生を全員解雇してペッパー君を雇用すべし　・・・　というのが私の持論であることは御存知のとおり。　そして、”ペッパー君の中の人”を全国で各科目について数十名程度、再雇用すれば事足りると思いますな。　笑ったのが、　「2億円は50億円の何％か」という問題を日本の大学生の2割前後が間違えると推測され、誤答でもっとも多くなると推測されているのは50を2で割って25％とするもの　・・・。といった内容を軸にした記事（筒井幹雄：東洋経済記者）で、『「%｣が分からない大学生』を書いた桜美林大学リベラルアーツ学群の芳沢光雄教授の現状解説？が続いていた。　私が以前から、”小学校でプログラミングを教えるより前に徹底反復して条件反射のレベルで”算数の基本”を叩き込むのが先じゃね？”と言っているのは御存知の通りで、それも小学校2～3年で教わる算数の内容や、昭和の頃だと”小学校にあがる前に九九くらいは多少なりとも覚えておくもの”というある意味で暗記数学の代名詞でもある”九九”の徹底は四則計算の徹底と並んで、そこに個性も独創性も不要だと私は思います。＊印度の数学教育の２ケタの九九に比べれば、日本の一桁の九九は最低ラインではなかろうか？　私が前述の記事を読んでいて”この先生も、記者も、真面目に考えているんだろうけど阿保かいな？”と思ったのは、教授の解説で、　AIの得意なことって何ですか？創造的な仕事じゃないですよね。プログラムに従って計算したりするのは大得意。そう、くもわ、はじきの領域です。公式暗記の推奨は、子どもたちにAIの主戦場で競い合えと言っているようなもので、無意味です。人間は頭を使って、発想を磨き、社会をよくするためにAIを使う立場です。そのためには数学を通して、結果ではなくプロセスの重要性を理解することが有効です。　　この人たちって、AIが既に、作詞、作曲をこなし、オリジナルの絵も描けば過去の著名な画家の”癖（＝個性）”を分析して著名な鑑定家たちが”故人の新作としか　・・・”と言わしめるレベルで模倣できるレベルに到達していることを知らないのか？　或いは、”長い文章の（限られた文字数内での）要約”という知的作業においても、ぼちぼち大学生や新人サラリーマン程度だと太刀打ちできない水準（＝一定時間内の処理速度と精度）に達してきていますし、ネット配信されている記事の中には既にAIが幾つかのネタ記事を再編して一本の記事にしたものが混ざり始めている御時世なわけです　・・・　既に今の時点で（笑）。　海外で２０４０年頃に生じるのではないかと推測されているシンギラリティ問題というのは、人類がAIに（完全に）管理される側になるという意味で歴史の転換点になるのではないか？と、20世紀末あたりから予測する（その筋の専門家たち）人が時間が経過するほど増えている話なわけで、既に”人工知能が人間で言えば何歳くらいの人間に匹敵しているのか？”といった客観的な指標による検証で（これを書いている時点で）”高校生レベル”に到達しているというのは比較的知られた話かなと。＊２１世紀に入ってしばらくして、将棋ソフトにプロの棋士でも負けた云々という話が珍しく無くなるよりも、はるか昔の１９８０年代半ばの時点で、将棋の駒の動かし方はなんとなく知っている程度の一般人は既にコンピュータ（の人工知能搭載以前のソフト）に勝てなくなっていましたから、これを書いている時点で、自分がAIより幾つかの知的分野の能力では上回る能力を有していると思えるほど優秀な人は幸いである。　日本でも、”人工知能はどのくらいの難易度の大学入試ならば突破できるのか？”といった検証を行っていた暇な人たちがいたのですが、その結果が”笑えないレベル”というか”人工知能が大学入試を突破するのにあと少し”となったらビビッたのか圧力がかかったのか検証を止める人たちが続出した　・・・　というのは、おおむね（笑）実話だったりします。　というか、文部科学省が利権拡大を狙ったのか、めったやたらと大学を増設したり新設し”進学する意思があって自分の名前が書けたら理論上は希望する人は全員合格できるだけの定員数が確保された”のは比較的知られた話ですし、その結果として”Fクラス大学”という最下層のカテゴリーが産まれたこともまた比較的知られた話ではないかと。　つまり、冒頭の”％が分からない大学生”が全体の2割前後いるといった指摘にしても、大学進学がそれなりに難関で、熱意もあって希望していても一定水準に学力が届かない馬鹿は（ほぼ）進学できなかった昭和の頃の日本の国立大学で全体の2割前後がパーセントの計算ができないという検証結果が出たのなら大問題だと私も思ったでしょうが、”Fクラス大学”近辺の学生の割合を考えれば不思議でもなんでもないんじゃね？と思ってしまうわけです　・・・　あたしらが大学生だった昭和の頃と”ゆとり”世代が大学に進学するようになった平成以降（の得に大学定員が大増員されて以降）とでは前提が違うでしょ？。　それはさておき、もっと正気を疑ったのが、少子化で子どもの数が減り、考えも多様化しているわけだから、これまでのように同じ学年で同じ時期に同じことを学ぶ必要はない。理解の度合いに応じて教育する「理解別教育」を実現したい。と言う先生の分析コメントの部分で、”日本では少子化に歯止めがかかっていないけれど、世界の総人口の１００億人越え”がリアルな近未来の話になっている”わけですから、当然、世界の同世代の人数は時代が下がるほど増加していくことが予測され、それに伴って他国の同世代との学力競争が激化するのは必至でしょう。　そして、日本のように”既存の先生の職場を守るため”といった、教わる側からすれば傍迷惑この上なく効率の悪い教えるシステムを維持する必要のない国ほど、私が何度となく書いている”ペッパー君が教える広域ネットワークシステム”を導入することで、低いコストで短期間の内に、先行している先進国で（日本のような効率の悪い）教育システムを部分的に手直ししながらのたのたやっている国を人材育成の面で抜き去っていくようになるだろうなあとも、私は、予測していますし、当然、そういった変化に敏感かつ適切に反応する先進国や発展途上国も出て来るでしょうから、これを書いている時点で”日本以外の国で教育を受けることができる選択肢のある子は幸いである”とも思うわけです。そして、私は高校時代に”数学１”で難渋した個人的な経験から、”理解別教育”には否定的で、そもそもの”学校の先生の教え方にこそ数学が分からなくなる子を量産する主因がある”と考えています　・・・　それ故に、”教えるのが上手い”ことで定評のある先生の授業をペッパー君で再現するなり、動画配信するなりするだけでも”％計算のわからない大学生”問題は解決すると思います（笑）。　逆に言えば、教えるのが上手い先生に担任になってもらえるかどうか？で明暗が分かれるのが現実ということですが、私立にしても国公立にしても、いわゆる難関高校とか呼ばれる学校の先生の授業ってそのへんの県立普通科高校なんかより難解で何を言っているのかわからないちんぷんかんぷんな内容なんだろうなあとかなんとか何となく思い込んでいる人が意外と多いのですが、授業の進む速度は相対的に”早い高校が難関進学高校には確かに多いですが、教えるのが圧倒的に上手な先生が多い（先生自体の頭が良い）のでかえって授業の内容は分かりやすかったりします。　従来は、超進学校、平均どころの普通科高校、商業・工業・農業といった職業高校で同じ（例えば数学１の関数の）授業を同じ生徒が”受け比べる”経験が無いまま、敢えて言えば学習塾の授業や家庭教師の教え方と比較する経験すら無いとなると、なんとなく”自分の頭は悪いけど、同じ教員免許を持ってるんだから先生はどこの学校でも同じくらいの能力で教え方も大差が無いんだろうな～”と思い”先生が馬鹿で教え方に工夫も研究も足りていないから自分が理解できないままでいる可能性”に意外と思い至らないのではないかと。　そしてそのことに気づかれないためにも、広域テストで同じ内容のテストを同学年で一斉に受けさせて学習の到達具合を数字で判定しようとすると、なんやかやと学校の先生が因縁をつけて可能な限り阻止してきたのは御存知の通りで、同じ条件下で広域テストをやられると、異なる学校間などで生徒のテストの点差と先生の教える能力の相関関係に明確な判断指標が生じるわけですから、データの蓄積が進めば進むほど、無能な先生が炙り出されることになるのが嫌なんだろうなあと。　つまり、日本の公立の学校の先生の大半は基本的に地方公務員ですから、全国でなく同じ都道府県内に範囲を限定してもいいのですが、義務教育で入試とはほぼ無縁の（＝玉石混交の状態の）公立”中学”において、四月に入学して同じ教科書で同じ教育指導要領に基づいて同じ時間をかけて同じ科目（項目）を教えて、一斉に同じ内容のテストを受けさせたときの生徒の得点の差は、生徒の個人的な能力以外の何によって左右されるか？特に特定の先生が教えたクラスの平均点は、どこの学校に転勤しても、別の年でも、明らかに底辺とかいったことが具体的な数字で実証されるじゃね？ということ（黒い笑）　・・・　もちろん、その逆の先生も特定されるわけですが。　従来は、いくら優秀な先生でも物理的な制限で一度に教えることのできる生徒の数には自然と上限が生じていたわけですが、今となってはペッパー君もいればユーチューバーもいて、小学生に専用タブレットが配布される御時世なわけですから、もう無能な先生を高い金を出して雇い続けて老後まで手厚く保障する必要は無い　・・・　生身の先生を残したいのなら、最低限度でも、学校の先生もとっとと客観的な指標に基づく能力給与体制にすべきじゃね？ということ。　それはさておき、「2億円は50億円の何パーセントか？」を、私なら、どう考えるか？というと、１．比率の問題でもあると問題を読み替えると”４億円は１００億円の何パーセントか？”と同じことになり、”パーセントという考え方”は、全体を１００に換算して考えたとき、そこに属していて一定のルールで小分けされた特定の小集団は幾つに換算されるか？と考えることもできるので、全体が１００（億円）になったとき、小集団は４（億円）になるのだから、４％　でお仕舞（笑）。２．検算すると、２億円が４％に相当するなら、１％は０．５億円。　１％の１００倍が１００％だから、０．５×１００＝５０　となり、「２億円は５０億円の何パーセントか？」という設問に矛盾しない。３．まあ、設問を読み終わると同時に答えが出てしまうような、そもそもの数値設定に難のある問題だと思いますし、大学生がパーセント計算ができるかどうか？の検証なら「３億円は３３億円の何パーセントか？」くらいでないと、小学校からコンピュータのプログラミングを教える国における小学生が対象の算数の問題としても、いろいろな意味で駄目じゃん？＊というか、当初の「２億円は～」の設問でも、パーセント計算の（有効）桁数はどうするのか？と、無意識レベルで最初に考えてしまうようになると、プログラミングの初級は卒業かなあ？　・・・　まあ、プログラミング以前の”さんすう”の話でもありますが（笑）。

2019.06.23

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一夢庵の怪しい話　第995話　「セクハラ騒動雑感」

一夢庵の怪しい話　第995話　「セクハラ騒動雑感」モリカケ騒動の場外乱闘というか余波と言うかは微妙なものの、2年以上もつつきまわして”担当官庁の公文書管理”に問題が収束してくると、急に”セクハラ！”を声高に主張するようになったのは御存知の通り。これを書いている時点だと、そもそも以前から怪しい話で何度かネタにしていますが、モリカケ騒動の本質は時の内閣総理大臣が公の席で”私（や奥さんも含めてと書いていいかとはおもいますが）は森友関係の国有地売却に関して担当官庁（や担当官）などに圧力をかけたことはない”と主張し、”そうした事実があったとすれば辞職する”と言っちゃったことにあります。たったそれだけのことで、支持率も高止まりして安定している与党の党首の首が取れる言質を得たわけですから支持率でもじり貧が続く野党が色めきだったことは御存知の通り。ここで視点を変えると、主に小泉内閣時代の”規制緩和”の大合唱の一つに大学や大学院の新設を含む増設ラッシュがあり、文字通り”名前が書けて学校、学部、学科を選ばなければ希望者が１００％以上（主に大学に）進学できる総定員数になったことに関しては誰も責任を取ってないというか、そもそも問題として（少なくともモリカケ騒動ほどの熱心さでは）追及されたことが無いのは御存知の通り。その一方で”少子高齢化対策”の出発点ともいえる保育園や幼か稚園の待機児童問題などには総定員数の面でも予算面でも（少なくとも大学や大学院の新設や増設ほどの）顕著な改善が見られないまま現在に至っていることもまた御存知の通り。しかも、新設や増設された大学の中にも少なからず”Fクラス大学”と揶揄され、文字通り掛け算の九九が怪しいレベルの学生を量産し世に送り出している大学が実在するという都市伝説めいた指摘があることは比較的知られた話かもしれません・・・。そう考えるとき、素朴な疑問として、馬鹿な大学生を増産しているだけでなく、基礎学力さえ一定水準に到達していない受験生まで拾いこまないと定員割れして（経営破綻して）しまう規模まで野放図に大学を増やし、私学助成金が分かりやすいですが、税金の投入を増加させた根本責任は文部科学省にあるということ。もちろん、それは政府の責任だ！と主張する人もおいででしょうが、モリカケ騒動において、特区構想の中で獣医学部を約半世紀ぶりに一か所新設しょうと関係者が動いて実現に向けて動き始めたら、天下り問題と夜の歌舞伎町における（私的な）婦女子貧困調査騒動で知られながら退職金は満額もらって辞めた某・前・事務次官がモリカケのカケ騒動において”（政治によって）行政が歪められた”と主張し、マスゴミも嬉々としてその主張を肯定し全国規模で何度となく”報道”したことは御存知の通り。つまり、担当官庁である文部科学省の次官様が決めたことには、内閣総理大臣だろうが国会の審議結果だろうが異論を主張し次官様の決定を変更させることはまかりならん！それは行政を歪めることだ！！という国民選挙で選ばれたわけでもなんでもない一介の高級官僚様と言うか国家公務員の主張を正論とし肯定した上でマスゴミは複数回、全国ニュースや報道番組、バラエティ番組で垂れ流した実績があるということ。なお、マスゴミがこの某・前・事務次官の夜の歌舞伎町の風俗な店における（対象者の国籍、実年齢、学歴等が不明の）婦女子に”お小遣い”を渡して複数回実施したとされる貧困調査なる行動に関して”法律に違反していないのだから問題ない”と擁護しまくっていることは御存知の通りで、セクハラ騒動として問題化した財務省関連の私的に専門店で飲んでいるときに押しかけてセクハラ発言をされたと主張する某・女性記者の主張だけで唐突に辞職に追い込まれた財務省幹部への追及や問責との温度差は、外から見ていると、酷い二枚舌だなと私は考えています。今回のセクハラ騒動で、爺的に興味深いのは、”セクハラの定義”をマスゴミが意図的に曖昧にしたままでいることで、実際、発言時のTPOに関係なく（マスゴミ関係者が）セクハラだと大声で主張し印象操作することで（裁判もせずに）相手が誰であっても一方的に失職させ社会的に抹殺できるという悪しき実例を作っておきながら、そもそもの火種を自作自演でこさえた当事者（達）は、一方的な悲劇の被害者であるかのように扱われ続けているという異様な状況（溜息）。その光景は、まさに中世欧羅巴における”魔女狩りの光景”を想起させるに十分ですな・・・少なくとも法治国家の光景ではありませんし、マスゴミに司法権を公認した覚えは（私には）ありませんから法治主義が崩壊しかねない危険な状況とも言えます。まあ、モリカケ騒動においても野党やマスゴミは”自分たちが納得するように容疑者自らが無罪であることを証明しろ”という”悪魔の証明”のロジックで2年ほいど国会を空転させただけでなく、”部下の（身銭を切って飲んでいる私的な時間に押しかけてきた記者に対する）セクハラ発言の責任を取って担当大臣は辞職しろ！辞職しないなら審議拒否どころか職場放棄だ！”とやらかし、国会開催中に国会ではなく財務省や某・県庁などに押しかけ、それをマスゴミが正義の行動として肯定し全国区で垂れ流していることは御存知の通り。ちなみに、国会議員は当選1回目のいわゆる1年生議員でも給与や歳費などなどを合わせた年間所得が2千万円を超えている高給取りで、グリーン車料金などに象徴される”（庶民からすれば）豪華なおまけの特典”も享受できることは御存知の通りですし、国会を開催中は1日あたり３億（５億という説もある）円ほど経費がかかっている　・・・　それらすべてが”国民の負担”であり、かなりの部分が”税金を原資”としているわけで、巨万の財政赤字を抱えている（と財務省は主張していますから）ことを考えると、将来の子々孫々の負担する税金を先食いしていながら何をやってんの？と私は言いたい。モリカケ騒動のモリ騒動で（野党などが）問題だと騒いでいる国有地の安価な払い下げにしても、極論すれば長年塩漬け状態のワケあり物件を剛腕処理した事例ともいえますし、そもそも学校などの教育施設を新設する場合などに、国、県などが所有する公有地を市場価格より安価に提供する事例が珍しくないことは指摘するまでもありますまい　・・・　というか某マスゴミ社屋など国有地の類を安価に取得した土地に建設されている疑惑の塔が問題ないのなら何をいまさらという気がしますが。土地の価格という点ではカケ騒動でも、なぜかカケだけマスゴミが大騒ぎしましたが、カケと同時期に某朝日系のOBなどが教職員などに名を連ねた（こちらも特区絡みの）千葉県の某・医療系大学の新設にまつわる土地収得などと大差が無いにもかかわらず、ほとんどスルーされ続けているあたりも、野党やマスゴミの二枚舌じゃん？と私は思います。振り返ってみれば、一連のモリカケ騒動で日本のマスゴミは明らかに”倒閣”の側で、特に”放送法4条の改正”の動きが政府に出てくるとその”報道しない自由”を駆使する動きが過激かつ”報道したい情報に特化する”方向性も露骨になったなあとも思うわけです。実際、モリカケ騒動が2年近く騒いでも倒閣に至らないどころか、”いつまでやってんだ？”という声がさすがに多くなり、野党やマスゴミが”証拠”としてきたものを突き詰めると省庁の公文書管理の問題という省庁や官僚が解決すべき問題に収束しつつある（今、この辺）のですが、野党やマスゴミが”（ある意味で懲りずに）電子メールや私的なメモ、会議資料への走り書きの類まで公文書”と主張しミスリードを誘発しようとした（あるいは、し続けてる）光景もなんだかなあと。逆に、担当大臣や内閣総理大臣がすべての公文書を熟読し全ての内容を理解し記憶しているわけがないというか、そんなコンピュータを上回る処理能力を有する人は有史以来いないと私は思いますが、それゆえに、事務方のトップとして次官を頂点とした公文書管理を各省庁は行ってきたわけですし、必要に応じて実際の事務処理を担当した係（係長、係員）が上に報告し説明する体制になっているとも言えます。そもそも、国家公務員は労働組合活動などを制限される対価処置の側面もありますが、上層部からの非合法な指示を拒絶したことを理由に解雇されることが無い程度に強固な雇用保障が法律で認められていますし、上層部に睨まれて、僻地に転勤させられたり閑職に回されたり、唐突な（民間だと事実上の転職に相当しかねない）省庁間配置転換といった”合法的な人事”に嫌気がさしたら自主退職する自由は憲法で”職業選択の自由”が保証されている国だけあって保障されています。その意味で、仕事が嫌なら辞めるか、仕事や組織の在り方を改革できる役職まで出世したり、政治家に転身して外から関わればいいだけのことで、少なくとも”辞めてしまえば基本的に一民間人”になるだけのことです・・・ま、個人的な経験からすれば実際には（中略）でも注意が必要ですが（笑）。話を戻すと、2年ほど続いているモリカケ騒動がどうも野党やマスゴミなどにとって手詰まり状態になり、この五月の連休のカレンダーを見ている民間人から”野党議員は17連休を目指しているのか？”と揶揄されるようになって、唐突にマスゴミがぶち上げたのがセクハラ騒動という流れになります。その唐突感は、湾岸戦争の頃、某・アメリカ合衆国大統領が”イラクに大量の生物化学兵器がある（から排除する）！”と主張し、アメリカ軍が国境を越えて攻め込んで制圧し、気が済むまでイラク国内を虱潰しに探索したものの”何も発見できなかった”ら、とうとつに”これは平和と民主主義の戦いだ！”と主張するようになったときの唐突感というか違和感に酷似しています。まあ、だからと言ってセクハラ騒動がトランプ政権の国際的な謀略の一環と主張する気は更々ありませんが（笑）。ただ、セクハラ騒動の背後に国家レベルの情報戦の影がちらついているように見えているのも意外と確かな話で、1年以上前から仕込んであるネタを必要に応じて駆使する手口から考えるとき、この時期、このタイミングで”たまたま女性記者がセクハラ問題に目覚めた”と素朴に信じるには、半世紀を超えて生きている間に、いささか色々なものを見聞きし過ぎたかなと。実際、”女性記者の方が悪い！”と指摘する声も小さいものではないのですが、そもそもの女性記者の取材の動機が”モリカケ騒動関連の特ダネの類の入手”とされ、”その取材の席でセクハラ発言を受けた！”と主張し、容疑の段階で公職追放に追い込んだ・・・と言うのが大雑把な流れとなります。素朴な疑問として、セクハラ発言に耐えてまで長時間張り付いて肝心の目的とするモリカケ騒動関連の情報を仕入れることには成功したのかどうか？という点は、不思議なくらい当事者を含むマスゴミは華麗にスルーしているなあと。公務員の守秘義務という点では大枠で”業務上知りえた情報を外部に漏らしてはいけない。犯罪行為として処罰の対象となりうる。”という規制がかかっていますから、勤務時間外にいっぱい飲んでいるときにマスゴミ関係者に情報を漏らすことがそもそも違法行為であり、そうした行為を教唆、強要した時点でマスゴミ関係者が犯罪を誘発させようとしたと解釈できます。故に、公式見解の発表や公式の情報提供は各省庁の担当記者クラブに提供されているわけで、”特定の役職の公務員に対して、私的に公務に関する特定の情報提供を求める”行為は、ほとんどの国で”スパイ活動”に該当し法に基づいて処罰対象になっています。少なくとも、破壊活動防止法やスパイ活動防止法の類が国会で俎上に上がるたびに、野党やマスゴミが大反対しつづけてきた結果として、他国の諜報機関や軍関係者どころか普通のジャーナリストにまで”スパイ天国、日本”として知られ（多くの場合揶揄され）るだけでなく、”重要な情報は漏洩の可能性が高すぎて日本の関係者には渡せない”とされて久しい状況であることは、一部では知られた現実だったりしますが（黒い笑）。純粋なセクハラ問題ではなく、そうした視点で考えるとき、くだんの女性記者の取材手法と一連の情報公開の流れに違和感を感じているのですが、１．取材対象が初見の相手ではなく、以前にも勤務時間外に身銭を切って飲んでいる取材対象に複数回、取材（というか接触）し長期間観察した経験がある。２　過去の取材時に、既に身に危険を感じるレベルのセクハラ発言を受けた経験があり、それを理由に取材から外れていた（と主張している）。３　にもかかわらず、私的な酒宴の席に押しかけて勤務時間外の公務員に対して業務に関する情報収集を強行し、事前の許可も了承もなくその会話内容を録音し、取材対象に告知した取材目的ではなくセクハラ行為として記事にしてマスゴミに（これまた当事者の許可なく）流した。というのが、大枠の流れになるかなと。これって、取材対象からすれば、勤務時間外に、（バーなどがわかりやすいですが）飲酒を主な目的とする店で身銭を切って飲んで憂さ晴らしをしているときに、取材と称して自分が関わっている公務に関して明らかに公務員の守秘義務違反に該当する情報収集を試みる相手にどういった対応をするか？という話になるわけです。勝手に自らの意思で取材と称して酒を提供する店で酔っ払っているオヤジのところへおしかけて、鍵がかかっているわけでもない店内で酔っ払いオヤジのセクハラ発言を聞くのが嫌なら、いつでも席を立って帰ればいいだけのことで、いい気持ちで酔っ払っていたオヤジからすれば、自分が電話などで呼び出したわけでもない女性に発言内容を無断で録音され、モリカケ騒動のネタではなくセクハラ発言として一方的に全国区で（発言内容を編集された上で）晒されて失職するという　・・・　まさに踏んだり蹴ったりというか、キツネにつままれたような展開ではないかと。私が、悪質だなあと思ったのはセクハラ発言を延々と長時間録音し続けた女性記者の取材（？）行為で、本当にセクハラ発言で自らの尊厳が耐えられないほど傷つけられたと感じたのならば、その発言の直後に席を立つのが道理で、それを越えて延々と録音し続けるのはセクハラ発言を誘発することそのものが主目的だったのではないか？と勘繰られても仕方が無い行為ではないかと。また、”取材”と称していながら無許可の長時間録音を実行し、その内容を自身が所属する報道機関で取り上げて問題化するのではなく、別系列の報道機関に持ち込んで問題化することで、責任の分散を図っていること。つまり、所属する系列のTVや新聞、週刊誌などで報道した場合、”あそこの記者はハニートラップを仕掛けてでもネタを作りに来る”という批判が高い確率で所属している系列全体にかかるところを、他の系列の報道機関を巻き込む（のか、そもそも最初から共謀していたのかは不明ですが）ことで、報道機関の材手法や報道姿勢への批判が分散されている現実があるということ。記者の肩書で”Aの件についてお話をお伺いしたいのですが”と、取材対象が酔っ払っていることが分かっていて自らの意思で押しかけ、勝手に発言を録音して”Bの件”として公開して社会問題化する”取材”と”報道”手法を、取材と主張する女性記者のセクハラ問題の告発という美談の類で納得できる人は脳内で綺麗なお花畑が満開になっている気がしないでもない。本当に社会正義に立脚して社会にセクハラ問題を提起するのなら、録音した会話を編集せずにネットの掲示板などに晒せば済む話で、実際、民主党政権時代に国民に詳細な説明もせずに政府が一方的かつ強引に封印した”海上保安庁による中国漁船の取り締まり映像”を海上保安庁の某職員がネットに流出させたのも、日本の報道機関が”報道しない自由”を駆使し民主党政権の意向を忖度して動こうとしなかったからではなかったか？そう考えると、系列の異なる報道機関の週刊誌という媒体に、明らかにプロの報道関係者としての取材倫理を踏みにじってまでネタを持ち込んだという主張そのものが、”どこまでグルでマッチポンプをやってんの？”という疑惑の温床になるなあと、巨大（匿名）掲示板を黎明期から知っている世代としては思うわけです。セクハラ発言にしても、官公庁の庁舎内で勤務時間内に正式なアポイントメントをとって取材しに来た記者に対しての発言なら社会問題化しても納得しますが、勤務時間外に呑み屋で酔っ払っているときに呼んだわけでもないのに押しかけてきて、勝手に会話内容を録音し、発言が気にくわなければ全国区で一方的に報道するようなモラルと職業倫理の持ち主が悪いのか？と聞かれれば、そりゃあ女性記者の方が一方的に悪いし、その尻馬に乗って騒いでいる連中はもっと悪いと私は思います。そして、前段で書いたように”生物化学兵器の排除”を主張してイラクに軍事侵攻した亜米利加が、そもそもイラク側が主張していたように生物化学兵器が（少なくとも軍事的な脅威となる量では）存在しないことが露呈してくると、唐突に”平和と民主主義の戦い”だと論点をすり替えて自らの不法行為を正当化しようとした構図と類似しているとも思います。まあ、モノは考えようで、これからは”セクハラなどを防止するため、勤務時間外のマスコミ取材に公務員は許可なく応じてはいけない”云々と法律で規制すべき機会になったわけですし、”公務以外でマスコミ関係者との個人接触を原則禁止し、公務に関する情報は関係省庁のHPおよび記者クラブへの提供に限定する”とかで自衛しないと、高級官僚の首が本業とは関係のないところでいつ飛ぶかわからない時代になっていると国のレベルで認識したり対応策を講じる機会になったのではないかと。繰り返しになるけれど、夜に呑み屋で飲んでいる勤務時間外のオジサンに、オジサンの仕事仲間でも部下でもないのに自分の意志と選択で勝手に押しかけて、取材対象者にとっては１円の得にもならないどころか発言内容によっては守秘義務違反で逮捕されかねない情報を聞き出そうと長時間に渡って付きまとって帰ろうとしなかったのに、情報が聞き出せないとなるとセクハラ発言をされた！と、これまた無許可で録音していた会話を”これがセクハラの証拠だ！”と主張し、週刊誌に売り飛ばす成人年齢に達している女性を支持する理由が私には見当たらない。くだんの女性記者の言動を整理すると、”モリカケ騒動で政権がひっくり返るような極秘情報を渡せ、さもないと密かに録音しておいた（個人的に酒を飲んでいるときの）セクハラ発言を世界規模で流出させて失業させるぞ！”とやらかしたってことではないかと。バーなど呑み屋の酒代が高いのは、扉の内側のことは外に出さない秘密保護の代金も含まれているからというのが”（昭和までの）大人の常識”でしたし、そもそも堅気にしろ玄人にしろ、女性が夜に一人で飲んでいる職場の仲間でもなければ親族でもない男性（客）と自らの意思で相席することの意味は洋の東西を問わずオトナには説明不要だった時代しか知らない世代の爺としては、”その状況でセクハラ云々と言われても、それって粋じゃないねえ。”というか、そもそも論として、赤の他人の酔っ払いのセクハラ発言が嫌なら、成人年齢に達した後も、勤務が終わって日も暮れたら（男女を問わず）さっさと自宅に帰って鍵をかけ、飯食って風呂入って寝てしまい、翌朝に目が覚めたらとっとと出勤するといった清く正しい日常を繰り返し、土日の日中にはボランティア活動したり讃美歌でも唱って過ごしていれば、無縁でいられるんじゃなかろうか？と考えてしまいますな。少なくとも、世間一般の女性が直面するセクハラ問題と、モリカケ騒動から派生した女性記者のセクハラ騒動は別次元の話と分けて考えるべきで、そこは問題では無い発言内容だけが問題だと主張する人はオトナにしては視野が狭いと思いますし、TVのコメンテーターが典型ですが（冷静に情報も状況も分析せず）発言内容だけが問題だとヒステリックに叫べば叫ぶほど、或いは彼ら彼女らの日ごろの言動を知れば知るほど胡散臭いなあとか、そう断言できるほど清く正しく生きて来た人なの？とか私は思ってしまいます　・・・　ご存知の通り、邪推マニアで陰謀論が大好きな生きものだけに。ま、時代遅れの昭和の倫理観や常識でグダグダ言ってる爺は黙ってろ！とマスゴミは主張していますが、平成もあと少しで終わることは指摘するまでもありますまい（笑）。2018・04.29

2018.04.29

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怪しい話・番外編3　獣医師騒動3

怪しい話・番外編３　獣医師騒動３結局、加計学園の騒動って政局騒動であって、日本の獣医師が抱えている様々な問題を解決するのが主目的ではなく、いわゆる共謀罪の審議を遅らせてあわよくば廃案に追い込むとか、外国企業が管理運用している”ライン”を使ってマイナンバー制度のオンライン利用を行う国亡レベルの売国（民）制度の構築推進から国民の目をそらせたい連中の茶番じゃないの？という気がしてきています　・・・　邪推マニアとしては特に。この件に関するマスゴミの報道姿勢もかなり異様で、ついには、出会い系に文部科学省の事務方のトップ（だけではないようですが）である事務次官が通い詰めて常連になっていた事実に関して、”それの何が悪い！合法だろう！”と公共の電波でも言い始めたモラルハザードを促進する姿勢に昭和のオタク第1世代としては目が点になっています。が、同時に、”ああ、だから末端の教育関係者の性職化が止まらず、性犯罪として告発されても、いわゆる”深い仲になったのは（既婚の保護者や16歳未満の生徒が対象だったり本人が既婚であっても）真剣に愛していたからで（個人の恋愛なんだから問題ないじゃん？なんで私だけ晒されるの？）云々”とかいった釈明（？）会見を真顔でするし、それをマスゴミが公共の電波を使って垂れ流すこともあるんだ～”と腑に落ちもしました。そもそも性犯罪の温床になっている容疑が出ていたグレーゾーンの店だから公安などの内偵が入っていたわけで、その内偵調査の過程で現役の文部科学省の事務方の事実上のトップである事務次官が常連客となっていることが発覚したわけですが、貧困女子問題の現状を個人的に内偵して”お小遣い”を渡すことで得た情報に基づいて彼は何か具体的な改善策を提案したり講じたりした実績に繋がっているのか？そこの部分も”口には出さなかったが心の中では思っていた”とでも言うのか？同時に貧困男子問題というか、金銭的な理由で若い世代ほど結婚を断念している現実があり、それは少なからず少子化の主因になっているのが日本の現状だと私は思いますが、貧困女子の女子が未婚の女性を意味するとすれば、従来の日本の社会では結婚することで（ある程度ではあっても）経済的に安定していたのが、単独で生活する女子が増加するようになって貧困状態に陥るようになったのではないか？といった仮説の方が、高等教育を受けていないから貧困に陥っているのでだから高等教育を無償化すべし云々といった教育業界関係者が好む仮説よりも合理的ではなかろうか？実際、若い世代ほど結婚しない理由として、結婚しないのではなく収入など金銭的なことを考えると結婚に踏み切れないとする（特に男子）は時代が下がるほど増加していますし、相対的に同世代の男子よりも給料（あるいは時給）収入が低い傾向が続いている女子が単独でいれば男子以上の貧困に直面しやすくなるのは確率論というより統計データから読み解ける話で、夜の繁華街で夜の蝶を相手に延々と”お小遣い”をばらまかなければわからないような事では無いと私は思います。というか、歌舞伎町の特定の店に出入りする女子だけを調査サンプルにした根拠が不明で、全国の出会い系を代表する店とか、その店に出入りする女子は典型的な貧困女子という（事前の）調査データが文部科学省にはあって、それに基づいて事務方トップの事務次官が単独で現地調査を繰り返したのか？ざっくりと解説すると、統計資料などを作成する場合、対象をすべて（全員）調査する”悉皆（しっかい）調査”と無作為に一定数の対象だけ調査する”サンプル調査”に大別され、サンプル調査の場合は数学的に補正し拡大解釈して全体の数値を推計することになります。前者の典型で有名なのが”国勢調査”で可能な限り対象となるデータを収集することでデータの正確性が高くなる反面、調査にかかる時間と費用が大きくなるため、手間と金をそれほどかけずに実体とそれほど誤差の無い調査ができないか？というニーズからサンプル調査が生まれ改良されてきたというのが大雑把な話になるのですが、故に、某・前・事務次官の主張する私的な調査は（それが調査と呼べるしろものならばですが）サンプル調査に該当する（か～？）わけです。そして、統計学的な調査だったと仮定する場合、対象の年齢、学歴、（大枠での）年間所得、家族・親族・内縁関係者など同居人の有無、配偶者の有無ないし婚姻歴、子供など扶養家族の有無、・・・、犯罪歴などなど基本的なデータや貧困を惹起する要因と仮定しうるデータの収集が不可欠ですし、さらに言えば、彼女たちが提供した個人データがホントかウソかの検証も必要になってきます。そうした調査データの真偽の検証は無資格の私人でやるとストーカー容疑やプライバシーの侵害といったことになりやすく、個人情報保護法案などでもガードされているわけですが、文部科学省の公式調査で行う場合でも回答した対象者からさらにサンプルを抽出して、戸籍や住民票の置いてある役所（住民課や福祉課などの協力ですな）、税務署、警察や公安関係などなどにも裏付け調査の協力を要請する必要が出てきますから、国政レベルの省庁間をまたいだ話になりかねません。それ以前の話としては、文部科学省の前・事務次官が彼の主張する実態調査を行った相手が、そもそも日本人だとどうやって確認していたのか？という根柢のところが不明なあたりも大問題で、夜な夜な外国籍の成人女子の貧困問題の実態把握するために歌舞伎町の特定の店に自費で入り浸って自費で”お小遣い”を渡して調査するほど文部科学省の事務次官は暇で高給取りなのか？文部科学省は外国人女子の貧困問題に取り組むために外国人の高等教育無償化事業を国の内外で行う予定があるほど予算が潤沢なのか？日本国籍を有していながら学用品がまともに買えない困窮家庭の問題や低所得故の給食費未払い問題、或いは奨学金返済問題などなど優先すべき未解決問題の方が多いと言われかねない欠陥もあるわけです。・・・　まあ、夜の歌舞伎町を飛び回る蝶は全員が日本国籍の女性で、彼女たちの言うことは公権力を行使して検証するまでもなく１から１０まですべて真実で疑う人の方が人格破綻者でネトウヨだと今のマスゴミや教育関係者は言い出しかねませんが（溜息）。それはそれとして、愛媛県の今治市に獣医学部の新設が決まったのがけしからん！京都産業大学もあったじゃないか！と某・野党関係者や一部マスゴミが主張しているのですが、農政の管轄ブロックの大枠では、九州、中国・四国、近畿、・・・といった具合に管轄が分かれていて、京都産業大学の場合、大阪大学という極めて近接した地域に歴史も実績もある大手の国立大学に獣医学部があります。関東圏の人にはピンとこないかもしれませんが、京都と大阪はかなり隣接していて在来線網も新幹線も整備されている区域ですから、既に阪大に獣医学部があるのにそんな近いところに半世紀を超えて新設されなかった獣医学部をいの一番に設置する必要があるの？というのが私の感想ですが、獣医師の地域のニーズで云々と周辺人口で言い出すと、なら人口減少が続いて世田谷区と練馬区を合わせた人口より規模が小さくなっている某県にある大学の獣医学部をスクラップして京都産業大学に新規にビルドするような再編はなぜしてこなかったのか？・・・やはり、交通の便や行政区域、歴史的な経緯も加味することに一定の合理性があるのではないか？瀬戸内海の本州の山陽側の県にもなければ四国の４県のいずれにもない、ニーズがありながら長らく（少なくとも半世紀以上）一種の空白域になっていた地域に獣医学部を新設するより、大阪に隣接している（大阪～京都駅間の鉄道の移動については在来線でも数十分で新幹線の便数も多い　・・・　ちなみに四国に新幹線は無く、在来線は”本線”であっても完全電化も全線複線化も実現の見通しが立っていない。本四架橋の尾道～今治ルートは完成済。）京都への新設を優先すべきなのか？さすがに、そのあたりを指摘されると北陸など他の獣医学部が近場に無い地域でも云々と、それまでの新設に関する申請の経緯では後手に回っている地域をなぜかその時だけ持ち出すマスゴミもありましたが、その場合も京都への新設を愛媛より優先する理由にはならないんじゃないかと　・・・　野党やマスゴミの主張を聞いていると”あれか？愛媛県に獣医学部が新設されるのがそんなに気にくわないのか？”と言いたくなるのは私だけか？更にマスゴミ報道で印象操作だよなあと思っているのが、今治市の土地の無償提供や愛媛県や今治市の費用負担などが数十億円になっていることがけしからん！加計学園が不当な利益を得ているのではないか云々といった報道で、特に私学の大学を地方が誘致する場合、無償供与を含む土地の提供や運営費などの負担に応じている事例は珍しく無かったりしますし、地方どころか国の単位で人口が減少していて、製造業の海外流出に象徴されるようにいわゆる従来型の企業誘致も難しくなっている昨今、土地も自腹で購入し、運営上のリスクも全て自己責任でおってまで地方都市に開学したがる私学校がどのくらいあるの？と逆に私は聞きたい。というか、これまで地方が企業や学校の誘致に少なからず土地を無償を含めて破格な条件で供与したり、周辺整備を公費で進めたり、教育機関の場合などに一部費用を負担してきたことはなぜ問題じゃないの？某企業や某マスゴミが社屋を建設している土地が公有地の払い下げという場合、自分たちは相場の定価で購入してきたの？といった素朴な疑問があるのは私だけか？特に（卒業生に需要のある）学校を誘致すると、都道府県の境を越えて一定の期間で入れ替わる一定数の若い（その多くは未婚の）学生が就学することが多く、学生相手の下宿屋や食堂といった新規需要も発生するなど、地元の産業にも少なからず利益をもたらすなどなどメリットがあり、企業のように急に海外に移転したり倒産して一夜にしていなくなるといったリスクも低いが故に地域活性のテコ入れを兼ねて学校誘致を進める地方自治体があるわけです。そういう視点で見ると、”愛媛県や今治市が地域振興や地域活性化を兼ねて公有地を供与したり資金負担の応じることで新設学校を誘致するのはけしからん！地方都市なんぞ黙って衰退して滅び去れ！”と中央の野党やマスゴミが主張しているようにしか見えないなあと。その意味で、北陸など獣医学部の空白地域は他にもあるというのなら、別に愛媛県への新設に難癖をつけなくても、野党やマスゴミも後押しして続々と全国規模で獣医学部を新設していけばいいんじゃね？それによって将来的に従来よりも有資格者が増加して獣医師の所得などの待遇が低下したとしても、それって獣医師以外の誰が困る話なの？実際、全国の歯医者さんの数が全国のコンビニより多い時代になって久しいけど、そうなる以前と比較して何か大問題が歯医者さん関係者以外に生じている？収益の問題は国家資格を取得した後の勉強や工夫で新技術の導入や予防歯科の促進、訪問治療などなどで地域や時代のニーズに応じたかどうかで明暗が分かれてない？国策として設置された国立大学獣医学部の卒業生が獣医という職業を独占した時代は長く、その背景に農業政策としての家畜への対応や軍などの（騎兵や荷駄に用いる）馬などへの対応といった歴史があり、ある意味で最低限の獣医を確実に養成し彼らの生活を安定させることが国策に沿っていたが故に様々な公的な規制が出来てきたわけです。が、軍など公的機関の馬に対応するニーズは低下し、農業も長期衰退傾向となって久しく、動物園関係は横ばい、需要が著しく伸びているのは傍流であったペット関連の分野くらいという現状で、なぜ国が獣医師の増員の規制を続ける必要があるのか？国家資格の取得が必要な医者や歯科医、薬剤師や看護師などの人間を相手にする医療分野でさえ、国立か私学かを問わず新設認可が半世紀もないような硬直化した状況では無いのに、なぜ動物相手の獣医だけは様々な問題を指摘され続けていながら半世紀以上も無風状態だったのか？そのあたり、国民健康保険のような税金の絡む制度とは無縁で（ほぼ）自由診療体制であることや、従来の患畜の主流が戦後は農業関連の家畜という時期がしばらく続いたように対象が限定的だったことなどが大きいと私は思っていますが、状況は新設されなかった半世紀以上以上の間に着々と変化し、獣医関係も無風ではいられなくなった　・・・　のに、野党やマスゴミはそういった大枠の視点を欠いたまま”あべが～あべが～”と政局騒動に邁進しているようにしか見えない。獣医関係者も、今回の新設騒動を一つの機会にして近未来の獣医師はどうあるべきか？人員が従来よりも多く供給されるようになった場合、どのように所得水準を維持し、新しい分野を開拓し技術を継続的に向上させていくかといったあたりの対応を本格化させていくべきで、内部からもそういった声があがったから今回の一校だけであっても獣医学部の新設に繋がったとも私は考えていますが、現状維持ではいろいろな意味でもたなくなってきているという点でこれもまた戦後の昭和体制の制度疲労の一つと言えるのではなかろうか？まあ、人間相手の教職員（＝学校の先生）が規制に守られ既得権の保持に汲々としながら権利だけは声高に主張し、社会の変化に対応せずにいる間に複数回の周回遅れの落ちこぼれ人材と化していったのと同じような道を選択する自由ももちろん日本国憲法は保障しています　・・・　幸か不幸か憲法９条の規定ではありませんが（笑）。最後に、今回の獣医師騒動で野党やマスゴミの主張を整理すると、・愛媛県今治市に獣医学部を新設することに反対で、今治市への新設を遡って取り消した場合、・獣医学部の新設そのものを今後も四半世紀とか半世紀という単位で行わないか、・京都というか京都産業大学に獣医学部を新設することには賛成するが、その場合、・京都産業大学は新たな学部設置に伴う用地取得が生じても地方自治体から地域の不動産評価額で自費のみで購入し、運用経費の負担などはすべて自己弁済とするとともに、・今後も、獣医学部の空白地域に続々と獣医学部の新設を認めるということで、それが最大の国益を産み、国民への最大の利益提供になると考えているということかと。逆に言えば、文部科学省の事務方のトップでもある事務次官もハンコを押して事業が動き出している今治市への獣医学部の新設を今になって取り消した上に、獣医学部の新設を期間を明示せずに凍結するとなれば、それって獣医師会の意向を野党とマスゴミが忖度して横車を押しただけだったんじゃねえの？という声が出てくるんじゃなかろうか？・・・獣医師会にとってはかなり不本意で迷惑な話だとは思いますが。実際、直接関係している地元の自治体が負担に応じ、学校側もリスクを抱えて応じ、獣医師会も相談に応じた段階で”これって、直接の関係者が合意している話じゃん？”ですし、その後、しぶしぶながらも文部科学省も省として許可して国が認めて動き出した話なわけで、グダグダと今になって言っているのが天下り問題の当事者の一人で私生活では教育行政組織のトップとしては倫理的にいかがなものかな夜の歌舞伎町の単独実態調査に邁進して上層部から注意されていながら、懲戒解雇は免れて退職金もしっかりもらってそれなりにメンツは立ててもらっていた前・事務次官という風景なわけです。まあ、今回の獣医師騒動で文部科学省が何をやりたいのかがそもそもよくわからないのですが、官公庁として特に信用面での文部科学省のイメージダウンや、実社会に様々な実害を生じさせていることに伴うデメリットは確実に大きくなっているんじゃないかと　・・・　ま、所詮は他人事ですから私が心配することではありませんが（ｗｗｗ）。

2017.06.08

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怪しい話・番外編　「獣医師騒動」

怪しい話・番外編　「獣医師騒動」獣医学部といえば農学関連の学部や学科の中で最難関と書いてもいいのではないか？　・・・　ま、オの字業界だと漫画”動物のお医者さん”の影響か、変な人（教授や学生）が多いと思っている人が意外と多い（笑）。それはさておき、客観的なデータとして日本の大学に獣医学部が最後に新設されてから半世紀以上（これを書いている時点だと52年くらい経過しているハズ　・・・　私の記憶が確かなら）経過していて、昨今、巷を賑わせている加計学園騒動では、そもそも論である、”じゃあ、獣医学部の新設は不要なのか？”という大前提の検証を意図的にマスゴミがスルーして”報道しない自由”を駆使しているあたりが歪と言える。仮に、この騒動で愛媛県今治市に（加計学園かどうかはおいておくとして）獣医になれる学校や学部の新設される話が無くなった場合、だれがどのような責任をとるのか？結果的に、マスゴミが慢性的な不足が指摘され続けている獣医師の増員問題の解消を妨害し遅滞どころか後退させただけで話が終わるのではないのか？というか、一方の当事者ともいえる愛媛県や今治市の主張も聞こえてこない　・・・　これまたざっくり書くと、中央のマスゴミが一定のバイアスをかけた情報をあたかも地方の主流の主張であるかのように垂れ流しているのが現状だけに、愛媛県知事は公式コメントを自前のホームページやSNSの類を駆使して発信し続けるべきでしょうなあ。というのも、加計学園騒動で獣医学部新設が頓挫した場合、当分の間、獣医学部の新設は認めない（政治生命を脅かす一種のタブーと化す）となるか、別の学校組織の新設で仕切りなおすという２つの”その後の対応”が予測されるのですが、その場合、愛媛県（特に今治市）に獣医学部が新設される可能性は限りなくゼロになる可能性が高い　・・・　それも未来永劫と言っても過言ではないような長期に渡って。つまり、今治市といえば、三番目にして最後の本四架橋（いわゆる瀬戸大橋）である今治～尾道ルートで知られる”しまなみ海道”の四国側の基点であり、ざっくり考えても、本州側の山口、広島、岡山、四国側の愛媛、香川、高知、徳島（は二番目の本四架橋の鳴門大橋などで大阪が近いから微妙か？）界隈の獣医師志望者にとっては朗報でしょうし、ある意味で（慢性的に不足気味な）公務員獣医師の充足に苦労している自治体にとっても朗報ではなかろうか？　・・・　そのあたりの関連する地方自治体のニーズや要望はどうなの？ということ。ざっくり書くと、中央のマスゴミが”地元（今治市）では、特に必要としていない”というか”地元（今治市）でも総理の意向で強行された話で、ここにぜひ新設してくれというわけではない”といった”現地の声”の報道には熱心な一方で、少なくとも愛媛県知事や今治市長などが”うち（愛媛県、今治市）に、長年要求していて文部科学省が半世紀以上認めなかった獣医学部を新設することを、首相、国会議員、内閣の後押しで認められたことに、直接の関係のない首都圏のマスゴミ関係者や一部の野党の国会議員はなぜ今になって反対するのか？これ以上の邪魔をしないでいただきたい云々”と当事者としての意思表明をしている（あるいはしていない）という情報が広がっていないのが現状ということ。故に、”地元が乗り気でなく首相が無理に押し付けた話なら止めていいんじゃね？”という声が直接の利害関係に乏しい首都圏の（特に新聞、TVが主な情報源の）在住者に広まりつつあるわけですが、地元の主流の意見がそうでないなら、従来のマスゴミ以外の情報拡散ルートであるインターネットやSNSなども最大限に活用して情報戦争に対処しないと、当事者でありながら外で指をくわえているうちに全てを失うことになるでしょうなあ。地方自治体の長や地方議員の中には、”首相のお友達の経営する学園を儲けさせるために税金を使うよりも、そのお金を（この場合は常套句の”教育と福祉”とは口が裂けてもいえませんから）福祉に使うべきです！”と主張する人がいても不思議ではありませんから、地元の主流の公式な意見と見解はこうである！という意思表示を自ら行わないでいると、大手のマスゴミが地元でも反対意見が多いように報道しているから新規設置そのものを廃止していいんじゃないの？となっても何の不思議もないわけです。そんな馬鹿な！十年以上も根拠となる客観的な公式データを示さないまま文部科学省が却下し続けてきた案件を、特区を新設して、内閣や与党の政治家だけでなく一部の野党議員まで後押ししてやっと”一校だけ”ということで新設が認められた合法案件が、そんな雰囲気や一方的な報道でひっくり返ってチャラになるような馬鹿なことが起こるわけがないと中国四国地方の関係者が思っているとすれば、まあ、そうだといいですけどねとしか私としては言いようがないかなと。そういえば、京都の某大学も獣医学部の新設申請をしていたことで知られているのですが、既存の大学に新規増設された場合でも、その大学のOBとかが某国会議員とお友達だったり本人や配偶者、親族が卒業生や在校生だった場合、某国会議員のお友達や親族などが深くかかわるからけしからん云々とマスゴミは報道するのだろうか？一方で、（国家）公務員や元・公務員（いわゆる有力OB）の親族や配偶者、あるいは本人が同種の事案に影響をあたえているかどうかは問題としないし検証もしないのなら大手マスゴミの報道姿勢そのものが偏向しているとかダブルスタンダードが恒常化していると言われてもしかたがないのではなかろうか？私は、（今後、１０～20年程度で）人工知能が台頭してくることで世界の国別の競争力や先進国の社会基盤、社会制度などが短期間で激変すると想定している側なので、そうした近未来の社会変化を予測して適切に対応し、事前にそういった社会で必要となる技能を習得させる組織への改編ができずにいる文部科学省を解体ないし解消し、既得権の保持には汲々としていながら就職した後の（社会で必須となっている）新技術への対応に消極的な”（大学を含む）学校の先生”を一度全員解雇し、教員免許を3年ごとの講習の受講と書き換え時の試験を必須とした上で再雇用するか、パート雇用にすべき時期に来ていると思います。或いは教育のプロだと主張する彼らが長らく解消できない（どころか悪化している感もある）教える側のヒューマンエラーや先生同士の能力格差などを解消する意味でも、聖ではなく性の職者と揶揄され保護者、在校生、（未成年を含む）卒業生との不適切な関係の類を根底から解消する意味でも、電脳空間にしか存在しないバーチャル教室、バーチャル教師を主流とする根底からの大教育改革は有効でしょう。つまり、今後の教育は文部科学省ではなく科学技術省を新設して対応し、機能不全を起こしているというか時代に対応できなくなっている（或いは、意図的に逆走している）組織部分は文部庁に再編すべき時期に来ているということ　・・・　人を一か所に集めて能力にばらつきのある教師が知識を教えるという意味での従来型の学校教育は終焉を迎えつつある。そして、そういった改革の最大の抵抗勢力となった時代遅れというか時代錯誤な文部科学省を解散させないと国が持たないと考えています　・・・　ある意味で文部省関係者が高度情報化社会の落ちこぼれと化し、人工知能や量子コンピュータなどの実用化、廉価化がまったなしとなり、そうした技術革新が”従来の読み書き算盤”の教育カリキュラムを時代遅れというか化石にしていく時代に対応できていないわけです。わかりやすく書くと、”人間性を高めコンピュータに毒された非人間的な人材にならないために、学校では墨と筆を用いて半紙に黒板の内容を板書することを必須とし、学校からの伝達は手書きの回覧板か電話、FAXのみに限定し人間性を阻害するメールの類は不可。表計算ソフトの類は暗算能力の成長を阻害するので算盤教育を復活させこれを主とし　・・・”というのと似たような主張を大真面目で日本の教育のプロを自認する主流の人たちは今後も可能な限り続けようとしているわけです。いずれにしても、獣医学部の新設を半世紀以上にわたって認可しなかった根拠となる客観的かつ合理的なデータを政府の求めに応じて提出できず、公式の反論すべき場では反論しなかった文部科学省の元・事務次官が、そうした経緯を踏まえて内閣主導で十年以上根拠が明示されないまま塩漬けにされていた案件をどうにか一校だけ新設に漕ぎつけたら、官僚の意向に逆らって政治家が新設を強行したのはけしからんと批判しているのが加計学園騒動の基本構造ということ。冷静に考えれば、この半世紀ほどの間に、Fクラス大学と揶揄される大学や語学留学レベルの留学生が主体の大学をどれだけ文部科学省が認可し、新たな学部学科新設を認め税金を投入してきたか？なのになぜ獣医学部の新設は不可だったのか？・・・　ま、何事も言わぬが花ということはありますが（笑）。

2017.06.06

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一夢庵の怪しい話　第991話　「教育錯誤　その１」

一夢庵の怪しい話　第991話　「教育錯誤　その１」まず最初に認識すべきは、”義務教育は（小学校から）中学校まで”ということと、少子高齢化の結果として既に学生の数が減少に転じて久しく（卒業した小学校、中学校といった）”母校”が廃校になっていたり、数年後に姿を消す予定という話は珍しいくない現実（＝従来型の教育産業は衰退産業）があることではないかと。それはそれとして、私が小学生の頃に、日本の近くだとオーストラリアのように国土が広大なため隣町の駅まで列車で移動すると（当時だと）２日以上かかる地域を抱えているような先進国の中に、無線を使った遠隔地教育（文字通り通信教育）が実施されている地域がすでにあったのですが、少なくとも、一か所に生徒を集めて同じ教室で同じ時間に同じ内容の授業を一斉に受講する日本も採用した学校教育方式だけが絶対にして必要不可欠というわけではないことが20世紀末には既に実証されていたとも言えるのではないかと。ちなみに、教育における物理的な距離の問題のような教育障壁というか格差問題に根本的な変革が始まったのもまた、20世紀末というか1995年にウインドウズ９５が登場したことと無縁ではなく、初心者でも直感的に操作しやすいアイコンをクリックするだけのインターフェース（いわゆるGUI）の普及でコンピュータ入門の敷居が下がったことで海外では教育に限らずさまざまな分野で社会が根底から様変わりしていくことになったのでした。更に、それまでは手間とコストの問題もあってパソコンを単体で使う（＝スタンドアローン）ことが珍しくなく、パソコンでネット環境を利用するのはマニアックな人たちが多かった”パソコン通信”の時代でもあったのですが、ウインドウズ９５の普及と同時期に一般大衆でも気軽に利用できる”インターネット”へのシフトが始まったというか、ネット初心者の大半がパソコン通信を経験することなく（相対的に操作が簡単で画像などが利用しやすい）インターネットを選択するようになり、インターネット利用者の爆発的な増加は急速なパソコン通信文化の地盤沈下というか壊滅を招いたのでした。インターネットの利用が一つの社会常識の水準に達した２０１０年頃には、パソコンを使うよりも安価で利便性が高く猿でも使える環境を提供することで更なるユーザーの拡大が模索された結果として小型の携帯型パソコンであるスマートフォンの台頭が始まったのですが、従来の携帯電話（いわゆるガラケー）が携帯電話から小型パソコンへ歩み寄っていったとすればスマホは通信機能を有するパソコンを携帯可能にする方向で誕生したと言えます。つまり、スマホはガラケーの延長上というか直系の発明品では無いということですが、いずれにしてもスマホの登場でインターネット利用の敷居がさらに下がり、パソコンが前提のインターネット利用は操作だけでなく金銭的にも難し（かったから挫折した）という人も含めてインターネットユーザーの更なる底上げに成功し、ユーザーの激増は急速な社会変化を産んでいくのですが、そうした変化は、従来の黒板に板書された内容をノートに鉛筆で書き写すタイプの学校教育もまた急速に過去の遺物にしていったのではないかと　・・・　海外ではですが。実際、日本においてインターネットの一般利用が本格化した1996年頃から、これを書いている2017年までの20年程の間に多くの国で教育環境や教育方式などを根底から激変させたり現在進行形でさせつつあるのですが、その間、日本の公的な教育業界は”パソコンを使うと薔薇や憂鬱、駱駝などなど漢字が書けなくなるのが大問題とか、（主要な）電話番号を思い出せなくなる記憶力の低下が大問題とか、ゲーム脳仮説に象徴される人格形成に大問題が生じる云々といった寝言を主張して教育におけるパソコンやネットの明らかに対応を怠ってきたというか普及や利活用の足を引っ張り続けていることは御存知の通り。というか、その間、公的な教育業界が邁進していたのがご存知”ゆとり教育”で、少なくとも、ゆとり教育で教える内容を減らし（＝教科書が薄くなっていった）て浮いた時間で高度IT化社会に対応した人材の教育養成に主力を傾注しなかったことは確かな話で、結果的に”ゆとり教育”世代が世界的に見て高度情報化社会では優位に立てない”コンピュータ社会のおちこぼれ人材”を大量生産してしまったこともまた御存知の通り。実際、ゆとり教育世代の悲劇は公的な教育が20世紀末に始まったIT革命後の社会に必要というか必須な教育を受けず、かといって受験戦争世代ほどの競争原理に基づく点数絶対主義の教育も受けず、加速度的に狭くなっていく”ネット世界”に無手勝流の経験や自学自習した知識だけで放り出された個体が多いことで、同世代の世界の他の国の人材に対する相対的な優位性を知らない間に加速度的に失っていることに無自覚なあたりも特徴かなと。なぜこうなったのか？と聞かれれば”最大の要因は学校の先生のITリテラシー能力が低すぎる”ことで、対策としては”学校の先生を一度全員解雇してパート雇用にするかペッパー君（＋人工知能）に切り替える”ことではないかと　・・・　1995年の時点ならまだしも、21世紀に入ってからも”生徒の方がコンピュータを上手に使いこなすんですよあっはっは～。”で済ませていた怠慢が従来は知的エリートの職業を実社会では役に立たない底辺の人材集団へと急速に地盤沈下させていったとも言えます。少し考えれば、従来の知識を教える時間も教える量は減り、かといって実際の社会生活で必須になったパソコンやスマホなどの操作やネットの常識などにも自分たちより疎いままで、しばしば自分たちの同級生の方が有能という環境で先生の権威が地盤沈下しないと思う方がどうかしていると理解できるのではなかろうか＝学校の先生は偉そうなことを言っているけど俺たちより（特にパソコンやインターネット、スマホなどの利用に関しては）馬鹿だと小学生まで認識してしまった時代の到来ですな。では、そういった環境をどのように変えればいいのか？と考えると、特に義務教育ではない高校以上の教育機関の大半を仮想空間に設置し、人工知能と広域データベースを利用したバーチャル学校にシフトすることで学習の効率化や低価格で高度な教育を誰もが受けられる社会を実現させるのが急務で、通信速度の高速化やハード面での進化でバーチャル空間での体験が現実世界での体験とそん色なくなるのは時間の問題なので、２０３０年頃にこの文章を読むと”何を当たり前のことを言っているんだ？”となっているだろうなと　・・・　それまでに人類が滅んでなければですが（笑）。ところで、ここのところ、”（特に体育会系の）部活動の顧問をしていると過労死レベルの労働環境だ云々”とか”部活動への対応で残業や休日出勤が恒常化して過労死レベルで云々”といった主張が聞こえてくるのですが、そもそも、体育会系の部活動を全校生徒に参加必須としているのか？”という素朴な疑問と、”そもそもあんたたちが外部の人材を部活動に参入させることに消極的だったじゃん？”という素朴な疑問というか感想があるわけです。彼らの主張を聞いてというか読んでいて、中でも大笑いしたのが、部活の顧問をしていると教材の作成や授業の準備などなど本来の業務に支障が生じる云々”といったまさに黒板にチョーク（白墨）で板書する時代の発想から抜け切れていないというよりも20世紀末から何も進化していないのが学校の先生ですと自白していることに気が付いていないあたりかなと。まさに、”コンピュータに対応できなくても首にならない地方公務員＝学校の先生”という希少種の常識が、”複数回目の周回遅れ”に突入しているなあとしか思えず、そもそも年収がいくらで退職金がいくらで年金がいくらといった平均年齢まで生きた場合の生涯収入の部分を他の業種と比較せずに、残業が～休日出勤が～と言われても、あるいは民間と比べれば手厚い福利厚生に守られている上に基本的に採用された都道府県内のみの転勤で全国や海外への転勤とは（原則として）無縁で、有給で学生の”夏休み”に便乗した長期休暇有りで、　・・・　といった職業が非正規雇用が増加し正規雇用でも終身雇用がほぼ過去の話になった日本で”人材育成に明らかに成果を出せていない組織をそこまで厚遇する必要があるのか？”となるのは必然ではないかと。公的教育関係者の周回遅れの常識に基づく改変で、他人事ながらため息が出たのが、最後の砦だった大学入試制度まで改悪したことで、その馬鹿さ加減の象徴が元々が民間の能力認定試験だった”漢字検定”の結果を大学入試に事実上加点するという改悪で、”それって一般社会で今後ますます使われなくなる”漢字を書くという能力”を育成するために金と時間を浪費しろってことじゃん？”と思うわけです。つまり、漢字を読む能力は今後も必要としても、書く能力は重要でなくなる　・・・　端末上で変換された候補から選択していく能力の向上の方が手書きよりも優先される　・・・　か、AI（人工知能）と（携帯を含む）端末の進化と普及が自動変換の効率の向上で近未来において”人が手書きする方がミスが多く処理効率が悪いため、美術や趣味の分野に限定される”社会を到来させるだろうと、現時点で予想できるわけです。もっとわかりやすく書くと、”大学の数学入試で算盤（ソロバン）の段級位を加点し〇級以上を必須とする”と言っているのと同じということで、しかも、”エクセル検定の結果は一切加点対象としない云々”といった類の話も注意書きに続いているということです（笑）。そう言えば、昭和一桁組の（学業優秀だったと主張していた）亡母が私が小学校低学年だった頃に”お前は風呂敷も満足に結べないし、習字をいくら習わせても字が汚い。算盤も（そもそも習っていませんでしたが）できないから銀行などへの就職も難しいだろう。社会に出たときに字が汚くて算盤もできないお前は秘書でも雇う気でいるのか云々”と嫌味たっぷりに言い放ったことを未だに根に持っているのですが、それから四半世紀も経たない内に”手書きの文書”や”算盤を使った手書きの計算書”が事務処理上のボトルネックというかエラー要因となり、これを書いている時点だと、事実上の個人秘書を搭載した携帯端末をほとんどの社会人が利用するようになっていることは御存知の通り（大笑）。あれやこれやと過去を振り返りながら考える時、既に一般社会で手書きの中長文が姿を消して四半世紀近くなっているのに、いつまで大学入試を手書きでやるのか？とか、なにゆえに日本の公的な教育業界は手書きや手計算などに固執するのか？？といった素朴な疑問が教育家系者への不信の根底にあることに気が付くわけです。ところで、陰謀論者として気になるのは今に始まった話でもないのに、なぜ連中がここにきて急に”（特に）体育会系の部活の顧問は過労死レベルの負担で嫌だ！”と組織的に叫び始めたのか？という点で、実は中国の国家レベルの分析で”日本がオリンピックや国際大会で優秀な成績を上げている根底に、（中国ではほとんどおこなわれていない）学校での部活動がある”といった結論を出している実話があり、施設の拡充だけでなく草の根の学校教育からの底上げの必要性を指摘していると言えます。ということは、日本の学校単位の体育会系の部活動を弱体化ない廃止に追い込むことで、近未来において相対的に国際競技で優位に立てると考える国もあるということで、その間、そうした国では逆に学校の部活動を採用ないし底上げしていくとさらに優位に立てると考えるだろうなと邪推は続くわけです（黒い笑）。話を戻すと、既に学校の授業に関しては、タブレット端末に授業の光景を画像データとして転送すれば一人の先生で数十万人を超える（というか無制限の）生徒や学生に授業を行える時代になっていて海外の有名大学でも人気のある講座を（多くは無料で）一般公開する事例が増加していますが、これにバーチャルリアリティ系のハード的な進化と廉価化が加わってくると、まさに教室で授業を受けている場合と仮想空間で授業を受けている場合の差異はほとんどなくなっていくことが予想できるわけです。そこに人工知能の利用を前提にしたデータ集積と累積データに基づくディープランニングなどの効果が”深化”してくると、能力にばらつきのあるというか適性や能力差の大きい人間の先生よりも人工知能システムに教わった方が学習効率が良くなる　・・・　少なくとも、時間と空間の制約はほとんど無くなり、”おちこぼれ”も減少するんじゃないかと。つまり、従来だと無線通信教育しか受けられないような、あるいは周囲にほとんど同世代の子供がいないような”僻地”や”外国”に居住する学生とか、経済的な理由で昼間働く必要がある勤労学生といった一定の決まった時間に特定の場所に通学して学習することが困難な対象などを含めて、バーチャル空間の教室だと、その元データになったリアルタイムの授業を受けた学生と同じ条件で授業が受けられるだけでなく、同じ授業を反復受講したり関連した別の授業を参照して理解を深めるといった教育プログラムを個別に組んで実施することも可能ということ。しかも、データの蓄積に”時間の経過”が加わると祖父母の受けた同じ授業を孫世代が追体験することも可能となり、歴代の学生が疑問に思ったこととその回答といったデータベースの累積を人工知能が活用するようになればなるほど、人間の先生には能力的にも物理的にも不可能な細かな受講後の学習指導が可能になるわけです。そうした電脳空間の先生は24時間体制の文字通り不眠不休で働き、保護者や生徒、学生と性的なトラブルを起こすことも無く、時間が経過しデータが増加すれば増加するほど”教え方の最適解”にカリキュラムが近くなっていくだけでなく、文字道理、最先端の学説なども瞬時に（質問への回答や参考教材的な分野などでも）反映可能なわけです。逆に、生徒の側の到達度はテストの結果を広域データベース化することで、（時空を超えた範囲で）客観的に評価され、物理的な接触があるからこそ生じる”いじめ問題”や”不登校”などへの対応も根底から変わってくるメリットはかなり大きく、親が地元の有力者とか教職員関係者とかいった奇妙な加点が入る余地は小さくなるわけです（黒い笑）。受験戦争華やかなりし頃から、”礼儀作法の類は家庭で、勉強は学習塾で対応しろ。我々、教職員は日ごろの業務をこなすだけで手いっぱいだ。一度に担当する生徒の数が40人を超えたら手も眼も行き届かないのは当たり前だろう！etc.”と日本の公的教育機関の関係者は主張してきて、現実への対応ができないでいたわけですから、公教育の”人から人工知能へのシフト”は危急の国策として実施すべきですし、学校教育の従来型の実空間を前提とした学校から、仮想空間を前提とした電脳教師化への切り替え移行に遅れることは近未来の国力の衰退に直結するだろうなと。そして、ここが肝要ですが、日本がやらなくても他の先進国やアジアの他の国々からは必ずこの方向に急速に舵を切る国が増加するということで、手書き教育やある種のふれあい教育に固執する国は相対的に”知の地盤沈下”に直面し、急速に産業の競争力も失っていくことが今の時点で予見できます。その意味で、タブレット端末などを用いた学習の効率化というのは過渡期の光景でありゴールの光景では無いということですが、これまた予言してもいいですが、仮想空間と広域データベース、人工知能の利用などを前提とした学校教育の高度電脳化の最大の障壁というか妨害者になるのが既存の学校の先生に代表される教育関係者ということです。実際、高等学校教育の無償化という話に、こういった電脳空間高校への移行を前提にした視点が欠落しているというか意図的に排除されているあたりで、貧乏人にも安価に最高の教育を受けさせることが彼らの第一目標ではなく彼らの既得権の維持と旧態依然の（金がかかる割に効率の悪い）教育方法を前提とした予算の拡充といった本音が見え隠れするのは気のせいか？怪しい話名物の邪推のし過ぎか？？あるいは、そう考えるとき、学校の部活動の顧問は過労死に直結する過重労働だ！と主張しはじめた勢力というのは、今後、生身の先生に残された教育分野というか働く場所を自ら潰しているなあと思うわけです。ま、既にこれを書いている時点で、リアルな授業において”ペッパー君＋携帯端末”の組み合わせ以下の授業しかできていない学校の先生やTOECで６００点に届かない英語の先生など知的水準が一定レベルに達していない先生が珍しくなく、それでいて学校の先生は高給優遇される終身雇用制の維持が絶対不変で、社会から無条件で尊敬されるのが当然と考えている節があるあたりで、駄目じゃんと（私は）思っています（笑）。２０１７・０５・１７

2017.05.17

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一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第８８１話　「豆腐の角に」

一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第８８１話　「豆腐の角に」　日本に”豆腐の角に頭をぶつけて死んじまえ！”という罵詈雑言の類があることは比較的知られた話ですが、もちろん定番の”返し”としては、”豆腐に頭をぶつけて死ねるか馬鹿！”などが典型になることは言うまでもありますまい　・・・　ま、ほとんど小学生の喧嘩の世界ではありますが（笑）。　ここで考えが少しずつ斜めにずれていくのが怪しい話の怪しい話たる由縁の一つではあるのですが、”本当に、頭を角にぶつけると死んでしまうほど硬い豆腐は無いのだろうか？”と考えはじめてしまうわけです。　その昔、TVで氷点下２０～４０度の世界になると、”バナナで釘が打てる”というＣＭがらみの知識が普及したことがあったのですが、そこから、バナナを凍らせて撲殺用の凶器とし、バナナで相手を殴り殺したら解凍して食べてしまえば証拠が残らないとかいった話になったこともあるのですが、”バナナの皮はどうすんだ？”と思ったのは私です（笑）。　そんなこともあって、”角に頭をぶつけると死んでしまうような豆腐”といわれると、”かっちんかちんに凍らせればいいのではないか？”とか考えてしまうのですが、説明するまでもなく、自然界の冬の寒波を利用して豆腐を凍らせる”凍（し）み豆腐”とか”高野豆腐”と呼ばれる豆腐の加工法があることは御存知の通り。　まあ、そのあたりから凍結乾燥法が考案されたという話もあるのですが、これまた説明するまでもなく、”高野豆腐で人を撲殺するのは難しいんじゃなかろうか？”というのが素直な感想ではないかとも思うわけです。　基本的に豆腐というのは、豆乳のたんぱく質を”にがり（主に塩化マグネシュウム）”加えることで凝固させる、ある意味で羊や牛などの乳に酵素を加えてたんぱく質を凝固させるチーズに近い加工食品と言えなくもありませんし、実際、家畜の血液から作る豆腐というジャンルがあることは比較的知られた話になります。　まあ、そのあたりのことは既に何度か触れた話になりますし、なまじ正確に書けば書くほど話がややこしくなっていくこともあって今回は割愛しますが、豆腐へと凝固していく過程で水や空気の類を取り込む割合が高いほど柔らかい豆腐に仕上がることになります。　逆に言えば、豆腐を柔らかく仕上げるには技術と経験が必要ということですし、堅い豆腐しか造ることができない人と豆腐の堅さを調整できる人の間の技術と経験の差はかなり大きいということになります　・・・　ま、今となっては機械製造の豆腐の方が圧倒的に多いですが、人力が頼りの時代ほど職人の能力差が製品の質などに反映しやすかったわけです。　含有する水分や空気の量が少ないほうが酸化しにくく雑菌なども繁殖しにくくなるということは、発酵がらみの話やオニギリの話などで何度かネタにした点ですが、豆腐も例外ではなく、温度などが同じ条件の環境下で比較すると、水気の少ない堅くてしっかりした豆腐の方が長持ちする（＝腐敗しにくい）傾向がありますから、口当たりのよさをとると保存という点では不利になるとも言えます。　なにしろ、冷蔵庫の無い時代から製造（ものによっては市販）され庶民に食べられていた食材は”日持ち”の観点を抜きに話を進めることが困難で、２１世紀の日本のように冷蔵庫や冷凍庫が庶民の生活でも身近に利用できる環境の方が稀というか圧倒的に短い時間帯における常識であって、ながらく”その場で食べきる”か”常温保存”を前提にしていたわけですから、食品加工にしても”味や口当たりよりも保存性を優先”する人が多かったことは想像に難くないわけです。　そのあたり、いかにも昔の人たちの暮らしの内容が全てわかっているかのように話す人たちもいますが、少なくとも人口で多数派となる平均的な庶民の生活がどのようなものだったのか？という当時の一般人の生活に関する話でさえも、日記などの資料が江戸時代あたりからやっと増加してくるというか残っている資料が多くなるものの、直前の安土桃山時代でさえ意外と資料が乏しく、江戸時代前半の資料などから類推している仮説に過ぎない話もままあるわけです。　つまり、たまたま残存していたり、たまたま目に留まった資料の内容が正しく当時の普遍的な話という前提でその前後まで類推する　・・・　美しく言えば大胆な仮説を真顔で語る人が意外と珍しく無く、常識とされている話が意外と根拠に乏しいことは珍しくありません。　それこそ、”日本に稲がいつごろ渡来したのか？”という大枠の話でさえ、私が学生だった頃は、”稲作文化＝弥生文化”、”自然採取文化＝縄文文化”といった区分で教えられ、稲作文化が渡来したことで縄文文化が弥生文化に切り替わったといった説を真顔で教え込まれたものですが、その後の調査研究の結果、縄文時代末期に既に稲作文化は渡来していて、一律に縄文文化から弥生文化に切り替わったわけではないといった、昔々の定説の崩壊現象があちこちで生じていたりします。　というか、稲作技術が進んだ江戸時代でさえ天候が不順だと万の単位で餓死者が出ることが珍しくありませんし、平安時代あたりだと天候異変が飢饉や餓死に直結していて、都の周辺で飢饉が発生すると京の都の通りに病死したり餓死した人が横たわることが珍しく無かったわけですから、稲作文化が渡来して弥生文化に切り替わっていったとしても、こと食料の調達という根底の部分は”縄文時代の採集文化”も残り、食べられるものを食べて生き延びていったと考えられます。　縄文人の主要な炭水化物やたんぱく質、脂質などの摂取源として、魚介類、海草、野鳥、猪、鹿、・・・、栗、胡桃、里芋、山芋や、山野に自生する山野草や茸などなどが想定されているのですが、そういった縄文人たちが食べていたであろうものを、稲作が始まって米が食べられるようになったから食べなくなったというか食べずに済むほど食糧に余裕があったとは考えにくいわけです。　かといって、古墳時代とか奈良時代に貴族階級が何を食べていたのかはある程度ですが分かっているものの、庶民がどのような食生活を営んでいたのか？となると、謎とか不明という方が多く、大宝律令などの法令で規制されている内容から推測して話を広げていたり、記紀などを含む当時の文献のささやかな文章から話を広げて推測している部分が少なからずあるかなと。　貴族などの日記や随筆の類が増加してくる平安時代に入ると、絵巻物など”絵”による情報も増加しはじめ、まあ、これは学校の歴史の授業で触れられることは（私の知る限り）稀ですが、絵巻物などと同じ技法で描かれた後の春画に相当するエロ系のものが早い時期から登場していたようです　・・・　エロ系の歴史資料は洋の東西を問わず学校の授業などでは”無かったこと”にされがちという話も何度かしてきたところではありますが（笑）。　皮肉なことに、そういった絵や絵の断片から分からなくてもいいようなことがかえって知られていたり、当時としては日常の光景であり常識であったが故にあえて書き留める必要を感じる人が皆無に近かったが故に時間が経過してしまうと謎となってしまっていることも珍しく無いといった話になるわけで、別に後の世の人の価値観に対応して昔の人が資料を残したわけではもちろん無いわけですす。　実際、”じゃあ、平安時代に、庶民は豆腐を食べていたの?”とか、”庶民はどのように料理して豆腐を食べることが多かったの？”と聞かれて即答できる人がどのくらいいるか？ということですし、私なんぞは即答する人がいたらかえって詐欺師の類に区分したくなります（笑）。　また、時代を遡るほど文化が伝播して定着するまでの時差が大きくなりがちで、それこそ奈良や京都の界隈では、やれ平城京だ平安京だ、奈良時代だ平安時代だと言っている同じ頃に、どこぞの地方ではまだまだ縄文時代の文化で生活している人たちが確実にいたわけですし、１９６０～７０年代くらいまでは少し田舎の農山村に行くと茅葺屋根の家に住む人たちが珍しく無かったことは、当時の特撮番組などを見ていてもよくわかる話になります。　一つの時間軸として、１９６４年に東京オリンピック、１９７０年に大阪万国博覧会が開催されたことは比較的知られた話で、東京オリンピックの頃だと白黒テレビでさえまだ一家に一台普及していないどころか、人気番組をＴＶがある家に見せてもらいに行っていた人も珍しく無かった時代だったわけですが、それから約５０年が経過したこれを書いている２０１３年末の日本の現状と改めて比較すると、文字通り隔世の感があり、ＴＶに限らず”その変化っていつ生じた？”とか”あの発明が普及するより前ってどんなだった？”と言われても思い出せなくなっていることがままあることは年配の人ほど説明不要でしょう。　ましてや、生まれたときからそういった環境が当たり前にあった世代ともなると、それが無かった時代を知らないわけですから、今となってはダイヤル式の電話機の使い方が分からない子とか、レコードの再生方法がわからない年少さんは珍しく無くなってきていたりもします。　実は日本の歴史を検証していても、これほど短期間で社会が変化した事例は、あえて言えば幕末から明治初期にかけての変化（行灯→電灯、徒歩や馬→鉄道、電信などなど）が該当するくらいで、祖父母の代どころか親の代の常識が孫の世代には該当しなくなったり、前提とする文化やインフラが無くなっていることさえあるだけに、いわゆる”おばあちゃんの知恵袋”や”年寄りの世間知”の類の大半が役に立たない昔話の類になってしまう速度が異様に早いことは認識する必要があります。　私が学生だった頃は、まだ、”銀行に勤めるのなら算盤が達者な人が就職に有利で云々”とか”算盤を学習すると数学の力が云々”とかいった話が正論だった時代で、学校の算数の授業で初歩的な算盤の授業が”まだ”あったのを覚えていますが、その後の人生で私が算盤を使うことは無く（笑）、悪筆な上に算盤を使いこなせなかったが故に、さっさとコンピュータでワープロソフトや表計算ソフトを操作できるようになったことは言うまでもありますまい（笑）。　というか、パソコン云々以前に、”答え一発、カシオミニ”のＣＭが流れた段階で、算盤時代の終焉を予感も予測もできない方がどうかしていると私はいまだに思うことがあるのですが、今となっては、算盤○段とか書道○段というよりも、表計算ソフトやワープロソフトを一定水準で使いこなせる方がよほど就職に有利になっている組織の方が多いことは指摘するまでもありますまい　・・・　何かの”道”を極める手段として書道や算盤道などに固執するのなら話は別かもしれませんが。初出：一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第８８１話　(2013/11/28)

2014.05.07

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一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第９１４話　「尾木ママ擁護論」

一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第９１４話　「尾木ママ擁護論」＊　少し先の話ですが先行公開しておきます。　今回のお題は、”埼玉県の県立高校の女性教諭が、我が子の入学式を優先し、勤め先の入学式を欠席したこと”によって生じた一連の騒動の中でも、教育評論家（？）として知られた（いわゆる）尾木ママのブログにおけるコメントが大炎上した騒動に関してということになります。　東京圏というか大都市圏とは逆に、地方では（地元に残っている）卒業生が何かと絡む歴史と伝統、あるいは国公立大学などへの進学率などの関係で公立高校の評価が高く、全国区で名をはせている難関進学高校や古参の有名高校でもなければ私学高校の評価が低い地域が珍しく無いと書いても一般論としてはさほど暴論では無いと私は考えていますが、もちろん、地域によって”そんなことは無い！”という地域もあるとは思います。　もっとも、ここで明記しておきたいのは、前述したように居住している都道府県によって公立と私立高校の序列の逆転現象が生じている現実が歴然としてあるということと、いわゆる（全日、夜間）普通科高校と（商業、工業、農業といった）専門高校といた差異もあるが故に、”義務教育ではない高校”に関しては一括りにして論じることが難しいというかお題によってはナンセンスでさえあるというあたりまでは踏み込む気が無い話になっているという事です。　それはさておき、尾木ママの感想を整理すると、・　完全な職場放棄。ということになるかと思うのですが、２０年以上現場で教えていた尾木ママが現役の教師だった時代だと、特に主任として担当するクラスがある場合だと思いますが、今回のような私事を公務より優先する発想がそもそも無かったようですし、自分が勤務する学校の入学式の日に休暇届を出して自分の子供の高校の入学式に出席することを優先するようだと校長や同僚などの周囲や学生たちの保護者などからも問題視されていた　・・・　とでもいったことになるのかなと。　まあ、そういった立ち位置から尾木ママはくだんの県立高校の女性教諭の行動にブログで異を唱えたと（私は）推測しているのですがで、本来は、”教育関係の評論活動などで飯を食っている人の中にはそういった考えもあるよね！”でおしまいになる程度の話とも言えます。　で、他人事だからこそ興味深かったのが、そういった視点から”（くだんの女性教諭の選択は）ありえない”と論じた尾木ママのブログが女性教諭擁護派のカキコで大炎上したことと、くだんの高校の入学式に来賓としてやってきていた江野幸一県議がブログで尾木ママのコメントへの非難コメントを出したことの２点だったりします。＊　↑。上記の江野県議に関する県議のコメント云々は私の事実誤認で、逆に、江野県議も”担任が入学式に出ないというのはいかがなものか？”といった尾木ママに使い立ち位置でブログでコメントしたら尾木ママと同様にブログが炎上した側だそうです。＊　↓。判断を保留しておいて無難でした。　ま、そういった県議が当選する地域性ということも他の地域に居住している人は考慮する必要があると（私はですが）思わないでもありませんが、いかんせん、埼玉県に居住したことが無いのでその辺りの判断は保留しておく方が無難でしょうなあ。　念のために書いておくと、県立高校の教諭というのは地方公務員であり、地方公務員法によってその行動が制限される職業で一般人とはそもそも異なる社会的な立場にいる（ことになっている）ということと、何かと私事に制限が課せられることもあってか国家公務員や地方公務員の中でも高給優遇されている職種になっているという現実があります。　私も、県立高校の学校の先生が、時給９００～１２００円程度で働くパートの仕事だというのならば自分が引き受けた仕事よりも子供の入学式を優先する選択をしてもそれほどは問題無いと思いますし、そういった意味での自由度が高いというのも（本来は）パートの仕事の特徴の一つとも言えます。　ところで、自分の子供が高校に入学する女性教諭となると、学生結婚をして学生時代に出産したわけでもなければ、早くても２３歳頃の出産となりますから概ね４０歳を越えていると考えられますから、祝祭日が公休で週休二日制のお仕事で毎月の給与が額面で４０万円を越えているとも推定できます。　また、公立学校の教職員の年金が国民年金や生活保護の月額支給額よりかなり手厚いことも知られた話で、少なくとも国民年金の３倍以上を毎月手にする人の方が圧倒的に多く、退職金や年金をかさ上げするためか最後の１～２年ないし数年だけ基本給も高くなる校長など上位の管理職等になってから退職している教職員が珍しく無く、その数併せのためなのか書類上は一つの学校に複数人の校長先生がいることになっていることさえあるという都市伝説ないし都市伝説めいた話があるのは比較的知られた話になります　・・・　ま、ざっとそういった職業に従事しているプロの言動を”あなたの立ち位置で”どう考えるか？ということにもなるかなと。　乱暴な計算をしておくと、民間でいうボーナスに相当する期末手当の類は４０歳を越えている県立高校の教諭なら年間で（少なくとも額面は）１００万円を越えているでしょうから、年収の額面は”４０×１２＋１００＝５８０万円”よりも多くなる計算になります　・・・　もっと低いようでしたら実際の４０歳県立高校教諭の額面支給額をお教えいただければ幸いです。　と書いてもさほどピンとこない人のために補足しておけば、毎月の給与の４０万円を土日、祝祭日を抜いた２０日程度の実働日数で日割りすると、日給で２万円以上手にしている計算になり、仮に１日に１０時間働いていたとしても時給換算だと２０００円以上になる計算が成立し、年金にも反映するということです。　もっとも、県立高校の教諭の場合、前述したように地方公務員ですから、原則として人事異動は採用された都道府県内に限られ、例えば、岡山で採用されたけれど１０年後には熊本に転勤することになり、その４年後には北海道に転機し、更に２年後には　・・・　といった定年退職するまでに複数回になるかもしれないような全国転勤や、亜米利加や伊太利亜、・・・、南阿弗利加や印度、タイやマレーシアの姉妹校や日本人学校に海外赴任とかいった、民間企業ではさほど珍しくなくなってきている複数回の海外転勤も原則として考えなくて良い職場というあたりに魅力を感じる若い衆が増加している時代かもしれませんな。　念のために明記しておくと、日本国における公務員とは、日本国憲法の１５条の定義において「全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」と明記されていますし、公務より私事を優先するのが当然だというのが現状の学校の先生の総意だというのならば、学校の先生を現状のように常勤の公務員として採用する制度を廃止すべき時期にきているとも考えられます。　気長に怪しい話を読んできている人にはいまさらという話ですが、私は”公立学校の先生は時給制＋成功報酬制”にすべしと考えていまして、義務教育でもない高校の先生ともなれば、授業１こまに関して幾らのとっぱらいでいいんじゃないかと。　そういった契約で雇用されている学校の先生なら、”自分の子供の高校の入学式があるから契約している高校の赤の他人の子の入学式には不参加”という選択もありでしょうなあ。　もちろん、授業以外の入学式や卒業式、体育祭やら修学旅行といった学校行事に関しても参加や引率すれば相応の”手当て”を支給すればいいと思いますが、考えてみれば、修学旅行などは民間の旅行会社にまかせてプロの添乗員をつけてもらった方が安価で効率的かもしれませんなあ　・・・。　古い人類に区分され日露戦争世代に子守してもらって育った私的には一部の学校の先生の主張と信じたいところはありますが、今回の炎上騒動以前から、躾やマナーが問題になると”躾は各家庭で　・・・”と言い、学力低下が問題になると”学習は学習塾で・・・”と言うことがあったのも公立学校の先生だったわけで、死人が出る激しさのイジメの横行や性殖者と化した教職員の御乱行の類さえ可能な限り隠蔽し、尾木ママの言うところの”（従来のプロの視点からだと）完全な職場放棄”と批評された、担当する学生たちに関する管理の放棄も労働者の権利だから問題ないと肯定するのなら、”何を学校で教えているから恒常的に（少なくともスーパーやコンビにのレジをパートタイムで担当している人達よりも）高給（手厚い福利厚生などで）優遇で雇用し、年金までも優遇する必要があるの？”と考え込むわけです。　私の知っている範囲と時代ではという話になりますが、”公務員は、私事よりも公務を優先することが求められるが故に給与や待遇などに一定の配慮がされている”といった話もあっただけに、まあ、時代が変わったのだから私事を公務より優先するのが当たり前だと当事者や教育関係者が主張するのなら、それ相応に給与や待遇も変えるべきじゃなかろうか？　ましてや、コンピュータの加速度的な発達と普及は、黒板にチョークで手書き教育に固執し続けた教職員を過去の遺物にしてしまったわけですし、明らかに世界の同世代の連中と比較したときに”ゆとり～君”世代が従来の学力面でも、ＩＴを含むコンピュータ関連のスキルでもランクダウンしている現状を考えるとき、”教育（者）も結果責任を問われないと駄目”だと私はですが思います。　もっとも、結果責任云々という考え方に立つとすれば、くだんの県立高校の女性教諭のプロとしての資質が問われる一連の行動の選択に関して異議を申し立て、その資質に問題ありということで担当の変更を請求する権利を有しているのは、彼女が担当する彼女不在の入学式に出席していた学生とその保護者たちくらいのもので、部外者にすぎない私なんぞがあれこれ思うのは野次馬の感想ではあるわけです。　まあ、怪しい話らしくブラックに話を閉めるとすれば、”くだんの県立高校の女性教諭が出席した我が子の高校入学式において、我が子を担当する教諭がやはり、（お見合いや友人の結婚式、自分の子の入学式といった）私用のため欠席していて、担当教諭の席に都市伝説では定番の「ぬいぐるみの熊」が鎮座していたら、この話はどう展開したんだろうなあ？”とも考えてしまったことを白状しておきます。　その辺り、自分は我が子の入学式を優先したわけですから、自分の子を担当する担任が同じように私用を理由に入学式を欠席していたからといって何の文句もないとは思いますし、尾木ママが感じたと思われる”プロ意識、公務員意識の欠如”とでもいった立ち位置からの批評に異議を唱えている人たちもまた、自分の子供の入学式、卒業式などで子供の担任を含む複数の学校の先生たちが私用を理由に大量欠席していても臨時パートで雇用された大学生や近所の人などが席さえ埋めていれば問題ないし、何の文句もないんだろうなあとは思いますしねえ？　あるいは、富裕層からこの国の教育制度に見切りをつけて海外へ進学させる選択が増えているあたりから邪推すれば、”いまさら、公立学校の先生相手に言うだけ無駄なこと”と考えているオトナな感性の人が多くなってきているのかもしれませんから、尾木ママの擁護は”ゆとり”以前を知っていて、その後の推移を体験してきた受験戦争世代あたりがしてあげないと駄目なんでしょうなあ。(2014/04/22)

2014.04.22

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一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第７８５話　「江戸の居酒屋２」

一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第７８５話　「江戸の居酒屋２」　江戸の棟割長屋がだいたい３坪ほどの広さで、居間が四畳半、土間や流しなどで一畳半くらいを使っていることが多かったようですが、現在の首都圏のワンルームマンションがほぼ同じような広さで、ユニットバスが余計についているくらいと考えると分かりやすいかもしれません。　そして、現在の都市部ほど、買い置きをする習慣が無い人が多いというか、部屋から出て十分も歩けば近くのコンビニエンスストアにたどり着く利便性がある地域が多いことから居住空間が狭いのに当面使う予定のないものを備蓄すればするほど居住空間が狭くなるデメリットを感じやすくなるという点も、江戸の昔の長屋の住人と大差が無いのではないかと。　徳川八代将軍・徳川吉宗の享保の改革は、学校の歴史の授業では徳川幕府が何度と無く行った財政再建改革の中でも成功例として持ち上げられることが多いのですが、根底のところに百姓への課税強化があったため、それまで順調に増加していた農村人口が享保（1716～1735）の改革以降ぴたりと止まったというか横這いないし微々増程度の地域が多くなり、武家のための徴税強化や制度改訂で日本の人口増加を止めた改革という側面があります。　実際、徳川慶喜が大政奉還（1867）を行って明治に入った頃の日本の総人口が４５００万人程度で、日露戦争（1904～1905）の頃にそれが６０００万人程度にまで増加しているわけですから、享保の改革から明治までの間の人口増加が実質的に止まっていたことがいかに不自然な現象かわかりそうなものではなかろうか？　もっとも、享保から幕末にかけては人口が一定の幅で推移していたと考えることもできるわけですが、江戸城から隅田川の間の地域が町人たちの主な居住地で、そこに６０万人近い町人が居住し、その半数が長屋や借家に住んでいたことに理論上はなります。　享保の頃に、吉宗が六上水の内の四上水を廃止した主因の一つが江戸の町の膨張を抑制するため生活に必要な”水”の総量規制を行うことで人口増加に歯止めを掛けようとしたという説もあるのですが、長屋住まいの庶民達は、生活用水は井戸の”中水”で、調理や飲用の”上水”は買うことで切り抜けたようですし、良質の水が湧く井戸を所有していれば（湧出量にもよりますが）そこそこ稼げたようです。　江戸の地下水の悪さは、江戸城の井戸の水がしばしば（バクテリアや特殊な藻の繁殖という説もありますが）赤変する現象が知られていて、大奥七不思議に数えられたりしているくらいですから、下々の使う井戸の水質も天下の銘水とは程遠かったと考えられ、水茶屋や居酒屋などの隆盛も、江戸の水事情に少なからず下支えされていたと考えられます。　もっとも、江戸の町にはコンビニエンスストアは無かったのですが、コンセプト的にコンビニに近い”小間物（こまもの）店”の数は多かったというか、それぞれの町を区切っている木戸口の番人（”木戸番”と呼ばれ、一定の刻限で木戸を開閉して特に夜間の人の移動を制限していた）が副業として小間物店を営業していることが多かったため、日用品のかなりの部分が町内で調達できたようです。　結果的に、日銭が稼げる外で働く独身者の部屋には買い置きの食料品といえば米くらいのもので、調度品などはろくになくても、その都度外部で調達したり外食で済ませれば暮らすことができたのが江戸の町の特徴となったわけですが、これを書いている時点でも、店や専門業者が少ない田舎になればなるほど生活必需品やちょっとした日用品でも”買い置き”をして在庫管理をしておかないと必要になったときに困ったり、外食をしようにも食堂や弁当店がほとんど無かったりで、独身者には住み難いことを考えれば、江戸の町の先進性というのが分かりやすいのではないかと思います。　つまり、夜の１０時頃に喉が渇いて、”ちょっと近くのコンビニか自動販売機でジュースでも買ってこよう”ということが都市部では問題なくても、田舎だとコンビニはもちろん自動販売機さえ気軽に歩いていけるところには無い地域が珍しく無いというのと、似たような話です（笑）。　幾つかの資料を読んでいて笑えたのが、江戸時代にも”なんとか家賃を安くあげることができないか？”と考える若い独身男性の話として、落語の”お化け長屋”ではありませんが、実際に、今風に言えば事故物件を”お化けがでてもかまわない”というか、”お化けがでても安い方がよい”と知って引っ越す話があったようですが、そもそも棟割長屋の九尺二間（いわゆる”九尺店”）なら月の家賃が月にして三百文（あるいは銀５匁）程度という資料が多く、同時期の腕のいい大工なら５～６匁の日当が相場ですから、その程度の家賃を節約しても知れていると言えば知れている気がするのは気のせいか？　まあ、家財道具を奮発しても、上方や京都と比べて大火に見舞われることが多かった江戸の町では灰になってしまうことも珍しくないだけに、緊急時に守って逃げ出せない家財道具は庶民にとってあまり意味を持たなかったとも解釈できますが、夫婦と子供が数名の家族の家財道具でも大八車が一台あれば十分運べたようですし、単身の独身男性ともなると、それこそ身一つで移り住んで来ても（日銭を稼いで暮らす気があればですが）暮らせたのが江戸の町だったということです。　月収ということでは、大工の棟梁で銀２００匁、普通の大工や左官で１３２匁、鳶人足で銭７５００文（文政の頃の銀の匁換算で、約７０匁）、典型的というか最下層に近い”ぼて振り（天秤棒に荷物を担いで売り歩く行商人）”の野菜売りで銭５０００文（約４６匁）くらいが相場ですから、３００文の家賃というのは、野菜の行商人でさえ総収入の６％程度の出費にすぎなかったわけです　・・・　ま、日銭商売だけに天気次第のところもある話ですが。　元文の頃（1736～1741）に、神田鎌倉河岸で酒屋の豊島屋が始めた居酒屋が評判になったことで、似たようなコンセプトの店が続々と開業し繁盛したようですが、寛政の頃（1789～1801）になると、豊島屋の看板メニューだった豆腐田楽のような簡単な肴だけでなく、おでん、煮芋、など惣菜に区分されるような手の込んだ肴を出す店も増えていきます。　つまり、安価にあげる酒と安い肴だけの店と、酒も食事も提供する店の二極化が生じたということですが、どちらの居酒屋も一つの看板として入り口に縄の暖簾（のれん）をかけるのが一つの慣習として定着していて、そこから居酒屋の別称である”縄のれん”という呼称が広まったという説もあります。　居酒屋の酒の値段がどのくらいだったのか？は諸説あるのですが、幕末が近くなった頃の居酒屋の酒一合の値段のだいたいの相場として、立ち飲み八文、銚子で十二文、上酒で二十四文、極上酒で三十二文といったところに収まるのですが、文化文政の頃（1804～1830）に既に江戸に上方から送られる酒の量は年に百万樽を越えています。　人気のあった惣菜系メニューとしては、鮹の脚の煮物（４文）と鯖の味噌煮（４文）が双璧だったようで、おでん一皿、（煮た）油揚げ一枚、いなり寿司一個といったあたりも定番の４文の品で、がんもどきが一個１０文でややお高かったようですが、米価から換算すると１文を２０～３０円くらいで考えると現在の相場感覚に近くなるかもしれません。　惣菜系の居酒屋の場合、酒を頼まずに、飯と汁を頼み、惣菜メニューと組み合わせれば定食が完成したのですが、惣菜を２皿に汁と飯のセットで２０文くらいとすれば、５００円も出せばそれなりの食事が食べることができていた計算になります。　江戸時代の貨幣換算は、文と匁とか両の換算もややこしいですが、現在の価格として換算するとなると更にややこしくなるものの、収入などから考えると、相対的に庶民が払える相場というのは意外と近いモノがあり、時代的な制約はあるものの、ほとんどのサービスの原型が江戸時代後半くらいまでに登場している感があり、”あのまま鎖国が続いていたらどのように進化しただろう？”と考え込まないでもありません。　なお、江戸時代の江戸の町というのは、一種の特区であり、江戸がこうだったから地方都市もこうだったとか、地方都市がこうだったから田舎の村でもこうだったとは言えない部分が多々あり、田舎では五穀を主とした雑穀雑炊を主食というか多食した時代が長く、江戸時代でさえ江戸や大坂のような大都市は例外として、半麦や麦７分に米３分の比率の”麦飯”や、麦、粟、稗、豆（大豆、エンドウ豆、空豆など）、芋（里芋、薩摩芋など）、大根などの根菜類などを加えて増量して炊いた”かて飯”が昭和２０年代くらいまでは一般的な日常食だったわけです。　炊き込み御飯や加薬御飯、混ぜ御飯などが、薬効とか、美味の追求といった目的もさることながら、単純に主食を増量し、食材をできるだけ無駄にせずに利用するための工夫から始まったのではないか？と考える所以ですが、単純に炭水化物の摂取と考えるのなら、大枠の話としては、薩摩芋や馬鈴薯などの栽培面積を増やして米や麦の生産を減らす方が養える総人口は多くなります（黒い笑）。　昭和３０年代くらいから、好きなだけ白米を主食として食べる食文化が地方でも一般化していったのですが、逆に言えば、1955年くらいが境目になっている、ほんの６０年ほどの主食の形態ということで、それ故に、諸外国との農業交渉などの絡みで”日本型食生活”として、江戸の食事を前提にバランスの取れた健康食としての和食が云々といった話を進める人に遭遇すると、”単なる勉強不足のほら吹きか？知っててやっている詐欺師の部類か？”と私なんぞは思ってしまうわけです。　或いは、肉類を避ける精進料理が健康食で体に良く、長寿食や健康食として云々とか口走る人にも似たような感想を私は抱くのですが、長くなってまいりましたので、本来の精進料理の話はまた別の機会にということで、今回はここまで。(2013/07/25)

2013.08.14

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一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第７８４話　「江戸の居酒屋」

一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第７８４話　「江戸の居酒屋」　居酒屋という商売が成立するためには、まず”酒屋”という酒を末端の消費者相手に小売りする商売が成立している必要があるのですが、酒そのものの歴史は人類の歴史より古く、人類が酒の類とつきあい始めるのは猿と大差が無かった頃からの話になります。　その辺りは、”猿酒”の伝説を想起してもらえば十分だと思いますが、北極圏のトナカイなどが熟して落ちた林檎が発酵したものを食べて酔っ払うことがあるというのは実話で、糖度の高い果実が完熟するということは、一歩間違えば果実酒が自然に醸造（糖分→アルコール）されかねないことを意味しています。　その意味で、人類が遭遇した酒は果実酒の方が先立ったと考えられ、アダムとイブがエデンの園で食べた林檎にしたところで完熟して発酵しかけたものであってもさほど驚きませんというか、それを食べて酔っ払ったから神様に楽園から追放されたと考えた方が辻褄が合うような気がしないでもありません（笑）。　実際、ほとんどの宗教が飲酒を信者に禁止ないし飲酒の制限を要求するのも、酒を飲んで気が大きくなると”神様が何を言おうが知ったことか！”となりやすいからという説があり、異性との交際をやはり禁止したり制限するのも、異性との交際も熱が入ると”神様が何を言おうが知ったことか！”となりやすく、”教団にお布施をするより、交際相手に貢ぎ物（ないし贈り物）を買う方が優先だ！”となりやすいことが主因というもっともな説があります。　それはそれとして、果実ではなく米から作る濁酒のような濁り酒が主流だった日本酒業界に、ふとした偶然から室町時代の末頃に”清酒”が誕生し、江戸時代の初めの頃には清酒が市販されている日本酒の市場を席巻していたようで、お売りされる酒も”清酒”が主流になっていったと考えられています。　濁り酒と清酒を比較するとき、清酒の利点としては”発酵の管理が（相対的に）容易”ということや”アルコール度数が高い（辛口）酒に仕上げることができる”という点がありますが、”発酵が進みすぎると酢になるという点は濁り酒と大差が無かったりします。　一応、火入れをして菌を殺して発酵を止める技法も存在するのですが、米など穀類を使った酒の場合、”でんぷん→糖”の過程を経てから、”糖→アルコール”という２段階の発酵を経由する必要があり、一定の条件を満たしていれば勝手に発酵して酒になる果実酒よりも技術的な難易度が高かったりします。　逆に言えば、知識とある程度の経験、センスがあれば、文字通り酒を水増しして売ることもできたのが清酒の特徴で（笑）、特に自然発酵が進みやすい夏場など、小売店の段階でさえ水増しやブレンドが横行していたのは比較的知られた話で、葡萄酒にしろ清酒にしろ生きた酵母を使う醸造酒の場合、温度管理が簡単に行える冷蔵庫や冷房システムの類が普及するまでは、夏場の高温などの温度変化で総てが駄目になるリスクを抱えていたということです。　その辺りの蘊蓄は、ＴＶドラマ”刑事コロンボ”の名作”別れのワイン”などが印象的ですが、直射日光を避け、冷暗所で保存するだけでも高い確率で回避することが可能で、酒の種類は違っていても酒蔵の雰囲気や構造というのは意外と共通している所以になっていたりします。　そのあたりのことが分かっていると、なぜ、”混ぜもの無し！”という文句が清酒小売り販売のキャッチコピーたりえたのか？も説明不要となるのですが、今も昔も呑んべい達が安価で良質な酒を嗅ぎ分けるために払う労力を厭わない傾向があり、口コミで優良店の評判が呑んべい仲間に広がりやすい分野というあたりも、江戸の昔と大差が無いのかもしれません。　江戸時代に、仕官している武士が直接酒屋に徳利を下げて酒を買いに行くことはまずあり得ない光景で、基本的に酒を買いに行くのは下男や妻女の仕事で、それこそ料理茶屋や遊郭のような外界と隔離されている空間でもなければ、武士が庶民に混じって居酒屋や飯屋などで酒を飲む場合は何かと気を使っていたようです。　逆に、浪人であっても名のある御武家様がよく呑みに来る居酒屋などでは、自然と専用席が出来て常連客の自慢になっていることもあったようで、そのあたりの逸話では、幕末の剣豪の一人で北辰一刀流の開祖である千葉周作の話が知られていますが、幕末になっても幕府の偉い武家が庶民に混じって居酒屋で酒を飲むことはまずありえなかったというか、そもそも高禄をはんでいる武家は屋敷の外を自由に一人で歩き回ることが難しかったようです。　江戸は基本的に武家の町で、建物の７割程度は武家の所有物で、大名屋敷、旗本屋敷に関しては広大というか小振りな城で、御家人屋敷でも町人の住居に比べれば格段に広く、武士にカウントされないこともある足軽屋敷あたりで質素というか町人の住居と比較できる程度にコンパクトになっています。　江戸の土地の残る３割を寺社仏閣と町人が分け合っていたのですが、武家屋敷並の敷地面積を誇る寺社も珍しく無く、町人が居住できる土地としては江戸の町の総面積の１５％程度ぐらいで推移しています　・・・　というか増加する町人人口に対応するために外へ外へと江戸の町が広がっていったのですが。　大名屋敷の場合、戦国時代の遺風だったのか武家としての常識だったのか、、四隅に物見を兼ねた矢倉（櫓、やぐら）を設置することが許されていて、屋敷に将軍を迎える時にだけ使われる”御成門（おなりもん）”、大名自身が屋敷に出入りするための”台所門（だいどころもん、いわゆる”表門（おもてもん）”）”、主に家来や（いわゆる”御用達”の）町人が屋敷に出入りするときに使う”小門（こもん）”といった具合に、身分によって使う門が限定されていたというか、門だけで３つ設置できるくらい敷地が広かったわけです。　まあ、百万石の大名として知られる加賀藩の江戸上屋敷ともなると、舟遊びができる心字池（しんじいけ）を含み、屋敷の敷地の半分くらいを占める育徳園という庭園が屋敷内にあり、心字池といえば、現在の東京大学の敷地内の”三四郎池”のことで、台所門（表門）が東京大学のいわゆる”赤門”ですから、往時の規模は押して知るベシ。　もっとも、大名屋敷と一括りにすることも難しく、家の格や石高で門構えに３段階の制限があり、だいたい、１～５万石、５～１０万石、１０万石以上で分かれていたようですが、門の大きさよりも門前の脇に設置されてい番所（ばんしょ）が石高に比例して大きく堅牢になっていたのが外見で分かりやすい特徴ですが、さすがに、大名屋敷の主や上級武士が徳利片手に酒を買いに行くことは無く、御用達の商人の方が酒を含めて消耗品や食品などを運び込むことが多かったようです。　旗本屋敷も、千石を越えるような上級旗本の屋敷となると、数万坪の大名屋敷とまではいかないまでも、千坪を越える屋敷が珍しく無く、忠臣蔵で知られる吉良上野介が隠居した後に本所に与えられた屋敷でさえ２５５９坪で、近くの回向院や大徳院の敷地と大差が無い規模で、その敷地の一部が現在の本所松坂町公園だったりします。　御家人屋敷の場合は、個人ではなく”組”の単位で幕府から数千坪単位の屋敷（組屋敷）を拝領して組の人数や役職、家格などで分けていたようですが、江戸町奉行所に勤務している与力の場合で、馬を飼育する必要もあって２５０～３００坪、与力の下で徒歩が前提の同心で１００坪程度で、各自の屋敷の空いている土地を、医師、絵師、学者などに貸して地代を取る内職が定番化していたという話は以前に少ししたことがあります。　武家にカウントされないこともある足軽の屋敷となると、やはり組単位で屋敷が与えられていますが、小頭で７０坪、平の足軽で５０坪くらいの地所が配分され、そこに建坪２０～２５坪くらいの平屋の屋敷を建てて、残りの土地で自給用の畑を作ったりしています。　まあ、家督や家屋敷は長男が継承することが多く、才覚が認められて役職に就いて独立したり、出家して家を出るか、他家の婿養子になったりすることが無ければ、次男以下は部屋住みとして生家に寄宿して一生を終えるくらいしか道が無かった時代だったことには留意が必要ですが。　江戸の町の棟割長屋となると、いわゆる”九尺二間（きゅうしゃくにけん）”で、３坪程度はあったので全体では６畳くらいになるのですが、土間や流しなどの部分を除くと四畳半一間の広さというか狭さの板張りの部屋で、板張りだった四畳半に畳が敷かれるようになるのは幕末が近くなっての話になるようです。　故に、部屋の中に余計な物を置いておくスペースは無く、長屋で井戸や厠が共同だったり、衣食住のかなりの部分を町の施設で共有するというか、外食産業や銭湯の隆盛した理由の一つに、長屋の部屋の狭さがあったことは疑問の余地が無いのではないかと。　そんな長屋の家賃が月にして三百文、納豆一包みが四文、団子の場合は４つ串に刺して四文、銭湯が十文、もり蕎麦の十六文（無理に換算して400円くらい）は有名ですが、にぎり寿司が鮪や小鰭といった比較的安価なネタで１貫（１個）で八文、酒が銚子一本で十二文程度、上酒一合で二十四文、花魁が一晩で一両として夜鷹だと二十四文くらいが（もちろん例外もありますが）大凡の江戸の相場だったのですが、そのくらいの値段でなければ町人の稼ぎ（４０～１２万円くらい）から考えて商いが成立しなかったとも言えます。　居酒屋の原点は、酒の小売りをする酒屋が店頭で利き酒に応じたあたりとする説があり、やがて店頭での一杯売りが定番化し、里芋の煮たものとか、豆腐田楽とか、簡単な肴も出すようになった頃には、酒屋というよりも居着いて呑む居酒屋と呼ぶに相応しい光景になっていたわけです。　元文の頃（1736～1741）に意識して店舗を専用に改装し、奥で豆腐を自家生産し、馬方田楽と呼ばれた大きなサイズの田楽を店頭で焼いて一本を二文で提供したことで、神田鎌倉河岸の豊島屋という酒屋が江戸の居酒屋というか日本の居酒屋の原点とする説があるのですが、元が酒屋だけに良い酒を他の店よりも安価に出すことができたようで、安くて美味い酒と肴を提供し、現金安売りで商売したこともあって繁盛店となります。　もちろん、豊島屋が繁盛したら黙ってみていないのが”生き馬の目を抜く”江戸の町で、江戸の町に豊島屋のような居酒屋が急速に増加していくのですが、その辺りの話は長くなってまいりましたので、また別の機会に。 (2013/07/24)

2013.08.13

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一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第７８３話　「水茶屋雑考」

一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第７８３話　「水茶屋雑考」　明治の日本に登場した浅草から話が始まる”カフェ文化”に関しては、これまでにも散々と書いてきた話なので深入りは避けますが、日本茶や紅茶などをメインに出していたわけでもないのに”喫茶店”という訳語でも定着していくことになったのでした。　大正の頃に、過激化した風俗系のカフェとの差別化というか、本来の珈琲や軽い食事を出すのがメインなカフェは”純喫茶”と名乗るようになり、酒を提供するバーを併設していたカフェの中から珈琲より酒を主に提供するカフェバーが分派し、銀座などではカフェが姿を消して”バー”として残る店が出てきたというか昭和の頃にはもっぱら”バー”の方が主流になっていったのでした。　昭和も終盤のバブル経済の頃には、ビリヤードの台を店内に置いて、ビリヤード台をプールに見立てた”プールバー”も登場するのですが、プールバーなどは、根付かなかった初期の紳士の隠れ家的なカフェへ文化への先祖返りと解釈できないでもありません（意外と真面目な話）。　喫茶店文化を逆に辿ると、珈琲が日本国内で本格的に普及する以前の話になり、コンセプト的に近いモノとして江戸時代の”水茶屋”に至るのですが、”茶見世（ちゃみせ）”と呼ばれることもあり、店内で茶を飲ませたり、オープンテラスというか路地に座卓を置いて茶を飲ませるスタイルの原型といえば、起源がさだかではなくなる峠の茶屋や渡し場の茶屋あたりにまで遡る話になります。　もっとも、江戸の町で水茶屋が営業を始めた時期となると、寛文～延宝の頃（1661～1681）の頃の話になるようで、江戸の風俗や食文化が確立していく元禄時代の少し前の話になるのですが、一つに江戸の水事情があり、既に江戸時代の江戸の町において”飲用する水は買って飲むもの”だったことも大きかったようです。　江戸時代の黎明期というか人口が少なかった頃は、溜池山王などがわかりやすいですが、河川や湖沼の水を飲用に回して凌ぐことができても、１００万人都市へと急速に人口が膨張していくと、神田上水や玉川上水など現在の水道に近い”上水”を石製や木製の樋（石樋（せきひ、本管）、木樋（もくひ、支管）、竹樋（たけひ、井戸への枝管）などを使って江戸市街に給水路を張り巡らせる都市計画が実施されるようになります。　実際、この江戸の上水網の整備は埋め立て地や低湿地帯を抱えて拡大していた江戸の町の水事情を劇的に改善することになり、最盛期には、神田（神田、日本橋方面）、玉川（江戸城内。麹町、四谷、赤坂、京橋方面）の上水に加えて、本所（本所方面、1659）、青山（四谷大木戸で玉川上水を分水。赤坂、麻布、芝方面、1660）、三田（下北沢村で玉川上水を分水。芝、麻布方面、1664）、千川（保谷村で玉川上水を分水。本郷、下谷、浅草方面、1696）の六上水となり、１００万人を越えていた江戸の人口の約６０％に上水を供給して生活を支えています。　しかしながら、江戸の町の急激な膨張に幕府の上層部が江戸の町の拡大を食い止める必要性を感じたようで、徳川８代将軍・徳川吉宗が、享保７（1722）年10月01日をもって一気に四上水を廃止する暴挙を行い、水の供給を絶つことで市街地の拡大に歯止めをかけようと目論んだようです。　水道の運営に関しては、既に受益者負担ということで町人達も維持費などを負担する制度が導入されていたので、金銭面で水道を維持できなくなったとは考えにくく、井戸を掘る技術が発達して井戸からの給水能力が向上したといっても上水の給水能力の方が安定していますし、沿岸部の低湿地帯では井戸を掘っても飲用に出来る水が湧く地域は限られるあたりでも、上水の廃止はほとんど嫌がらせの部類と言えます。　オカルトチックな理由として、吉宗の政治顧問で儒者の室鳩巣（むろきゅうそう）が吉宗に提出した”建議”において、江戸の地下に水道が張り巡らされたことで地脈が切断され地気が弱り、上空の風が浮つきやすくなって火を遠くへ飛ばすようになり、地中の水気も水道に抜けることで乾燥が進み、江戸の大火の原因になっている云々といった陰陽五行説で上水廃止を正当化しようとしたりもしています。　もちろん、四上水を廃止した後の江戸の町も大火に襲われ続けますし、そもそも江戸時代最大の大火として名を上げる人が多い明暦３（1657）年の大火の時に、四上水が整備されていなかったことは指摘するまでもありますまい（笑）。　しかしながら、四上水の廃止は江戸の水事情を急激に悪化させることには成功し、”（貧乏）長屋の井戸”の大半は飲用には向かない”中水”となり、雨水が降り込んで水質が悪化しないように雨が降れば蓋をしていたようです。　もちろん、残った神田、玉川の二上水からの給水が行われた地域では、井戸へ水道管を経由した水が給水され続けたのですが、多くの長屋で各部屋毎に飲用の水を溜めておく瓶が設えられていて、飲料水が出る井戸から各自が汲んでくるか、飲用水を売る水屋から瓶一杯で１００～２００文（２～３日分）の水を買って補充するようになります。　つまり、洗濯したり行水や手足を洗う水、部屋の掃除などに使う水は井戸の”中水”を利用し、飲み水や生活用水は水屋から買って瓶に貯えた”上水”を使い、上水や中水が使用済みになれば下水として河川や運河、掘などに流したり、打ち水としてそのあたりに播いたりするスタイルが定着していったわけです。　学校の歴史の授業では、だいたい六上水が整備され、江戸っ子達は”水道の水で産湯をあびて”と自慢したという辺りで話が終わり、四上水が吉宗によって廃止されたとか、水道の水で産湯というのが神田上水を前提にしたかなり狭い範囲の話とかいったあたりまで話が及ぶ事は無いため、明治に入って近代的な水道が整備されるまで六上水の水道が機能していて、江戸っ子達が全員、水道の水で産湯を使っていたかのように思い込んでいる人が珍しく無かったりします。　考え方にもよりますが、江戸の町の外食や中食の食文化や銭湯文化の隆盛というのは、独身男性比率が高く、そこそこの日銭が稼げる（土木作業系の）仕事に不自由しなかったことに加えて、火事の抑制の徹底や水事情や水質の悪さもかなり影響していたのではないか？と考え込んでしまうことがあります。　水道の水を飲まないでミネラルウオーターを買って飲むなんて！と言われても、ある意味で、江戸の町においては水は買って飲む時代の方が長いわけで、蛇口を捻ればそのまま飲める水が出てくる住環境に慣れていないだけなのかもしれません（笑）。　話を水茶屋に戻すと、自社の門前や、池の端、浅草、両国などの繁華街で増えていくのですが、団子や饅頭などと渋茶を出して立ち飲みではなく腰を掛けて飲ませる方式が主流で、お茶だけだと４～６文くらいが相場だったようで、無理を承知で換算すれば一杯１００円くらいになりますが、普通の飲み水を金を出して買うのが江戸の町とすれば、自分で茶葉を買ってきて良質な水を確保して茶を入れる手間暇と経費を考えれば、ちょっと外で一服と考える人が珍しくなかったのではかろうか？　また、水茶屋の茶釜の側には、看板娘というか茶汲み娘が控えていて、赤い前垂れをするのが約束事だったようですが、この赤い前垂れが何を意味しているか？という話は以前に少ししたことがありますが、宮中で食事を作ったり配膳していた女官の緋袴を簡略化したものが赤い前垂れで、京都の町屋経由で赤い前垂れが茶屋の娘にも広がって江戸の水茶屋でも定着したようです。　今も昔も若い美人の娘さんによろめく男性は珍しくないようで、この茶汲み娘の気を引いて手の一つも握るために通い詰めて、手を握るまでに４０～５０杯の茶を飲んで腹を壊す人もいたというネタ話もあるのですが、その真偽はともかく、考えてみれば、秋葉原のメイド喫茶や、アイドル（とその卵）が営業活動を兼ねてバイトでウエイトレスをしている直営店の類は、江戸時代の初期には既に登場していた由緒正しい営業形態なわけです。　葦簀（よしず）張りのささやかな小屋から始まった水茶屋（腰掛茶屋）は、次第に立派な建物で営業する店が増え、美人のオネエサンを多数配置して裏で風俗系のサービスを提供する店や、不倫や密会の場を提供する出会い茶屋、男色家のための陰間茶屋といった風俗系の茶屋に分派したり、豪華な料理を売りにする料理茶屋へ分派するようになります。　もっとも、明和の頃（1764～1771）には、茶汲み娘から笠森お仙のような江戸を代表するアイドルが排出されるようになり、名もない町人の娘が玉の輿に乗ることがありえる働き先に水茶屋がなっていたとも言えますが、明治に入って水茶屋が次第に廃れてカフェが隆盛していくと、水茶屋の娘たちも新天地を目指すことになったようです。　肝心の水茶屋で出されていたお茶に関しては、守貞漫稿によればですが、幕末の頃には、小笊（こざる。茶こし）に茶葉を入れて、そこに熱湯をかけて出す漉茶（こしちゃ）が主流で、客ごとに新しい茶葉に変えて新しい入れ立ての茶を出す店も多かったようで、初期の渋茶から比べるとかなり工夫されたようです。　ちなみに、同時期の京阪では、粗茶の宿煮（茶釜で煮出した状態の茶）が主流だったようで、江戸の茶の方が美味く、上方の茶の方が不味いともしているのですが、上方の茶が不味いというよりも、江戸の初めから幕末まで、同じような茶の入れ方を続けた水茶屋が上方に多かったと解釈した方がよさそうですし、江戸の場合、茶の供給源として静岡などの近隣の地域の増産の恩恵もあったのではないかと考えられます。(2013/07/23)

2013.08.12

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一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第７８２話　「江戸の茶屋」

一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第７８２話　「江戸の茶屋」　明治に入って、日本で珈琲を飲ませる店が”カフェ”と名乗って次々と開業していくのですが、初期の有名所のカフェバリスタ、カフェプランタンあたりから始まる話は、これまでにも何度かしてきたところではあります。　ところで、なぜそういったカフェがお茶を主にだしていたわけでもないのに”喫茶店（きっさてん）”とも呼ばれるようになったのか？は謎といえば謎で、お酒も出していた（バーを併設していた）カフェというのは珍しく無いのですが、日本茶や紅茶を主に出していながらカフェを名乗った店舗は珍しいというか皆無に近かったのではないかと。　カフェに関しては、エプロン姿の女給がつく店が多くなり、いわゆる”カフェの女給”が、そのコスチュームである白いエプロンの後の蝶結びにした結び目が、フロアを移動するたびにひらひらと動くところから”夜の蝶”の異称で呼ぶことも定着し、カフェライオンやカフェタイガーといった大店舗型のカフェも定着し、そういった大型店舗のカフェの女給はさまざまな名目で本俸から経費が差し引かれたり、そもそもが無給で、客のチップや麦酒や食事などの注文に応じた歩合制の加算が実質的な賃金になっていった店舗が珍しくなっくなっていったことは比較的知られた話になります。　つまり、初期のウエイトレスとしてのカフェの女給の職業形態が、次第に性風俗化も進んでいってどちらのサービスが主なのか怪しくなり、これを書いている時点だと飲み屋のホステスやキャバクラ嬢の原点になってもいったわけで、大正時代のモダンな女性を意味していると学校の歴史の授業では教わる”モガ（モダンガール）”という言葉の実態が、風俗産業に従事しているカフェの女給とほぼイコールだったりします。　私が学校の歴史の授業で”モガ”の存在を知った段階で疑問だったのが、”彼女たちは何をやって食べていたのか？”ということで、ハイカラでモダンな洋装をし、それなりの化粧も日々しようとすればそれなりの収入が必要で、しかも着飾って日中に銀座とか浅草といった繁華街をうろうろできたとなると、それだけでも（朝の八時から夕方の５時まで働くような）堅気の勤め人ではありえないことは馬鹿でもわかりそうなものではなかろうか？　かといって、食うに困らない上流階級の婦女子がモガと同じような格好で繁華街をうろうろできたか？といえば、そもそも、世慣れた婆やや女中、秘書や書生などお付きの者を連れずに上流階級の年頃の婦女子が繁華街を頻繁に闊歩することがありえなかった時代が”戦前”の階級社会だったりもします。　親に経済力があって、最新の洋装を身に付けマナーも完璧な上流階級の御姫様達が出かける先は、銀座や浅草などの繁華街ではなく、名士が主催する夜会（パーティ）の類の方が多く、公の場に親公認で出てくるときは、当時のいわゆる”婚活”と連動していたことは言うまでもありますまい。　となると、良家の子女とモガというのは対極に位置していた存在と考えた方が当時の現実に近いということになり、モガたちの金の掛かる最先端のファッショも夜の営業で高収入を得ていたことと無縁ではなかったと考えられます　・・・　税務署が必要経費と認めるかどうかは別として（笑）。　次第に風俗産業にも分派していったカフェ文化の一つの転機が関東大震災で、この未曾有の大災害に直撃された首都圏から関西方面へ逃れる人達も続出したのですが、関西圏でカフェが乱立するようになると一気に色っぽい、後のおさわりバーの前身のようなサービスを売りにするカフェが続出し、過当競争はサービスの過激化を呼ぶことにもなっていきます。　もっとも、震災に伴う社会の混乱が収束に向かい、働き先が増えていくのに比例して、カフェで身を売る女性は減少していき、公序良俗を乱すような営業を官憲がいつまでも放置するわけもなく、当局の指導と取り締まりの強化もあって、カフェの性風俗店化には歯止めがかかることになります。　そういった変遷が産んだ一つの名称が、”純喫茶（＝純粋な喫茶店）”という言葉で、これは文字通り、当店は女給が性風俗サービスを行っていない、珈琲やお茶、軽食を提供する店ですといった程度の意味になります。　逆に言えば、純喫茶と名乗らなければ勘違いした客が女給に手を出しかねないところまで、喫茶店の性風俗店化が進行していた時期があったということですが、珈琲やお茶、軽食を出して端金を稼ぐより、鼻の下を伸ばした客に酒を飲ませて酔い潰した方が遥かに稼ぎが良いと考えた人達も珍しく無かったわけです。　カフェが”純喫茶”の名の下に、本来の健全な飲食店へと回帰していく流れもあった一方で、酒を提供するバーとしての側面を強く打ち出し客を酔わせて荒稼ぎするカフェバーに傾斜した分派も生じ、最終的に、銀座の町からカフェが消えてバーが残ることになったのは御存知の通り。　銀座のカフェの女給が、銀座のホステスの母胎となったわけですが、夜の街で大枚を払って酒を美人のオネエサンたちとそれなりの内装がほどこされた高級店で飲むことができる男性となると数が限られ、”銀ブラ（銀座でブラジリアン珈琲を飲む）”という言葉が産まれた頃にはカフェ文化に少なからず貢献していた大学生達は銀座でバーの文化が形成されていく段階では主に経済力の点で対象外となっていくことになります。　もっとも、これを書いている時点の誰でも大学生になれるような時代の大学生と、数が限られていた戦前の旧制の大学生達は社会に与える影響力も、卒業後に就職した先で受け取る給料にしても、文字通り社会を牽引する側のエリート階級（の末端）ですから、少なくとも就職した後に、ガード下の一杯飲み屋でカップ酒を定年まで毎夜のように煽る人生を歩む人は少数派で、先輩に連れられて銀座のバーで酒の飲み方などを教わりながら人脈を広げていく社交の場が形成されていくことにもなったのでした。　ここで話は冒頭の、”お茶を出していたわけでもないのになぜカフェは喫茶店とも呼ばれるようになったのか？”というあたりに戻るのですが、これは明治初期の段階で、それまで日本に存在しなかった”カフェ”とはどのようなものか？を説明する際に、江戸時代の江戸の町など都市部で隆盛していた”茶屋”に近いものとしたためではないかと考えられます。　つまり、”茶屋でお茶の代わりに珈琲という特殊な豆（珈琲豆）の煮汁を飲ませる”のがカフェといった説明が一番分かりやすかったのではないかということですが、純粋にお茶と団子や饅頭などを楽しむ茶屋は水茶屋ということになります。　江戸で茶屋と呼ばれた施設には、水茶屋の他にも、本格的な料理を食べさせるようになっていく料理茶屋、男女の密会の場となった出会茶屋、男色を提供する陰間茶屋などがあり、多彩というか多岐に及びます（笑）。　峠の茶屋とか渡し場の茶屋といった、旅の要所要所で、湯茶と食事を提供する茶店が始まりという説には説得力があり、花の名所や観光の名所などで野点（のだて）とまではいかないまでも、湯茶や軽食を提供する店が江戸の町でも定着していくことになり、桜餅やら業平饅頭などなど、名物を産んでいくことにもなる流れがあり、珈琲を提供し楽しむという点では、この流れが一番近い江戸の茶屋文化ではないかとおもわれます。　少し視点を変えると、宿屋のように宿泊と食事をセットにした産業というのは、それこそ旅人の要望に応える形で沿道沿いの住人達が片手間に提供するあたりから始まって、頻度の高い地域では専業化も進んでいったと考えられるものの、何処の誰が始めたというあたりははっきりとせず、物流が貧弱な時代ほど地元の食べ物や飲み物を提供する割合が高かったのではないかと考えられる程度の話になります。　ここで肝要なのは、純粋に日々の食事を提供する専門の料理店が登場するのが江戸時代に入ってからになることで、江戸の料理茶屋の魁としては、明暦３（1657）年の明暦の大火の直後に、浅草で茶飯と豆腐汁、煮物などの小鉢を添えた”奈良茶飯”を提供する料理茶屋が出たあたりになります。　常設の飯屋ということでは、寛文四年（1664年）頃に瀬戸物町で信濃屋が始めて広まった、主に饂飩や蕎麦を提供する簡易セルフ系の大衆料理店である慳貪屋や、一皿４文程度から長屋の住人を対象に惣菜を売っていた惣菜屋（飯も提供して食べさせる店もあった）が知られていますが、後の、蕎麦、にぎり寿司、天麩羅などの軽食を提供するようになる屋台なども合わせて、労働者を主な客層とする大衆料理店（舗）の域を出ることは無かったようです。　増加していく江戸の住人と土木工事に下支えされた経済は、外食産業を隆盛させる原動力となり、その後も、両国橋詰の茶屋、深川州崎の茶屋、芝明神前の茶屋などが、会席料理の方向へ高級化して料理で評判になっていくのですが、町人の中の富裕層が形成され料理茶屋の利用者が増加してくると高級化も加速され、明和（1764～1772）の頃に深川に升屋祝阿弥（ますやしゅくあみ）が開業したときには、料理の高級化はもちろん、座敷、庭、食器にも拘った豪華さで評判を呼び、大名や藩の留守居役など武家の上層部も高級料理茶屋を利用するようになっていきます。　高級料理茶屋路線では、向島の葛西太郎、深川の二軒茶屋、柳橋の万八楼などが有名どころになっていくのですが、江戸で一番とされることが多かったのが、浅草山谷（現・台東区）で創業した新島越の八百膳（やおぜん）で、意識的にお座敷から富士山を眺めながら食事をしていたあたりで、当時の富裕層がどれくらい時代を先取りしていたかわかりそうなものではなかろうか？　ＴＶで人気が出た某・シェフが経営する某・イタリアン料理店で食事をしたら、ミネラルウオーター一杯で８００円請求されたのが高すぎて納得いかないとネットでごねたクレーマーが話題になりましたが、八百膳だと”茶漬け一杯で一両２分（換算して８～10万円程度）”を請求した実話があり、さすがに驚いた客が理由を尋ねると”玉川上水まで水を汲みに走らせたため”と店側が答え、客はその法外な値を払ったことで面目を立て、店はその料金を負けなかったことで看板を保ち、当時の江戸中どころか、２１世紀まで伝わる八百膳の伝説となったのでした（ホント）。　他にも料理茶屋の名店は多いのですが、文化の頃（1804～1818）に創業して明治32（1869）年に廃業した深川土手の深川平清（ふかがわひらせい）も知られた存在ですし、安政元（1854）年に柳橋で創業して角界の利用が多い”亀清（亀清楼）”は、これを書いている時点でも営業を続けていますから、江戸の料理茶屋の話というのは大昔の話というわけでもないわけです。（2013/07/22）

2013.08.10

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一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第７７１話　「スポーツ少女２」

一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第７７１話　「スポーツ少女２」　明治の頃から女子高校生の中にはテニスを楽しんだりしていたハイソな方々もおいでだったわけですが、こと武道修行に関しては男尊女卑の世の中が続いたことと、武士階級における”男女７歳にして席を同じゆうせず”に象徴される儒教道徳的な考え方の蔓延が大きかったようです。　逆に言えば、下々の者にとっては”男女７歳にして色気づく”ことを受け入れていたというか、寺子屋や手習いを卒業する頃にいろいろな意味で社会勉強が本格化していったことは確かな話になったりします。　卒業に明確な期間は無かったものの、寺子屋や手習いを一通り終わって通わなくなれば、丁稚奉公など、外で働く際に必要になるとりあえずの読み書き算盤などの一般的な技能は（身に付けたかどうかはともかく）教わったということで、社会の末席というか末端で見習いや半人前扱いだったとしても働き始め、ささやかながらも稼ぎ始めることも意味していたわけです。　もちろん、寺子屋や手習いなどに通っている頃から、出来る範囲で稼業（家業）や家事の手伝いをするのは”当たり前”で、家での仕事の方がどちらかといえば優先される傾向が昭和の中頃くらいまでは珍しい話ではなかったりします。　平成生まれに話したときに法螺話扱いされたのが、昭和の昔は、ある時期まで田植えや稲刈りなどの特に忙しく人手が必要になる時期に”農繁休暇（農事繁忙期休暇、農繁休業）”というのがあって学校が公式に休みになっていたという話で、子供も小学生ぐらいから労働力としてカウントされていて、特に戦後の食糧難の時代には”学問よりも食べること（＝餓死してしまったらそれまで）”と言われて反論できる人は少数派だったわけです。　実際、戦後の米が配給制だった時期に、闇米や闇物資に手をださずに配給（米）と合法的に入手できる食品だけで生活していて餓死した話は比較的知られた話で、そんな食糧難の時代から６０～７０年くらいしか経過していないのに、若い世代が”そんな話は知らない”ことには留意が必要でしょう。　もっとも、スポーツをやっていた人達にほぼ共通していたのが、”やっとまともにスポーツの練習ができる”と思ったことのようで、それこそ戦後の食糧難の時代に”ふかした薩摩芋を齧りながら、ひたすら泳いでいた”とか、”（学校への）行き帰りに野草の類を調達していた”とかいった話には不自由しないようです。　対外戦争が泥沼化して兵員確保が厳しくなっていくのに比例して、学生の間から軍事訓練をしておいて卒業と同時に入隊させて（新人研修の時間を短縮して）即戦力として前線に投入するという惨い考えを国策として実行に移うようになっていったのですが、英語が敵性語扱いされて授業で教えることを禁止し、それで浮いた時間を軍事教練などに振り分けてもいったようです　・・・・・・　が、ここにもトリックというか意図的な錯誤があって、富裕層が通う学校では敗戦の年まで英語を公式に教えていた学校が珍しく無く、結果的に、敗戦後に英語の読み書きがある程度はできることでＧＨＱ関連の組織で職を得た人もすくなからずおいでで、同時期に、”鬼畜米英の言葉なんぞ使うな！”と貧乏人の子弟は擦り込まれて竹槍教練やバケツリレーなどもやっていたことを考えると、”なんだかな～”と思うなという方が無理でしょう。　戦後、戦時中は英語から遠ざけられていた庶民が、”かむかむえぶりぼでぃ”と無料のラジオ講座でカタコトの英会話を１から習得しようとしていた頃に、戦前、戦中に教育を受けて英語などをある程度でもマスターしていた富裕層の子女は条件の良い雇用先で（相対的に）高給を得ることも、職員の福利厚生の一環として米軍の物資を多少なりとも入手することもできたわけですが、当然のように高給を得ている（身元のある程度確かな）異性との遭遇率も高かった事は指摘するまでもありますまい。　そうした光景は、明治維新の結果として大量に失業した武士たちの家庭で、亭主の再就職先が決まるまで奥さんの内職や娘さんが奉公に出て家計を支えた話と重なりますが、社会制度が崩壊してそれまでは地位に付属していて惰性で手にできていた収入を源ごと失ってしまうと、自前の才能や才覚で再び稼ぎ出すことができる人と、ドロップアウトして酒浸りになっていく人に綺麗に分かれることは時代の節目節目に見かける、よくある光景と言えます。　話を戻すと、軍事教練を学校教育の場に可能な限り詰め込みたがるようになっていく軍部と、可能な限り外部からの介入を阻止して自らの米櫃の支配権を守りたい文部省との妥協が、体育から軍事教練という流れと、部活動などに擬似的な軍組織体制を導入することなどで、分かりやすく書くと、”１年程度の現場経験と練習期間しか無い（特に専門的な教育を受けたわけでもない）上級生が下級生を一方的に指導する”方式の導入で、軍隊がそうであるように、一つ上の階級の指示に下位の者は絶対服従を強要させられ、指示を実行できなかったり反抗した下位のものに関しては”現場の判断で（＝理由の如何を問わず）制裁を加えたり処分する”ことを上層部が黙認するようになっていったわけです。　この悪しき風習は、戦後も”体育会系の伝統”として継承を続けた学校が多く、実際の（右も左も分からない）新兵への訓練が、それが一年先に入隊しているだけでも古参兵に任され、士官達は何が現場で起こっているか知っていながら見て見ぬ振りをすることで、兵卒の訓練で何らかの不祥事が起こった場合も、”それは士官の責任では無い”という、どこかで聞いたような主張をするようになったわけです。　実際、日露戦争に従軍した世代と大東亜戦争に従軍した世代に話を聞いてみて、”同じ国の軍隊の新兵教育制度？”と思うくらい様変わりしているのですが、やはり専門教育を受けた士官が指導する新兵訓練から、教え方を含めて専門教育を受けたことが無い人材であっても、現場を先に経験しているというだけで古参兵による新兵訓練へ制度的に切り替えたこととで”負の連鎖”が生じるようになったと言えます。　つまり、”自分が新兵のときにやられたのだから、自分たちが指導する側になったら、次の代の新兵に同じかそれ以上のことをやって憂さを晴らす”行為が横行し、夜の営舎で聞く就寝のラッパが”新兵さんは辛いよね、また夜泣くのかね”と聞こえたとかいった話は比較的知られた話になります。　現在まで続く、いわゆる”イジメ”の基本形がここにあるのは確かな話になりますが、当時の軍隊でさえもまともに機能せず、”古参兵に目を付けられて、理不尽に苛められ続けた新兵が、実戦の最中に立ち上がって後ろへ向けて発砲し、イジメの中心の古参兵を射殺した話は、自分の所属していた隊でも何度かあったし、他の隊でもあったといういささか物騒な話をして下さった方もおいでだったりします。　男性達ほどは徹底されなくても、女子高校でも軍事教練の類は増加していき、部活動の軍隊化も少なからず生じていたそうですが、それこそ還暦を過ぎての同窓会の席などで”あの時、○先輩に苛められたのは忘れていない”といった発言をする人が出る程度にはこじれていたようです。　これも、ハイソな方々の通う学校ほど軍隊化が後になったようで、その辺りの”貧富の差によって生じていた時差”の存在を知らなかった頃に、”あれ？○さんが女学生だった頃って、英語は適性語で勉強してなかったんじゃないんですか？野球のストライクやボール、アウトやセーフといった単語でさえ無理矢理、日本語で言うようになっていったって聞いたことがありますけど？”と尋ねたことがあったのですが、”私たちの一つ下くらいまでは、卒業まで英語の授業も試験もあったけど、その下くらいで英語の授業は必須から選択制になって、話に聞いたところでは敗戦の年に卒業した代だと外国語はほとんどの子が選択できず、アルファベットも公式には教わっていないレベルだったみたい。”とのことでした　・・・　もう少し詳しく正確に聞いておけば良かったなあと思う今日この頃だったりします（遠い目）。　以前、2-515”走る女”の回で、”夜の校庭を走る幽霊の話”は実話だったという話を書いたことがありますが、陸上競技などは（戦争の激化によって幻に終わった東京オリンピックも誘致に成功していたくらいですから）戦時中の女子高校でも意外と盛んだったそうですが、空襲が激化して、食糧事情が悪化して、学童に限らず疎開が珍しく無くなってくると”それでも練習していた人達ってかなり物好き”という評価が一般的だったようです。　もっとも、1945年頃には、空襲の激化や食糧難に加えて、軍事的な動員が激増し、部活動どころか学校の授業そのものが危うくなり、成績優秀者は軍令部など軍組織で事務処理などの補助を、それほどでもなければ軍事物資などの製造工場で生産作業の主体になったり補助している時間が長くなっていたという話もあり、”勉強や運動をしたくでもできなかった”という人が多かったりします。　私なんぞは、”戦争が無くったって勉強や運動をしなかったんじゃないのか？”と勘ぐってしまうのですが、戦前・戦中の女子高校生達のプライドはかなり高く、”戦後の新制の女子高校生と一緒にしないで”という人が圧倒的に多いあたりで推して知るべしかもしれません。　明治の頃から意外と活発に西洋の体操やらスポーツ、日本の弓道や薙刀などの武道を修練していた女学生達がいて、大正デモクラシーの頃には欧米の女子教育と比較してもそれほど劣っているとは思えないあたりまで充実してきている感がありますが、逆に言えば、当時の欧米でも高度な女性への教育が行われていた国や地域というか、学校はかなり限られていたとも言えます。　同時期の欧米の文盲率の高さを考えるとき、庶民にまで一定の教育を受けさせることを義務化し、津々浦々まで尋常小学校を整備し教員を配置していき、いわゆる外地にも可能な限り同様の教育システムを普及させて近代国家を支える人材の育成に腐心した日本の方が余程先を行っている感があります。　もちろん、その学校で何をどの程度の水準で教えるのか？という点では、欧米先進国の最先端の学校と比較すると差が大きいのですが、そもそも同時期の亜細亜の国々の大半が欧米列強の植民地と化し、少なくとも植民地に本国並の学校制度を導入したり、植民地の総ての住人に最低限の教育を授業料無料で義務教育として保護者の責任で義務化して、実際に運用できていた国が亜細亜では他に無かったことは確かな話になります。　分かりやすい国力の指標としては、第二次世界大戦以前に開催されたオリンピックに亜細亜から参加した国がどのくらいあったか？といった話にしてもいいのですが、それ以前に、欧米列強の植民地化を免れていた国や地域が第二次世界大戦前夜の段階でどのくらい残っていたか？という話の方が良いのかもしれません。(2013/07/09)

2013.07.29

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一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第７７０話　「スポーツ少女」

一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第７７０話　「スポーツ少女」　戦前に女性が日本国内で大学まで進学することは法律で制限されていたため事実上不可能だったのですが、では大卒の女性が皆無だったのか？というと、合法的に入学し正式に卒業した女性も実在します。　女性の入学を認めていた海外の大学を卒業したとかいった話ではなく、実際に、正式に国内の帝国大学を卒業しているのですが、事の起こりは事務処理上の勘違いで、入学が公認された背景としては官僚の面子の問題があったようです（笑）。　そういった希有な例外を除くと、戦前の女性の最高学府は高等学校ということになっていますし、当時の社会では”女性に学問は不要”という江戸時代から続く考え方も根強く残っていた上に、貧困層ほど働いて稼げる年齢になったのに、金を払って学校へ行くことを親の財布が許さなかった家庭の方が圧倒的に多かったりもします。　義務教育までは親の義務として受けさせる必要が法律的にもあったということは、義務教育を終えた後は、大雑把な話になりますが、社会人として働くコース、（花嫁修業を含めて）嫁に行くコース、進学するコースに分かれていたわけです。　もっとも、”進学”に関しては、学校の先生を養成する”師範学校”や、病院の（当時）看護婦を養成する”看護学校”といった職業婦人になるための”進学”と、就職を目的としない嫁入り道具の一つというか箔付けのための”進学”にこれまた大きく分けることができた時代で、後者の場合、本人の学業成績もさることながら、親の財布の厚みがものを言ったことは言うまでもありますまい。　いずれにしても、高等学校へ進学したとしても、今風に言えばモラトリアムの期間は１８歳くらいまでだったわけですし、名家の子女の場合、下手をすると産まれる前から許婚が決まっていた時代だけに、高校へ通っている間に見合い話が進んだり、卒業すると許婚と結婚という話も絵空事ではなかったりします。　ただし、明治、大正、昭和と時代が進むに連れて女性の社会進出が進んだというか、対外戦争を手広く行うようになると、どうしても働き盛りの男性を徴兵ないし志願兵として戦地へ送り出すことになるため、その抜けた穴を高等教育を受けた女性が埋めていく頻度が上昇していったため、それこそ明治の中頃くらいまでは”ねえやは１５で嫁に行っていた”のが次第に婚期が後へずれていき、大正の頃には２２～２４歳くらいで嫁ぐ人が主流になっていたようです。　このことは、大正の頃から少子化が始まっていることでも裏付けられているのですが、教育を受けた方が稼ぎがよい職に就けるので、結果的に貧困から抜け出せる可能性が男女ともに高くなることを理解できる人が多くなっていたとも言えます。　大枠の話ではありますが、だいたいそういった流れが戦前の女子教育と日本社会にはあったのですが、やはり女子高等学校まで進学できる子は、本人の頭が良いか、親が富裕層という点が崩れることは無く、時代が下がるほど、貧乏人の子弟であっても成績優秀な子が（男女を問わず）進学できる可能性は増加していきます。　その辺り、戦後の高度経済成長期というのは、貧困層が激減して中間層が厚くなった時期でもあり、少し無理をすれば（学制が変わって新制になっていましたが）高校くらいまでは進学させてやれるという親や保護者が増加した時期とも言えます。　ちなみに、戦前から”家”の稼業（家業）を手伝う形で働く女性は珍しく無く、親戚や知人の臨時の手間仕事などを請け負って働いたり、内職などで働いたりといった具合に少なくとも庶民階層の女性が”専業主婦”と称して家事と育児しかしない光景は珍しい部類だったようです。　もっとも、その専業主婦も中間層が厚くなり、亭主が会社勤めのサラリーマンという家が多くなると、実家の百姓仕事などと違って亭主の勤め先に押し掛けて仕事を手伝うこともできなかったでしょうし、毎年のように給料も上がっていったことと税制などの優遇措置なども勘案すると中間層でも上位の方から、得たに奥さんが安価な報酬で働くより”専業主婦”をやっていた方が有利な家庭が増加していくことになります。　まあ、それまでは男性に互して肉体労働の現場でも働いていた女性達が家に常駐して家事と子育てくらいしかやることが無いとなれば、子供の教育にエネルギーを注ぎ込む”教育ママ”が増加するのも必然だったのかもしれませんが、良い学校へ進学して良い企業に就職することで高給取りになるために勉強させる母親というだけならば、戦前から教育熱心な母親は珍しく無く、格差が極端だった戦前の進学競争の方が切実だったりします。　ただし、男の子の場合、高等教育を受けて高給なサラリーマンや官僚になる道だけでなく、兵学校や士官学校への進学という別の出世や栄達が可能なルートが　・・・　命がけが前提ですが　・・・　あり、田舎で先の見えている退屈な貧乏暮らしで一生を終わりたくないと思えば、軍人になって給料を貰いながら手に職を付けたり、出世することも可能だったわけです。　　単純に、三度の飯がちゃんと食える上に給与が出て、基本的に平時は屋根と壁のあるところでベットやハンモックを寝具にして寝泊まりでき、必要な衣服なども無償で支給されるだけで大満足という子も珍しく無い格差社会でもあったことには留意が必要ですが。　女性の場合は、この軍人ルートが事実上無かったのですが、軍属扱いで軍の様々な事務処理などに（臨時を含めて）雇用されたり、勤労奉仕という形で女学生が動員されることは珍しく無く、第二次世界大戦が激化して現場の人手不足が深刻になればなるほど、高等教育を受けた女性のニーズが高くなっていったのは確かな話と言えます。＊　敗戦当時、当時の内地、外地で女子高校生だった人達に話を聞く機会が何度かあったのですが、１９４５年に１７歳だと２０１３年には８５歳になる計算だけに、”当時の現地の教育制度は実際にはどのような状況だったのか？”を直接聞ける時間はほとんど残っていないのかもしれませんから、画像と音声で（義務教育以上の）高等教育を実際に受けていた人達の声として残しておかないと国としてかなりまずいことになりかねないとも思います。　いずれにしても、戦前の女子高校生というのは産まれながら上流階級に属しているか、中間層以下の産まれでも将来的に上流階級に所属できるようになる可能性が高い、一種のエリート的な存在で名実ともに”お嬢様”だったのは確かな話で、戦後の学制改革で制度が変わって女性も大学に進学できるようになってからの女子高校生とは呼称は同じでも別の存在だったと言えます（ホント）。　というか、明治の頃の女子高校の一期生達が既にテニスの試合をしている当時の写真が現存しているあたりでも、当時の庶民とはいかに別枠の存在だったかわかりそうなものですが、どうもこうした階級格差がほぼ所得の格差にも反映していた時代の話というのは戦後生まれには納得しにくいようです。　もちろん、戦前から、特定の階級の子弟のみを前提とした学校というのは私学校を中心に存在していて珍しくありませんが、帝国大学を頂点とする公教育において”試験の点数こそ総て”で、皇族であったとしても、いかに人柄が良くて人気者でも、入試の得点が足りなければ入学を認めない厳格さが国是でもあったあたりで、最高学府としての権威と矜持も育っていったのかもしれません。　まあ、そういった話は比較的知られている話ですが、では、戦前の体育教育はどのような推移をたどったのか？何を教えてやらせていたのか？と聞かれると、ほとんどの人が”え～っと、教わっていないのでわかりません”状態になるのではなかろうか？　もっとも、”体育”という概念が成立して、公教育の場で体系的に教育的指導が行われるようになったのは欧米先進国でも１９世紀末くらいからの話で、その背景として、学校教育で強靱な肉体を形成することで優秀な兵士を大量に短期間で育成し供給してもらいたいという”国家”のニーズがあり、特に欧米人と比較して小柄で筋肉量の少ない日本人にとって、欧米人に対抗できる肉体を手に入れることは国の命運に直結しかねなかったわけです。　一方で、体育に各種のゲームなどの”娯楽”の要素が含まれている競技科目も有ることは御存知の通りで、日々の生活や労働で体が嫌でも鍛えられていたことはあっても、”楽しみながら体を鍛える”という発想そのものが日本人には縁遠い感がありますが、ゲームの楽しさを知らなかった明治の日本人が全国規模で熱中したのが”野球”で、国産のゲームである”ドッチボール”のルールなどにも影響を与えているという話は以前に少ししたことがあります。　男性の場合は、日本では1873年に大学南校（後の東大）の生徒が米国人教師 H. ウィルソンらに教えられて行ったのが最初というのが定説で、大学生くらいの若い世代に急速に広まり、正岡子規が草野球に熱中していた時期があることは比較的知られた話ですが、1878年に平岡煕(ひろし)によって日本最初の野球チーム新橋倶楽部（愛称・アスレチックス）が誕生したあたりで、ほぼ現在の”野球”となったようです。　娯楽が少なかった時代ということもあってか、第１次大戦のもたらした好景気の余波として1915～1916年頃から各会社の野球チームが生まれ、この流れが後の全国実業団大会などに繋がっていくのですが、早慶戦や、東京六大学野球連盟が結成（1925）されて以降、定期開催されるようになった東京六大学野球などの学生野球も大人気となったことは比較的知られた話になります。　それでいて、1920年に最初のプロ野球チームが”芝浦協会（正式には日本運動協会）”として発足した際には長続きせず、1934年に大日本東京野球倶楽部（後の読売ジャイアンツ）の創立に影響されて他の球団の成立が進み、1936年に全７球団で日本職業野球連盟が結成されて以降が現在に続く日本のプロ野球ということになります。　では、女性のプロ野球チームは日本ではいつごろ誕生したのか？　というと、案外と遅く、昭和24（1949）年の”ロマンス・ブルーバード”の結成が最初で、”レッドソックス”、”ホーマー”、”パールス”が翌年に結成されたことで日本女子野球連盟の結成が現実のものになったようです。　最盛期には２５チームに達し、公式戦や地方巡業というか地方遠征もこなしていたのですが、戦地から復員してきた男性のプロ野球選手も加わって男性のプロ野球が再開されたこともあってか人気は程なく低迷し、昭和27年にはプロ組織としての維持が難しくなって社会人チームとして出直したものの、こちらも昭和46年に姿を消しています。(2013/07/08)

2013.07.26

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一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第６８０話　「人力車の話」

一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第６８０話　「人力車の話」　今となっては、人力車といえば観光地で細々と営業している程度で、実用性が云々というよりも”風情を楽しむ”移動手段であり、自動車やオートバイなどを運転している人達からすれば車道を走る自転車と同程度かそれ以上に邪魔な存在と化しているのではないかと思われます。　人力車は日本オリジナルの乗り物ですが、事の起こりは明治２（1986）年に、東京は京橋で暮らしていた和泉要助が西洋人が乗る馬車に遭遇して、もっと小型で小回りが利いて日本に適したものは出来ないか？と考えたことになるようです。　意外なことに最初は三輪から試行錯誤が始まっているのですが、三輪だと取り回しがあまり上手くいかず、馬車と同じく四輪も試してみたものの日本の道路が未舗装の部分が多かった（というか大半が未舗装だった）こともあってあまり上手くいかなかったため、ならばということで思いきって２輪にして、その車軸の上に西洋風の椅子（腰掛け）を置いてみたところ、目標としていた小型で小回りが利いたそうで、とりあえずの完成を見たとされています。　当初は木車で鉄輪で明治末ごろから車輪のゴムタイヤ化などの改良が定着するのですが、なぜ二輪というアイディアが出たのかといえば、江戸時代までの主力の荷車が二輪構造で人が引く方式の”大八車”などが主流で数も多かったこともあったと考えられますし、意外かも知れませんが、江戸時代にも後の道路交通法に該当する交通関連の法規があり、特に都市部では武士が馬で市街地を闊歩する際なども含めて、荷馬や大八車のような車両の運用に関して罰則附きで規制が行われていました。　逆に言えば、江戸時代でさえ人口密集地で好き勝手に”乗り物”を使わせていると怪我人や死人が出るような事故が発生していて法律で取り締まる必要性を感じる人が多かったということですし、それこそ”馬に蹴られて死んじまえ！”という台詞がある程度には、実際に馬に蹴られて死ぬ人がいたとも言えます（意外と真面目な話）。　と、ここまで書いて、そもそもの”大八車”を見たことも無い人の方が多くなっている気がしてきたのですが、私の世代で農村部などで産まれ育った人だと実際に大八車で荷物を運んだり運んでいる光景を見たことがある人がまだいたというか、昭和の後半くらいまでは現役の荷車として使われていた地域があったのですが、重量的には１人が引っ張る場合で１トン程度が運べる上限と考えておけば概ね宜しいようです。　もっとも、自動車運転免許の取得率が上昇し、軽トラックなどが普及してくると大八車の類は次第に姿を消すことになり、農山村の平均年齢の上昇というか高齢化が進むと人力が前提の荷車を使うことが難しくなっていった側面もあるのですが、世代が下がるほど農山村でも体力低下が目に付くようになっていきましたから、江戸時代と遜色ない重量を大八車で運ぶことができた最後の世代は大正生まれくらいまでになるのかもしれません。　ほとんどの部品が木製だった大八車も時代とともに改良が加えられていったのですが、少なくとも江戸時代の大八車は本体はもとより車輪の大部分も木製で、明治も末に近くなった頃からゴムタイヤが普及するに連れて次第に大八車もゴムタイヤや鉄製の車輪や車軸へと切り替わっていった変化は大きいものの、大正に入った頃に本体部分が鉄で造られ小型で取りまわしや保管が容易で自転車で牽引する”リヤカー”が登場すると都市部から次第に姿を消していくことになり、そもそものリヤカーは自転車で荷物を運ぶ際の荷車だったわけですが、人力で引くことも可能な構造だったこともあって”リヤカー”タイプの荷車の方が都市部では主流になっていったようです。　興味深いのは、西洋の人力で動かす荷車が押す方式が主流であるのに対して、日本の荷車の場合は引く方式が主流になっていることで、これは鋸（のこぎり）などの刃物で洋式では押して切るタイプが、和式には引いて切るタイプが主流になっているといった違いが（かっては）明確に分かれていたことにも見られる西と東の文化の違いというか、日本文化の特徴の一つになっていますし、リヤカーという言葉がそもそも和製英語で日本の発明だったりします。　故に、人力車が1848年頃に亜米利加の鍛冶職人アルバート・トルマン（Albert Tolman）によって宣教師の乗り物としてマサチューセッツ州ウースターで作られたものが普及したという説や、1869年頃に来日していた亜米利加人宣教師ジョナサン・ゴーブルが妻の為に考案して横浜で使っていたといった”荷車を押す”文化圏発祥説に首肯する気は無いのですが、1870年代半ば頃から中国へ輸出が始まり、1880年頃には印度で中国人の商人達が使い始め、急速に亜細亜の大都市を中心に普及したことで、日本の発明品では無いことにしたい人達があれこれ言い始めたところもあります。　中国でも日本製の人力車が爆発的に広まり、発明品の特許という概念が無い時代だけに程なく現地生産も始まって”黄包車”の別名で呼ばれることも多くなっていったようですが、全土に人力車が広まって日中戦争の戦中戦後も一大産業を形成していたのですが、1949年以降、中国を掌握した中国共産党によって人力車は禁止されて中国国内から姿を消すことになります。　他の亜細亜の国や地域では第二次世界大戦後も政府が禁止しても使い続けられた地域が珍しくありませんし、自転車やバイクで引いたりする御当地の改良が加えられてサイクルリキシャやオートリキシャとして現役の交通手段として残っている地域もあることは御存知の通り。　いずれにしても、明治３年には完成していて特許も出願されていた人力車を使った営業を始めるべく、東京府へ和泉要助、鈴木徳治郎、高山幸助の３人で営業を申請し許可されているのですが、当初は、馬が引く馬車に対して人が引くことから人車としていたようです。　ただし、役所の方では”人車”という呼称はいかがなものかと考えたようで、意外なことに役所の書類において初めて”人力車”という呼称が公式名称とされ、それ以降は人力車として広まっていくことになるのですが、そのハイカラ感覚と手軽さも受けて繁盛したようですし、それまで駕籠をかいていた人達が急速に人力車の車夫へと転職したという話もあります。　それまで使われていた駕籠より人力車を使った方が速く移動できるにもかかわらず揺れが少なく客の疲労が少なかったこと、数が限られていて維持費がかかる馬よりも人間を使った方が１台の人力車を動かすためのコストがはるかに安く済んだこと、特に人力車を操縦するために高度な技術を必要とせず自転車に乗れるようになるより簡単だったことで前述したように駕籠をかいていた人達の転職が容易だったことが東京はもとより全国で急速に人力車が普及していった主因と考えられます。　駕籠から人力車への流れということでは、日本で普及した人力車に一人乗りのものが圧倒的に多かったことや、通常は１人の車夫で引いていても、急ぎの場合には２人以上で引いたり、交代要員の車夫が併走したりすることもあったあたりに名残を感じますが、東京では登録番号をハッピの背に入れた車夫が引く人力車が急速に普及し、鉄道が開通した明治５年の段階で東京だけで約５万６千台の人力車の営業が登録されていますから、汽笛が一声した頃には既に庶民の足として定着していたと書いて良さそうです。＊　1872年までに、東京市内で約１万台あった駕籠は完全に姿を消しています。　それだけ急速に発展したのなら、発明者である和泉要助、鈴木徳治郎、高山幸助たちは特許の利用料で大儲けしたのかというと、当時はまだ特許などに関する法整備が進んでいなかったことと、特許による権利の独占という概念そのものが認識されていなかったため、発明が利益に結び付かなかったのですが、このことが特許に関する法整備が進む切っ掛けになったという説もあります。　逆に、和泉要助たちと関係がある人が主張するのならまだしも、急速に人力車が普及したことで膨大な儲けが出ているに違いないと踏んで、”我こそは人力車の本当の発明者である！”と自称して利権を要求する山師的な人も後を絶たず、”人力車発祥の地”の名称を欲してかなり無理のある主張も繰り広げられることになります。　東京での人力車の営業に翳りが出てきたのは、片道３銭で営業する市電が登場して市電が急速に延伸され網の目のように整備され始めた頃からで、一里（約３キロ）で８銭以上していた人力車よりも市電を移動の足として利用する人が増加していくことになり、自転車、オートバイ、自動車などの個人への普及も人力車の営業を圧迫していくことになります。　その後、戦時体制で車夫が不足するようになったこともありますが、1937年（昭和12年）には石油資源の確保のためにタクシーの流し営業が禁じられるような御時世となり、東京の人力車の営業は昭和13（1938）年に全廃されてしまいます。　日本におけるタクシーの営業も思ったより早く、明治45（1912）年に東京市有楽町（現・東京都千代田区有楽町）で”タクシー自働車株式会社”が設立され本社前でＴ型フォードを６台使用して旅客営業を開始したのが始まりとなります。　興味深いのは、当初のタクシーの料金体系で、人力車の場合は駕籠の文化の影響もあってか、車夫に行く先を告げて大枠で料金を決めてから動き始め、目的地について酒手（チップですな）込みで精算するのが一般的だったのですが、タクシーは料金メーターを搭載していて、最初の１マイルが60銭、以後１マイル毎に10銭増しというメーター制を採用していました。　タクシー自働車株式会社は”辻待ち自動車”と呼ばれていたものの、実際には鉄道を前提として上野駅と新橋駅を拠点に営業していて、それは大正３（1914）年には東京駅が開業すると東京駅でも営業するようになっていますから、当初のタクシーは鉄道で移動できる富裕層を前提にしていたと考えて置いた方がよろしいようです。　もっとも、低価格でシェアを獲得するという手法も当時から存在していて、大正13（1924）年に大阪で”円タク”と呼ばれることになる一定区間一律料金で営業する方式が普及し、大正15年には東京にも現れています。　この”円タク”という名称は、料金体系が変わってからも市内の流し自動車の通称として長らく残っていたのですが、今となっては知らない世代の方が多くなりましたなあ（笑）。(2013/03/25)

2013.04.09

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一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第６７９話　「競輪の話」

一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第６７９話　「競輪の話」　自転車の始まりを何処に求めるかに関しては意見が分かれるところがあるものの、前後に２つ以上の車輪がついていて人力を動力源とする乗り物と定義しておけば大枠では収まるようです。　そもそもは木馬が出発点だったのではないかというもっともな説もあり、初期の足けり式自転車が、前後に２つの車輪をつないで固定し、前輪の上に馬の頭をつけ、後輪の後には尻尾をつけ、両輪の中間には簡易な鞍（サドル）を付けてそこに跨って座り、地面を足で蹴って前進するもので、後の自転車には必須となる”ハンドルがなかった”あたりもこの説に一定の信憑性を与えています。　木馬の脚の部分に車輪を付けたものを誰かが引っ張るなり、乗り手が自分の脚力を頼りに移動させることができるように改造したのが自転車の始まりではないかということですが、当然、ハンドルがなければひたすら一直線に走るか転倒するくらいしかできないことは言うまでもありますまい。　逆に言えば、ハンドルを付けることで方向を変えられるように改良してからが自転車の原型と呼ぶに値するという説もあり、ハンドルが付いたものが”ドライジーネ（draisienne）”と呼ばれるわけですが、この説の場合の自転車の考案者は独逸のドライス（ Karl von Drais、1785～1851 ）で1813年に考案された1818年に仏蘭西で特許が認められています。　もっとも、さらに”うんにゃ、ペダルがついてなきゃ自転車じゃねえだ！”という声もあり、ペダル付きの自転車ということになると、英吉利のスコットランドのダンフリースに近いコートヒルで鍛冶屋を営んでいたマクミラン（ Kirkpatrick Macmillan ）が1839年に、ペダルはクランクで後輪に連動して足を前後に動かす方式でしたが、ペダル式の自転車を開発しています。　ちなみに、この自転車の車輪は鉄製で、前輪が３２インチ（約81cm）、後輪が４２インチ（約107cm）で総重量が約２６キロという大作で、前面に馬の首が彫刻してあったそうですが、実際にコートヒルとダンフリースとの間を往復する際に利用していたようですが、マクミランの発明をもって自転車の誕生とするならば、彼の姪であるマリー・マーチバンクが自転車に乗った最初の女性ということになります。　が、”なにを言うだ、普及しなかったクランク式のペダルなんて話になんねえだ！量産して販売してこそ自転車の始まりだなや！”という声もあり、この説の場合は、仏蘭西は巴里のシテ・ゴドー・ド。モロワで馬車造りをしていたピエール・ミショー（Pierre Michaux）のペダル付き自転車をもって自転車の誕生と主張するようです。　事の起こりは、1861年に木馬型の自転車（ヴェロシフェール）の前輪の修理を依頼されたときに、ピエールたちが修理が終わった自転車を試し乗りしてみて”地面を蹴った後に両脚を持ち上げておく必要があるので疲れる”のがなんとかならないか？と思ったことに端を発するようです。　脚が付かれることの解決策としては、”前輪の両脇に小さな足を載せる足支えを付けておけばいいんじゃないかということになったのですが、更にもう少し踏み込んで”前輪の中心にクランク付きの軸を通して石臼をひくときの要領で足で車輪を回せるようにすれば便利なんじゃないか？”と話が進んだとされています。　何はともあれ、試作品の自転車が２台製造され、史上初の自転車製造会社”ラ・コンパミー・パリジェンヌ・アンシェンヌ・メゾン・ミショー・エ・シー”という思わず殴り殺したくなるくらい長い名前の会社が立ち上げられ、量産が始まったのは1862年の１年間で１４２台が売れたとされています。　以後、1870年に英国のサミュイエル・ウエッブ・トマスが特許を取得した（御婦人向けとされた）横座り式自転車などを改良し、コペントリー・マシニスト社のジェームズ・スターリー（ James Starley、1831～1881）とウイリアム・ヒルマンがオーディナリ型（ ordinary ）自転車に到達しています。た。　オーディナリ型自転車というのは前輪の直径が後輪の３倍ある、日本人の感覚だと達磨が横になったような形状で、それだけ前輪が大きくなると比例してサドルの位地も高くなり、転倒した際などにとても危険な乗り物となったのですが、当時のジェントルマンたちにはそのスリルも含めて熱狂的な支持を受けて一時代を築くことになります。　これを書いている時点で主流の、チェーンを使った後輪駆動方式の自転車の基本型でセーフティ型と呼ばれるタイプを1879年に考案したのは、英国のローソン（ Harry J.Lawson ）で、サドルの位置が低い安全性を優先した自転車がまずは御婦人用として隆盛することになるのですが、特許の取得は1884年のことになります。　もっとも、1885年には、オーディナリ型を考案したJ. スターリーの甥にあたる J. K. スターリーがセーフティ型自転車に、前・後輪の大きさを同じに揃え、ダイヤモンド型のフレーム構造を採用する改良を加えて安全性と性能を著しく向上させていて、この段階でタイヤ以外はほぼこれを書いている時点で主流の自転車が完成したと書いていいのではないかと。　逆に言えば、自転車の車輪部分は鉄輪のままだったということですが、1888年に自転車用の空気入りタイヤが英国の北アイルランドで獣医をやっていた J. B. ダンロップが息子のジョニーのために発明され、１年後にニューマティック・タイヤ社が創設されて量産体制が整備されていくことになります。　空気入りタイヤが、鉄輪と比較して、地面からの衝撃をほぼ完璧に吸収すると書くとオーバーですが、かなり衝撃を緩和することに成功したことで自転車は一気に実用性の高い乗り物として普及が加速することになるのですが、日本に始めて自転車が持ち込まれたのは江戸時代末期頃とされているのですが今のところ詳細は不明です。　明治時代初期にはオーディナリ型が”だるま車”と呼ばれて乗り回す人達ががいたことが記録されていますが、国産自転車の１号は、セーフティ型で1890年に宮田栄之助が製作したものが本邦初とされています。　自転車が渡来してから国産化されるまでの時間が短かったのは、最新式の高性能ライフル銃が輸入され失業状態に追い込まれた火縄銃を製造していた鉄砲鍛冶など、高度な鉄の加工技術を持つ職人が大量に存在したことが背景としてあったという説があり、その後、日本における自転車の製造は日本の輸出商品の一翼を担う産業へと成長していくことになります。　ところで、日本に自転車を持ち込んだ外国人達が何をやっていたのか？というと、日頃の足として使うのはもちろんとして、競馬と同じように横浜の外国人居留地の内部でレースをしたりしていたようで、それをもって日本の競輪の始まりとするという説もあります。　横浜の外国人居留地の中で行われていたレースの中でも（記録に残っている中で）、ある程度公式な自転車レースとなると明治28（1895）年のアメリカ独立記念レースになるようですが、日本人の手による最初の自転車レースということになると、明治30（1897）年に東京で行われたレースということになっていて、上野の不忍池を周回するコースで、非公式に賭博の対象となっていたことでも知られています。　まずまずの人気に気をよくしたのか、”大日本双輪倶楽部”という同好会が結成され、この倶楽部が主催する形で毎年、春と秋の２回、不忍池周回コースでレースが行われるようになるのですが、明治34（1901）年にはエンジンを搭載した自動自転車が登場していて、これをもってオートレースでありモーターレースの始まりとする説もあります。　独逸のゴットリープ・ダイムラーがオートバイ（一気筒４サイクル700回転のエンジン、フライホイール内蔵、機械作動排気バルブ　・・・）の特許を取ったのが1885年のことですから、当時の交通や通信の事情から考えると、異様な早さで日本にオートバイが輸入されていて、一般にも既に人気の出ていた自転車のレースに参加する形でお披露目されたとも解釈できますが、明治の頃の先人達の新しもの好きというか先取り精神には驚異的なものがあるのではないかと。　もっとも不忍池周回レースなどは民間有志が行った法律が未整備の時代のレースで、公式の自転車レースということになると、昭和23（1948）年に自転車競技法が公布されてからの話になるのですが、自転車競技法によって都道府県および特定の市町村が主催する公式レースは公認ギャンブルとなり、競馬と同様の車券（勝馬ならぬ”勝車投票券”）を発売して勝車的中者に車券売上金の75％に相当する金額を払い戻すことになります。　同法に基づいて、1948年10月に九州の小倉（現・北九州市）の小倉競輪場で行われたものが最初の公式自転車レースですが、大義名分としては戦後日本の地方財政と経済全般の活性化、および自転車産業の振興を目的にして許可されたことになっていますが、４日間の開催期間中に２万人以上の観客が来場し、車券を買う形で楽しんだ人は５万人以上という事前の予想を上回る成功となったようです。　予想外の成功を収めたということは、興行の収入も予想外の金額に達したということで、当然のように各地方自治体がこぞって競輪開催に参入するようになっていったのですが、競輪の場合、動力源が選手の筋力だけに確実に勝つことは難しくても確実に勝たないことは容易という特徴があり、競艇で言えば水面の状況や水の流れといった偶発的にコースが変化する要素に乏しく、競馬のように馬の体調やその日の気分など変動要因も無く、他の公営ギャンブルよりも八百長の噂がつきまといやすいといえばつきまといやすいところがあり世論に配慮して自粛が広まった時期もあります。　なお、競輪における日本初の八百長と公式に認められたレースは昭和24（1949）年４月に大阪の住之江競輪場で行われた第６レースで、そのレースで本命と目されていた選手が他の選手が第１コーナーを回る頃になってもまだスタート地点でペダルをこぎ出さないでいたという異様な展開だったそうで、当然、その選手は敗北したわけですが、観客というか車券を購入した客の大半が激怒したのも当然の成り行きで、ハズレ車券を払い戻すということでなんとか事態は収束したようです。　自転車競技という呼称は自転車を用いて行われるスポーツの総称ですが、なぜか日本では一般に”競輪を除くアマチュア・スポーツとしての自転車競走だけを意味するというか前提にしていることが多く、”競輪＝プロの競技”であって”自転車競技＝アマチュア”とは実力が違いすぎると考える人が多いのかもしれません。　基本的に自転車競技はピスト（トラック競技）とルート（ロードレース）に大別されているのですが、プロの自転車競技といえば、世界で最も有名なプロの自転車ロードレースであるツール・ド・フランスが始まったのが1903年のことで、歴史的には不忍池周回自転車レースの方が古い話になるのですが（笑）、年１回開催されるツールドフランスでは、仏蘭西全土を約３週間かけて3500km ほど走破するだけに比較するだけ野暮といえば野暮なのかもしれません。(2013/03/23)

2013.04.08

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一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第６７８話　「ゲートボール」

一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第６７８話　「ゲートボール」　ドッジボールが野球の要素も取り入れた国産スポーツではないかという話は以前にしたことがありますが、ゲートボールもまた国産スポーツだったりします。　もっとも、ゲートボールの方は仏蘭西で始まった”クロッケー”が元ネタになっているスポーツで、簡略版のクロッケーと言っていいと（私は）思いますが、日本以外の国にもじわじわと浸透中で世界ゲートボール選手権大会も開催され、2010年の第10回大会には13ヶ国（日本、中国、韓国、台湾、香港、マカオ、アメリカ、ブラジル、パラグアイ、ロシア、オーストラリア、インドネシア、フィリピン）からチームが参加していて、世界の３０ヶ国以上の国々に愛好者が広まっているようです。　そもそもの、クロッケーがどのようなものか？といえば、幾つかの”ｎ”の字状の鉄門（フープ）をフィールドに設けておいて、専用の木球をマレーという専用の木づちで打って、一定の順序でフープを通過させ、早く最初のフープ（出発柱）に戻って（というか球をぶつけるか通過させ）ゴールすると勝ちというのが大雑把なルールですが、１打で１門を通過させれば続けてもう１打、１打で２門を通過させればさらに２打追加して木球を打つことができるといった細かなルールもあります。　仏蘭西で始まった野外球技とされているのですが、１９世紀の中頃から英国でも盛んに行われるようになり、亜米利加でも愛好者が多いというか、スヌーピーがクロッケーの（私に言わせれば）名人だったりするのですが、個人戦と団体戦があります。　敢えて言えば、クロッケーが”碁”で、ゲートボールが”オセロ”と例えることもできるのですが、敗戦後の混乱期だった1947年に、鈴木栄治（後に”和伸”と改名）が北海道芽室町で子供向けのスポーツとしてクロッケーから考案したゲームということになります　・・・　が、物資も食糧も不足していた時代ということもあってか、肝心の子供のウケは今一つだったようです。　転機となったのは、戦後の復興も一段落し国際社会への復帰の一里塚ともなった東京オリンピック（1964）だったようで、東京オリンピックを機会に文部省（現・文部科学省）が”国民皆スポーツ”を提唱して、年齢や性別を問わず気軽にスポーツを楽しむ生活が提唱され、この頃から全国各地で本格的にゲートボールが普及するようになり、ゲートボール場も整備されされるようになったようす。　しかしながら、創始者の鈴木がゲートボールを考案した本来の目的が子供へ健全な遊びを提供して青少年の育成に寄与することであったとすれば、高度経済成長期が終わったあたりから加速していった高齢者へのゲートボールの普及というのは、当初に想定していなかったことも惹起していくことになったようです。　その辺り、適度な運動と頭を使うゲームでありながら、過度な肉体的負担は伴わず身体的な接触プレーの類ない安全性の高さもあって、高齢者の健康を維持することに（も）適したスポーツとして脚光を浴び行政機関も、基本的な情報の提供や一定の条件を満たしていれば金銭的な助成をする地域が多くなっていったというのが表の歴史とでもいったことになります。　行政機関からの推奨や助成もあって1970年代の中後半から短期間で全国的に急速に普及したものの、それは同時に、ゲートボールの全国統一組織が確立されることが無いまま各地にゲートボールの団体が乱立する事態を招くことにもなり、各団体でそれぞれローカルルールが制定されることも珍しく無かったことから、ゲートボール大会の規模が大きくなって地域というか団体を越えた交流大会などが行われるようになると、ルール面などで混乱が生じることが珍しく無くなっていきます。　もちろん、そういった混乱は単純にゲートボールを愛好している人達にとっては望ましいことではありませんから、全国統一ルールや全国を統括する組織を求める声が大きくなり、日本体育協会や日本レクリエーション協会などに所属する学識経験者で全国統一組織準備委員会が設置され、1984年に全国を統括する団体として”日本ゲートボール連合”が設立されて47都道府県が加盟し、統一ルールが制定されることになります。　発祥国の国内でさえもめたわけですから海外で普及していく過程でも何かと混乱が生じていたようで、国外の対応を前提に、1985年には”世界ゲートボール連合（日本・中国・韓国・ブラジル・ハワイ・チャイニーズタイペイ）”が設立されて国際的な統一ルールが制定されています。　クロッケーが元になっているだけに、クロッケーをやったことがある人達にとってはゲートボールは親和性の高い競技になるそうですが、ゲートボールの場合は、基本的に長方形のコート内で各チーム５人ずつの２チームに分かれて行う対抗戦で、各自の球をＴ字状のスティックで打って３つのゲートを通過させ、コート中央のゴールポールに当てる（これが”上がる”）ことができた人数か、ゲートを通過した数を競うことになり、愛好者に高齢者が多いこともあって競技時間は３０分とされ、美しく言えばチームワークや駆引き、露骨に言えば、相手の球を妨害することをルールで公認したが故に”いじめ問題”を高齢者集団でも発生させることになってしまいました。　これを書いている２１世紀の時点でさえ、まだ学校の体育会系の部活動で体罰を肯定するというか公認しない方がおかしいと主張する人達が一定数いるわけですから、ゲートボールが全国規模で広まり、対抗戦が盛んになればなるほど、当初の牧歌的な高齢者の遊技から勝敗を競う競技への変質がはじまると、集団競技ならではの陰湿というか陰惨な”いじめ”が問題になりはじめます。　さまざまな社会経験も豊富で、そもそも体力的にも精神的にも下り坂に入っている高齢者と”いじめ”というのは今一つ結び付かない気もしますが、精神的に弱くなって我慢がきかなくなる人が珍しく無いのも高齢者の男性には珍しく無い傾向とされ、若い頃から、野球、スキー、ゴルフ、・・・、テニス、卓球といった多彩なスポーツを楽しんだり娯楽を教授してきた世代が高齢化してくると、次第に体育会系の気風というか団体内での序列化を嫌う人も増加するようになり、”ゲートボール”は次第に競技人口を減らしていくことになります。　というか、明治や大正生まれの世代と違って、若い頃からテニスをやっていたり、サーフィンをやっていた人が多くなる昭和一桁も中頃以降が高齢化してくると、定年を向かえてから新しくゲートボールをするのではなく、若い頃からやっていたスポーツを継続したり、若い頃にやりたくても金銭面や時間の都合でできなかったスポーツや、楽器の演奏、各種の芸事に挑む人が多くなり、老後のレジャーが多様化していった結果として、ゲートボールへの一極集中が緩和していったわけです。　この世代別のスポーツの好みという点では、定年を向かえたり子育てなどが一段落して資金面で余裕が出て閑になると、例えば若い頃に登山がブームだったとか学生時代にワンダーフォーゲル部だったという人が珍しくない世代だと登山やトレッキングを行う人が増加し山で遭難する人の年齢が上昇したりするのですが、同じようにボーリングのブームを経験していればボーリング、私をスキーに連れてってに直撃されたような世代だとスキーやスノーボードに再びといった具合に、青春回帰の傾向があることが知られています。　そして、サラリーマン業界で接待ゴルフという言葉が誕生したことでもお解りかと思いますが、打ちっ放し程度を含めてゴルフを経験した人が増加してくると、同じ球を打つなら自分の好きにやれるゴルフの方がよくね？という人が増加するようになり、日本人特有の競技とは無関係な序列化の強要や、無く勝ち負けにだけこだわる人達の存在などを嫌ってか、最初からゲートボールでは無く、お手軽な”打ちっ放し”や”グランドゴルフ”などを選択する人が増加することにもなっていったようです。　実際、別にゲートボールのプロ選手でもなければゲートボールで飯を食っているわけでもないのに、”負けたのは、おまえのせいだ！”と延々と言われ続けたり、ささいなことでハブにされたり、そういった状況を改善すべく仲裁しようとしてトラブルに巻き込まれた結果、ノイローゼや痴呆症につながるケースも知られていて、ゲートボールの負の部分と言えるのではないかと　・・・・・・　もっとも、それは日本の体育会系の組織には大なり小なり共通して見られる現象であって、特にゲートボールに限った話ではないと指摘する人も珍しくありませんが。　また、高齢者が集団で定期的に集まると、やはり色恋沙汰も発生し、痴情のもつれから様々な事件になることも珍しく無くなっていったようで、相手の方が”茶飲み友達の一人”程度の認識でも勝手に入れあげて地域を巻き込む大規模なトラブルになったり、三角関係や多角関係の末に刃傷沙汰に及んだ事例も複数発生し、そんな親と同居している子供の世代から”そんなことをやっている閑と体力があるのなら、野菜でも作って畑の草でも抜いてろ！”という声が上がるようになったというか、耳にすることが多くなっていったという側面もあります。　これを書いている時点で近いところだと、1998年に長崎市で、”ゲートボールの試合でプレーの順番をとばされた”ことに腹をたてた８９歳の男性が８７歳の男性を刺傷した事件や、1999年に鹿児島県で、”ゲートボールの腕前をなじられ、仲間はずれにされた”ことなどで腹を立てた７０歳の男性がゲートボール仲間だった６９歳の女性を包丁で刺し殺した事件が知られていますが、氷山の一角に過ぎなかったりします。　かくして、”ゲートボールというのは何かと関係者がもめて、話がこじれると殺人事件になることさえある”といったイメージが広がったというかイメージダウンもあって、個人でも夫婦でも気のあった不特定の仲間とでも、参加人数にさほど左右されずに手軽に楽しめ、失敗も成功も自分の責任で赤の他人にとやかく言われることもない競技を選択する高齢者が珍しく無くなっていったのでした。　また、若い頃から円高やパック旅行の恩恵で海外旅行を楽しむようになった世代が高齢化してくると、海外旅行も兼ねて海外の大会へ参加する人がいるマラソンやハーフマラソンのような競技や、やはり海外旅行を兼ねたダイビングやスキーなどへの高齢者の参加も増加していったのは御存知の通り。　そこに、お手軽な携帯電話（携帯情報端末）や電子メールが高齢者にも普及する情報革命が加わると、従来のような地域で組織化されたスポーツに参加するのではなく、スポーツや芸事などで地域を越えて仲間というか同好の士が形成されるようにもなり、定年年齢後のスポーツ事情がこの四半世紀の間に激変したと書いてもいいのではないかと私は思います。　参考ＵＲＬ：世界ゲートボール連合：http://www.gateball.or.jp/jguweb/wgu/index.html (2013/03/22)

2013.04.06

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一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第６７７話　「ドッチはドッジ」

一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第６７７話　「ドッチはドッジ」　”戦勇。（テレビ東京）”の１０話目において、”ドッチボール”か”ドッジボール”かという呼称の違いに地域差があるといった話がチラッと出てくるのですが、正解は”ドッジボール”で”ドッチボール”は方言ネタになります。　外国語の発音なんだから幅があっってどっちでも正解なんじゃないの？といったまともな反応をする人は怪しい話のネタ振りの傾向を理解できていない人で、多くの場合、思わせぶりな書き方をしてるときは意外なことに根拠があることは今更言うようなことでもありますまい（笑）。　何故に、”ドッジボール”が正解なのか？と言うと、そもそも”ドッジボール”が国産スポーツで公文書に公式名称が記載されているからです（ホント）。　もともとは阿蘭陀かどっかのスポーツやゲームの類じゃないんですか？と言う声も聞こえてくるような気がしますが、”あんた、それならダッチボールだしょ？”と私は言いたい（笑）。　事の起こりというか原型になったスポーツは、明治の終わり頃（明治42（1909）年頃）に可児徳（かにいさお）と坪井玄道（つぼいかねみち）によって”円形デッドボール”という怪しげな名称のスポーツが紹介されたあたりにまで遡るのですが、英国起源説などがあるものの、少なくともこれを書いている時点の英語圏では学校教育の場を含めてほとんど知られておらず、学外の当時の子供の遊びにも該当する事例が（今のところ）見あたらないだけに、起源は不明と書いておきます。　ちなみに、明治37（1904）年10月に文部省が８名の体操遊戯取調委員を任命していて、委員長が澤柳政太郎、委員として、日本の女子体育の歴史には必ず登場する”井口阿くり”、が異色といえば異色ですが、高島平三郎、川瀬元九郎、波多野貞之助、三島通良、可児徳、坪井玄道が他には任命されています。　なぜ1904年だったのかといえば、1904年が日露戦争開戦の年で、それ以前から露西亜との戦争準備は進められていたことと無縁では無く、大規模な戦争となると兵の低年齢化と短期間で即戦力になる人材を育成することが求められることにもなり、それまではどちらかと言えば文部省側が陸海軍へ体操や教練などの指導を依頼していたのが、日露戦争開戦が現実味を帯びるほど陸海軍が文部省に対し学生に対して実用的というか実際に効果が高い教練を行うように要求する頻度が上昇していった時代背景があります。　ここで、スウェーデン体操に触れておく必要が生じるのですが、スウェーデン体操というのは19世紀初頭にスウェーデンの P. H. リング（ PerHenrik Ling、1776～1839 ）によって創案された４本の柱で体操の体系を整理し新しく構築していったもので、４本柱というのは、姿勢を矯正するための”医療体操”、銃剣術やフェンシングといった武器術を前提とした”軍隊体操”、徒手体操を主体とする”教育体操”、動きの美しさ自由さを表現する”芸術体操”になります、　結局、リングの生前には完成を見なかったのですが、没後も研究が進み19世紀半ばになると、リングの提唱した医療・軍隊・教育・芸術体操のすべてを包括する”健康体操”という概念と分野が確立して世界中に広まっていくのですが、日本でも1902年頃から、川瀬元九郎や井口阿くり、などによって学校教育の場などから実践指導が行われるようになり、1913年に制定された”学校体操教授要目”における基本的な体操や運動教育などもスウェーデン体操の原則に沿ったものになっているのですが、第二次大戦の敗戦（1945）までは継承されることになりますし、昭和初期のラジオ体操の考案にもスウェーデン体操の影響があったことが知られています。　日露戦争開戦が切迫していた当時の学校の体育といえば、明治の初めの頃の”歩兵教練”に多少の手を加え民間人向けにアレンジした程度の”兵式体操”くらいが体育の授業における主流の体操でしたが、先進国では教育の現場などを中心にスウェーデン体操など各種の近代的な体操が考案され普及しはじめていたことから、既に時代遅れになっているといった声が多くなっていったわけです。　学校教育の面で欧米先進国に遅れをとって人材育成が後手に回れば、その人材が社会を支えるようになるわけですから、経済的にも軍事的にも後手に回ることに直結しかねないこともあって、文部省は東京女子高等師範学校の永井道明を明治38（1905）年11月から３年余の米欧留学へ派遣して、体育教育を含む先進国の最新の教育関連の情報を収集することにしたようです。　それはそれとして、日露戦争以前の体育関連の知識の整理と集大成として、1906年7月に、井口阿くり、可児徳、、坪井玄道川瀬元九郎、高島平三郎の共著で”体育之理論及実際（國光社）”が出版され、主目的は現場の体育教師のテキスト的な性格が強かったようですが、前年に取り纏めた体操遊戯調査委員報告の内容が委員達の手によって図解付きで詳説されたと解釈することもできるのかなと。　これを書いている時点だと、井口阿くりはスウェーデン体操の指導者として知られていますが、（彼女が29歳だった）明治32（1899）年に、文部省から教育学研究のため満３年間の亜米利加留学を命じられた才女で、日本の女子体育教育の先駆者の一人ということになります。　ちなみに、阿くりが、”体育之理論及実際”において、女子学生が体育を行うに際して適した服装として、上衣をセーラー（服）式、下衣を（既に亜米利加で普及していた）膝下までのブルマースを推奨したのが、公教育におけるブルマー文化の始まりというのは定説です。　これまたちなみに、阿くりは”体育之理論及実際”に続いて、単独でも”各個演習教程（元元堂書房）”という詳説本を出版していて、こちらは第４版まで重版されるベストセラーになったのですが、明治42（1909）年2月に永井道明が海外留学から帰国し高等師範学校・女子高等師範学校の教授に就任すると風向きが変わり、それ以前から何かと目立っていたため誹謗中傷されることも多かった阿くりですが、彼女が留学先の亜米利加で学習したスウェーデン体操が亜米利加でアレンジされたものであったことから、スウェーデンでスウェーデン体操を学び最新の情報を収集してきた永井道明こそが正統派であり彼の主張こそが正しいとする理屈で急速に排斥されていくことになります。　証拠があるわけでは無く邪推すればという話になりますが、当時は２１世紀の日本よりも顕著な男尊女卑の時代でしたし、阿くりの主張や実践の実績を検証して何か問題があったというよりも、阿くりが目立っていることが前々から気にくわなかった男性が教育畑にも多かったところに、永井道明が最新の教育を受け情報を収集して帰国したのだから女子の体育教育の主導権を男性が握るためにも阿くり達一派は用済みとして潰してしまえと考えた男性が少なからずいたということでしょうなあ　・・・　。　実際、何か辞職しなければならないような致命的な失敗をしたわけでもないのに、阿くりは1911年に女高師を退職するところまで追い込まれ、それ以降、流転というか波乱の人生を歩むことになりますし、阿くりの後輩の女性教師達もまた受難と呼びたくなるような環境の変化に晒されています。　何はともあれ、２１世紀の日本で主流の、長方形のコートを真ん中で敵と味方に分け、さらにその外側に敵を配置するスタイルは、官費で最新の欧米の教育を学習し情報を収集して帰国したということで東京女子高等師範学校の教授となった永井道明が、既に学生達の間で人気が出ていた”円形デッドボール”を独逸の室内球技を参考にしてアレンジした”方形デッドボール”を考案して以降の話になるのですが、この段階でもキャッチすればセーフといったルールでは無く、ひたすらかわすだけで、コート内でのキャッチは反則技扱いだったようです。　円形デッドボールという名称に関しては、大正２（1913）年の文部省（当時）の”学校体操教授要目”や東京府体育委員会が公布した”学校体操教授要項”に登場したというか紹介されたあたりが公文書上の公式名称の始まりというのが定説ですが、もちろん、円形コートと四角いコートではルールが違っていて、円形コートの場合は円の内側と外側に分かれ、外側にいる人達は内側にいる人を狙ってボールをぶつけ、内側にいる人はそのボールをキャッチすることが認められずひたすら身をかわして逃げ回るだけという、いささかＳＭチックなルールになっています。　前述したように、”方形デッドボール”もキャッチは禁止技だったのですが、ルールが”キャッチすればセーフ”になると改正されたのは、東京高等師範学校の大谷武一が”ドッジボール”と大正15（1926）年に改称し公式ルールも公表されたときの話になり、その後はほとんどルールが変更されないまま２１世紀に至っています。　なぜ大正15年だったのか？と考えると、明治の頃から始まっていた日本における（草）野球の普及や大正14（1925）年に東京六大学野球連盟が結成されて、年に春と秋の２回の大学対抗戦が行われるようになった東京六大学野球など野球人気が高まっていた時代背景も加味して考えると、野球用語にもある”デッドボール”から”ドッジボール”への改名が大正15年になった理由が腑に落ちますし、キャッチすればセーフになるとルールが大変更されたことに関しても、コートの内側を内野、外側を外野と呼んでいたあたりにも、野球人気の影響があったと考えると腑に落ちるところがあります。　では、ドッジボールのドッジって何？と聞かれれば”dodge”という英語が元ネタで、”よける”とか”身をかわす”といった意味ですが、野球用語として普及していないことは言うまでもありますまい。　日本の野球の歴史は、明治６（1873）年に大学南校（東京開成学校→東京大学→東京帝国大学）の生徒が米国人教師 H. ウィルソンらに教えられて行ったのが最初とされ、1878年に平岡煕(ひろし)によって日本最初の野球チーム”新橋倶楽部（愛称”アスレチックス”）”が誕生しているのですが、後に、俳人の正岡子規（1867～1902）が明治22（1889）年に喀血してやめるまで草野球に熱中していたことは比較的知られた話になります。　結核の悪化で草野球を断念した後に、子規は本名にちなんで”野球（のぼーる）”という雅号も用いていますが、これは中馬庚が”ベースボール”を”野球”と翻訳して定着していった1890年より４年前の話になるものの、”野球”と翻訳したのは中馬庚の功績ということで見解が一致しているようです。　ちなみに、”打者”、”走者”、”四球”、”直球”、”飛球”、”短遮（中馬庚は”遊撃手”と訳し、後にこちらが定着した）”といった野球用語は子規の翻訳が定着したとされています　・・・　いずれにしても、日露戦争以前に日本の大学南校という知的エリート達から野球が広まったものの、若者を中心に在野でも愛好者が増加し一般の観客も増加していったわけです。(2013/03/21)

2013.04.05

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一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第６７２話　「学内階級制度」

一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第６７２話　「学内階級制度」　日本の学校というのは”国家有意の人材を育成する”ことを目的に創設されたというか、欧米列強の亜細亜植民地化が現実のものとなり、当時の亜細亜でも最大の人口と経済力を誇り、自ら中華であると自負していた清朝と英国との間でアヘン戦争が生じたときに少なくとも清朝側が軍事的に英国軍に勝てなかった現実を前にした当時の日本人指導者層が、反植民地化対策として欧米列強に対抗できる人材育成に臨んだ経緯があったわけです。　英吉利という民主主義を標榜する最先端国家が麻薬を国策として売りつけて清朝の国内に中毒患者を量産した結果、英国の貿易が黒字に転換し、売りつけられた国が国内の麻薬販売を取り締まろうとすると軍隊を派遣して麻薬を売りつける権利を維持するという恥知らずな政策を国会の議決で承認して清朝と戦争に突入し、清朝側が敗北した結果として英国の国策としての阿片販売は継続され、清朝の領土は上海を中心に欧米列強に蚕食されていくことになったわけです。　結局、清朝は英国に侵略された領土を回復することができないまま崩壊し、混乱の内に中華民国（1912）が後を継ぐ形になるのですが、興味深いのは、”日本に侵略された！侵略された！”と主張し謝罪を要求しつづける同じ中国共産党が、”英国に侵略された！侵略された！”と同じトーンで主張せず謝罪も賠償も要求したことが無く、そもそも、それが日本の覇権拡大の為だったとしても、英国を印度まで後退させ仏蘭西をインドシナ半島から撤退させたのが清朝でも中華民国でも無く、中華民国を継承した中国国民政府（1925～1948）の国民党軍でもなければ中国共産党軍でも無く、日本軍だったという現実があるわけです。　ざっくりとアヘン戦争の後の大陸の歴史を見ていくと、1911年の辛亥(しんがい)革命の結果、清朝が起用した袁世凱(えんせいがい、1859～1916)が、逆に1912年に宣統帝”溥儀(ふぎ、1906～1967)”を退位へ追い込んで清朝が滅亡して中華民国が成立し、袁世凱が孫文（1866～1925）に代わって中華民国の臨時大総統に就任します。　政権を奪取した袁世凱に不満を抱く国民党側の勢力が、1913年に九江、南京などで武装蜂起（いわゆる”第２革命”）したものの鎮圧され、首謀者である孫文らは”日本に亡命”し、袁が正式に大総統に就任したあたりが２幕目になります。　亡命後の孫文は中華革命党を組織（1919年に中国国民党と改称）したものの、この頃になると中国大陸は複数の軍閥に分かれて混戦状態となっていて、清朝のような統一王朝ないし統一政権は存在しなくなっていますから、日本の首脳部としては誰を交渉相手にすればいいのか？で後々意見が分かれるようになっていきます。　孫文の変節は、1924年に国民党を改組して、いわゆる”連ソ・容共・農工扶助”の政策を掲げるようになったことで明確になったのですが、孫文が没した後の推移を見る限り、”親ソ容共”などは孫文の夫人となった宋慶齢（そうけいれい。1893～1981、1914に東京で結婚。）の嗜好するところで、天皇を国の頂点に据えていた当時の日本がロマノフ王朝の王族を文字通り女子供まで密殺した上で成立したソ連と主義主張を同じとし価値観も共有する勢力にどういった態度に出るかは分かりそうなものではなかろうか？　そもそも論で言えば、中華民国の時代に入ってから急成長した財閥として知られる四大家族（蒋介石、宋子文、孔祥煕、陳立夫、果夫）に属する、大財閥の令嬢である宋慶齢が社会主義や共産主義を主張する異様さというか、日中戦争から戦後にかけ巨大な富を蓄積した実家の恩恵に浴した、当時の中国の状況を考えるとブルジョア以外の何者でもない、14歳でアメリカに留学しジョージア州のウェスレイアン大学で文学学士号を取得したお嬢様なわけです。　それでいて、中華人民共和国成立後は1975年まで国家副主席など多くの要職を歴任し、文化大革命（1965～1976）の当時、”宋家は資産階級である”というもっともな指摘をされると、毛沢東による”文革保護対象名簿の第一位”として保護され、中華人民共和国名誉主席の称号を1981年に贈られているあたりで、”賢いっちゃ賢いんだろうけど、なんだかな～”と私ごとき底辺の愚民は考え込むのでした。　文化大革命の実態が、大躍進政策の大失敗で失脚しかかっていた毛沢東による巻き返しの大規模な権力闘争（内部クーデターというか内戦）で、文革に伴う犠牲者数総数は政府の公式報告でさえ”死者40万人、被害者１億人”、内外の研究者による調査だと数百万人から1000万人以上と諸説あります。　ちなみに、清朝の最後の皇帝となった宣統帝(溥儀）は、1932年に満州国執政、1934年に満州国皇帝となったものの、第二次大戦終結直前に満州国側が宣戦布告していたわけでもないソ連（当時）が満州国に軍事侵攻したことで、ソ連に抑留された後、1950年に中国で（なぜか）戦犯として裁かれるも、1959年に特赦された後は一市民として余生を過ごしています。　話をアヘン戦争に戻すと、清国が敗れたことは当時の日本にもほぼリアルタイムで伝わり、詳細な状況を把握するために上海へ密航した長州藩士達の話は比較的知られていますが、当時の日本の知識人の感覚としては、あれほど強大な清国が軍事的に敗退したことの衝撃はかなり大きかったのではなかろうか？　逆に言えば、清国でさえ、たかが英国の現地派遣軍程度が相手でも軍事的に勝てない現実を前に、外国人を軍事的手段を含めて排斥し鎖国を継続する”攘夷”が”絵に描いた餅”であると嫌でも認めるしか無かったのではないかとも考えられます。　しかしながら、だからといって手をこまねいていれば、日本も早晩、欧米列強に占領されたり割譲され、英国が支配している上海のような状況になりかねない以上、なんらかの対抗策を急ぎ講じる必要があったわけで、欧米列強と実際に戦闘した地方の藩ほど”攘夷”のリアリティの無さを早くから認識し、最前線から遠く軍事力の差が実感できず植民地化されることにリアリティに欠いた藩や人ほど情報や知識としては知ってはいながら迷走し、海を埋め立てて役に立たない”お台場”を造営し、そこに大砲を据えて自力で自由に移動できる船舶を迎撃しようとして巨額の経費と時間を浪費した事例が無駄な対応の典型事例になります。　結局、当時の日本の国力では、いずれ欧米列強に嫌でも”開国”させられることは不可避だったわけですが、そういった現実が認識できず、そもそも江戸時代に入ってから始まった慣習に過ぎない鎖国の継続に固執する合理的な根拠が”徳川氏が海外貿易の利益を独占する事”くらいしか無いというあたりにさえ思い至らない人達ほど”鎖国の堅持（＝現状維持）”や”攘夷”を主張して国内改革の抵抗勢力であり続けたとも言えます。　が、日本の支配者階層が支配者階層であり続けるためには、海外勢力の軍事力に対抗できるだけの軍事力を自らも持つことが目先の急務であり、意外かも知れませんが、薩摩、長州、徳川といった幕末動乱の当事者達に関しては、さほど時間差もなく現状に関する見解が一致していて、打開するための方法の違いで揉めていただけとも言えます。　つまり、”攘夷”は現状の軍事力では不可能で”開国”は時間の問題、ただし、下手に開国すれば清朝の二の舞で日本全体が上海化する可能性さえあるといった認識を共有できてから後は、そういった認識が持てない、攘夷が可能で開国せずに鎖国が継続でき従来と同じ明日がやってくるという固定概念から抜け出せない勢力をいかにして最小限の犠牲で排斥するかという話になっていったのが幕末の現実だったわけです。　分かりやすい上層部の現状認識は、”国内で敵味方に分かれて内戦状態になっても、欧米列強を利するばかりで我が方に利は無い”というもので、その辺りの現状認識ができていた藩やできていなくても大勢に迎合できた藩は戊辰戦争の戦渦を免れ、何が起きているのか良く分からないが武士の面子でここは一戦も辞さずとした藩ほど壊滅的な被害を受けることになっていったわけです。　早い話、急速に行う必要のある大改革への抵抗勢力をばっさりと武力も使って短期間で削ったのが明治維新の前半部分ということで、事前の意思統一が各上層部ではできていたからこそ、旧幕臣であっても有能な人材は（それが現場要員であったとしても）明治政府に再就職できたり恩赦などの対象になったり華族に列せられたわけで、既に一定水準の教育を受けていた人材を確保できたからこそ極めて短期間で欧米の文化を吸収できたのですが、庶民向けに”富国強兵、殖産興業”という分かりやすいスローガンが唱えられたことは御存知の通り。　短期間での国家近代化という目標を達成するためにも、国家有意の人材育成が急がれたわけですが、その為に公教育の現場で徹底されたのが実力主義で、ざっくり書けば”順位（得点）が総て”という制度で、席次という言葉が文字通り、テストの得点の高いものから座席を並ばせることに由来しているという話は以前にしたことがあります。　戦中でさえ続いた”皇族であっても合格に得点が足りなければ入学させない”という鉄則を撤廃したがる理由が教育者側にあるとすれば、個人的な利益の獲得以外は考えにくく、内申書などで下駄を履かせて合格に必要最低限なペーパーテストの点さえ取れていない馬鹿まで進学させることに何の必要性があるのか？　・・・　以前にも書きましたが、内申書を廃止して、籤（くじ）を引いて”運”得点をテストの点に加算した合否判定の方がまだマシでしょう。　ここのところ、テストの点とはさほど関係のない校内階級制（スクールヒエラルヒー）の形成話で盛り上がることがあるのですが、いわゆる１軍、２軍、３軍にいつの間にか生徒が階層化され、何かと目立って華やかな１軍は教職員の覚えが宜しく、地味で人付き合いが苦手なな３軍は当事者に欠陥ないし問題があると教職員が考えていて、もろに、教職員の対応に差が出ている（と、少なくとも生徒の側が感じている）といった話でございます。　テストの点以外の人間性も評価しろというのなら、学校以外の場所へ行ってボランティアでも何でもやって”たいへんよくできました”のスタンプでも集めてスタンプ帳を就職の時にでも提示すればいいだけのことで、テストの点以外を評価して恣意的に成績を操作しようとするから業務量が増え、保護者にも客観的な基準を示して説明できなくなっているだけで、日本の公教育は国家存亡を前提としたそもそもの明治の原点に戻って建て直す必要があると思います。　ちなみに、文化大革命の余波は日本の教育業界にも波及していて、伝統の断絶と既存教育の破壊活動が日本でも行われるようになった（いわゆる”文革の輸出と輸入”）のですが、文化大革命によって戦前のインテリ層が壊滅し、それまでの中国人のバックボーンだった儒教が全否定され、長年の伝統産業まで崩壊させられた末が、現在の”あの”大陸の中国人として結実しているが故に、ああいった価値観の人材を量産したいの？と、ゆとり～君教育が始まったころから私は不思議に思っているわけです。(2013/03/15)

2013.03.30

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学外ギャップ

一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第２８８話　「学外ギャップ」　亜米利加の高校生の生活を描いたＴＶドラマや映画などで、一つのパターンとして、これといって取り柄が無かったり、容姿や性格などにコンプレックスを抱えている学生、あるいは貧乏でアルバイトに明け暮れているような学生などが、バンドを組んだり、ミュージカルや合唱に参加して大ブレークしてめでたしめでたし　・・・　とでもいった定型話があります。　もちろん、そういった事例が皆無では無いとしても極めて希な話で、日本で言えば年末ジャンボ宝籤で３億円当てる人がいるよりも低い確率になると考えてよさそうですが、こつこつと勉強して良い大学へ行って高収入が期待できる資格を取得して社会に出て経済的にも社会的にも成功するという話には人気が無いようです（笑）。　しかしながら、実際にはそういったこつこつ型が勝者となる確率が高いことは知られているようで、映画でいえばＢ級ミュージカル（？）映画の傑作として知られる”ストリート・オブ・ファイアー”では、学歴は無いもののハンサムで腕っ節も良く男気もある主人公が、歌手として成功していた幼馴染みのヒロインをトラブルの渦中から無償で助け出し、揉め事が一段落した後は公認会計士の方がこの後の人生では役に立つと言ってあっさり身を引き、救われたヒロインも追いかけないというあまりなエンディングを迎えます　・・・　たぶんこの要約で良いはずです（大笑）。　まあ、私が”いかがなものか？”と思っているディズニーアニメの最右翼、”白雪姫”のエンディングにおける”Bye～”にも似た乙女の打算の後味の悪さが印象的なエンディングですが、まあ、確かに金が全ての世界の住人なら正しい選択を彼女たちはしたわけですし、愛と容姿が移ろいやすいものだとすれば、人の人生で裏切りを心配しなくて良くて変質もしにくいものは黄金と宝石くらいになるんでしょうしねえ？　・・・　あの世に持っていけないことくらいが難点になるようですけどね。　では、典型的な亜米利加の高校生ライフというとどんなもんか？といえば、高校くらいまでは、アメリカンフットボールやバスケットボールといったプロで稼げるスポーツで選手として活躍しているマッチョ系男子の天下で、そうしたマッチョの中でも一握りが大学リーグやプロの業界へ進み、進んだ中で更に一握りがスタープレーヤーとして成功するのは、日本の高校野球からプロ野球、さらにプロ野球から大リーグでスタープレーヤーになる確率と大差が無い狭き門として知られています。　これが女子学生の花形の場合は、マッチョ系とセットで語られることが多い、ナントカ・クイーンという学校のミスコンテストや、チアリーディングで活躍するのが一つの登竜門のようで、歌が上手ければ歌手デビュー、美貌と演技力に自信があれば目指せ聖林かＴＶ業界ということになるようで、高校を中退したり卒業した後に聖林界隈の飲食店でアルバイトしながらチャンスを狙っている地方からやってきた女優の卵の話は（今も昔も）珍しいものでは無かったりします。　逆に言えば、マッチョ系とは縁遠い、ひよろひょろして図書館で勉強している時間の方が長く、学業は優秀でも影が薄く、女の子とも縁の薄い男の子が高校時代にスポットライトを浴びることは（現実には）まず無いそうで、大学を卒業してマッチョ系の何倍も稼げる職業に就くまでは鳴かず飛ばすの人生を歩むと書いても良さそうですが、社会に出る頃には、同世代の女の子達も、マッチョ系の高校時代のスターが社会に出れば単なる稼ぎの悪い乱暴者に区分される現実に直面し、学校という閉鎖社会が見せる期間限定の幻想から現実へと思考回路を切り替えるようです。　つまり、学校を卒業して結婚相手として考えるとき、学業優秀で高収入の職に就いた学生時代には鳴かず飛ばすの男の子達の方がマッチョ系男子と比べると年収が１桁以上違うことが珍しく無くなるだけに、（かってのマッチョスターで）教養に乏しく粗暴癖とプライドだけはあるが故に低収入の職を転々としがちな男性の株は急落するということですが、当然、学生時代にはマッチョ系に首っ丈だったナントカ・クイーン達はあっさりと見限って離婚してでも稼ぎの良い方へ乗り換えることに躊躇しなくなるわけです。　そのあたりの、学生時代のマッチョ系ヒーローの流転人生は、リメイク版の”宇宙戦争”でトムクルーズが露骨に演じていましたが（笑）、もちろん、学歴が無ければ稼ぎが悪いとは限らないものの、学歴が稼ぎ出す部分に相当する何かが無ければ、社会の上層部に名前を連ねることが難しいことは、亜米利加でも日本でも変わらない普遍的な現実になっているのは御存知の通りで、学歴不要論を唱える教育評論家が自分の子供にはしっかり投資をして学歴を付けさせていることが多い現実は比較的知られた話で、一定の学歴が無ければスタートラインにさえ立たせて貰えない業界があることは確かな話になります。　ただ、日本の”ゆとり～君”世代の悲劇として、少子化の影響で進学先を選ばなければ１００パーセント以上の確率で大学進学が可能な時代になったことと大学院が受け入れ人数を増加させたことがあり、大卒や大学院卒という肩書きが高卒よりは多少マシという程度に暴落し、”で、どこの大学の（あるいは大学院の）何学部を卒業して、どのような資格を取得しているの？”とか、”学生時代に１年以上海外留学した経験は？”とかいった、単なる大学卒業では無くワンランク上のプラスアルファがモノをいう時代になっていることではないかと。　とある人に指摘されて、”ああ、そういえばそうだ”と思ったのは、”ゆとり～君”世代に”ため口”を使う子が多いことで、口の利き方の使い分けを知らないのか、ＴＰＯに応じて言葉を使い分けたり相手に対して一定の敬意を払う配慮が根底から欠落しているというか、そもそもそういった能力や習慣が欠落している子が少なからずいて、その仲間内でしか意志疎通ができず、違う世代や同世代の知らない相手とデイベイトして説き伏せることができるできない以前の話なのですが、まあ、電話番号を５０件くらい暗記していて薔薇や憂鬱が手書きできる個性的な人材を育成した公教育期待の星ではあるのでしょう　・・・　多分（大笑）。　もちろん、世界の同世代と五分以上に渡り合えるだけの優秀な人材も中にはいますから、教育の二極化が進んだという解釈で良いのだとは思いますが、面白いのは、スマートフォンなどの高機能携帯端末を使ってネットやＳＮＳを活用して就職活動をしている人材が優秀とかいった方向へ世論誘導しているマスコミが多いことで、”あれれ？パソコンやネットって、利用すればするほど人格をねじ曲げるって騒いだんじゃなかったっけ？携帯端末は学生に悪影響を及ぼすから中学や高校などへの持ち込みを禁止しろ！とか騒いだのは誰だっけ？”と、ニヤリとしているのでした。　それは、高卒で社会に出て働き始める子も直面する現実の一こまですが、高校までの学校側がいかに携帯端末やネットの悪影響を主張して学内から排除しても、遅くとも高校卒業後の現実社会ではいかにハイテク機材を使いこなして作業効率を上げ、ネットを利活用するスキルやノウハウを身に付けているか？で明暗が分かれる時代になって久しいということで、日本において高校時代までと、それ以降の人生で価値観や位置付けが１８０度変化するのが、コンピュータやネット関係の知識や技術ではないか？と（私は）考えていますが、まともに泳ぎ方を教わっていないが故に、電脳空間で溺れている子が珍しく無いのも現実だったりします。　しばしば怪しい話で解説しているように、コンピュータやネット空間は”道具”に過ぎず、ワープロを使って文書を作ることと、書いた文章で芥川賞や直木賞などを授賞することが別の話であるように、ツイッターにしても各種のＳＮＳの利用にしても、壮大な井戸端会議に参加して無駄な時間を浪費するだけの話になりかねないリスクがあるだけに、日頃から（無駄も覚悟で）電脳空間に慣れておくことに手間暇をかけておかなければ、いざ就職活動の時だけ”ネットやＳＮＳを利用して効率的に　・・・”と考えても、その情報収集の対象とされた社会人の側からすれば”で、私に何のメリットがあるの？”という素朴な疑問を持つ人が珍しく無いんじゃないかと（笑）。　例えば、従来は定番の電話でスケジュール調整をした後、会社の近くの喫茶店などで直接話をして　・・・　という対応で１０人程度の就職希望の学校の後輩を毎年捌いていた人がいたとすれば、よりお手軽なネット経由で電子メールを送り付ける手口が主流になってくると、電話でアポ時代の数倍から数十倍の問い合わせや面接希望者を捌く羽目になりかねないのですが、その苦労に見合うだけの人材かどうかに疑問符が付き始めているんじゃないかと思いますし、そもそも論で言えば、新卒者の同時一括採用という奇妙な日本の慣習を廃止すればワンパターンな先輩訪問も減るんじゃなかろうか？　以前、電話で、複数の足裏マッサージの教室や整体講座の後輩を名乗る人達から、”どうやって出張整体で御飯を食べているのか？”といった質問を延々とされた話を書いたことがあるのですが、そんな企業秘密に属するノウハウを（笑）親しくもない赤の他人にぺらぺらと電話で話すと考える頭の構造が理解できず、結論ありきの質問をして持論を延々と主張して聞きたいのか話したいのか意味不明な展開にウンザリした事例もあったのですが、内容的にはそれと同じようなことを電子メール世代もやらかして、相手の反応や対応が悪い俺は（マニュアル通りだから）間違ったことはしていないとごねている子も珍しく無い時代ということです。　その意味でも、パソコンやネット環境というのは（かっての電話や手紙のような）道具の一形態で単に作業効率を向上させるインフラに過ぎないのですが、もっと噛み砕いて言えば、それで飯を食べるようになって久しい４０過ぎのオジサンたちの専門的な会話に高校生が突然ため口で割り込んで知った風な口をたたいたらどうなるか？という想像力はネットの中でも必要ということで、現実世界でやられてむかつくことは、電脳空間でもむかつく人が多いと考えた方がよろしいだけに、就職活動の時だけマニュアルありきでネットを利用して神話級の伝説を残すのではなく、それ以前から体系的なネット利用教育が必要だと考えているわけです　・・・　他人事っちゃ他人事ですが。初出：一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第２８８話：(2011/12/08)

2011.12.14

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姑息の用法

一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第２２０話　「姑息の用法」　正しい日本語という言葉が好きな人達がいるわけですが、ここ怪しい話における文章が日本語として”正しい”か”正しくない”かと言われても、”僕が日本の中心です。”としか（Ｂ型としては）言いようが無いのですが、いくら辞書的には正しい言葉であっても、実際に生きている人達の過半数が誤用とされる使い方を正しいと信じるようになっていれば、それはもう辞書の方を書き換えるか追加すべきではなかろうか？　以前から何度か書いているのが表記や用例は時と供に変化していくということで、例えば、江戸時代の”耳袋”や”甲子夜話”といった怪しい話で取り上げることが多い資料にしたところで、その原文を現代文と同じように読み下せる日本人がどれくらいいるか？と考えるとき、文部科学省や知識人と称される人達の主張する”正しい”がどれくらい虚しいというか一人勝手な主張かわかりそうなものではなかろうか？　江戸時代までの支配者階層の言語は基本的に”漢文”で、書き下し文といいましょうか？平仮名や片仮名が乱舞するような（和文の）文章は下々の者、誤解を恐れずに書いておけば、”女子供”や”（男性ならば）教養無い階層”の言葉であり、漢文の教育を受けていれば和文も理解し読んだり書いたりすることができても、和文の勉強しかしていなければ漢文に関しては実用レベルで使いこなすことはとても無理な話になります。　例えて言えば、漢文が”普通自動車免許（ミッション）”とすれば、和文は”原付免許”とでもいった関係になり、アッパーコンパチブルな関係になっているわけですが、それ故に、教養の有る無しがはっきり別れることになりがちだったわけで、いわゆる四書五経の丸暗記というか素読が、武家階級にとっては、”常識”を身に付けることとほぼイコールな時代が明治の頃までは続いていたと言えます。　もっとも、下々の文化の代表格の一つである”瓦版”や”読売”といった原則、漢字仮名交じり文の情報媒体にしたところで、これを書いている時点の日本人がどのくらい正確に読み下して内容を理解できるかは微妙ですし、明治の頃の小説どころか新聞の記事でさえはたして９割以上正確に読み下して内容を理解できるかどうかはかなり怪しいと（私は）見ているのですが、そのあたりは、戦後の教育しか受けていない戦後の知識人も大同小異かもしれません。　時代的な制約があるため、科学分野の水準は低いといえば低いのですが、明治２０年頃の大学（旧帝国大学）入試問題を現在の日本の公教育を受けて育った”ゆとり～君”世代がどのくらい解答できるかやらせてみれば面白いと思うのですが、”ゆとり～君”教育信者の寝言がどれくらい馬鹿を育成する虚言に満ちているか実感できること請け合いです　・・・　明治の頃の同世代の若い衆がどれだけ勉強していたかということでもありますが。　結局、現在の若い衆の公教育が育んだ高校３年生（というか大学受験者）の知的水準は明治以降で最低ランクと言っても過言ではなくなり、上位の１～２割がなんとか踏みとどまっているものの、賢い連中はさっさと日本に見切りを付けて海外の大学や大学院への進学と海外での就職を選択しはじめているのは御存知の通りで、彼等にとっては正しい日本語かどうかという議論はほとんど無意味になっていて、日本の文化に価値があると考える方がどうかしている時代が到来しているとも言えます。　いわゆる”オタク文化”に関して言えば、その共通言語として１９４０～１９７０年代の海外、国内のＳＦ作品があり、それらを下敷きにした１９６０～１９７０年代の円谷に象徴される特撮全盛期があり、１９７０～１９８０年代の（古典からＳＦまで網羅した）少女漫画黄金期があったわけですが、その頃の、いわゆる”おたく第１世代”が２１世紀に入った頃から”おまえらなんかオタクじゃねえ！”と若い世代（オタク第２世代以降としておきますが）から言われるようになったという話は以前からしているところではあります。　あるいは、戦後の尻尾でもあるオタク第１世代は”自分が欲しいものが無ければ造る”のが当たり前の世代というところがあり、わかりやすいところでは、これまた共通言語としての”プラモデル造り”を大なり小なり経験している世代だけに、”塗装済みのガンプラやミニ四駆しか造ったことのない世代”と一緒にされたくないのですが（笑）、この世代は”フルスクラッチが当たり前”の世代の尻尾でもあり、小金を持つようになって（大手メーカーが量産してくれない）フィギュア業界を形成していったのは御存知の通り（笑）。　ただ、オタク以前の世代がそれほど優れているのか？というと、勝ち目が無くなっても責任を取りたくないから戦争を止めない、公害を起こしてまで儲けても損害賠償からは逃げる、・・・、事故を起こすような原子力発電所を造って問題点を放置し続けておいても責任は認めないといった具合に、一部の階層の私利私欲で民族全体を何度と無く滅亡の縁に追い込んできたのは御存知の通りで、疫病神の管政権に続いて登場し、増税を主張し国民に更なる負担を要求している野田政権が”ただし自分たちは除外”とやらかしているのは御存知の通りで、疫病神の次は貧乏神が日本の首相かとかなりうんざりしています。　話を戻すと、そもそも戦前までは知識階級と一般庶民とでは明らかに知的水準が異なっていて、極論すれば尋常小学校卒と帝国大学卒に二極化していて、異なる教育水準を前提としたそれぞれの社会で用いられていた日本語が、なぜ戦後になると一つの視点だけで正しい、正しくない、美しい、美しくないといった評価ができるようになるのかが（私には）良く分からないのですが、その基準を調べる限り、要は、”自分が使っている日本語が正統であり美しい”と考える戦後教育で育った阿呆がいて、その物差しに合うか合わないかで日本語が乱れている乱れていないといった無意味な批評が行われているようです。　美しい日本語を堅持すると主張する物好きが問題にしたがる、”ら”抜き言葉の使用拡大は、「来れます」が前回調査から７．８ポイント増の４３．２％、「食べれない」は、同じく８．６ポイント増の３５．２％と着々と勢力を拡大し、「考えれない」は、２．４ポイント増の８．１％。今回新たに調査した「見れた」は４７．２％、「出れる」は４４．０％と過半数に迫る勢力になっているようですから、やはり、”いつ辞書の内容を書き換えるか？”という時間帯に入っていると（私は）思います。　というか、既に文部科学省の国語に関する世論調査に採用されている設問の例題そのものが、”（平成になってからでも２０年以上経過しているのに）そんな言葉を誰が使っている？”という時代遅れな代物になりつつあるんじゃないかと感じた人は世代を越えて意外と多かったのではなかろうか？　例えば、「姑息」を７１％の人が誤用していると言われても、そもそも”こそく”と読めない人は以前から増加傾向ですから、それに比例して使う人も減少していますし、ＴＶ番組から時代考証のしっかりした時代劇が姿を消して登場人物が現代口語で会話するようになって久しいだけに、漢文の素養を基本とする武家言葉や仏教用語の類が失伝するのは自然な流れではないのかとも（私は）思います。　お釈迦様も”人を見て法を説け”とおっしゃられたように、相手の知的水準に合わせて言語というのは使い分ける必要があり、そういった相手に合わせたレベルで会話が調整できる人こそ教養がある人ではなかろうか？他人が誤用をしたところで、自分が賢くなるわけでも恥をかくわけでもなし、目くじらを立てるだけ時間とエネルギーの無駄のような気もしますが？　現実問題、戦後の日本語の変化の特徴は、漢文や古典をベースとした（主に国語の）従来の日本語の基礎素養の構築が廃れて、英語など欧米言語の習得にかける時間が拡大したことで、結果的に、（欧米系の）外国語の翻訳に適した言語体系に変わっていき、英語などの外国語習得に時間をかければかけるほど、母国語の特に古語（や死語）の分野の知識が欠落していくことは不思議でもなんでもなく、今後もそういった傾向が止まることは無いと推測しています。　格言の部類の変化で興味深かったのは、”情けは人のためならず”の本来の意味”人に情けをかけると（めぐりめぐって）自分のためになる”が４６％、”情けをかけてもそのひとのためにはならない”という真逆の誤用が４６％と拮抗していたことですが、それの何が興味深かったのかといえば、”そもそも「情けは人のためならず」の出典が何か分かっていての設問なのか？”という点で、これを現代の慣用句の類としていることにそもそもの問題があるのではないのか？　逆に、なぜ”情けは人の為（ため）ならず”を誤用する人が一定の年齢以下になると急速に増加しているのか？といえば、逆の誤用をする人には漢文を読み下す素養が無いだけのことですから、少なくとも”ゆとり～君”以前だと義務教育の中学レベルで教えていたことさえ教わらなくなったか、教わっても身に付いていない人が以前よりも増加していることを意味しています。　もっとも、”情けは人の為ならず”のそもそもの出典というか原典は不明で、しばしば出典として紹介される江戸時代の”世話焼草（世話尽：明暦２（1656）年）”の「情は人の為ならず、身にまはる」という文にしたところで、”世話焼草”がそもそも空願（大谷派真宗僧）が撰述した俳諧大全というか俳諧作法書ですから、その説教臭さからも、元ネタはそれ以前の俳諧作法書か仏教説話（集）の類である可能性が高いと（私は）踏んでいます（笑）。　また、江戸時代の下々の者の格言などの知識は、寺子屋や手習いで教わったり、いろはカルタなどで覚えていくものが共通言語というか社会に共通した知識として普及していて、いろはカルタの内容が江戸、大坂、京都で微妙に異なるという話は以前に少ししましたが、江戸期に洒落本や滑稽本が文学のジャンルと呼べる量で書かれたことは、その元ネタを知っている庶民が一定数いたことも意味しています。　つまり、二次以降の製作物であるパロディ小説やパロディ漫画、あるいはパロディ映画を本当の意味で楽しめるのは、元ネタを読んだり観たことのある人で、引用元や元ネタを知らずパロディ作品そのものでしか評価できない人はいつの時代も”モノを知らない”人に区分されて（陰に陽に）鼻で笑われていることは言うまでもありません　・・・　いつの時代も”お”の字は似たようなことをやっているとも言えます（笑）。　いずれにしても、”情けは人の為ならず”を誤用する人が２１世紀の日本で増加していることを嘆くのならば、そういった人の日本語に関する基準は江戸時代の初期に知識人階級が用いていた日本語ということになってくるのですが、果たして知識人の使っていた日本語とはいっても、４００年くらい前の日本語に知の基準を併せていいものかどうか（笑）。初出：一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第２２０話：(2011/09/20)

2011.09.26

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スパッツ

一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第１９０話　「スパッツ」　東京オリンピック（1964）の頃から普及が始まったショーツ型のブルマは、大阪万博（1970）の頃にはかなりの小中学校で普及しているのですが、これは（幸か不幸か）、戦後の経済状況が好転したこともあって、義務教育である小中学校で体操服が男女ともに指定されるようになったことと無関係では無いようです。　実際、小学校、中学校、高校、大学に至るまで、女子の体操服として学校側から指定されたブルマが従来の提灯型ではなくショーツ型だったということで、それを実際に使用する女子生徒の側が”お尻のラインがはっきりわかって猥褻だから嫌だ！”と反対しても、学校側が着用を強要したと言われてもしかたのない経緯になります。　つまり、当時の生徒や学生の側が従来の提灯ブルマだとダサイからショーツ型のブルマをぜひ採用してくださいと嘆願した結果では無く、逆に、着用してみて”恥ずかしい”と異を唱える女生徒がいても、”何が恥ずかしい！”と学校の先生が延々と採用を続けたということです。　疑ってかかれば、提灯ブルマだと、当時の母親達がその辺の布を使って自作できていたわけですが、さすがに化学繊維を使ってショーツ型のブルマを自作できるだけの裁縫技術がある母親となると限られますから、メーカー品を買うしかない家庭が大半だったと考えれば、逆に、メーカー側にとっては一つの都府県で一度に数万～数十万枚が確実に（新規に）売れる商圏が誕生するわけです。　しかも、毎年毎年、確実に小学校へ入学する子達の分は売れますし、成長期の子供達ですから臀部にぴったりとした形状にしておけば２～３年もすれば確実に上のサイズへ買い換える必要が出てくる子の方が多いでしょうから、売る側からすれば笑いが止まらなかったのではなかろうか？　後に、学校や学年毎にブルマの色やデザインを変えるというアイディアが普及すると姉妹や親戚、知人などのお下がりを利用することも難しくなりますし、転校したり卒業して上の学校へ進学した場合でも学校毎にブルマの色や形状が違っていれば使い回すことができず新規の購入になりますから、その点でもかなり美味しい市場でしょう。　確実に言えることは、どのくらいのキックバックが採用されたメーカー側から採用した側にあったのか？と勘ぐられてもしかたがない状況下で、あっという間に全国的に（それまで自作可で何の問題も無かった）提灯ブルマは駆逐されショーツ型のブルマを指定する学校が主流になっていったことだけが確かな話になります。　が、女子生徒のヒップラインがもろに出てしまうショーツ型の弊害というか、女子生徒のブルマ姿に独特な反応を示す男性が少なからずいることが一般に認知された最初の事例は、振り返ってみれば、”アクション・カメラ術（1981：馬場憲治）”に象徴されるカメラ小僧や素人カメラマンの増加で認知されるようになったとも言えるのですが、逆に言えば、そういった具体的な被害が生じるようになったことで、女生徒側からの（特にショーツ型）ブルマ廃止やスクール水着廃止要求がしやすくなったとも言えます。　しかしながら、通常３年程度で学校を卒業しますし、社会に出れば二度とブルマやスクール水着の類を着用する事が無い人が多いためか、全体としては、生徒の側からの過激な廃止を要求する抗議活動が活発化することは無く、学内への不審者の取り締まりや運動会などへの親族関係者以外の来校を規制するといった（中略）取締強化の方が進んだようです。　それでもまだ当時はネットで半永久的に画像が晒されることも無い牧歌的な時代でしたが、そういった状況が一変したのがバブルの到来で小金持ちの男性が増加したことで、女子中高生の私物が商業ベースで売買されるようになり、金に目が眩んだ女子生徒の側も自発的に私物を売り飛ばして下手なサラリーマンより稼ぐ時代が到来したあたりからではないかと。　女子生徒の私物を売買する専門店が乱立した時代もあったのは御存知の通りで、当時、中古の制服や体操服などが数万～十数万円で売れて、顔写真が付いていれば更にプレミアが付いて値が上がることもあるという、中古の方が新品より高いという奇妙な商売が成立していたわけです。　そうなってくると、ブルマ廃止を主張する女子生徒と、ブルマを売って小金持ちになる女子生徒が同じ学校に同じ時代に混在するようになっていったことになるわけですが、同じ頃から次第に女子生徒のスカート丈が短くなっていき、（スカートの）丈は膝上二十センチと歌われる時代に突入したことを考えるとき、ショーツ型（中略）は恥ずかしいと言われても、”なんだかな～”と言う気がしないでもありません。　バブルの崩壊後、ルーズソックス、ガングロ茶髪などに象徴される傾ぶいた女子高生ファッションも山姥メイクを最期の輝きとして美白のお嬢様系へと主流が移っていき、女子生徒の中古私物市場も買う側の懐事情が厳しくなったこともあって激減した上に値崩れしていったのは御存知の通りですが、なぜか未だにスカート丈は短いままで推移していて、社会人女性でも”見せる”ファッションが普及しているのは御存知の通り。　制服のスカートをたくし上げたり切りつめて着用していた世代が学校を卒業して社会人になっていくと、次第に胸の谷間を露骨に強調したり、ローライズのジーンズで路上でしゃがみ込んだり、キャミソールなどの下着をまるまる見せて闊歩して男性の目を意図的に引きつけても、”ファッション”の一言で女性の側が済ませてしまう時代が２１世紀に入った辺りから本格化していったのですが、なぜかそういった時代の流れとは別の所でブルマは廃止されていきます。　時代的にブルマ廃止が盛り上がったのは、女子生徒の抗議活動が発端だというなら1980年代になりそうなものですが、実際には学校の内外の男女同権論者やジェンダーフリー教育論者などの政治活動によるところが大きかったとしか言いようが無く、本来はブルマの形状を変えるか他の体操服を指定すれば済む程度の話が、”通常体育の授業時は男女別服装である合理的理由はなく、男女平等教育の観点に照らして男子・女子とも同じ運動着を着るべき”という主張に象徴される政治運動のターゲットにされたところがあります。　ブルマ廃止が政治運動だったという根拠は、なぜかブルマ追放運動の様相を呈する過激な状況になったことで、魔女狩りにも似たその動きは1990年代中盤にピークを迎え、個性を伸ばすゆとり教育を標榜していながら、横並びが大好きな教職員が今も昔も多いこともあって、ブルマの廃止の動きは生徒とは無関係のところで数年で全国に広がり、公立校は2004年、私立校でも2005年を最後に、女子の体操着としてブルマーを指定する学校は日本から（ほぼ）消滅しています。　そもそものブルマの普及が女性解放運動の一つの象徴であったことを考えるとき、ブルマという呼称を廃止させることは男女同権論者やジェンダーフリー論者という、その後に登場した社会運動家にとって先駆者の功績を抹殺するチャンスでもあったと解釈することができ、その狂信的とも言える廃止への言動は生徒の為というよりも、露骨な政治運動と解釈されてもしかたのない行為だったと私は思います。　検証していて、常軌を逸している政治活動だった痕跡は、学校が校則でブルマの着用を禁止した事例もあれば、ブルマを着用した生徒を違反者として摘発し処罰を与えるとした学校もあることで、そもそもが女性解放運動の産物であったブルマをいかに貶めて抹殺していくかに偏執的な執念を燃やした連中がいたと勘ぐられてもしかたがない光景が、日本の学校教育の現場におけるブルマの終焉時には見られたわけです。　別の視点から言えば、”ゆとり～君教育”が普及するのに比例するかのようにブルマ廃止の動きが加速していますから、従来型の教育を否定し”ゆとり～君教育”を推進した成果の一つがブルマの廃止だったと解釈することもできますが、結果、学力の低下と風俗の乱れが加速されただけだったのは御存知の通りで、創造性に満ちた人材が受験戦争世代よりも高い割合で供給されるどころか先細りしていることもまた御存知の通り　・・・　ゆとり～君教育推進者達の責任を追及せず処罰もしないで済ませているのは戦後教育業界最大の謎でしょう。　ちなみに、ブルマを廃止した後は、白いハーフパンツ（短パン）を採用する学校が多かったそうですが、そのあたり、”とある魔術の禁書目録（2004～：鎌池和馬）”の御坂美琴（みさかみこと）が制服のスカートの下に白系短パンを重ね履きして見せパンとしたことで、一部の卒業生達にブルマが廃止されたことが知られるようになったというのは、これまた一部では知られた話になります　・・・　ま、卒業して久しく、子供がいるわけでもない私的にはどうでもいいといえばいい話ですが。　もっとも、女学生が制服のスカートの下に○チラ防止のアウターとして着用したり、社会人女性がヨガ教室やスポーツジムなどで着用するようになったのが、白短パンではなく黒いスパッツ(spats)だったというあたりで、ブルマの廃止と白短パンへの切り替えが別に生徒の意見を採用しての変化では無かったことの最大の状況証拠ではなかろうか？　念のために書いておくと、日本に置ける”スパッツ”という商品区分は和製英語の類で、本来の英語が意味するspatsは、靴の上に装着する脚絆（ゲートル）のことになり、日本のパンツ状の着衣のスパッツは欧米では”レギンス (leggings)” か仏蘭西語の”カルソン (calecon)” と呼ばれていることが多く、逆に、それらを日本語訳すれば、一番近いのは股引（ももひき）に　・・・　まあ、それだと売れそうにないですけどね。　スパッツはアウターとしても利用されていますが、本来は下着から発展したもので、1980年代中頃のバブル期にボディコンファッションが流行した頃から、パンストより丈夫で吸汗性に優れ補正効果もあるアウターとしても利用されるようになり、スポーツのトレーニング用にも流用されるようになっていったのですが、2006年頃から、ファッション業界がおしゃれ着としてのスパッツを売り出す為に、唐突に”これはレギンスです！”と主張するようになり、いたいけな男性陣に”スパッツとレギンスって何が違うの？”という謎を広めて今日に至ったのでした（笑）。初出：一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第１９０話：(2011/08/16)

2011.08.22

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ぶるっつ

一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第１８９話　「ぶるっつ」　”ブルマ”＋”スパッツ”＝”ぶるっつ”ということになるのですが、スパッツの上にブルマを重ね履きする荒技を登場させたのが”迷い猫オーバーラン！（2008～：松智洋）”で、やらかしたのがヒロイン（の一人）の霧谷希（きりやのぞみ）であることは（一部で）知られた話ではあります。　まあ、なんか蒸れそうな重ね履きですが、問題は女子学生の体操服としてブルマが絶滅危惧種というかほぼ絶滅して短パンが主流になっているという　・・・　ミリバールがヘクトパスカルに変わっていたのと同じように、私に断りもなく世の中が着々と変化しているということ（・・・　進化しているとは限らんけどね）の方でしょう。　それはともかく、私の世代の男性が着用することはまず無かったブルマー (bloomers) やスパッツ（spats）て何？スパッツとレギンスって何がどう違うの？という素朴な疑問に突き動かされたのでした（笑）。　なお、ブルマの表記に関しては、ブルーマ、ブルーマーといった呼称もあるのですが、そもそもは、コルセットなどの拘束型補正下着に反発した女性解放運動家によって、着用していて楽な下着として考案され作業着として改良されたもののようで、後に改良が加えられて女性用の運動着としても使えるタイプが実用化されていったようです。　念のために書いておくと、19世紀後半の西洋諸国においても、一部の貴族階級を除けば女性の社会的な地位は低く、参政権などで法的な差別も珍しくなく、余暇にスポーツを女性が（というか一般庶民が）楽しむという発想も皆無に近く、唯一、貴族階級の女性の乗馬くらいが（淑女の嗜みというか貴族の嗜みとして）例外だったようです。　というか、体育という発想そのものも戦争と不可分なところがあるだけに、まずは男性に（兵士としての）強健な肉体が求められる時代になると学校教育に体育の分野が採用され、時代や国によっては軍事訓練がそうした体育の授業の延長上に追加されていったと言えます。　近代戦を勝ち抜くために強健な肉体が必要という発想は、各国でオリジナルの体操が考案され普及していくことにも繋がっていくのですが、戦争の激化と近代化に伴い大量の兵士を長期間動員する時代へと移行していき、人口の半分を占める女性を兵員ないし補助兵として活用しないと不利と考えた国もあれば、一般男性が徴兵されて彼等が支えていた社会システムを維持するための穴を埋めることができる女性にも男性と同等の教育と待遇が必要になった国も多くなっていきます。　いずれにしても、近代国家において、女性への学校教育が男性と同等になっていき、学校教育で体育の授業が正課となっていくと、そうした運動時に着用する女性用の体操着というかスポーツ用パンツとして（私たちが知っている提灯型やショーツ型とは形状が異なりますが）ブルマは普及していくのですが、社会人を対象とした試合や練習時のユニフォームパンツやオーバーパンツとしても用いられるようになっていったようです。　ブルマーの起源は諸説あるものの、19世紀のアメリカ合衆国の女性解放運動家アメリア・ジェンクス・ブルーマー（Amelia Jenks Bloomer：1818～1894）の発案説が定説になっていて、当時主流だったコルセットのように腹を無理矢理締めてウエストの細さを演出するような下着に反発して、自由度が高くゆとりのある下着として考案された　・・・　とされています。　が、実際には、エリザベス・スミス・ミラー（Elizabeth Smith Miller：1822～1911）が1851年頃に、庭仕事用に考案して自作して着用していた作業ズボンをアメリア・ジェンクス・ブルーマーが気に入って普及活動に勤しんだ結果、そのタイプの作業ズボンがブルマと呼ばれるようになっていったということのようです。　アメリアは正規の学校教育を２年受けただけでしたが、主に新聞を舞台に女性解放運動を繰り広げた論客として知られていますが、当時の女性解放運動家達にとって、男性の目を引くためだけのファッションではなく、自分がしたいことができてスポーツや野外作業にも対応できるような新時代の服が必要と感じていたようです。　当時は女性用の適当な運動着や作業着が無かったというか、そもそも一般女性に運動の必要性が認められていなかった時代の尻尾だけに、日常生活を楽しみ、自分のやりたいことをやって過ごすという発想に基づいた発明は極めて画期的なものだったのですが、エリザベスが考案した当初のブルマは、これを書いている時点の日本だと鳶職の人が愛用しているニッカーボッカに外見が酷似していて、全体にだぶつきがあって丈は膝あたりまであることから、乗馬用のズボンを元に改良したのではないかという指摘もあります。　日本におけるブルマ渡来説の最古のモノは、女子高等師範学校（現・お茶の水女子大学）の”井口阿くり”が留学先の亜米利加から持ち帰ったブルマが体操着として1903年に最初に紹介されたという説ですが、普及は大正末期から昭和初期にかけて女学校で採用されるようになったと言われても、詳細は3-844”セーラー服学”に譲りますが、大正９（1920）年に京都の平安女学院がセーラー衿の付いた濃色のワンピース型を通学服としてセーラー服を採用したのが最古のセーラー服で、上下セパレート型は福岡女学院が1921年に学生服ではなく体操服として正式採用したのが最古とされ学生服としても利用されていますから、公式の体操着としてはセーラー服の後に普及したことになります。　女子校におけるセーラー服の普及は、ミッション系の女学校などを中心にセーラー服はハイソなお嬢様が通う欧羅巴や亜米利加といった先進国の流行を取り入れた制服として野火が広がるように急速に全国の（ミッション系以外の学校を含む）女子校に普及していき、それは”はいからさんが通る（1975～1977：大和和紀）”などで見られるセーラー服以前の着物に袴姿という和服の時代から、洋装に抵抗のない時代への変革であると同時に、女学生達の下着革命の時代でもあったと言えます　・・・　腰巻きでスカートを履くには無理がありますから。　考えてみれば、初期のブルマと裾を絞った袴というのは以外と共通したシルエットになり、袴を改良しても十分に西洋式の体育に対応できたと思いますが、時代は脱亜入欧の時代ですから、西洋渡来の体操着としてブルマもまた袴を駆逐しながら普及していったようですが、初期のセーラー服の採用理由が通学服だけでなく体操服だったというあたりから、当時の教育関係者も保護者の反応を見ながら手探りで模索していたであろうことが推察されます。　少なくとも学校外の日本の一般社会における腰巻きからズロース（パンツですな）への移行は、関東大地震（1923/09/01:死者９万9331、罹災人口340万余。東京の被服廠跡だけで３万2000人が焼死。）のときに、池や川などで水死してうちあげられた女性の遺体の状況などから、丸見えになりやすい腰巻きではなくズロースなどの西洋下履きの効能が指摘されるようになったという説があり、昭和７（1932/12/16）年の白木屋デパート火災（客や店員ら死亡14人、重軽傷500人余）が、腰巻きからパンツへ移行する過渡期の出来事であったと考えられています。　基本的に、金持ち階級の衣食住に関するブームは一般庶民よりいつの時代も１０年くらい先を行くことが多いですから、セーラー服の普及と併せて考えると、関東大震災の頃には既に脱・腰巻きでズロースなどへ移行が終わっていたと考えていいようですから、パンツの上に重ね履きをするアウターウエアの体操着がブルマだとすれば、女性下着の主流が腰巻きの時代というか学校にブルマが普及することは考えにくいのではないかと　・・・　もちろん、直接ブルマ着用で体育の授業だったのならこの限りではありませんが。　ただ、日本では戦時中に有事演習の一環で水泳訓練をブルマ姿で行っていた女学校もあったことを考えれば、はたして初期のブルマをアウターと断定していいのかどうか？後に登場するスパッツでも、”化物語（西尾維新）”の”駿河モンキー”で暦が悩むように、ブルマにもグレーゾーンの時代があったようです。　大東亜戦争の敗戦直後は、物資不足が続いたこともあって、東京オリンピック（1964）前後まで、義務教育においてブルマに限らず体操着を学校で指定し購入を強制するには無理があったのですが、その当時の小中学校の女子生徒の体操着は紺色の提灯ブルマが圧倒的に多数を占めていて、モンペなどを改造した親の手製ブルマも珍しく無いというか主流と言っても過言ではない時代だったそうですが、社会が豊かになって化学繊維が普及してくると市販のニット製ブルマが主流になっていきます。　従って、ニッカボッカ風の丈の長い形状だったブルマがなぜに次第に丈が短くなってパンツと大差の無いサイズとショーツ型の形状が主流になったのか？と考えるとき、その原因が戦後の日本が物資不足だったとは考えにくいのですが、少なくとも1970年代くらいまでのブルマは南瓜型の提灯ブルマが主流で、色気も何もあったものではない形状ですが、機能的には何の問題もなかったのは御存知の通り。　では、臀部にぴったりフィットしたショーツ型にブルマの形状が変わっていったのはいつ頃か？と調べてみると、東京オリンピック以降の1960年代後半からショーツ型が提灯ブルマを駆逐しながら普及していったようで、東京オリンピックなどでショーツ型ブルマーを採用した（当時）ソビエト連邦や亜米利加の女子選手が格好良いと思った人が多かったのが主因かもしれません。　ちなみに、当時の日本代表はショーツ型のブルマの着用に抵抗し、特注の改良型ショートパンツを使用しているのですが、当時の映像などを見ていると、日本選手の方が髪型を含めて、”う～ん”という気がしないでもありませんが、だからといってショーツ型ブルマの着用を強要するほどのことか？という気も（私は）します。　長くなってまいりましたので、横並びが大好きな日本の教育業界で女子の体操服がショーツ型のブルマに”あっ！”という間に（ほぼ）統一された後、いかなる経緯でブルマが全廃へと追い込まれていったのか？というあたりの話はまた別の機会に。初出：一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第１８９話：(2011/08/15)

2011.08.20

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能力以前の話

一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第１３４話　「能力以前の話」　学生時代から経験する人はしているのが”濡れ衣を着せられる”経験ですが、そういった場合に、公平なジャッジをするとなんとなく信じていた担任の教師が、当事者（容疑者と言い換えてもいいですが）から話を聞く前から犯人扱いして対応した場合、それが後に無罪どころか無関係と分かって謝罪したところで、もう”先生と生徒”の関係には戻れないことは書くまでもないでしょう。　実際には、教え子相手でも、自分の非を認めて謝罪する先生はまだましな方で、謝罪するどころか”疑われるようなことをした方が悪い”とでもいいたげな対応を続ける教師も珍しく無ければ、強気で押し切れば責められないとでもいいたげな居丈だかな対応を続ける教師もまた珍しくありませんし、下手に対応したために、生徒の大半が徒党を組んで担任をシカトするようになった事例も実在します。　特に小学校や中学校の教職員に多いのが、”先生の言うことは無条件で聞くのが当たり前”と思い込んでいる人で、生徒が４０～５０人いれば、中にはＩＱが１３０～１５０程度の人材が１人や２人はいる確率が高いことを失念しているようです（笑）。　小学校の先生の多くは、地元の国立大学の教育学部卒ということが多く、しばしば私が馬鹿にしているように、幼稚園や保育園の頃から先生として採用されて就職するまで県外で一人暮らしをしたことが無いどころか、親元から離れたことが無く、大学時代のアルバイトといえば”せんせい”と呼んでもらえる家庭教師の経験しか無い子も珍しく無い、同世代と比べても人生経験の極めて浅い連中なわけです（笑）。　それでも、生徒の親の世代の平均どころの最終学歴が”尋常小学校卒”で、希に高卒の親がいて、坊さんが地域の知的エリートといった時代ならば、”大卒”というだけでそれこそ知的水準に人生経験を補うだけの差があったのかもしれませんが、受験戦争まっただ中だった私の世代で既に、地方の国立大学の教育学部よりも偏差値の高い大学の学部を親が卒業している生徒が珍しく無くなっていました。　更に、少し後の世代くらいから、”親が海外へ赴任した関係で、小学校低学年くらいまで海外の日本人学校へ通っていた”とか”海外で現地の学校へ通っていた”という帰国子女が増加しはじめ、やがて、海外の大学や大学院を卒業した親を持つ子供も増加していったわけで、ますます従来の採用パターンを踏襲していた学校の先生が世間知らずで、生徒の親よりも学生時代の成績が下という事例が増加していったのでございます。　ちなみに、学校の先生の給与体系というのは、地方公務員の中でも優遇されていることで定評があり、一定の年数（２年程度）を教師として勤務することで大学時代に借りた日本育英会の奨学金の返済が全額免除される特権があったことも御存知の通りで、国家公務員を含めて他の職種の公務員が自腹で１００万円前後の奨学金を返済していたことを考えれば、優遇っぷりの一端は分かりそうなモノではありますまいか？　問題は、そういった優遇に見合うだけの能力や経験を積んだ人材が教職員として採用されているのかどうか？ということで、私に言わせれば、高学歴な親や長期の海外勤務経験のある親が増加し始めた１９８０年代の段階で、地方の国立大学教育学部卒が最終学歴で民間企業での勤務経験も無いような人材を優遇して雇用する必要は無くなっていたと思うのですが、優遇制度はそのままに、教える内容を減少させ、”個性を伸ばす”と主張して箸にも棒にもかからない我等が”ゆとり～君”を増産していったのは御存知の通り。　明らかに、”ゆとり～君”教育が従来の教育に勝と主張し、どんどん教える内容を減らしていった国の方針に反して、従来の詰め込み教育というか、暗記主体教育といいましょうか？受験戦争当時と同等以上の学習内容を堅持し、語学などは（英語で他の科目の授業も行うといった形で）更に強化していった学校の卒業生の方が、余程使える人材になっているような気がするのは気のせいか？というか、卒業生の多くが日本の教育水準を見限ったのか海外の大学への進学率が高いあたりが象徴的ですが。　親の高学歴化や大卒で教員資格を取得していながら教師にならなかった親の増加などは、ある意味で先進国に共通している傾向ですが、その辺り、海外の先進国では大学卒ではなく、より専門的な学習や研究を行って大学院を卒業した人材を教師として優先して採用したり、科目によっては外部の専門家に授業を委託することなどで対応しているようです。　もっとも、1-227”米百俵”の話を得意げに語った小泉首相の時代に拡大しながら定着した”格差社会”は、親の経済力が進学に直接影響を与える第二次世界大戦以前の社会を少なからず再来させることにもなり、明治以降の日本の伝統であった”村に不学の子無し”というあたりまで崩壊しかかっているのは御存知の通りで、一度、日本中の学校の先生を解雇して、再試験の上で再雇用しないと駄目な時代になっているのではなかろうか？　教育制度改革で”正気か？言ってて恥ずかしくないか？”と思ったのが、既に採用している英語の先生の英語力がこころもとない（早い話、英語で日常会話ができない英語の先生が珍しくない）という指摘に対して、公費で海外研修をさせると真顔で言いだした連中がいたことで、親が期待し社会が納得するだけの能力が教職員に無いのなら”能力不足”を理由に解雇して、海外の学校を卒業した若い子を採用すれば、安い賃金でより高い能力の人材による高度な教育が可能になるのではなかろうか？　私に言わせれば、人に知識を教えて飯を食っている人間が、自分の技能や知識を常に高めたり時代のニーズを先取りし、自腹を切ったり勤務時間外を利用してでも変化に備えておくのは”当たり前の心がけ”ですし、少なくとも、日常会話程度はこなせる英会話のレベルが学校の英語の先生に期待されるようになって軽く四半世紀以上が経過していることや、その間の家電やＩＴ関連技術の進歩と低価格化もあっただけに、”時代と社会のニーズを無視して、何を英語の先生達はやっていたのか？”という素朴な疑問を持つのですが？　その辺り、”休職して自腹で海外留学を２～３年して英語力を高める必要性があると考えてこなかったのが、英語で日常会話もできない学校の英語の先生”ということにもなるのですが、別に税金を使ってまでお勉強をしていただかなければならないような人材を高給好待遇で雇用し続ける必要があるのか？という根本的な疑念も生じるわけです　・・・　親や生徒に先生を選ぶ権利を与えたら、さぞ面白いことになると私は長らく思っているのですが（笑）。　考えてみれば、そもそも国費留学は、”優秀な人材をさらに学習させるため”の制度で、少なくとも”一定の能力に到達していない馬鹿に再教育を試みるため”の制度では無かったわけで、やはり馬鹿に金をかけるより、教員免許の更新時に、英検１級以上とか、TOEICで８５０点以上とかいった基準を更新要件にしておけばいいんじゃなかろうか？　いずれにしても、日本の英語教育関係者がいかに自分たちの英語教育の優位性を強弁したところで、聖林映画で日本人役を”日本人俳優は英語を話せない”ということで中国人などが演じる状況が恒常化し、”日本人の歌手は英語で話せず歌えない”ということで韓流スターなどに海外市場から駆逐されつつある現実が、露骨に日本の英語教育の無意味さを象徴しているのではなかろうか？　映画”東京ポップ（TOKYO POP：1987）”の頃から、日本でいくらトップクラスの歌手やスターになっても、英語圏の国ではほとんど誰も知らないという現実は現在でも大差が無く、”話せないこと”の弊害は、グローバル化とＩＴ化の急速な進展もあって、私企業の国際競争における大きな弱点の一つになっていて、学校卒業後に自腹で英会話を学習する必要に迫られている人が多い現実もまた、日本の英語教育の無意味さを象徴しているのではなかろうか？　極論すれば、既存の英語の先生の職と年金生活を守るために、日本人の英会話能力は犠牲にされ続けているということで、少なくとも、日本人に英語をマスターする能力が欠落しているから中学から大学まで英語を学習し続けても日常会話が満足にこなせないのだとはとても思えません。　そういえば、英語に接する時間が短いから英会話がマスターできないといった理屈で、（当時）カセットテープなどを利用し外国人が朗読する音源教材で英会話を学習するという触れ込みで、全国の中学校や高校などにＬＬ教室（Language Laboratory：言語実習室）が増設されたことがあったのですが、私の記憶が確かなら、ほとんどの学校で（汚れたり壊れたりしてはいけないとかいった建前で）活用されることなく埃をかぶるようになったという噂があるのですが、投資に見合うだけの効果があったのなら、学生時代に（少なくとも）日常会話レベルの英会話能力を身に付けた日本人がもっと多くないと嘘ではなかろうか？　その他の分野だと、やはりＯＡ機器への対応の遅れが目に付き、ＩＴ革命後の社会に適応した人材の教育に学校教育が対応していないことも問題で、Windows95の日本語版が登場してからでも（これを書いている時点で）１５年が経過していることを考えれば、未だに”生徒の方が技術が上”で済ませている学校の先生の勉強不足と危機感の無さは、”いっそ、既存の義務教育の学校制度を廃止して、私塾やスポーツクラブに委託した方がコストパフォーマンスが良いんじゃないか？”という気がしています。　小学校や中学校の先生に関する最大の謎は、口を開けば”生徒の人数が多く、雑務が多く、何かと忙しくて手が回らない”と主張していながら、”夜の１０～１１時くらいまで学校の先生が恒常的に学校に残ってサービス残業をしている光景って見たことがない”ことに尽きるのですが、春、夏、冬の長期休暇中の出勤体制や週休二日制度などなどを含めて考えても、”何が忙しいの？”と言いたくなるサラリーマンは珍しく無いのでは無かろうか？　本当に不思議なのは、亜細亜でも底辺に近くなるほど学力を低下させてしまい、増やすとしていた個性的な人材はかえって減少傾向でありながら、まだ自分たちの教育方針が正しいと主張し、全国でどのくらいの学力に到達しているかがはっきりする全国統一模試などを事実上妨害する行為を止めないあたり、生徒が全国区でランキングされると、それを教えている先生の能力も間接的にランキングされる事の方を怖れているのではないのか？と邪推するのは私だけ？　少なくとも、それが評価の一つの形であり一つの切り口に過ぎないとしても、自分の教え子が全国でどのくらいの位置にいるのか？が気にならない方が、人を教えて飯を食べているプロとしては問題があるのではなかろうか？初出：一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第１３４話：(2011/06/11)

2011.06.17

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執事概論

一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第１２０話　「執事概論」　アクマで執事ですからということで（まあ、具体的にどいういうことかは振り逃げするとして）、オの字業界に執事系のジャンルがあるのは御存知の通り。　もっとも、執事喫茶の本場は秋葉原ではなく池袋の方で、お嬢様達の中に愛好家がおいでなことは比較的知られた話だったりしますが、メイド喫茶と違って、”ベル薔薇”枠が絡むだけに今ひとつ何がやりたいのか（私に）は良く分かりません。　しかしながら、実際の執事とは異なり、オの字系の執事といえば、ＴＶアニメ”無敵鋼人ダイターン３（1978）”に登場する”ギャリソン時田（ときた）”あたりをルーツとする正統派（？）の流れがあり、”おひいさまとして奉仕される（気分）”を味わうとすればこちらの方がリアリティがあるかもしれません。　ちなみに、ギャリソンは、主人公の破嵐万丈（はらんばんじょう）の執事で、主人とゲスト達への家事サービス全般はもちろん、財務管理なども任されているようですし、あらゆるメカの整備から、敵対勢力との戦闘まで器用に涼しい顔でこなすのでした。　長身、白髪というよりはロマンスグレー、口髭を蓄えて、基本的に執事服を身に纏っていて、どんな時にも飄々とマイペースで難局に対応し、命のやりとりを含む修羅場においても丁寧な言葉づかいを忘れず冷静沈着に対処していくあたりは、後の万能執事の先駆け的な存在であり、”執事モノ”の原型と言っても過言ではないと思います。　この分野の正統な後継者といえば、”ケロロ軍曹（1999～：吉崎観音）”における、西澤家・桃華お嬢様御付の執事”ポール森山（もりやま）”で、ポールは担当声優の藤原啓治が番組ナレーショ担当している関係でＥＤにクレジットされていないことでも（一部では）知られている。　その後、漫画の”ハヤテのごとく！（2004～：畑健二郎）”における”綾崎颯（あやさきはやて：16）”の登場で”（薄幸の）少年執事”という奇妙な職業が一つのジャンルになり、ハヤテの成功で雨後の竹の子の如く少年執事が増殖していくことになります。　もちろん、本家であるハヤテも多様化していき、”綾崎　ハーマイオニー”が登場するに至って、”男の娘（こ）”を導入した最初のメジャー漫画という看板もゲットし、男性ファンを増加させることに成功したのは比較的知られた話になります　・・・　作者が本当は何をやりたかったのかは良く分かりませんが（笑）。　なお、本来の”ハーマイオニー”は、ギリシア神話における”ヘルミオネー”で、ヘルミオネーを英語読みすると”ハーマオイニー”になるのですが、スパルタ王メネラーオスと妻のヘレネーの間の娘という程度で、さほど美形だったとか、何か特技があったとか、冒険奇譚のヒロインというわけでもなく、何故にハーマオイニーなのか？は良く分かりません。　諸般の事情でヘルミオネーは伯母であるクリュタイムネーストラーによって育てられるのですが、トロイア戦争の少し前に、父親であるメネラーオスの命によって、従兄弟にあたる”オレステース（メネラーオスの兄であるアガメムノーンの息子）”と婚約しているのですが、トロイア戦争の戦場において、アキレウスの息子である”ネオプトレモス”を参戦させる代償として嫁がされることになります。　故に、トロイア戦争が終わると、ネオプトレモスはヘルミオネーを嫁に迎える権利を主張し、ヘルミオネーを自分の母国であるエーペイロスに連れ帰ってしまうのですが、愛妾”アンドロマケー（トロイアの英雄ヘクトールの妻）”との間で争いが勃発し、ネオプトレモスが不在の際に暗殺未遂騒動が勃発するところまで仲はこじれていきます。　ネオプトレモスが不在中には、暗殺未遂騒動が勃発した他に、ヘルミオネーのかつての婚約者オレステースが来訪し、ヘルミオネーをエーペイロスから連れ去り（というか奪還し）、最終的にオレステースはネオプトレモスと戦って殺害し、ヘルミオネーはオレステースの妻となって子供も産んでいるのですが、考えてみれば、間男が旦那を殺害して奥さんを寝取ったわけですから、さほど褒められた話ではないような気がするのは私だけか？　というか、ヘルミオネーがネオプトレモスの妻であることに納得していないのなら、アンドロマケーを暗殺しようとはしなかったのではないのか？ということで、男と女が別れるときすぱっと割り切って次のステージへ進む女が多いのに対して男の方が未練がましい事が多いという話の典型事例かもしれません。　それはともかく、”綾崎　ハーマイオニー”に関しては、流されやすいキャラという点で共通項がある気がしないでもないですが、時期的に、J・K・ローリングの小説”ハリー・ポッター”シリーズに登場する魔女というかヒロインというか御学友の”ハーマイオニー・ジーン・グレンジャー（Hermione Jean Granger）”に由来すると考えた方がいいのかもしれません　・・・・・・　ま、どうでもいいっちゃいいことですが。　ハヤテの商業的な成功は、少年執事を一つのジャンルとして認知させ定着させたのですが、漫画業界よりもライトノベル業界の方が主人公に執事属性を持たせたり、執事としての訓練を経験させるような展開が増加するようになり、現実社会のイクメン（育児男）の増加や、料理教室に通う男性の増加ともシンクロしていて、家事全般が下手かできない女性が増加した現実社会を反映して、フィクションの世界では一足先に補完していったのかもしれません。　念のために書いておくと、戦前から家事全般がまったく駄目な女性というのは存在していて、特に料理下手というか料理音痴とでもいった食材の敵のような女性はさほど珍しく無かったりするのですが、少し前までは、”女の子なら料理が出来て当たり前”という社会通念が優勢だったことで、少しは練習したり、嫌でもつくっている内に慣れて多少なりとも上達したものですが、そういった努力を放棄する時代を経て、努力することがそもそも不要であると主張する勢力が増大していったのは御存知の通り。　その傾向は、男女同権を主張する連中が助長させていったわけですが、その昔、某インスタントラーメンのＣＭの、”私、作る人。ぼく、食べる人。”という台詞に対して、女性が作る人で男性が食べる人というのはけしからん差別を助長する！とクレームを付けて引きずり落としたあたりから、彼らの快進撃が始まったのかもしれませんが、料理下手とか料理嫌いとかいう以前に、料理をほとんどしたことがないまま結婚年連に達した結果が何を招いたか？というのは別の話になります。　単純な真理として、男性は餌付けするとおとしやすく、既に母親世代が料理をしない人が珍しくない世代が結婚適齢期に入って久しいだけに、肉じゃが程度でお手軽に胃袋を鷲掴みにできる現状は（中略）な時代が到来していると言えるのではなかろうか？　逆に言えば、男性にとって、結婚してから、相手の食生活が奇食でも困りものですが、死食のレベルだと残り寿命に直結するだけに、少なくとも”女性だから料理ができる（んじゃないかな）”という思い込みは持たないことは必要ですし、料理をする気も知識も経験も無い彼女でも良いという人の場合、自分が料理するか、外食の連続でも大丈夫なくらい稼ぐか、いずれにしても一工夫が必要な時代になっているようです。　それはさておき、ラノベ業界では、”れでぃ×ばと！（Ladies versus Butlers!：2006/09/10～：上月司）”において、とうとう従育（従者育成）科コースという万能執事を養成するコースがある高校に主人公が転入して執事を目指すようになるのですが、主人公の日野秋晴（ひのあきはる）が、目つきが悪く、左眉に傷跡があるのはともかく、茶髪で耳に（安全ピンを使った）三連ピアスをしているという設定は、いろいろな要素を入れ込みすぎで、執事養成物語というよりもハーレム形成物語になっています（笑）。　それに対して、漫画業界では、”黒執事（くろしつじ：2006年10月号～：枢やな）”が、時代と舞台設定をパラレルワールドの19世紀（頃の）英吉利とし、名門貴族・ファントムハイヴ伯爵家の執事”セバスチャン・ミカエリス”を登場させたことで、一つの時代を築くことになり、ハヤテとは別系統の執事ファンを増やすことになるのですが、主人で、まだ半ズボンの方が似合いそうなシエル・ファントムハイヴ伯爵を完璧というかインチキ満載の万能ぶりでサポートするのですが、ただ、彼の場合、その対価が”主人の命”というあたりがブラックなのかもしれません。　その他にも、主人公が執事（候補）で無いにしても、執事としての研修を受けさせられたりする話は増殖中ですが、そもそも執事って何？というあたりは意外と知られておらず、メイドの男性版が執事？とかいった程度でスルーされているようです。　日本で、執事というのは、文字通り”事を執り行う”者で、寺院において住職の代理を務める僧侶で、律令体制だと”大別当（別当の筆頭職）”と呼ばれた役職が始まりとされ、そこから派生して、権力者の家や有力な寺社などで家政や事務を管轄する責任者者を執事と呼ぶようになっていくのですが、この場合の権力者というのは、親王や摂関家といった上位の貴族のことになり、政所(まんどころ)で家政を執り行う家司(けいし)たちの長ということになっていったようです。　時代が少し下がると、鎌倉幕府の執権とか、政所の次官、問注所の長官などの別称が”執事”ですし、室町幕府になると、将軍の（幼少期の）補佐役の別称が”執事”ですが、後に”管領”と改称されていまして、関東管領といった言葉があるように、これを書いている時点で近いのは、亜米利加の州知事のような気がしないでもありません。　したがって、日本における本来の”執事”は海外における複数の役職が該当して、英語だと、butler、chamberlain、・・・、archdeacon、deaconなどを和訳すると、すべて”執事”になりかねないのですが、archdeacon、deaconはキリスト教関連の職位ですが、宗派によって異なるややこしい話になるため、説明する自信が無いので深入りはしません。　やや規模の小さな、使用人達の頭という程度だと、バトラー (butler) が比較的近く、明治以降、華族制度が整備されていく過程で、従者たちに指示する管理職として華族や財閥級の資産家などが採用していったようで、その名残なのか、現在でも歴史のある資産家の家には執事が実在するのですが、ＴＶアニメ”けいおん！！（かきふらい）”でネタにされるくらい都市伝説の域になっているのは御存知の通り。初出：一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第１２０話：(2011/05/26)

2011.06.01

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大卒暴落

一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第０６１話　「大卒暴落」　その昔、”天麩羅学生”という言葉があり、合格していない大学の学生服を着てその大学の授業を（無料で）聴講したり、ナンパに勤しんだりしたそうですが、天麩羅学生と呼ばれた由来は”衣だけ”本物から来ているそうですが、まあ、そういったことをするだけの価値が大学生という身分にあったということにはなるかなと。　ところで、マスコミなどが言うほど、大学新卒者対象の正規雇用の枠が減って契約や派遣といった非正規雇用でしか働けなくなったということは無く、この２０年程で大学新卒の正社員就職数は２割以上増えていました　・・・　なにしろ東北・関東大震災前の話ですから。　つまり、”ゆとり～君”世代でも賢い子たちは、本人が希望してある程度の妥協は覚悟できれば（正規雇用の）就職先が皆無という状況では無く、就職氷河期に直面しているのは学力不足というか能力不足の大学生に限定されていることに理論上はなるわけです。　ゆとり～君世代の特徴は、大学の激増と大学進学率の急上昇で、受験戦争時代ならまず大学進学の対象にならなかった学力にかなり問題がある人材でも拾い込む大学が増加したため大学生の質が全体では大幅に劣化しています。　以前から書いているように、ゆとり～君世代でも賢い子はずいぶんと賢いのですが、学力の二極化が顕著になっていて、箸にも棒にもかからない人材の方が大量に養成されているのですが、それでいて２０年前の大学進学率が約２～３割程度だったのが、今は５割を超えている不思議があるわけです。　具体的には、1985年に185万人だった大学生の総数が、2009年には285万人になっていて、少子化なのに100万人ほど増えているのですが、大卒者求人枠は100万人分も増えていませんし、長引く不況で女子学生も就職志望が増加し、それも結婚までの腰掛けではなく定年まで正規雇用で働くことを前提にした就職活動が盛んになってきているのは御存知の通り。　結果的に、この２０年ほどで新卒採用枠は微増していて、1990年くらいの大卒者の総数ならば、大半の就職先が供給されているにもかかわらず、大学生の総数が倍増したことで内定率が下がり、数字の上では就職氷河期が到来しているように見えているだけで、優良株の大学生は昔と同じように複数の企業から早い段階で正規雇用の内定を貰っているのは御存知の通り。　実際、上位校の卒業生の内定率は90％以上で昔と大差が無く、この御時世に在学中に遊びほうけて自分の専攻に関係する（国家や民間の）資格の一つもとっていなかったり、外国語関連の資格も無ければ留学経験も無いような子が、今際の際になって”内定が出ない～”とどたばたしている確率が高いのは今も昔もさほど変わらぬ光景と言えます。　その意味で、偏差値35以下のＥやＦといったランクに属する大学の卒業生の場合、特定の資格や記録などを有しているのならともかく、その大学卒というだけでは、正規雇用したがる企業が少ないということです。　もっとも、それは今に始まった事ではなく、四半世紀前でも、”うちの大学を卒業したと面接で言うと不利になりますから言わないように”と就職指導の席で教官から言い渡される漫画が存在したくらいですから、英語はもちろん日本語も怪しい、スポーツもやっていなければ資格も取得してない、学生時代の人脈も狭いか皆無といった人材は、昔から就職先がかなり限られていたのは確かな話になります。　実際、Ｅ、Ｆランクの大学では卒業生の内定率が４割以下という学校が珍しくないのですが、増加した100万人の大学生の大半を引き受けたのも偏差値下位の大学なわけですから、母集団が大きい下位グループで内定率が低下すれば、内定率の高い上位グループと合算しても、全体は７０％前後に落ち着いてしまうわけで、一種の統計数値の魔術です。　受験戦争時代と比較すれば、ほとんど無試験に近い大学に入って在学中は遊びほうけて無資格のまま卒業を迎え、それていて就職する時になって大企業で正規雇用のホワイトカラーといった就職先を探しても、そういう大企業が求める人材とは能力面で著しい乖離があるだけに就職が難しくなるのは当前で、逆に中堅以上の大学で危機意識を持って資格などもつつがなく習得し、それなりの大学生活を過ごしていれば、それなりの就職先には不自由しないということです。　しかしながら、ではなぜろくに就職も出来ない大学生を量産する体制を文部科学省は認可したのか？という疑問が出てくるわけで、大卒だから就職できるのではなく、一定水準を満たす能力がある（と見込まれる）から採用するわけで、社会が求める人材を養成できず卒業証書だけ渡す大学を量産し、大学院の院生も増加させたのは明かな失政ではないのか？・・・　というか、教育関係者の価値観が一般社会と乖離していて、（近未来の）社会が求める人材を育成できていないことに危機感を持っていないのも不思議。　そうした教育制度を構築した当事者でありながら、ＴＶ、ＰＣ、携帯電話などが若者を駄目にした！と主張する税金で飯を食っている阿呆な年輩者は珍しく無く、ＰＣや携帯電話を使いこなすことを前提にした教育カリキュラムも、指導できる教員の養成もできていないことに危機感が皆無に近い教育行政を前に、学校教育関係者が一番旧態依然でいるのではないのか？　少なくとも、大学生の就職内定率の低下は、大学側の経営の都合で学生を厳選しなくなり、大学生のお馬鹿さん化を加速したことが直接の原因なんじゃないか？という気がしないでもありません　・・・　高校や大学は義務教育では無いわけですから、一定の結果を出せない人材に税金を使ってまで勉強をしていただく必要は無いと私は思います。　つまり、ゆとり教育で”ゆとり～君”が量産されるようになっても、大学が入試のハードルを下げず、逆に世界水準を越える高さに徐々に上げていれば、九九さえ怪しく、小学生レベルの漢字の知識が怪しい大学生なんてものはここまで大量に誕生しなかったのではなかろうか？　或いは、亜米利加の大学で、”入学するのは比較的簡単でも、卒業するのは難しい”とされる大学が珍しく無いように、一定水準に学力が達しなければ留年させて、留年が一定年続けば退学させてこそ大学の教育水準が維持できるのではなかろうか？　まあ、美男美女というのも一つの資産で、ずば抜けている顔やスタイル、或いは運動神経で勝負する世界に学校の勉強は不要というのも一つの真理ですが、少なくとも私たちの世代では、いくらお馬鹿さんでも、九九を覚えていないことは恥ずかしい事と認識していたのは確かな話になります。　昔から九九やａｂｃの類を満足に覚えていない人はいましたから、そのことはそれほど驚かないのですが、問題は、それを恥ずかしいことと思わなくなっている子が”ゆとり～君”世代になると激増していることで、だからといってそれに代わる技芸の類を身に付けているわけでも、それなりの人脈が築けているわけでもない　・・・　早い話、何も売りになるモノを身に付けないまま、根拠の無い自信とプライドだけはある子が目立つわけです。　興味深いのは、”受験戦争と言われた時代の暗記中心の教育は良くない”と主張し”ゆとり～君”教育の導入に熱心だった人の多くが、”コンピュータやネット社会は人間性を阻害する”と主張する傾向があるというか、ＩＴ社会に適応できない教育関係者が多いのですが、私に言わせれば、”薔薇”や”憂鬱”などが手書きできて、２０～３０くらいの電話番号を半月もあれば暗記でき、”メールで送っておいてくれ！”と上司に指示されれば、いそいそと手書きで書類をこしらえて封筒に入れて切手を貼って近くのポストに投函しに行くことしかできない人材を量産して何がしたいのか？　ところで、2011年の京都大学などの入試で、某受験生が携帯電話を使ってインターネットにテストの問題を漏洩し、その解答を広く求め、自分の解答に反映して騒動になったのですが、私が驚いたのは、未だに入試会場のカンニング対策が巡回と目視という旧態依然の体制だったことです。　某常連さんともその話になって、”会社では重要な打ち合わせのときは、ジャマー（妨害電波発生装置）を作動させて携帯電話の電波に限らず、盗聴器の電波も遮断するのが普通になっちゃてますけどねえ？”という話になったのですが、実際、携帯電話の電波に対して妨害電波を発生させるジャマーをなぜ試験会場で使っていないのか？　１台が数百万円という装置ならともかく、半径数メートル程度の電波妨害なら数万円程から市販されている装置だけに、”単に大学側の知識不足なんじゃねえの？”という後輩の指摘ももっともで、金属探知器を導入しろと主張するマスコミの誘導も”時代遅れ”というかスマートじゃないなと。　というか、ＥＣＭ（Electronic countermeasures）がより積極的な電子攻撃（Electronic Attack (EA)）と呼ばれるようになって２０年以上が経過し、妨害電波を使った電波妨害（ジャミング）といえば日露戦争にまで遡る電子戦（Electronic Warfare）の基本中の基本なわけで、ＩＴ社会での諜報活動においても必須の知識です。　それだけに、大丈夫か京大？・・・　私なんぞに、その対応の遅さを心配されている時点で（笑）。　それ以前の話として、携帯電話でネットに問題をアップして、不特定多数から正解かどうか確証のない回答を得て、自分の解答に反映することを入試に置ける違反行為であると、それぞれの大学は明文化していたのだろうか？　インターネットにアクセスできる携帯電話が登場して普及が始まってからでも１０年以上が経過しているのに、禁止事項の中に明文化しておかないで、それは想定外だが犯罪行為だと主張するのは後出しジャンケンと同じで筋が通らない気がするのですが？　もっとも、入試会場にネット接続できるパソコンを持ち込んでもいいんじゃないか？ネットに繋がったパソコンがあれば一定時間内に解答が確実に出るような問題そのものが時代遅れなんじゃないのか？一般社会の事務処理で手書きがどんどん消えている時代に、いつまで解答を手書きさせて、手書き文字の美醜を競わせてるんだ？？　数学にしても、今日日、手計算で微分積分や重回帰計算の類をどれくらいの専門家がやっているのか？文章題から計算式を考えつく力は必要でも、計算そのものを筆算で行う事に何の価値があるのか？翻訳ソフトで解答が出るような英文読解や英作文のテストに何の意味があるのか？　・・・　前例踏襲が大好きで、まさに十年一日な光景（笑）。＊　で、前例踏襲が通用しない社会にこの直後になったわけですから、この春休みの間に、大学生は身の振り方を”腹を据えて”考える必要があります。初出：一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第０６１話：（2011/03/11）

2011.03.16

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寺子屋

一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第０５３話　「寺子屋」　かって、”読み、書き、算盤”というのは、日本人にとって、ある程度の水準で習得していないと恥ずかしい技能だったのですが、”ゆとり～君”世代になるとかなり怪しくなっているのは御存知の通り　・・・　もちろん格差社会だけに、賢い子はとことん賢いのですが（笑）。　それはさておき、江戸時代の教育機関として、”寺子屋（てらこや）”があり、士農工商の主に農工商に属する子供達が基本的な書きと算盤の類を教わっていたため、日本の（特に都市部の）識字率は同時代の欧米諸国よりも高かったという説があります。　読み書き算盤の中で、主に書きを意味する手習いを教わる先を”寺子屋”というのは中世の寺院教育が始まりだった名残で明治初年の頃に全国で約１万５千軒に達していたそうですが、寺子屋というのは主に上方の言い方で、江戸では、単に”手習師匠”と言うのが一般的で、手習師匠は武家の師匠と町師匠に大別されていました。　町師匠は町人と浪人に大別され、町人は僧侶、神官、書家、医者などの兼業が多かったようですが、武家の師匠と町師匠の違いは町師匠は必ず算盤を教えたことくらいで、机の並べ方、男女の別、授業料の類などには大差が無く、手習いに通わなくなっても盆暮れの挨拶などに弟子が訪れたり、師匠が養子や婿や嫁の世話をすることは珍しく無かったようです。　ある意味で、生きている間は手習いの師匠の世話になり、死んだ後は檀家寺の世話になるのが江戸時代の一つの光景だったのかもしれませんが、武家の師匠は旗本、御家人で文字が上手な人がなっていて、文武の師匠をしているとなると上の方の覚えもよろしかったため、生活の助けもさることながら、出世の糸口と考えていた節もあるようです（笑）。　手習い師匠の処へ弟子入りする日時はいつでもよかったそうで、４月から新学期といった決まり事も無かったのですが、７～８歳になった２月の初午（はつうま）の日か、３月頃から通い始める子が多く、武家の師匠のところへ町人の子弟が教わりにいっても良かったのですが、町師匠に武家の子弟が教わることは極めて希だったようです。　上方の寺子屋では男女の別がそれほど五月蠅くなかったようですが、江戸の場合は、武家でも町人でも男女の区別がかなり五月蠅かったようで、それこそ一部屋で教える場合も男女を分け、学級委員というより助手というか代用教員の方が近い”番頭”も男女別だったそうですが、師匠は男性が多かったものの、師匠の奥さんが女の子にお裁縫を教えることはあったようです。　一人の師匠が預かる子供の数は、７、８０人～３００人程度だったそうですが、年齢によって大中小の３グループに分けて教えるスタイルが主流で、現在の複式学級に近い形態ですが、人数が多いと前述した番頭が師匠の助手として３０～４０人程度を受け持って教える事があったようですが、剣術道場の師範代とか塾頭と似たような立ち位置と考えてよさそうです。　費用は時代によって異なるのですが、幕末の頃で、入門に際して、入学金に相当する束脩（そくしゅう）が２朱、奥方へ砂糖を一斤くらい付け届けする程度で、後は月謝が２００文程度、毎月25日に天神講の掛け金が２４文、盆暮れの付け届けとして２朱と砂糖を少々といった程度だったようです。　微妙なのは、夏に”畳銭”として２００～３００文、冬に”炭銭”としてやはり２００～３００文が徴収する寺子屋や師匠が珍しくなかったことですが、通ってくる子供の数や教室の程度によって微妙に幅があったようですが、あまりにせこく取り立てていると弟子が減るだけに、匙加減が難しかったようです（笑）。　なお、天神講というのは学問の神様として知られる菅原道真（天神様、太宰府天満宮、北野天満宮）の命日（２月25日）の祀りで、月命日（毎月25日）にも天満宮の祀りを行う手習いの師匠もいたそうですが、年に１回か２回は天満宮に出向いて”お席書き（おせがき：弟子達の作品展）”をして奉納していたようです。　天神といえば、弟子入りのときに天神机という手習い用の引き出しのない簡単な机を持参するのが約束事で、天神机は身内や知り合いなどで使い回しもしていたようですが、後は筆と硯に草子が十冊といったところが弟子が用意していくものの定番だったようです。　学習指導要領も無い時代ですし、師匠の資格試験があるわけでもありませんから、好き勝手に教えてもよさそうなものですが、定番の教科書のようなものがあったことから、江戸でも上方でも似たようなことを教わっていたようで、なにはともあれ、”いろは”から話が始まっています。　ちなみに、手習いの師匠が教えるのは、仮名、草書、行書の三種類としたもので、楷書は普通一般には用いられていなかったこともあって、書家として身を立てるのならともかく、隷書から分派して一点一画を正確に書いて方正な形にまとめる楷書を一般人で学ぶ人は希で趣味の類とされ、手書きが前提の時代だけに実用性も低かったようです　・・・　ＩＴ時代には重宝していますが。　さて、平仮名をマスターしたら、次は数字の壱（一）、弐（二）、参（三）が待っているのですが、数字をマスターしたら、次は手紙文の往来物で、いよいよ本字（漢字）仮名交じりの学習が始まりますが、往来とはもともと往復で１組とした手紙集のことですが、初学の場合、単語や文を抜粋して集めたものが使われたようです。　ところで、草書というのは、あのくねくねした連綿体で知られていますが、いわゆる御家流（或いは、大橋流、溝口流、持明院流）で、公文書や立て看板などの布告に用いられていましたから読めないと、いささか不自由したようですが、各種の草子などを含む刊行物には行書が多かったようで、行書と草書は混在していても、楷書よりはですが、相性が良いようです。　基本的な手紙文が終わると、日本六十余州の国名を集めた”日本国尽”を経て、江戸だと”江戸方角”で、”御城外、東者、和田倉・八代洲河岸・龍口・呉服橋・日本橋　・・・　布施弁財天・真間継橋・弘法寺。関東道、六町一里而（にして）、凡三十里四方之間、六十余州群集、誠日々富貴而、万歳春（ばんせいがはる）、不可有際限候（さいげんあるべからずそうろう）。恐惶謹言（きょうこうきんげん）”。　といった具合に、地名を覚えながら字も覚えていったのですが、この後は往来物を本格的に学び始め、”庭訓往来（ていきんおうらい）”は定番中の定番で、正月から１２月までの１２ヶ月間の往復書簡で25通の手紙文例として有名ですが、作者は不明というか実際の手紙から抜粋したのか架空の教材なのかも不明です。　が、”春の初の御悦、・・・、恐惶謹言”には”改年の吉慶、・・・。恐々謹言”くらいは覚えておいていい気がしますが、念のために書いておくと原文は漢文ですから下手に知ったかぶりはしない方が吉であることは言うまでも無い（笑）。　その次は”東海道往来”で東海道五十三次の地名を美文調で学ぶのですが、”都路は五十路余りに三つの宿、時得て咲くや江戸のはな、波静なる品川を、頓（やが）てこえ来る河崎の、軒端ならぶる神奈川は、はや保谷（ほどがや）のほどもなく、くれて戸塚に宿る羅（ら）ん。・・、はなのにしきの九重に、心うきたつミやこぞと、君の寿いわいたりけり。かしこ。”といった具合です。　後は身分によって違いがでてきて、百姓の子は”百姓往来”、大工など職人の子は”番匠往来”、商人の子は”商売往来”といった具合に、実用的な往来を学んでいったようです　・・・　何時の世も商売往来の汎用性が高いのですが（笑）。　往来物を終えたあたりで卒業ということになるのですが、普通は３～４年はかかっていたようで、これ以上の内容を学ぶとなると、金と暇のある人か物好きとされたようですが、武家の師匠の場合、武家が基本的に算盤に明るくない人の集合体ですから（笑）、算盤を教えるかどうかはまちまちだったようで、庶民の実学という点では算盤が必須なだけに、師匠選びの目安になっていたようです。　もっとも、オプションで諸礼式や茶の湯などを教えていたのは武家の師匠や町師匠だと僧侶が多く、その場合は別料金の課外授業とでもいった扱いになっていたようですが、どちらかとえば寺子屋や手習いを卒業した後の習い事としてオトナが通うことが多くなっていったようです。　江戸時代も後半になると庶民に余裕が出てきて、寺子屋を卒業した後の習い事も盛んになり、舞踊、三味線、琴、華道、茶道といった定番から、義太夫（竹本と豊竹が２大流派）、常磐津（ときわづ）、唄浄瑠璃、長唄、小唄、俳句、川柳、狂歌などに人気があったようですが、男性の場合、早い話、女性の師匠の下には女性の弟子が多いだけに下心に満ちていたようです（笑）。　それに対して町娘の場合は、武家屋敷に行儀見習いとして奉公に上がるために芸事を習ったようで、奉公に上がって当主や若の手がついて側室や妾になることもあったようですが、武家に奉公した経験があると、その武家と縁故ができる上に結婚するときに箔が付いたので、玉の輿に乗るための先行投資の側面があったようですが、もちろん、親の財力で左右されたことは言うまでもありません。　武家の方でも、大店の娘を側室や妾にしたり、ワンクッション置いて武家の養女にしてから本妻にすることで、実家からの財政援助が期待できる場合、家柄や格式にもよるのでしょうが、時代が下がって財政状態が悪化してくると、まったく当てにしていなかったとは言い切れないようです。　ちなみに、”読み書き算盤”といいながら、”読み”は手習いの師匠はもちろん、寺子屋でも教えていないのですが、”書ければ読めるんじゃないの？”というのは”読み”を誤解している人で、素読となると漢文を読み下すことで、教材は四書五経が定番ですが、基本的に武家の教養として幼少時から暗誦させられ、藩校に通って本格的に内容の理解へ進んでいたようですから、庶民には縁が無かったようです。　逆に、士農工商で商人が一番下の身分とされたことから、武家は算盤ができなくて当たり前という風潮（”武士の家計簿（磯田道史：新潮新書：2003）”が分かりやすい）もあり、結果的に、町人は、”書き、算盤”、大半の武家は”読み、書き”に特化し、”読み、書き、算盤”がこなせるマルチな人材はかなり限られた武家くらいだったというのが怪しい話の結論になります　・・・・・・　例によって、最後にすべてをぶちこわしている気もしますが、”読み書き算盤”という技能を、日本人の、特に一般庶民が普通に身に付けていたことは無く、”武家でも勘定方などで実際に算盤をはじいていた人達くらいで、かなり希な存在だったんじゃないの？”と私は言いたい（大笑）。初出：一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第０５３話：（2011/03/02）

2011.03.08

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蛇口を捻ると

一夢庵　怪しい話　第３シリーズ　第８８７話　「蛇口を捻ると」　蛇口を捻ると水が出てくる事が多いのですが、小さな頃には”ジュースが出てきてもいいんじゃない？”と思った事がある人は珍しくないようです（笑）。　もっとも、養老の滝の説話どころか、日本だと贅沢な酒宴の代名詞でもある、”酒池肉林”という言葉の語源は、中国の歴史書”史記”の一篇の”殷本紀”によればですが、殷の紂王（ちゅうおう）が愛姫の妲己（だっき）の歓心を得るために、妲己が望むまま言うがままに酒色に耽った実例の一つとして、酒の池を造り、調理した豚肉を木に吊して、好きなように飲み食いさせた話になります　・・・　つまり、実際にお菓子の家のオトナバーションをやらかした人がいたわけです（笑）。　週刊少年ジャンプで漫画化された（藤崎竜：1996～2000）こともあって”封神演義（ほうしんえんぎ）”の登場人物でもある”妲己”を知っている日本人は意外と多いのですが、後日談として、妲己の正体は白面金毛九尾の狐で、大陸での抗争に敗れて日本へ流れてきて朝廷に入り込み、鳥羽上皇の愛妾”玉藻前”となっていたものの正体を見破られ、軍勢に追いつめられ石と化して立ち往生していたところ、至徳２（1385）年に玄翁和尚によって打ち砕かれ、そのかけらが飛散して殺生石となったという話は以前にした事があります。　一番有名な殺生石は栃木県那須町の那須湯本温泉付近にある溶岩ですが、殺生石の一部が飛散した先として、美作国高田（岡山県真庭市勝山）、越後国高田（新潟県上越市）、安芸国高田（広島県安芸高田市）の３ヶ所と、豊後国高田（大分県豊後高田市）といった高田の地名がある場所が知られています。　岡山県真庭市勝山が岡山県真庭郡勝山町だった頃というか、最初に赴任した出張所が勝山町で、化生寺の前を通って出張所まで２年程通勤していたことがあるだけに私的には思い入れがある話なのですが、当時は勝山町の観光案内に化生寺や殺生石の話が掲載されていることは希でした（笑）。　その後、真庭郡という名称は町村合併で真庭市が誕生したことで過去のモノとなったのですが、”刀語（かたながたり：2007～：西尾維新）”に真庭忍軍が登場し、スピンオフ作品として刀語の約２００年前を舞台に初代真庭忍軍の活躍を描いた”真庭語（まにわがたり：2008～）”まで出るという意外な展開を辿っています。　この話をしていると、”（山奥だと）ランプで生活していた集落とかまだあったのですか？”と聞かれる事があるのですが、既にランプは姿を消していて、自動車が一人に一台の下駄くらの感覚で普及していました。　もちろん、東京で電気が安定供給されるようになったのが明治２０（1887）年で、急速に全国に発電所と電灯が普及していったという話は、3-856”電気ブラン”の回でしましたが、逆に言えば、電灯が普及するまではランプが文明開化の利器として全国津々浦々に普及していた時期が確かにあったわけです。　ちなみに、ランプが普及し、やがて電灯に追われて消えていく時代の移り変わりを描いた作品として、童話の”おぢいさんのランプ（1942：新美南吉）”を私は思い出す事が多いのですが、ここのところ、別の意味で想起することが多くなってきています。＊　”おじいさんのランプ”は青空文庫で読むことができます。　ランプという当時最先端の文明の利器を売りさばこうと目論んだお祖父さん（巳之助）の少年時代は日露戦争の時分になるそうですが、少年が町で見かけて、これだ！これが文明開化だ！と思ったランプを田舎で売りさばく商売は、当初上手くいかず、　”新しいしょうばいは、はじめのうちまるではやらなかった。百姓たちは何でも新しいものを信用しないからである。”と解説があった後、その便利さが知られるのに比例して加速度的にランプが売れていくようになる描写が続き、お祖父さんはランプ屋を営むことで、人として成長しながら一財産築いたようです。　が、やがて周辺の町に電柱が建てられ電線が張られていき、電灯が普及するようになると、成長していた巳之助にも電灯に遭遇する日が来るのですが、ランプ屋として成功してきただけに、素直に電灯を評価することができず、かってのランプの営業先だった甘酒屋のとッつあんに、　”「巳之さん、そういっちゃ何だが、とてもランプで太刀うちはできないよ。ちょっと外へくびを出して町通りを見てごらんよ」”と言われ、”くやしさに肩でいきをしながら、これも長い間ながめ”ることになったのですが、電灯の利を認めればランプ屋の職を失う事に直結するだけに、電灯の利を素直に認める事ができなかったとしています。　その辺り、新美南吉は”りこうな人でも、自分が職を失うかどうかというようなときには、物事の判断が正しくつかなくなることがあるものだ。”と解説し、巳之助が何をどう思ったところで、ランプより便利な電灯が田舎にも急速に普及していく描写が続くことになります。　で、私がこの作品でお気に入りな、”「電気というものは、長い線で山の奥からひっぱって来るもんだでのイ、その線をば夜中に狐や狸がつたって来て、この近ぺんの田畠を荒らすことはうけあいだね」”と電気が通り電灯が普及する事に反対する理由になってない理由を巳之助が村人たちに話すあたりだったりします。　ちなみに、村会で岩滑新田（やなべしんでん）にも電気を引くことが決まると、職を失う事がほぼ確定した巳之助は区長さんを逆恨みし、夜陰に紛れて区長さんの家の牛小屋に放火しようと忍び込むのですが、家を出るときに、たまたまマッチが見つからなかったので、少し前まで日常的に使っていた火打ち道具を持ち込んで使ったら、なかなか火がつかず、ふと”「古くせえもなア、いざというとき間にあわねえ、……古くせえもなア間にあわねえ……」”とぼやき、ぼやいたことで我に返るのでした。　我に返ったことで、放火は止めて、ランプ屋稼業も止めて本屋に転職するのですが、ランプの利用に関しては、その後もしばらく商売になる規模で続いた地区もあったようです。　ところで、2010年に入って日本でも「電子書籍元年」と言われる状況になり、電子書籍が閲覧できる電子端末を小中学生に配って「電子教科書」として利用する構想が本格化してきているのですが、それに対して、既に聞き飽きた感がある、「人格形成にゆがみが生じる」などと主張する、ノンフィクション作家の柳田邦男やジャーナリストの田原総一朗などが、またまた妨害行為というか横槍を入れて遅延させようとしているのは御存知の通り。　電子書籍に関しては、既に先進国としては出遅れの感があるくらいですが、やっと日本政府も「新成長戦略」などで、全生徒・児童に学習者用の端末を配布する方針をすでに決めており、2011年度には一部の小中学校で、電子教科書を活用した実証実験を始める方針ですが、一部の私立大学などは既に2010年から電子書籍の利用を前提にしたタブレット型ＰＣの導入が始まり、電子書籍を前提とした教育システムの構築と試行錯誤が始まっています。　近視と乱視で小学生の頃から黒板の内容を書き写すのに難儀をした私としては、いわゆる”電子黒板”として教員が大型モニター端末を利用して文字などを映す「指導用」と、生徒に１台ずつ配布される「学習者用」のタブレット端末が連動する環境をさっさと構築しろと思っているのですが（笑）、小学校の低学年～中学年くらいまではノートへ書き写す作業を並行させる事で基本的な漢字などをマスターさせた方が効率が良いとも思っています。　まあ、それほど電子機器による教育を万能とも思っていないということですが、マークシート世代だけに（笑）、”いつまで字を書かせるつもりなんだ？”とも思っています。　つまり、これを書いている時点でさえ、学校を卒業するか中退するかして社会に出て、事務職としてどこかに就職した場合、手書きで書類を作成するような企業は皆無に近くなっていますし、公務員業界でさえ書類管理や情報共有などで電子化が進み、電子メールの利用を”人間性や人間関係を損なう”という理由で拒否すれば、”じゃ、君は明日から来なくていいよ”と言われるか、最初から雇用されない状況になってきているということです。　或いは、コンビニでアルバイトをしようとしても、在庫管理などは既にタブレット型の端末でオンラインでリアルタイム処理し、ポスシステムで幕を開けたレジの電子化は、本社のサーバと直結して売上高だけでなく、時間、気温、天気などなどと売れている商品の関連などの情報処理をする時代になって久しいわけで、”コンピュータの利用は人間性を阻害しますから、私は紙伝票と算盤でしか仕事はしません”という人を雇うコンビニがあるのかどうか？私は寡聞にして知りません。　なお、電子教科書の推進団体「デジタル教科書教材協議会」の会長を務める小宮山宏・三菱総合研究所理事長は「世界の取り組みが進む中、ピッチを上げないと間に合わない」と言っていて、2015年までに全国の小中学校に普及させたいと言っているものの、”それでも遅い”というのが本音ではないかと思います。　私に言わせれば、電子書籍の普及というのは、１９９０年代に始まったＩＴ革命の第２段階に過ぎず、日本人にとっては文明開化が更に進んだだけのことで、ランプの時代に戻ることはしてはいけないことだと考えていますし、既に受験生達の大半が紙の辞書を捨ててバイブルサイズ（よりやや薄い）程度の電子辞書に乗り換えているのは御存知の通り。　ちなみに、”おぢいさんのランプ”の終盤で、孫の東一に祖父の巳之助はランプ屋だった頃の話をして、「・・・　日本がすすんで、自分の古いしょうばいがお役に立たなくなったら、すっぱりそいつをすてるのだ。いつまでもきたなく古いしょうばいにかじりついていたり、自分のしょうばいがはやっていた昔の方がよかったといったり、世の中のすすんだことをうらんだり、そんな意気地のねえことは決してしないということだ」と話を結んでいます。初出：一夢庵　怪しい話　第３シリーズ　第８８７話：(2010/08/20)

2010.08.26

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セーラー服学

一夢庵　怪しい話　第３シリーズ　第８４４話　「セーラー服学」　昔、スケバン刑事のキャッチコピーの一つに、”セーラー服は学園の戦闘服だ！”というのがあったのですが、別に学園でなくてもセーラー服は戦闘服の一種です（笑）。　軍服としてのセーラー服は、1857年に英吉利海軍で水兵の制服として採用された軍服で、その後、海軍幼年学校の制服にも採用されたのですが、そもそもは、英吉利の１９世紀前半には登場していた子供の野外用の防寒着がセーラー服の原形という説もあります。　海軍幼年学校の制服として採用されたこともあってか、子供服としてのセーラー服は、男の子は下がズボン、女の子はスカート姿で欧羅巴諸国にも普及していき、第２次世界大戦頃までは女子生徒の制服として採用する学校も多かったようです。　当時、英吉利海軍は世界最強と評価される事が多く、模倣する国も多かったのですが、英吉利海軍に習ってセーラー服を軍服として採用した国は多く、日本海軍もセーラー服を水兵の軍服として明治５（1872）年に採用しています　というか、一昔前の日本の男子学生がよく着用していた詰め襟の学生服、いわゆる”学ラン”は、日露戦争の頃の軍服と大差が無く、日本の場合、軍服をアレンジして学生服とした学校が珍しく無いと言えます。　このあたり、男子学生には定番の制服があるのだから、女子学生にも定番の制服があってしかるべきだという意見が多くなり、基督教系の女子校から普及していたセーラー服を制服として採用する学校が増えていったようです。　セーラー服を考察する場合、戦前の教育制度に関する知識が不可欠になるのですが、そもそも論でいくと、日本海軍がセーラー服を水兵の制服として採用したのと同じ明治初５（1872）年に学制が敷かれて義務教育が始まったあたりから話が始まります。　例によって凄まじく大雑把な話になるのですが、明治初期の小学校は１６段階制で、半年に１度の試験に合格しないと上の段階へ進めないという、”バカでも黙って座っていればトコロテン式に進級できる”方式とは一線を画していました。　また、教室内の座席の位置も、くじ引きで決めるようなヘタレな事はしておらず、試験の成績順に席の順番が決まっていて、そこから”席次（＝成績の順位）”という言葉が産まれたりもしていまして、”学校は勉強しに行くところ”という考え方が徹底していた時代だったようです。　もっとも全国の小学校で１６段階の学級を運用するには資金や人材が不足するようになりましたし、バカは上の級へ進めませんから中退者が続出するようにもなったため、明治１５年に小学校教育には手が加えられます。　ちなみに、学制が制定された段階で、既に大枠では学区制が導入されていて、全国を８つの大学区に分けて、それぞれの区に大学を置く８大学制とし、大学の下に中学校を（全国で２５６校）置く体制が制定されています。　明治１５年からは、１６段階制から学年制に切り替えられたのですが、戦前の義務教育は小学校までで、中学へ進学しようと思えば”お受験”を突破する必要があり、より良い高校や大学へ進学するつもりならば、良い中学へ進学した方が有利だったというのは、今も昔も変わらない原則なのかもしれません（笑）。　ある意味で、どの中学校へ進学したかでその後の高校進学の可能性が左右された時代ですから、中学浪人も珍しく無くなっていったようで、大正８年頃には中学校合格者は現役学生より浪人生の方が多くなっていたようで、戦前の方が余程受験戦争は戦後より苛烈だったと言えます。　もちろん、何時の時代にも抜け道のような進学ルートは存在するものですし、地方より都会の中学校の方が高校、大学への進学に有利だったこともあり、都市部にあってエスカレーター式に高校へ進学できた”高等学校尋常課”の人気が高かったというのは定説です。　さて、前述したように学制が敷かれた時点で全国の中学の数は２５６校とされたのですが、高校の数は？となると、これが全国で３５校しかありませんでしたから、高校進学もまた激戦ですが、篩がかかるのは高校進学までで、高校受験生全体の約１割に相当する合格者に残れば、高校の定員と大学の定員がほぼイコールでしたから、余程のことが無ければ、どこかの帝大に入る事はできたようです。　ただし、戦前の教育制度は分岐型で、義務教育終了後は、大学教育を頂点とする学術系と職人に代表される技能技術系に進路が分かれていましたから、現在の教育制度に近い進学コースとは別に、戦前は軍関係の進学コースというか教育制度があった他にも、青年学校や専門学校への進学というコースもあったため、現実的な選択肢があった時代と言えるのかもしれません。　が、男性も女性も最終学歴が尋常小学校で、小学校卒業と同時に社会に出て働いた人が珍しく無かった時代でもあったわけです。　戦前の教育の一つの特徴は、女性に対して（本土では）大学の門が事実上開かれておらず、当初は男子の中学校とほぼ同等とされた高等女学校が事実上の最高学歴になっていたのですが、昭和に入った頃には進学率では、高校へ進学する男性の割合とほぼ拮抗する進学水準になっていたようです。　歴史的には、政府が「教育令」で法令として「男女別学」を明文化し、その時点で女子の中学校進学は事実上不可能となったため、小学校を卒業した後の女子生徒の進学先となった「高等女学校」の法的な位置付けが必要になったのですが、「高等女学校令」の明治４１（1908）年の改定で、やっと男子の高等学校（大学予科）と同等の高等教育機関として位置付けられ、各地に高等女学校が急速に整備されるようになります。　なお、高等女学校から先の進学は、高等女学校の専攻科及び高等科、師範学校の女子部、女子高等師範学校、女子専門学校、女性を受け入れていた一部の私立大学などに限られていたのですが、卒業後の就職事情が現在とはかなり違っていたことも考慮しておく必要があります。　それはともかく、高等女学校の教育が良妻賢母教育が主だったとはいっても、高等女学校まで進学できた女性というのは大東亜戦争末期の女性の進学率が高くなっていた頃でも５～６人に１人程度だったのですが、総数では１００万人近くが進学するようになっていましたし、大東亜戦争に入った頃から（戦時特例だったのかもしれませんが）大学の門戸を女性にも解放する方向で調整が進んでいたそうです。　いずれにしても、当時、高等女学校に進学できたということは、親にある程度の経済力があって、本人の頭が比較的良いことの証明にもなっていたわけですから、戦前の結婚制度などから考えると、ある種の嫁入り道具の役割も果たしていたのかも知れません。　興味深いのは、戦後の学制改革で、高等女学校から（男女共学を含む）高校に母校が変わった場合、高等女学校時代の卒業生の多くが、高等女学校時代に入学していた女子生徒までを同窓生とし、戦後に高校なって以降は”別の学校”の生徒と分けて考えているケースが多いことで、かなり誇りを持っているようです。　そう考えると、男子の詰め襟の学生服に相当する制服を高等女学校の生徒や父兄がなどが欲しがったのも、ある種のエリート意識があったと考えるべきなのかもしれませんが、英吉利海軍の水夫（セーラー）の軍服に襟を付けたブラウスを上着にし、（本来は止血帯や三角巾、簡易マスクなどなど他用途に使える）三角スカーフ、ひだの着いたスカートといったセーラー服が制服として大正８（1919）年頃に考案され、都市部の学校から普及が始まったようです。　日本に初めて学校制服としてセーラー服が導入された学校がどこか？には諸説ありますが、大正９（1920）年に京都の平安女学院がセーラー衿の付いた濃色のワンピース型を通学服として正式に徽章（バッジ）と同時に採用したのが最初とされ、おなじみの上下セパレート型は福岡女学院が1921年に採用したのが最初とされていますが、福岡女学院の場合、当初は学生服ではなく体操服として正式採用されたそうで、創立者で宣教師でもあったジェニー・ギール女史が発案したとされています。　ちなみに、平安女学院は明治８（1875）年に大阪川口居留地で米国聖公会から派遣されたミス・エディが女学校を創立したのが始まりだそうで、明治13（1880）年に照暗女学校（St.Agnes' School）となり、明治25（1892）年に京都府が「私立照暗女学校」の設立を許可したことで、明治27年に校名を「平安女学院」と改称した後、翌年、京都で開校したというのが大まかな歴史になるようです。　これまたちなみに、大正１１年に関東地区で最初にセーラー服を取り入れたフェリス女学院（神奈川県横浜市）も宣教師だったメアリー・E・キダー女史によって明治３年に創立された学校であることを考えると、欧羅巴の子供服や学校の制服、あるいは仏蘭西あたりの女性のファッション情報などを入手するチャンスがあった女子校ほど早い段階でセーラー服を採用し、ハイカラで機能的な服として他の高等女学校にも制服として採用する動きが広がっていったのかもしれません。　あれこれ考えていると、”はいからさんが通る（大和和紀：1975～1977）”の時代はセーラー服が登場する前後の時代ということになり、主人公の花村紅緒（はなむらべにお）が高等女学校へ通っていた（作中に出てくる跡無女学館は私立の跡見学園（私立跡見学校）がモデルという説がある）とすれば、旦那の伊集院忍がシベリア出兵（1918～1925）に従軍したあたりから逆算すると、花緒が卒業した数年後くらいからセーラー服が制服として普及していった計算になります。＊　ちなみに、跡見学園は「ごきげんよう」の挨拶の発祥の地とされている　・・・　ハイソな話やな～。　紅緒はセーラー服以前の学生で着物に袴姿で描かれる事が多いのですが、高等女学校の袴といえば、華族女学校（現・学習院）の袴が海老茶で「海老茶式部」と呼ばれ、跡見の袴が紫で「紫衛門」と呼ばれたという話もあり、そうなると、紅緒の母校がどこなのか？と考える事は野暮なのかもしれませんが、もう少し設定した年代が後ならば、紅緒はセーラー服姿で描かれたのかもしれません　・・・　似合うような似合わないような（笑）。初出：一夢庵　怪しい話　第３シリーズ　第８４４話：(2010/07/01)

2010.07.07

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ボートの転覆

一夢庵　怪しい話　第３シリーズ　第８３８話　「ボートの転覆」　浜名湖に悪天候の中漕ぎ出したボート（全長７メートル、定員２０人）が転覆して女子中学生（12）１人が死亡する事故が起きた（2010/06/18）直後から、同じような質問を複数の常連さんからされたので、とりあえずの整理ということで。　明らかに、悪天候の中、ボートを湖へ漕ぎ出したのが最大の判断ミスで、日頃からある程度の訓練や教育をしているプロの船員や軍人などを養成する学校の実習というのならまだしも、ごく普通の市立中学校が、それこそ嵐の湖にボートを漕ぎ出して何の訓練するつもりだったのか？そもそもその訓練は必要不可欠だったのか？　では、どこに事件の責任があったのか？と聞かれれば、浜名湖の中に建っているといっても良いロケーションの「静岡県立三ケ日青年の家」の関係者がなぜ弱い台風並の悪天候なのにボートを出すことを認め、訓練を止めなかったのか？ということになります。　仮に、学校側が「静岡県立三ケ日青年の家」の中止のアドバイスや反対意見を押し切って訓練を強行していたのなら学校側の責任が青年の家側より大きくなるのですが、その場合でも現地の自然環境にもボート訓練のリスクにも中学校側より詳しいハズの青年の家のアドバイザーとしての責任がゼロになるわけではありません。　私は、風速が５ｍを越える状況で吹きさらしの海上や湖上に手漕ぎボートで出ていけと言われても御免ですが、ある程度日常的に訓練をしていて一般人からすれば”冒険”という状況をくぐり抜ける事が珍しく無い人でも風速８～９ｍに達していれば、手漕ぎボートで沖に出たりせずに陸に上がって天候の回復待ちを選択したのではなかろうか？　当時の天気を調べてみると、梅雨前線の活動が活発化した１８日は九州南部や東海地方で激しい雨が降っていまして、気象庁が公表していたデータによると、”西日本と東日本では停滞する梅雨前線の影響で、１９日にかけて雷を伴った非常に激しい雨が降る見込み（１９日午後６時までの予想雨量は東海で２５０ミリ）”としていて、”土砂災害、河川の増水や氾濫、低地の浸水などに警戒”を呼びかけています　・・・　その中で訓練を中止しないのは軍隊の特殊部隊くらいのものではなかろうか？　静岡地方気象台によると、事故発生当時、浜松市南部には大雨強風注意報が発令され、午後３時１８分に瞬間風速１２・９メートルが観測されていまして、繰り返しになりますが、”なんでそんな悪天候で、しばらく天候の回復が望めそうもない天気予報だったにも関わらず湖に出たのか？”という根本的な決断の根拠が、やはり私には良く分かりません。　ちなみに、今回の手漕ぎボートは”カッター”と呼ばれ、現在では学校や海洋少年団などのボート訓練にも広く使われているタイプで、一昔前は連絡艇や外洋でも救命ボートとして利用されていました。　本来は、一昔前なら救命ボートにもなっていたくらいですから、悪天候には比較的強いタイプのボートなのですが、それも今は昔の評価で、現在の救命ボートは、まず沈む事がない専用のゴムボートや密閉型というかカプセル型のボートが主流になっています。　というか、カッターが救命ボートの主流だった時代でも、”熟練した水夫が指揮していたかどうか”というソフトの部分で明暗が分かれた事故が過去に多かったのは説明の必要も無いでしょう　・・・　もちろん、常に”運”が左右する部分はありますが。　それはともかく、時系列を整理すると、学校関係者ではなく、近くのホテルに宿泊していた人が転覆事故を目撃して通報したのが第１報のようで、浜松市消防局に「ボートが転覆した」という通報が入ったのが午後３時３１分、行方不明者が１人いることを同局が把握したのが午後４時１８分のことだったようです。　此の辺りは情報が錯綜しているのですが、行方不明者が１人いて、それが誰なのかが特定できたのが、午後４時半過ぎのこととされていて、ダイバーが行方不明の女子生徒をボートの中で発見したのが午後５時５１分の事になったようです。　ということは、事故発生から行方不明者発見まで約２時間半といったところですから、消防や警察の（アクアラングではなく素潜りの）装備、現場の悪天候といった条件などから考えれば、実質１時間半ほどで当初はいるかいないか分からなかった行方不明者を発見し、二次被害を出さずに他の生徒の救助を完了した、救援と捜索にあたった消防や警察は浜名湖を抱えているだけに水難救助に関してかなり優秀だったと書いてもいいのではないかと。　ちなみに、カッターのようなタイプのボートが転覆してうつ伏せになった場合、内から外へは一度水の中に潜ってからでないと出られませんから、泳ぎが得意でない人やライフジャケットの浮力をねじ伏せ一度潜って逃げ出すだけの体力が無い人が閉じこめられたままになっていたり、転覆時に頭部を強打して意識不明になって内部に取り残されている可能性は当然考慮すべきで、実際、数名が内部から外へ脱出しているわけですから、当然、ボートに同乗していた教諭達がまず内部の確認を徹底すべきで、”消防に言った”では済まない話なのです。　後日、愕然としたのは、この危険性を認知していた青年の家の所長が、本人も内部を確認したとは主張していますが、”ボートに乗った消防の職員に「必ず潜水して、船の中を確認して」と要請した”と保護者への説明会で発言していることで、”ボートが転覆するような曳航をして、事故直後から現場にいたあんたが、救助の消防隊員より先に内部へ潜って発見できなかったのに、なんで消防なら発見できると思った？”と私が親なら詰問しますが？　いずれにしても、転覆したボートの内側には、一時は教諭と１０人以上の生徒が取り残されていたようで、生徒がパニックに陥る中、教諭が号令をかけてボートの内側から脱出したともいうのですが、その際、この教諭はボート内部に生徒が残っていないかどうかの確認を徹底せず、転覆したボートの上に生徒達と一緒に残って救助に来た消防隊員に現場で状況を説明することもなく、さっさとモーターボートに乗って現場を離れるという、かなり問題のある対応をしたことになります。　こうした場合の本来の手順は、生徒が全員外へ出た事を確認してから、一番最後にリーダーである教諭が外へ出るべきですし、仮に生徒と同時に出てしまって、全員が脱出できたかどうかの確認ができない状況ならば、再度、取り残されている生徒がいないかどうか確認するために内部に戻る必要もあったわけです　・・・　自分たちの判断で湖上へ連れ出したわけですから、緊急時に教諭が命を張るのは当然の義務で、それが嫌なら湖に出すべきでは無かったのです。　ニュース映像を見る限り、転覆して船底を見せているボートの上に複数の要救助者が座って助けを待っていたくらいですから、仮にもう一度潜って内部を確認しても数分で済む程度の確認作業を行う時間はあったハズですし、全長７ｍほどのカッターで教諭の男（30代）女（50代）２人と生徒１８人しか乗っていなかったのですから、２人の教諭で転覆したカッターの内部を確認する事がそれほど時間がかかる作業だったとは思えません。＊　このあたり、ボートの幅より長いロープがあって２人の人員が外部にいれば、内部に潜らなくても、ロープを船の左から右へ（或いは逆から）横にくぐらせて張り、左右で同時に船首から船尾へ（或いはその逆に）ロープを平行移動させていくだけで内部にライフジャケットを着用している残存者がいればロープに引っかかります　・・・　野外活動に１０～２０ｍ程度のパラシュートコードや浮きの代わりにもなるペットボトルの類を監督責任者が自前で持参するのは基本ではないかと思うのですが？　県警の発表などでは、ボートは荒天のために手漕ぎでの移動が困難となり、生徒達も酔ったのか体調不良を訴えるようにもなっていたようで、訓練を中断して２０ｍ程のロープで結んでモーターボートで曳航していたところ、曳航開始から５分ほど、湖岸から百数十メートル程度の沖合で転覆したというのが経緯のようです。　私がこの事故で一番驚いたのは、２人の教諭がモーターボートに引き上げられたら、救助された８人の生徒と一緒に平然と先に陸へ戻っている事で、転覆したボートの上で生徒達と一緒に救助を待っていた成人男性は”青年の家”の所長だったということです　・・・　一般論として、大怪我をして意識不明とか出血多量になっていたのならともかく、モーターボートの上から転覆していたボートにつかまっている生徒達がいたことを教諭達は認識していただけに、オトナが自分たちが事故に遭わせたコドモより先に現場から逃げたわけで、それって人としてどうよ？　ちなみに、さっさと第１便で陸へ帰った教諭の１人は、「（モーターボートが）現場にまた戻ると思ったが波が非常に高く、二次被害を考えてかボートが再び出動しなかった」と校長に状況を説明したものの、”再度ボートを出して救助に向かうように要求した”とは言っていないようですし、青年の家の所長がモーターボートから湖に飛び込んで転覆したボートに生徒達と一緒に残っていたということは、教諭達もその気があれば現場に残れたということで、そうしていれば、後２人は生徒の方が先にモーターボートで陸へ帰れた計算になるんじゃありませんか？　これがどれくらい酷い状況かといえば、例えば、最前線で敵の大部隊と突然遭遇して戦闘状態撃になり、必死で反撃していた下っ端の兵隊たちが”うちの指揮官殿はどこ？自分たちはどうすればいいの？”と上官の居場所を確認したら、一番最初に逃げ出していく姿が見え、後日、その上官が”銃を持たせて訓練もさせていたから大丈夫だと判断した”と弁明する話と大差が無いわけです　・・・　ちなみに、戦場だとどのように言い訳しても、”あいつは俺たちを見捨てて逃げやがった”でお終いです。　結論として、”事故の発生が素人でも十分に予見できる悪天候下で大半が初心者の生徒を対象とした訓練を強行し、それでいて事故が発生した時に行うべき安否確認を怠り、さらに、生徒達を湖上に残して先に教諭達が陸へ避難している点などから判断して、これは偶発的な事故というより学校側の判断の甘さと同乗していた教諭達の無責任さが引き起こした事件の部類という気が（私は）します。初出：一夢庵　怪しい話　第３シリーズ　第８３８話：(2010/06/24)

2010.06.30

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カフェの女給

一夢庵　怪しい話　第３シリーズ　第８３４話　「カフェの女給」　珈琲は、アラビア圏では起源が定かでは無いくらい、ずいぶんと昔から飲まれているようですが、長らく、現在のイスラムの国々で定番の飲料だったようです。　逆に言えば、欧羅巴に伝わったというか欧羅巴でもそれほど苦労せずに飲めるようになったのは、大航海時代の到来で欧羅巴諸国の国力が次第に増大し、新航路を利用した東方貿易が本格化していった流れと無縁では無いようで、１７世紀頃になります。　その後、日本に１８世紀後半に伝来しているあたりから考えて、長崎出島における、いわゆる長崎貿易の交易品の一つになっていたのではないか思われますが、当然、”薬”扱いとなったようです。　明治になってからは、東京に日本橋に洗愁亭（1886）が、上野に可否茶館（1888）が開店したのが、日本における珈琲店の始まりというのが定説です。　もっとも、カフェということになると、明治４４（1911）年にオープンした”ライオン”と大正元年（1912）にオープンした”タイガー”が本格的なカフェの始まりと言う説があります。　実際、珈琲がある程度庶民にまで知られるほど普及したのは大正に入ってからだったようで、珈琲には大正浪漫の香りなのかもしれません　・・・　私見ですが（笑）。　さて、それこそ、文明開化の音がするとか、カフェで珈琲を飲む事がハイカラの象徴だった時代もあったのに、それが妙な方向へ突っ走るようになっていくのが関東大震災（大正１２（1923）年）以降というか、昭和に入って昭和恐慌（金融恐慌：昭和２（1927）年、世界恐慌：1929）が昭和５（1930）年に本格化したあたりからで、後にノーパン喫茶を産み出す土壌はその頃からあったということになります。　早い話、風俗産業と結びついた新形態のカフェが爆発的に広がったのですが、一応、昭和５年に北新地で開業した”ベニア”が皮切りという説が支持されていて、”接吻カフェ”として大繁盛すると、類似というか模倣店が急激に増加したそうです。　そうした場合、後発の店が先にお客を確保している店から客を奪うために行うことは、今も昔も大差が無かったようで、より過激なサービス、目立つ宣伝、低料金といった具合に、あれこれ工夫が凝らされたようです。　かくして、大阪で”風俗カフェ”とでもいった営業形態は数年でカフェの主流となり、昭和６年頃には、店舗数で３０００軒以上、女給というか女性従業員は１万２千人以上に達していたようで、ここにおいて劇的な変質が起こったと言えます。　もちろん、東京でも”風俗カフェ”に潜在的なニーズはあったようで、それほど間を置かずに大人気となって急増し、昭和７年の資料で、軒数で８０００軒以上、女給の数で１万８千人を超えていた事が推察できます。　ただ、こうなってくると、大正の頃までのカフェの女給が現在のウエイトレスに近い存在だったとすれば、風俗カフェの女給は現在のホステスやキャバ嬢とも違い、なによりキャバ嬢には（一応）店から給料が出ていることを考えると、当時の女給が職業と言っていいのかどうかさえ謎になってきます。　なぜなら、当時の風俗カフェの女給に店から給料は出ず、客からチップだけが収入源だったためですが、厳密には、逆に雑費や食費を女給から徴収した店も珍しくなかったそうですから、いわゆる”出会い系喫茶”などの方が実態に近いのかもしれません。　もちろん、珈琲を提供する事よりも風俗の方が主なサービスになってくると、カフェの女給と街娼にそれほどの差が無くなっているわけですから、堅気のお嬢さんの職業とはととても言えなくなりまして、現在でも、夜の街で働く女性達を”夜の蝶”と呼ぶ事があるのも、この頃の名残だったりします。　風俗カフェはそれまでのカフェと違って深夜営業にも対応する店が多く、麦酒や簡単な食事なども出してお酌もした店もあったようですから、従来のカフェとはほとんど別物になってしまっているのですが、それでもカフェと名乗った理由として考えられるのは、当時は公娼制度の時代だったということではないかと。　つまり、公娼制度下の既存の風俗店が江戸時代の吉原に相当するとすれば、風俗カフェというのは岡場所や宿場の飯盛り女に近い存在ということで、限りなく黒に近いグレーゾーンの存在だったのではないかと。　逆に言えば、既存の法律で規制されている風俗産業と同じようなことをして遊んでも、安価で手間が掛からなかったからこそ、風俗カフェが急伸できたのではないかということです。　もちろん、カフェだと主張するために店の女性の服装が昔ながらの女給の格好にする事が多かったと考えられますが、その意味では、風俗コスプレの元祖も風俗カフェになるのかもしれません。　ちなみに、一般的なカフェの女給の服装というと、茶屋の娘の前掛けの代わりに大きめのエプロンをしたという説があるのですが、和服の上に大きな白いエプロンをして、そのエプロンの紐は大きく蝶結びにするのが御約束になっていたのですが、特徴とされた大きな蝶結びと深夜営業にも対応しているところから”夜の蝶”と言う呼称が広まったとされています　・・・　誰が言いだしたのかは定かではありませんが。　んが、昭和８年頃になると、昭和恐慌の混乱も次第に収まり始め、ぼちぼち軍靴の音も聞こえ始める御時世となり、昭和１０年頃には急速に店内で風俗サービスを提供するカフェは減少していったようです　・・・　まあ、女給達が店の外で何をやっていたかは定かではありませんし、酒は引き続き提供する店が多かったようですが（笑）。　此の辺り、昭和恐慌の経済混乱で物価が下落というか崩壊し、風俗産業も安価なものでないと生き残れなかった時代に風俗カフェが誕生し、経済の持ち直しによってまた業態が変わっていったという解釈でもいいのでしょうが、それ故に、国内でも時差があったという話があります。　つまり、地方で都市の風俗カフェの噂を聞きつけた地方在住者が、既に都市部では店内で風俗サービスをしなくなっていたにも関わらず、東京や大阪などに行ったときに、噂に聞いた（或いは過去に経験した）サービスを強要して店側と揉める光景がしばらく生じていたということで、遊び慣れるというのは当時からなかなか難しいことだったようです。　で、昭和初期の風俗カフェ以前の女給達がどれくらい稼いでいたのか？というと、チップが１回に５０銭から１円というあたりが相場だったそうで、個人差は当然あったでしょうが、チップだけの月収で３０～５０円、年収で４００～５００円くらいになっていた人が多かったようですが、当然、水商売価格です。　当時は現在よりも遙かに過酷な格差社会だったのですが、同じ頃の一世帯あたり平均年収が約８００円、平均的なサラリーマンの年収が１４００円前後、大企業の課長クラスで年収１万円程度で、昭和８年頃の大衆食堂の昼の定食で２５銭、明治屋（菓子店）の喫茶部門の珈琲で１０銭。　なお、昭和初期の東京のスラム街の１日の食費は７銭が相場で、１世帯の平均月収が１５円程度だったという話は3-783”残飯屋”の回などで既に書いたのですが、当時の紡績工場などで働く同世代の女工と比べても、それほどカフェの女給が悲惨な職業と思えないあたりが昭和初期という時代の怖いところからもしれません。　まあ、その辺りは２１世紀の日本の社会でも大差が無い事なのかもしれませんが。初出：一夢庵　怪しい話　第３シリーズ　第８３４話：(2010/06/19)

2010.06.25

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駅伝考察

一夢庵　怪しい話　第３シリーズ　第８１８話　「駅伝考察」　日本の男子マラソンが、東京オリンピック（1964）で銅メダルを獲得した円谷幸吉（1940～1968）、続くメキシコオリンピック（1968）で君原健二（1941～）が２位といったメダルの常連だった時代もあったのですが、１９９０年代以降になると不思議なくらい表彰台で姿を見る事が無くなり、ジュニア世代の記録などを見ていると、北京オリンピック（2008）ということもあったのでしょうが、亜細亜記録となると、ほとんど中国の男女の若手選手が上位を独占するようになっています。　ただ、女子マラソンではコンスタントにメダル争いに加わる選手が出てきているだけに、”なぜ男子マラソンは凋落したのか？”という謎を前に考え込んでしまう人は珍しく無いのではなかろうか？　まあ、男性に比べると、そもそも女性がマラソン競技に参加する事が難しい国や宗教があるのが世界の現実ですが、その辺りを勘案したとしても、日本男子マラソンの２０年近い低迷というのには何らかの原因があり、その中でも最大のものは、駅伝の隆盛ではないか？というのが今回のお題なわけです。　厳密には、男子の駅伝競走が全体に盛り上がっているというのではなく、第32回（1956）から正月の２～３日に開催されるようになり、後に年始番組の定番としてＴＶで生中継されるようになった箱根駅伝が隆盛しているのですが、女子にも駅伝の大会はあるものの箱根駅伝に匹敵するだけの定番のイベントが無いあたりでも、箱根駅伝が男子マラソンを低迷させているのではないかという気がしてくるわけです。　箱根駅伝の正式名称は、東京箱根間往復大学駅伝競走で、東京～箱根間の高低差約８００ｍ、往路と復路がほぼ同じコースを２日間で往復して、約２００ｋｍを走っているのですが、大学別対抗戦形式で各チーム１０人の走者は、それこそ”襷を繋いで”感動の青春ドラマを毎年のように量産しているのですが、箱根駅伝のスターが世界のマラソン競技大会で結果を残せなくなって久しいのではないかと。　もっとも、箱根駅伝の第１回大会は１９２０年で、参加校は早稲田、慶応、明治、東京高等師範学校（現・筑波大学）の４校（ちなみに、第１回の優勝は東京高等師範学校）だけというささやかなイベントとして始まり、戦局が悪化していく1941～1942年が青梅往復駅伝（＊青梅だから箱根駅伝にはカウントしない）で、1943年が靖国神社～箱根神社間往復関東学徒鍛錬継走大会で代替されたのと、1944～1946年の間の中止を除いて地味に続けられてきた伝統の関東ローカルな大会だったりします。　なお、意外かもしれませんが、日本における駅伝競走の起源は箱根駅伝ではなく、大正６（１９１７）年４月２７～３０日にかけて、京都の三条大橋から東京の上野公園までの約５０８キロ（２３区間）を走った”東海道五十三次駅伝競走”ということになっています。　ところで、なぜ箱根駅伝が始まったのか？というと、日本人による亜米利加大陸横断（走）の予選会が行われることになった時、亜米利加大陸横断となるとロッキー山脈を越える必要が出てくることから峻険な山道を含む箱根のコースが選ばれ箱根駅伝のコースが決まったようです。　日本勢がオリンピックに参加するようになった当初、内外の実力差はかなり大きかったようで、オリンピックの陸上競技などで海外の選手と互角以上に戦うためには長距離走の強化が不可欠という提言があったようですし、先駆者達の活躍と様々な取り組みがあって、その後の日本の陸上競技の記録が向上していったのは確かです。＊　しかし、亜米利加縦断走で長距離走が強くなるという理屈が正しければ、映画”フォレストガンプ(Forrest Gump:1994)”が、なぜにオリンピックの長距離選手として歴史に名を残すストーリーにならなかったのかが謎ではなかろうか？ま、そもそもフォレストガンプが”フィクションだから”と言ってしまえばソレまでですが（大笑）。　いずれにしても、箱根駅伝はオリンピックのマラソン競技など国際的な長距離走の大会に勝てる日本人選手を養成する試みの一環だったわけで、箱根駅伝そのものが目的ではなかったということですし、実際、箱根駅伝出場者からオリンピックや世界陸上などで活躍した瀬古利彦、谷口浩美といったエース級の選手が出ていた時代もあり、箱根駅伝が世界のマラソン大会への登竜門というか、プロ野球を目指す高校球児の甲子園的な存在だった時代があったのではないかと。　そんな、箱根駅伝が、いつ頃から変質したのかと考えれば、やはりＴＶの生中継が始まった頃からではなかったのかという気がするのですが、マスコミ報道と箱根駅伝ということになると、・　昭和28（1953）年に、どうやって間を保たせたのかは良く分かりませんが、NHKラジオによる全国放送が開始。・　昭和58（1983）年に、（第59回大会を）テレビ東京が初めてＴＶ中継を行う（ダイジェスト版の放送。生放送は最後のゴールのみ。日本テレビがＴＶ中継することに伴い終了）。・　昭和62（1987）年に、（第63回大会から）日本テレビが生中継放送。といった流れになっているのですが、次第にＴＶ放送が駅伝の様子を中継するだけでなく、妙な方向へ報道の内容がシフトしていったのは古くからの箱根駅伝ファンには説明の必要が無い現象で、商業利用が箱根駅伝を変質させたという指摘は別に私のオリジナルではありません。　ＴＶ放送をすれば放送権料が発生するのは比較的知られた話ですが、全国区でＴＶ放送されるとなると、その宣伝効果と知名度の上昇は半端なものではなく、全国ネットでゴールデンタイムにＴＶ放送されていた時代の複数の有名なプロレスラーが、知名度を生かして国会議員や地方議員になったのは比較的知られた話だったりします。　ただし、逆に人気が低迷してくると、ＴＶ放送が打ち切りとなり、特に全国ネットで定期的に放送されていた場合は知名度の急速な低下を意味するのは、キックボクシングやプロレス、あるいはプロ野球などの栄枯盛衰を思い浮かべて貰うとわかりやすいのではないかと　・・・　ま、ＴＶそのものが衰退してネットの時代になるとどうなるかは未知数ですが。　となると、常に人の興味を引き続ける”仕掛け”が不可欠になるわけで、スター選手がマスコミによって造り上げられたり、スポーツとしての面白さそのものよりも、選手のプライバシーを含む周辺情報の報道が盛んになり、芸能人化していくというのは、ＴＶのニュース番組でも見ていれば気が付く事ではなかろうか？　箱根駅伝において、テレビの生中継に伴う知名度の上昇などを大学経営に利用する学校も続々と参加する時代になり、そういった学校が外国人を含む”助っ人”を箱根駅伝に投入して上位争いに絡むように強化するという、そもそもの、学生は学業優先とし、午前中は授業を受けて午後から走り始めていた初期の箱根駅伝の理念はどこに消えたのか？という気がしないでもありません。　私自身は別にマラソン選手でもなんでもないのですが、ある程度長距離走を経験した人に言わせると、将来的に１万メートルといったトラック競技を目指すには駅伝のペースだとスピードが足りず、マラソンを目指すには距離が短い駅伝に特化しているとスタミナが足りず、マラソンほど長時間走らないが故に選手間の駆け引きの経験や智恵が身に付きにくいあたりで、陸上選手として伸び盛りの大学時代に駅伝に特化したトレーニングをしているということは（将来的に）中途半端な選手になる事を意味しているのではないのか？ということになるようです。　ちなみに、駅伝競走というのは、日本が発祥の地で日本の大会が一番盛んと書いてもいいローカルな競技なだけに、その駅伝大会の中でも一番マスコミが熱心に報道し、ショーアップが進んでいる箱根駅伝が一番華やかな駅伝の舞台と書いてもそれほどオーバーな評価では無いと思われます。　もっとも、駅伝は学生のスポーツと割り切って考え、大学を卒業したら駅伝も卒業して、趣味のジョギングやハーフマラソンを楽しむ程度で余生を過ごすというのも、それはそれでアリなのですが、そうなると、マラソン選手として大成したかもしれない逸材が原石のままで埋もれていく事にもなるわけです　・・・　ま、私的には、マラソンは体育の授業だけでもウンザリしていた口なので、どうでもいいいちゃいいことですが。初出：一夢庵　怪しい話　第３シリーズ　第８１８話：(2010/06/01)

2010.06.07

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受験の歴史

一夢庵　怪しい話　第３シリーズ　第８０１話　「受験の歴史」　学問や武芸といった個人の技芸で身を立てて出世するというのは、貧乏人にとっては基本的な生活改善の手段だったようで、頭の良さで出世しようとする場合、”末は博士か大臣か”というあたりが目標だったようです。　逆に言えば、支配者階層に属している人達にとっては、極論すればですが、別に読み書きができなくてもかまわない（この一握りの階層だと学歴不要論が成立する）ということになるのですが、ただ暗愚でありすぎると下克上の対象となるのもまた歴史が示しているところではあります。　もっとも、他人から何かを収奪しようと思えば、今も昔も、体力的に優位に立つか、頭脳的に優位に立つか、あるいはその両方で優位に立っていないと不可能ですから、学者ほどではないにしても、一定の教養を必要としたようです。　ただ、科挙試験に象徴されるように、学問で立身出世しようとする人に対して、覚えていてもさほど意味のないことをどれだけ大量に丸暗記できるかが勝負の分かれ目という不毛な登用試験に邁進させることで、頭のいい人達が下克上をあれこれ画策する事を防止することもまた制度化されたようです。　もちろん、その対価として、科挙試験に合格して役人として採用されれば、一般人の所得の何倍、何十倍もの収入を手にできるようになり、幾つかの社会的な特権も享受できるようになる飴の部分も用意されているわけで、かなり高齢になって試験に合格しても十分に元が取れたのは有名な話だったりします。　したがって試験は苛烈を極めていき、科挙試験を受ける事に特化した予備校が存在し、替え玉受験などが横行し、数々の”まさか！”というようなカンニンググッズが開発されていて、科挙試験に合格することが人生の目的になっていたようです。　その尻尾は韓国における大学入試が、未だに国家行事の様相を呈していて日本でもシーズンになるとニュースとして報道されるくらいですから、中華文化圏ではある程度共通した”成り上がり”の手段になっているのかもしれません。　面白いのは、長い中国の歴史の中で、社会を転覆させて既存の王朝を滅ぼしかけたり、既存の王朝を滅ぼして新しい皇帝になった人に科挙試験の合格者がいないということで、優秀ではあっても科挙試験に合格できなかったような人が天下を掴んでいたりするわけです。　これは日本の受験制度でも言える事ですが、暗記している内容が”実用”からかけ離れていき、受験のための暗記どころか暗記のための暗記となり、受験を突破することに特化した授業となりがちなのは御存知の通りで、本末転倒というか当初の目的通りというかは微妙ですが、壮大な無駄がそこに生じているのは確かです。　もっとも、江戸時代というか徳川幕府は科挙試験を採用しませんでしたから、日本人が全国区の受験戦争を経験するようになるのは、明治以降の話になり、その残滓が戦後の公務員採用試験に残っているのは比較的知られた話だったりします。　日本における科挙試験は国家公務員試験であり、各地方で行われる地方公務員試験なのですが、戦前は、各地方のトップクラスの官僚は中央から派遣される事が多く、地方公務員として地元採用された人材がたたき上げて地方官僚組織のトップに辿り着くことは制度上無かったと言えます。　それはともかくとして、日本の皇族や華族のために学習院が設立され、皇族や華族は事実上無試験で帝国大学へ進学する事が可能だったという話は3-764”華族な話”の回でも少し触れたのですが、それ以外は、基本的に一定の点数が取れていなければ皇族、華族といえども不合格になりえたわけです。　当然、高等教育を受けるための金が準備できるかどうか？という篩がかかるわけで、貧乏人ほど”勉強なんかして無駄な金を使わずに、さっさと社会に出て働け！”ということになっていたようです。　戦前の方が、大学卒業者の絶対数が少ない時代だけに大卒というだけで給料は高額でしたし、幹部クラスの官僚だと給与が高く各種の特権が認められて定年後の恩給が潤沢に支給されていたわけですから、教育に関する金銭の負担に耐えられる階級で大学受験が加熱していったのも無理が無いところがあります。　昭和の初め頃だと、大卒は初任給が５０円程度で始まり、正規雇用されている労働者だと日給が１～２円（月収で２５～５０円程度）でしたから、大卒のスタート地点の給料が正規雇用労働者の事実上のゴールで手にする給料と同程度だったことになります。　当時は、尋常小学校卒が最終学歴で社会に出て働いている人が珍しく無かった時代で、貧富の差が極端に大きいというか、極めて少数の金持ちと大多数の貧乏人に綺麗に分かれていた　・・・　中間所得層が薄い　・・・　時代だったと言えます。　戦後は、高卒や大卒といった高等教育を受けた人材が増加するのに比例して中間所得層が増加していき、高度経済成長の頃から過去に類例が無いような全体の所得の底上げを経験することになります。　つまり、特に資産を持っていなくても、普通に働いていれば子供を大学へ進学させることが可能な時代が到来したということですが、そうなると、今度は絶対数が増加した大卒の中での差別化が熾烈になっていき、大卒ではなく、どこの大学の何学部を出たか？が立身出世に繋がっていくことになります。　かくして１９６０年代くらいには戦後の混乱も終息して本格的な偏差値教育の時代が到来するわけですが、そうなってくると逆に、”どこそこ大学の○学部しか出ていない”という話にもなっていったわけで、一国の首相になったとしても、”その大学ってどこ？”と言われるくらい、”何点とればどの大学＝どの大学だから偏差値はこのくらい”という見当が付くようになったと言えます（笑）。　したがって、みずから”自分たちは労働者（サラリーマン）である”と主張した学校の先生が尊敬されなくなったというのも当たり前といえば当たり前で、子供の親の最終学歴が尋常小学校という家庭が多かった時代から、偏差値で学校の先生よりも上位の大学の学部を出た親が増加していった時代になれば、親の見る目も”ああ、あの程度の学校しか出てないの？”という（大笑）。　ましてや、海外赴任が珍しくなくなっていく１９８０年代以降ともなると、親元から小中高大学と通って一度も県外に出ることなく教員になった、世間が狭く人生経験が浅い人を、教員試験に合格しているから尊敬しろと言われてもねえ（笑）。　それこそ、親が大卒だと”教員免許なら、うち父さんも母さんも持ってる”という家庭が珍しくないわけですし、２１世紀に入ったあたりから不景気の影響もあってセカンドスクールに通ったり、大学院へ進む人も多くなっているだけに、学校の先生の知的水準は相対的に地盤沈下が続いていると言えます。　また、パソコンの普及が始まって四半世紀以上経過したのもかかわらず、学校の現場で”パソコンが不得意で　・・・”とあっけらかんと言う教員が放置され、手作業で事務処理をして時間が足りないと主張し、いつまでたっても家で親が教えた生徒の方が技術が上で学校で教わる事がないというか、そもそも教員に教えるだけの能力も知識もないまま、手書き前提の教育を主張しているのは御存知の通り　・・・　・・・　ただ、”手書きで難しい漢字も綺麗に書けて、算盤が○級です。パソコン関係は素人でゲームをするくらいです。”という人材の将来が明るいと私には思えないのですが？　ゆとり教育が失敗なのは分かり切ったこととして、では暗記量を増やすというか戻すだけで問題が無くなるのか？と言えば、社会に出たときに求められる技能や知識の習得という基本的なところが欠落していれば、それは単に不毛な現代版の科挙試験が復活するだけのことではないかと。　２１世紀に入り、少子化が進行し、ある程度有名な大学の定員割れが現実のものとなった一方で、有名校でも、現実的な教育や就職に役立つ教育をしている学校や学部の受験倍率は高く、時代のニーズを掴み損ねている大学は倒産への道を歩み始め、教える側の淘汰が始まっているようですから、高校教育も義務化なぞせず、競争原理に基づく淘汰の波に晒して調整すべきではないかと思います。　これを書いている時点で、大学を出ていても出ていなくても就職先が無い子が珍しくなくなってきているわけですが、これは、社会の求める人材を大学や高校が養成できていないということであり、日本で就職できないから海外で就職しようか？となったときに、”英語が話せない、英語の事務処理ができない”という人材が珍しく無いあたりでも、日本の教育と受験が、教育関係者の既得権益を守るために停滞して久しいことを証明しているのではあるまいか？初出：一夢庵　怪しい話　第３シリーズ　第８０１話：(2010/05/12)

2010.05.18

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あんた嫌い

一夢庵　怪しい話　第３シリーズ　第７７８話「あんた嫌い」　女心が分かっていない事では定評のある私ですが（笑）、ある日ふと、”じゃあ、言うほど女性は男心がわかっているのか？”という素朴な疑問を持ったのでございます。　つまり、あまりに同じパターンの嘘に騙される傾向があるじゃございませんの？ということですが、詐欺の基本として、”投資が巨額になればなるほど人は騙されていると思いたがらなくなる”という話とどこか共通しているのかもしれません。　それこそ、その男性をよく知る同性の男性達から、”なんでよりによってあんな男に？”と言われるような男に嬉々として引っかかり続ける女性が珍しく無い光景というのは、おそらく世界中で（おそらく人類が誕生した頃から）生じているのではあるまいか？　まあ、それでその相手の女性が幸せだと言って、こちらに火の粉が飛んでこないなら、お好きにどうぞという話で、それこそ他人の女がどうなろうが知ったこっちゃないというのが大多数の男性の見解で、苦労は自分の分だけで十分というのが本音かもしれません。　それはそれとして、言われてみてなるほどな～と思ったのが、”なぜ、最近はストーカーに殺される女性が増えたのか？”という質問で、確かに、以前は、ストーカーはいても相手を殺すところまでは滅多に話がいかなかったなあと思ったわけです。　知る範囲内のナンパの達人にそのあたりの見解を聞いてみると、不思議そうな顔で”へ？交渉してみて駄目なら次の女を捜せばいいだけじゃん？”ということになるようで、”ストーカーになるやつは、ストーキングするのが好きで、相手を殺すやつは殺すのが好きなんじゃねえの？”という事のようでした。　今ひとつ納得できなかったので、女心が分かっていないとできない商売をやっている先達に話を伺ってみると、”そりゃあ女性の側がおかしくなったから、おかしな奴が寄ってきて、殺すところまで話がこじれるようになったんじゃないか？”ということのようでした。　で、こいつは分かってないなと判断したのか、”例えば、最近の若い子の中には、自分が惚れていない相手が何か気にくわないことを言ったりやったりすると、「あんたなんか嫌い」とか、あれこれ定番定型の悪口というか罵詈雑言の類を浴びせて、相手の男が口ごもったり萎れた様子になると何か相手に勝った気になっている馬鹿が増えているというのが、女性の側がおかしくなったという事の一例。”と解説が続いたわけです。　これは比較的分かりやすく、”それほど親しい仲でもない相手に時と場所を選ばすに罵詈雑言を浴びせれば、袋叩きにされたり命のやりとりになるのは当たり前”な業界もあるわけで、ましてや人前で恥を掻かされたと感じたら、その報復がどういったことになるかは、歴史が示しているのではあるまいか？　話は続き、”例えば、お水商売でトップクラスの女性の場合、１人で何百人もの男性を、あの手この手で操っているというか制御して飯の種にしているわけで、冷静に考えればトップクラスの女性ほどストーカーに殺害されるリスクが高いはずなのに、そうなっていないのは何か理由があるとは思わないか？”ということでした。　まあ、その理由が分かるくらいなら、私も女心マイスターなのですが、師いわく、　”どの業界でもそうだと思うが、美人で当たり前のお水系でトップに上り詰めるような連中は、先輩達の残した”たらし”のノウハウなんかを吸収することに手間暇を惜しんでない勉強家が多い。学校では教えてくれないことを勉強して現場で体得した奴がトップにいるってことかなあ～。”運”てのも確かにあるけどね。”　といった事になるようでした。　で、”分かりやすく言えば、学生時代は、若いし、大半の学校は容姿で選抜してないから玉石混淆で石が多い世界になっているから容姿端麗だけでも異性にもててるんだろうが、お水系の商売だと、酒も強い別嬪さんはごろごろしているわけで、そこで頭抜けようと思えば（先輩達の残したノウハウなどを）勉強して実践できた子ほど残ってるってこと。”と解説が続いたわけです。　そこで、お水系の”たらし”の基本テクニックとは？と聞いてみると、要するに”相手に幸せな錯覚をさせる事”に集約されるようで、”だから、自分がこう言ったら、相手がどう出るかの予測が上手い子の方が残っていくわけで、その手の予測っていうか勘みたいなものは、産まれ持っての才が無ければ、いろんな勉強をして実践して場数を踏んで磨いていくしかないってこと。”といったことのようです。　前述したように、やっていることから考えれば、トップクラスのお水系のおねえさん達の方がよほどストーカーに殺傷されてもおかしくない気が私はするのですが、ニュースなどでストーカー被害で殺された被害者がお水のトップクラスだったという話は極めて希なのは御存知の通り　・・・　もちろん、全ての殺人事件が報道されているわけではありませんが。　逆に、少なくとも堅気の商売には分類されない職業に従事していて、ストーカー被害から殺人にまでエスカレートした事例を調べてみると、確かに、”これって、客あしらいが下手ってことじゃない？”というケースが珍しく無かったりします。　客相手の商売ということでは、プロないしセミプロの彼女たちでさえ対応を誤って殺害されることがあるとすれば、客商売でもない学生や社会人が対応を誤って殺傷される確率はかなり高いものになっても不思議ではないのかもしれませんが、ゆとり～君世代も若い世代ほど”自分以外馬鹿”と思っている比率が高いのかもしれませんが、勉強することそのものへの欲求や習慣が弱いのかもしれません。　興味深いのは、殺した側の男性の言い分に”○ヶ月で○万円も出して社会生活や人生が崩壊するくらい通い詰めたのに　・・・”とでもいった奇妙な換金レートの主張が含まれていることで、少し気の利いた小学生だと笑い出すような理屈を真顔で言っている事があります。　つまり、そう主張している男性が何か客商売をやっているとして、自分の好みでもない女性が客として連日やってきていたかと思うと、ある日、”○ヶ月で○万円も出したのに、なぜ私を愛してくれないの！結婚してちょうだい！”とか言い出したら、恋人になったり結婚したりしますか？という、ささやかな想像力が欠落しているのではないかということです。　ましてや、相手の年齢や容姿、会話の内容や性格などが自分の好みとは残念なくらい遠く、職業や年収も自分の理想とは程遠い場合は考える以前の話かもしれませんし、ましてや自分が若くて美人で幼い頃から異性からちやほやされるのが当たり前という人生を送っている場合、”はい、わかりました。”と言うと思う方がどうかしていると私は思うのですが気のせいか？　お水系の商売の場合、そこに客として来ているサラリーマンより月収が上というケースがざらだった時代は長く、○歳で手取りで月収３０～４０万円程度のサラリーマンが、それよりも若くて月収が○百万円というお水のおねえさん達からどう評価されているかは、それほど想像力を必要としないのではなかろうか？　別の視点では、江戸の昔から、水商売というのは”金の切れ目が縁の切れ目”の商売としたもので、本来は客も承知のその辺りが割り切れない人が出てくると3-746”吉原百人斬り”のような事をやらかすのではないかと思われますし、吉原百人斬りでも女郎の側の客あしらいの下手さが悲劇の一つの原因と考えた人は（特に男性に）珍しく無いのではないかと　・・・　それこそ時空を越えて。　そう考えていくと、お水系の商売に従事していなくても、美人ほど客あしらいの修行が必須という時代は今に始まったことではないということですし、さして美人でなくても”モノも言いよう”というのは一つの真理で、学校の授業では教わらないことが意外と命を左右する時代になってきているのかもしれません。初出：一夢庵　怪しい話　第３シリーズ　第７７８話；(2010/04/15)

2010.04.21

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コピペ文化論

一夢庵　怪しい話　第３シリーズ　第６０４話　「コピペ文化論」　コピペといえば、パソコンの基本的な操作の一つである”コピー＆ペースト”のことで、テキスト文章などをコピーして、他の場所へ貼り付ける行為を意味しているのは御存知の通り。　これに対して、部分的に、あるいは全てのデータを切り取って（元の場所のデータを消して）、他の場所へ移動させて貼り付ける行為は”カット＆ペースト”で、自分でオリジナルのデータを作っている場合は、コピー＆ペーストやカット＆ペーストを駆使することになるはずです　・・・　理屈の上ではですが（笑）。　もっとも、現在でこそ簡単にできているコピペも、ソフトがコマンドライン前提のＯＳで動いていた頃には、まったくできないか、同一のソフトの中でしかできない行為で、ウインドウズなどの登場後に、複数のソフトの間でも制作したデータを”コピー＆ペースト”したり”カット＆ペースト”する事が可能になったという、比較的歴史の浅い技術だったりします。　当初は、表計算ソフトのデータをワープロソフトに取り込んだり、ワープロソフトのデータを表計算ソフトやグラフィックソフトなどに流し込むあたりから普及が始まり、インターネットが普及して一般化するにつれて、ネット上のデータを取り込む行為にデータコピーの範囲が拡大していきました。　実際問題として、ネット上に存在するテキストデータの一部を引用したり参照するために保存する場合に、コピペは便利な機能ですし、そもそも、インターネットの開発理由の一つが情報共有ですから、そういった使われ方が嫌ならネットに晒すなということにはなるわけです。　しかしながら、インターネットのそもそもの開発理念であった”他人の情報を使わせて貰うが、自分の情報も提供する”という相互利用の理想や理念は、素人さんが大量に雪崩れ込むようになってかなり怪しくなったのも事実で、ギグアンドテイクの時代から、テイクアンドモアテイクが横行する、利用するだけで何も提供しないユーザーが爆発的に増加していき、従来からの情報を提供している側がちょっとまておいという状況になるのにそれほど時間は必要としませんでした。　もっとも、テイクアンドモアテイクの時代というのは、不慣れとかマナーが悪いという程度の話だったのですが、他人の提供している情報は一方的に使っておいて、他人が自分の情報を使うときは”金を払え”に代表される一定の条件を付けるというのは、”それってどうよ？”という行為なわけです。　ちなみに、かなり早い段階から、自分のホームページに”事前の許可無くリンクを張るな！”という何か勘違いしている阿呆な書き込みをしている人は複数存在していましたから、自分の情報は特別扱いするが、他人の情報は使いたいように使うのがあたりまえと考える日本人は珍しく無かったのかも知れません。　つまり、”許可無くリンクを張るな”ではなく”相互リンク以外はお断りします。”というのが本来の姿で、その許認可や確認作業などがめんどくさければ”リンクフリーです。法律と常識の範囲内でお楽しみ下さい。”とでもいったカキコが妥当ではないかと私は考えているということです。　もちろん、まるごと、他人のホームページやブログなどのデータをコピペして、自分が書きましたみたいな顔をしている人も少なからず存在しますし、”怪しい話”を書くときにデータを探していて、まったく同じ内容のページが複数存在してうんざりする事は珍しい話ではなかったりします。　少し考えて貰えば分かると思いますが、例えば学校の宿題で、級友に答えを写させて貰うときに、ま～ったく同じに書き写したりすれば、先生が採点するときに発覚する可能性が上昇するのは馬鹿でもわかる話なわけで、少しは内容を変えるのが写させて貰った級友に対しての礼儀でもあった事は解説する必要も無いのではないかと。　結局、ネットを舞台としたコピペもそうした宿題を友達から写させて貰う行為と大差がないわけで、いつまでも一方的に写させて貰うだけという関係を続けて友達がいつまで友達でいてくれるかと考えてみれば、一方的な情報の収奪行為というのがどれだけ外道なものかわかりそうなことではあるまいか？　そうした関係を長続きさせたければ、国語と英語は自分がコピペさせてもらい、数学と化学は逆に自分がコピペさせてあげるとか、自分の側にコピペさせるだけのデータが無ければ、給食を提供するとか放課後にジュースの一杯も奢る程度の心がけが不可欠なことも又解説の必要がない生きていく上の智恵ではあるまいか？何か奇妙な事を私は言っているだろうか？　結局の所、これだけコンピュータが普及して各種のデータベースが拡張を続ける時代になってしまうと、辞書や百科事典に載っているような一次データというのは素材であり、各自のＨＰやブログが発信するデータはオリジナルか一次データを加工した二次データ以降でないと存在意義が無い時代になってきているわけです。　実際、どこぞの地方議員さんたちが海外視察へ行った際のレポートをインターネット上の既存のデータをほぼ丸ごとコピペして、公式かつオリジナルな報告文書として提出してお茶を濁していたら、元ネタとの類似性を指摘されるといった間抜けな事が相変わらずニュースとして流れているわけですが、例えば、既存のデータをコピーした部分があっても、そのデータに自分が撮影した写真などを貼り付けたり、オリジナルの文書を追加して再編集し、参考にしたＵＲＬや書籍名などを明記してあれば、それを非難する方が野暮ということになるわけです。　更に言えば、そうやってネット上のデータを利用して情報を追加して再編集したのなら、そうした報告書をネットに提供するのが情報の相互利用というもので、そうやって提供されたものをまた誰かが素材として再利用するのがネット社会の情報利用の基本というか理想的な状況と考えているということです。　検索エンジンがこれほど高度化して多様化しながら普及を続けているにもかかわらず、ほとんどのネットユーザーの目に触れることが無いと思っているから、他人のデータを丸ごとコピペして”自分のオリジナルです”と真顔で主張できるのではないかと私的には勘ぐっているのですが（笑）。　もちろん、コピペの味を覚えた人達が元の手書きのみの世界に戻れるとは爪の先ほども思ってはいないのですが（大笑）、だからといって、なんの追加も編集もされていない丸ごとコピーをありがたがる気はさらさらないわけで、その手のコンピュータを使って新しい情報を生産する能力が欠落している人材に、そもそも税金を使って視察や研修という名の漫遊旅行をさせるのは時間と税金の無駄ではないのか？ということです。　というか、新しい情報に生で接しても、既に誰かが書いてネット上で公開している情報以上のものを提供できない人材に、今後のネット社会で居場所があるのか？と考えたとき、薄ら寒くなってくるわけで、その程度の人材が地方にしろ国政にしろ、政治家として税金で飯を食っていけている事の方に問題があるような気が私はします。　逆に言えば、既に答えがあるものの中から最適解を見つける事がこれまでの教育で重視されてきた能力だとすれば、既に、その部分はコンピュータの検索機能がかなり代替できてしまう時代になっているわけで、ほとんど評価されなくなっています　・・・　ネットの中から該当するデータをコピペして”自分が書きました”と主張するような行為が該当します。　その意味で、既存のデータに自分なりの新しい情報や仮説、分析結果などを付加したりして再編集していくアレンジ能力とでも言ったものが現在でも不可欠になりつつあるということで、今後、検索エンジンが強化されていけばいくほど、丸ごとコピペしかできない人の居場所は狭くなっていくことが予測できます。　ま、最大の障壁は、教育関係の議員や現場の学校の先生の多くがそういった技術と能力を持っていないか軽視していることで、結果的に自分が情報発信する情報クリエーターの育成どころか、自分なりの視点や考えを持てずコピペ程度のことしかできないリテラシー水準の低い学生が量産されていることではないかと。　もっとも、それが国力の差になることが発覚した頃には、私は棺桶に片脚を突っ込んでいるか、墓の下の住人になっていることでしょうから、どうでもいいっちゃいいことですが（大笑）。初出：一夢庵　怪しい話　第３シリーズ　第６０４話：(2009/09/24)

2009.09.30

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一万時間

一夢庵　怪しい話　第３シリーズ　第５８９話　「一万時間」　整体師として１人前になるのにどれくらいかかるものですか？と聞かれる事が稀にあるのですが、”う～ん、適性がある人で１０年くらいかな～”と答えています。　もっとも、１０年というのは、実技に関して１万時間程度というあたりから逆算した指標で、１０年だと１年に１０００時間程度ということになりますから、それほど浮世離れした数字では無く、どちらかといえば”最低限それくらいは　・・・”というラインの話になります。　この場合、１日だと２～３時間程度ですから、倍の４～６時間程度だと約５年、３倍の６～９時間程度で約３年３ヶ月という計算になります。　もっとも、この約３年３ヶ月に、座学や観察などの部分を併せると、１日１０時間以上の修行を千日続けることが出来てなんとか形になるという話なわけで、しかも、それで達人になれるというのではなく、端っこに辿り着くことができるんじゃなかろうかという目安に過ぎなかったりします。　武術の修行で、”千日鍛、万日錬”という目安があるのにも似て、３年少々の継続で鍛、３３年少々の継続で錬ということですが、１０歳で初めても、３３年後といえば４３歳で、人生５０年の時代だと早い人は隠居する年ですから、一生修行を続けることを鍛錬と考えていたのかもしれません。　ちなみに、この１万時間というのは、（武術、野球やゴルフ、音楽関連、ダンス、プログラマー、などなど）どの分野であっても、プロとして飯が食えるようになる一つの目安の時間幅として知られているのですが、１万時間の修行を続ける事に、（なぜか、それが苦にならないとか厭きないという）適性は影響しても（ＩＱなどの）知能や才能はそれほど影響しないようです。　ただ、こう書くと、えてして、持って産まれた才能とか、個人の努力などで社会的に成功するか失敗するかが分かれると考えたがる人が多いのですが、それ以前の話として、何年にどこで産まれたかということの方が、よほど社会的に成功するかしないかには影響を与える傾向がありますので誤解の無いよう。　実際、世界一の大富豪も亜米利加合衆国大統領も、あるいはどの分野でも驚異的な成功を手にした世界史に名前が残っている人の多くは、人類の中で一番頭がよい（ＩＱが高い）わけでも、一番努力したから成功したわけでもなく、何よりも本人が振り返ってみて、そのポジションにたどり着けた理由として”運が良かったから”と答える人が多いようです。　この辺りは、運命学とも絡むのですが、不思議なくらい、従来とは違った大変動が発生して根底から業界が激変するときには、同じ年か前後５年くらいの間に産まれた複数の天才が活躍する傾向があり、パソコン業界だと（ビル・ゲイツ達が産まれた）１９５５年が一つの目安になっているようです。　そうした節目が利用できるタイミングの年に産まれて、社会的な変動が発生したときに、特定の分野で前述した１万時間以上の経験を既に積んでいれば大化けする傾向があるということですが、逆に言えば、ずぶの素人と差は最短だと１万時間しか無いので、チャンスが来たら迷わず掴んで優位なポジションを確保する必要があります。　社会の節目というのは奇妙なもので、過去のデータの延長上には発生している事の方が珍しく、特異点のような事になり、統計で言えば規格や法則性から外れすぎていてデータとして採用されないようなレアケースということになります。　それでいて、その節目を境に劇的な変化が生じるわけですが、コンピュータ業界でいえば、１台の高性能なコンピュータでなんでもこなすメインフレームが全盛の時代に、電卓とＴＶモニターを組み合わせた程度のパーソナルコンピュータが登場した時に、既に社会人になっていてメインフレームのプログラミングで高給を手にしていた人の大半が、市場がまだ成立していないパソコンに乗り換える決断をしなかった事から分かるように、”何年に産まれたか？”が運命を分けるファクターになるわけです。　そう考えると、ビル・ゲイツが１９５５年産まれでなければ、パソコンが登場した節目の時点で、彼以外の条件を満たしていた１９５５年前後に産まれていた別の誰かが世界史に残るようなビックチャンスを手にしていた　・・・　仮にビル・ゲイツが早く産まれていればメインフレームの陣営に所属し、遅く産まれていれば先行しているライバルや同世代の無茶苦茶多いライバルとの熾烈な競争に埋もれてしまい、少なくとも、世界中で名前が知られるような成功は手に出来なかったのではないかと。　ということは、既に市場が成立し、そこでサービスを提供する作業員を育成するための学校やカリキュラムが整備されている業界というのは、枯れた業界というか旨みが少なく、最下層からのし上がっていくチャンスも少ない業界ということですし、大化けした成功者の多くが、その黎明期において、その分野のトップランナーとして走りながらノウハウを整理したり開発して、臨機応変に対応するしかなかった時期があるのは当前の光景ということで、そうしなかったり、そうできなければ波に乗れず大化けも出来ずに、その他大勢の一人で終わっているわけです。　もちろん、大化け出来なくても、１万時間の訓練時間をこなし終えていて、準備が既に出来ていれば、新しい波が来て新しく巨大な市場が誕生したときに、ずぶの素人よりはずいぶんと有利な地点からスタートできるわけですから、それなりの成功を手にできる確率が高くなり、頭の良し悪しより”運”の良し悪しが明暗を分けるケースになりやすいと言えます。　このあたり、首都圏で急拡大した１０００円床屋の”QB HOUSE”が唱えるブルーオーシャン戦略も基本的に似たような発想のようで、ライバルがいない未開拓の青い海原を航海した方が、既に航路が開発され尽くして全体のパイの大きさがほぼ決まり、後は利権やシェアの奪い合いしか待っていないレッドオーシャン（血まみれの赤い海）を航海するよりも、未知の出来事に対応する能力は要求されるものの大成功できるチャンスが比較にならないほどあるとでもいったことになるようです。　そう考えると、今年産まれた子供が社会に出るであろう２０年後くらいまでに１万時間の訓練を終える事ができて、定年退職を迎える６０数年後までは、その市場が拡大ないし横這いを続ける産業というのが、現時点で影も形も無いこれから産まれてくる新しい産業という可能性はあるわけです。　そんなわけで、面白いなあと思っている事の一つが、特に日本の戦後生まれの女性の多くが、自分や子供の進路を、その時点で一番楽して儲けているように見える職種にしたがり、子供の興味や適性はほとんど考慮しない言動を繰り返している事です（笑）。　この傾向は”俺はやりたくない仕事を家族を食わせるためにしているんだ！”と言い出す男性にも共通しているようですが、もちろん、公式にそういった統計資料があるわけではありません（大笑）。　それが何事であれ、それで飯が食えるプロになるのに、最低でも１万時間程度の習熟が必要だとするのならば、”ゆとり～君”世代で、なおかつ学習の絶対量が不足している人材には、プロが少なくアマチュアや素人が多いことになるわけですから、同じ”ゆとり～君”世代でも勉学や技芸の習得に１万時間以上積み上げた人材にとっては、同世代のライバルの絶対数が受験戦争世代以前よりも劇的に少なくなっている非常にラッキーな時代を生きていることになります。　もっとも、海外の同世代のライバルの絶対数は以前よりも激増していますから、少し視点を広げて考えると、楽な人生が待っているというわけでもないのですが（笑）。初出：一夢庵　怪しい話　第３シリーズ　第５８９話：(2009/09/07)

2009.09.12

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携帯電話制限

一夢庵　怪しい話　第３シリーズ　第５４０話　「携帯電話制限」　携帯電話に関して、奇妙なくらい悪意に満ちた解釈をし、具体的な実数値を示さないまま、”なんとなく○○だと思う”とか”○○と言っている人が多い”といった（自分たちにとって都合の良い）イメージを立脚点に”携帯電話を小中学生（あるいは高校生）に持たせないことを法律で禁止する”という現実を前に、”こいつら阿呆か？”と私が思っているという話は以前からしているところだったりします。　まあ、この手の携帯電話を悪役にしている人達の多くは、同じような奇妙な理屈で”コンピュータを使うと人間としておかしくなる（から学習させるな）”と主張する事が多いのですが、これに対して一番酷い目に遭う若い世代が反発をしないどころか、一部は御説ごもっともと言い始めている現状もありますから、当事者達が良いというのならいいのか？という気がしないでもありません。　ただ、後になって若い世代から”なんであのとき規制のマイナス面を教えてくれなかったんですか？”と言われるのが嫌なので、とりあえず、わかっている事は書いておこうかなと　・・・　それを知った後でどうするかは、私なんぞより若い世代が考えて行動するべきことではないかと（笑）。　そもそも論で言うと、本来は、”急速に普及しているインターネットが利用できる携帯電話やパソコン端末などを利用するネットワーク社会において、どのように子供達にそうした機材を使わせればいいのか？”という、世界規模で急速に普及してきている新しい情報社会インフラの利用方法を日本でも考えるという流れがありました。　つまり、インターネットや携帯電話などを”利用せずにはいられない道具”と認めた上で、”いかに安全かつ効率的に使っていけるようになっていくか？”という事は、年齢に関係なく、全ての世代にとっての課題だったわけです。　実際、”携帯電話やインターネットは子供達に有害だ！”と主張している人達は、携帯電話やインターネットを使って稼いでいない人達に多く、今後、社会の主流から外れていく可能性が高い　・・・　あえて言えば、首都圏でスイカやパスモを使わず（関西だとイコカを使わず）、その都度、発券機で切符を買って、”発券機で切符を買わない奴は人間性に問題がある。スイカやパスモは廃止して、常に現金で切符を買う体制を維持すべきだ”と主張している人達と精神面でも行動面でも共通項が多いように思われます。　実際、彼らの主張を聞いていると、”まず携帯電話は悪である”という大前提があり、”携帯電話があるから子供は非行に走る”と理論を展開しているわけですが、なんちゃことはない、携帯電話の部分を、オートバイやエレキギターに置き換えると、１９６０年代くらいから延々と年寄りが若い衆の新しい文化を規制するときに用いたロジックを焼き直しているのに過ぎなかったりします。　もちろん、ネットの世界が手放しで安全だと私が思っているわけでもなければ、そう主張しているわけでもないのですが、若い世代ほど、幼い頃からその”荒廃した犯罪の多発するネットの世界”で生きていくしかない現実があるわけで、ならば、そこでの生き残り方を教育し伝授するのがオトナの役割であり責任だと私は思っていす。　逆に言えば、携帯電話の持ち込み禁止というのは、”これまでも学校の正規のカリキュラムで携帯電話やインターネットの利用などをモラルやマナー面を含めて指導せず、携帯電話の持ち込みを禁止すれば自分たちには責任が無くなると考え、新しい仕事が増えるような事には関わらないようにしようとしているようにしか見えない”ということ。　あれこれ情報を集めていて面白いなあと思ったのが、例えば、”各学校の職員室に下駄箱のような携帯電話を入れておく全校生徒分の棚を新設し、学校に登校したらその棚の自分のボックスに携帯電話を入れ、学校から帰るときにはそこから携帯電話を出して持って帰る”という方式を採用するだけで、条令なんぞで規制しなくても、学内での私的な使用は制限できるのに、そうした提案を学校の先生を含めたオトナ達がしていないこと。　もちろん、”そうした制度を導入しているにもかかわらず、学校内で携帯電話を所持していた場合は、没収して学校から家庭へ連絡を入れて保護者に引き取りに来させる”といったオプションを付けてもいいわけですし、携帯電話を所持していない子供の場合は、蒲鉾の板にマジックペンで名前を書いたようなもの（私たちの世代だと”命札”と読んでいましたが）をその棚に入れることにしておけば、現時点で、（はなはだアナログですが）誰と誰が学内にいるかが一目でわかるシステムが完成するわけで、運用によっては一石二鳥にも三鳥にもなるわけです。当然、そういった場所に個人の携帯電話を置くとなると、暗証番号を使ってロックする方法なども教える必要があるわけですし、暗証番号が単調だと簡単に他人に解除されるといった事も実地で経験できるメリットがあります。　つまり、将来的に、キャッシュカードなどの暗証番号に関して、なぜ（誕生日や出席番号などから類推可能な）単調なものにしてはいけないのか、なぜ定期的に暗証番号を変更した方が良いのか、といった基本的な事を”被害が限定されている環境下で経験ないし伝聞することができる”のは大きなメリットということです。　あれこれ考えていくと、公教育の学校の先生が、ＩＴ社会における有益で実践的な教育を行っていないのがそもそもの諸悪の根元ということになってくるのですが、学校の先生の多くが”薔薇や憂鬱といった漢字を手で書けなくなっている学生が増加している事の方が（人間として）問題”としてきたわけで、結果的に、学校の先生の多くがＩＴ社会への時代の変化に取り残されていると言えます。　しばしば話がすり替えられる事が多い、対人コミュニケーション能力の低下という点では、携帯電話やパソコンが普及するよりも以前から問題になっていた事ですし、いい歳をしたオトナが”携帯電話がイジメの原因　・・・”と主張して、当事者である現役の学生達に”イジメは携帯電話が普及するより前から酷かったじゃない”と鼻で笑われている現実を前にすると、ＩＴ機器を諸悪の根元とするロジックがそもそも根底から破綻しているのではないかと。　実際、対人コミュニケーション能力を育成したいのなら、授業で亜米利加のようなデイベートのトレーニングをカリキュラムに組み込んで恒常的に行うとか、大小さまざまな規模の弁論大会で自分の主義主張を唱えて世の中を説得するトレーニングを積極的に行うといった、ＩＴ機器やインターネットとは関係の無い分野の、それもその気になれば予算が０円でもできる教育制度を導入する事の方が余程効果的なわけで、それを行わないでいる理由が”学校の先生に、そうした対人交渉トレーニングに対応できる人材が皆無だから”という漫才のようなオチでないことを期待したいところではあります。　最後に、少しだけ予測を書いておくと、例えば、ポケベルから携帯電話に切り替わったように、今の小中学生が社会に出る１０年後、２０年後には、携帯電話がまったく異なる次世代の情報端末に切り替わっている可能性もあるわけで、その情報端末が身分証明書など公的な記録を保持できるようになっている可能性さえあります。　既に、自動車免許証のＩＣチップ化は進んでいるわけですし、パスポートにしても、国民基本台帳にしても、年金システムにしても、欧米や亜細亜の大多数の国で、個人（特定）認証が可能な情報プラットホームに関して国際標準規格のようなものができてしまった場合、日本も否応なく対応していくしかないといった、よりグローバルな未来のＩＴ関連の変革も待っているわけです。　より素朴な疑問としては、条令で高校生からは携帯電話の類を持って良しとするとして、では高校生達には、どういったＩＴ教育を行う事にしているのか？　高校生になったのだから、各自の自助努力で、他の国や地域との遅れを取り戻しなさいとでも言う気なのだろうか？　そう考えていくと、一部の政治家や学校関係者は義務教育の対象者である生徒達に対して、ＩＴ社会に対応した教育を行う気が無い事を、携帯電話を学校に持ってくることの是非論や各種犯罪の誘発論にすり替えて誤魔化している事になってくるわけです。初出：一夢庵　怪しい話　第３シリーズ　第５４０話：(2009/07/11)

2009.07.17

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声に出すな

一夢庵　怪しい話　第３シリーズ　第４８４話　「声に出すな」　世の中の片隅では、意志が弱い人が３度見ると発狂する（とされている）絵とか、何度か聞いている内に自殺する人が出る”暗い日曜日”のような曲があるといった噂が囁かれていたりします。　あるいは、クロウリの”法の書”のように、（オリジナル版に忠実な内容で）出版されるだけで国家規模の変事が発生するという伝説を伴っている書籍もありまして、巨大地震や巨大台風の原因が何かなんてことはわかったもんじゃあないのかもしれません（笑）。　それはさておき、声に出して読むと死ぬ詩という話は昔から存在していて、例えば、西條八十（さいじょうやそ）の詩集”砂金”に掲載されている”トミノ地獄”などが定番ネタだったりします。　もっとも、”トミノ地獄”を声に出して読むと死ぬという話になったのは、演出家の寺山修司が”トミノ地獄”を朗読した直後に亡くなられたという噂がベースになっているようです。　そもそも論として、声に出して読むと死ぬ文章や詩の噂というのは、自己暗示の一種であるという説もありまして、文書の一部が音読することによって潜在意識に定着することがあるようです。　分かりやすいところでは、私が小学生くらいの頃に、物事を暗記するコツとして、学校の先生が”声に出して何度も読むといつの間にか覚えている”といった話をした事あったのですが、その後も、”声に出して読むと覚える事ができる”と主張する人には何人か遭遇したことがあります。　ちなみに、私の場合は、声に出して読んで覚えた事が一度もなく（笑）、”なんで声に出して繰り返して読むと覚えられるんだ？”と音読暗記を主張する人の方が宇宙人に見えたモノでございます。　厳密には、例えば古文の活用変化のように、ケロケロ鳴いて覚えている同級生に刺激されて、言語関係で何度かやってみた事はあるのですが、何度かやってみて”時間の無駄だな～”と思い至り、覚えないまま現在に至っています（笑）。　声に出して暗記したかどうかはともかく、”反復して覚えたモノは忘れない”と主張する人も世の中にはいるのですが、私的にはその説にも懐疑的で、”人というのは必要としたくないモノは思い出せなくなる” のではないかと勘ぐっています。　実際、昭和１桁産まれぐらいまでは、軍人勅諭や教育勅語を若いというか幼い頃に一言一句間違える事無く暗誦していた人が圧倒的に多く、暗誦できない人はそれこそ当時の”オチコボレ”扱いだったようですが、かっては完全に暗誦出来てあたりまえだったことも、７０歳を越えた頃に尋ねてみると”忘れた！”り、”・・・　ここまでしか覚えていない！”という人の方が圧倒的に多かったりします。　ある意味で、命がけで”声に出して覚えた”知識も、半世紀以上前の事となると”え～っと”となる人の方が圧倒的に多く、”あ～、昔～し、覚えた気がする”という話に関しては世代に関係ないようで実例に事欠きません（笑）。　面白いのは、子供が学校へ行く年齢になった、かっての（優等だったか劣等だったかはともかく）学生が久しぶりに小学校の教科書に目を通してみると、３年生くらいまでの内容はなんとか理解できても、４年生あたりから怪しくなり、５～６年生くらいになると、急に”お母さんは今忙しいから　・・・”となる人が圧倒的に多くなるようです（笑）。　もっとも、それは覚えていないのではなく、当時から理解していなかった可能性も高く、１９７０～８０年代当時、”７・５・３”という言葉があったように、小学校の高学年あたりからオチコボレは急増していったものでございます。　ただ、”喉元過ぎれば熱さ忘れる”とは良くいったモノで、学校を卒業した途端、自分が現役の学生時代にテストでどれくらい悲惨な成績を取っていたかは綺麗さっぱりと忘れ去る人が多いようで、”私も駄目だったから、遺伝かもね～”という親より、”なんでこんな事が分からないの！”と怒る親の方が圧倒的に多いようです　・・・　今も昔も（笑）。　もっとも、そうやっていかにも学生時代は優秀であったかのように怒っている親にしたところで、子供の学校の授業内容が８割方理解できるのは、せいぜい中学校くらいまでの事で、後は、社会に出た後に飯のネタにしていたジャンルに関してはなんとか理解できる程度の知的水準になっている人が多いようです。　そう考えると、なんて無駄で役に立たないことを教えて、社会に出てから役に立つ事を教えないでいるのか？という気がしてくるのですが、一般社会とは隔絶した業界で生活している学校の先生や官僚でその辺りのことを気にする人は少数派のようです。　そういえば、おなじみの”あつじ屋”で、”英語の筆記体を学校で教えなくなって久しい”事に、筆記体を教えられた世代は驚いたという話になったことがあるのですが、私的には”そりゃあ、ずいぶん前から、亜米利加人は長文はタイプで打ってたし、手書きすると言えば、住所と氏名（含、サイン）くらいだったもんなあ？”と（笑）。　面白いのは、パソコンや携帯電話、あるいは各種のオンラインシステムの急速な普及で、日本でも長々と手書きで文章を書く事が実社会で無くなって来ているのに、学校教育では”手書き文化”を前提とした教育を見直そうとしないどころか、”漢字検定”の資格を入試で考慮するといった姿勢の方かな～と。　素朴な疑問として、”難しい漢字が手書きできます！”と言われても、”いや、手書きじゃなくて、資料や報告書は電子化したものをオンラインに乗っけて共有することになっているから　・・・”とか”資料を添付して電子メールで○時までに送って　・・・”という組織が大手企業ほど珍しく無くなっている現実があるわけで、既にＴＶのクイズ番組くらいでしか使い道が無いんじゃあなかろうか？　小学校３、４年生くらいまでの基礎的な知識に関しては手書きも暗誦も”脳を多角的に育てる”という意味でありだとは思うのですが、少なくとも、高校生くらいからは労働生産性ということを考慮しないと、社会に出てから使う場所がほとんど無い”伝統芸能”的な知識や技術を学校で主に教わる事になるんじゃあなかろうか？初出：一夢庵　怪しい話　第３シリーズ　第４８４話：(2009/05/07)

2009.05.13

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合否判定

一夢庵　怪しい話　第３シリーズ　第４３５話「合否判定」　何か勘違いしていないか？と思うのが、県立神田高校の入学試験に関する（いわゆる）裏基準を巡っての神奈川県教育委員会の裁定で、彼らは自らは長らく神田高校の教育体制を立て直せないでいる自らの能力不足はどう裁定しているのか？　神奈川県教育委員会がお気に召すようなやり方では神田高校の建て直しが不可能だから、長らく低迷しているのではないのか？　私的には、”高校教育というのは義務教育ではない”という立場なので、小学校や中学校のように、なにがなんでも教育を受けさせる義務が親や社会にあるとは考えていません。　一昔前に、ドラマ”三年Ｂ組金八先生”で”腐った蜜柑”が話題になったときも、”そりゃあ、腐った蜜柑にとっては周囲の蜜柑を腐らせながら自分の好きなようにやって「（最後には）更正した」と一人抜けした方が楽なのかもしれませんが、周囲の真面目にやっている蜜柑にとっては、そもそもそんな腐った蜜柑が周囲にいなければ被らなくて良い苦労じゃないのか？”と思った方でございます。　しかも、「裏基準」が明らかになったのは、内部通報（2008/07）ということで、早い話が”密告（ちくり）”ですから、教育者として　・・・　例えば職員会議などで　・・・　おかしいと思えば、まずは内部で状況を改善するように活動するのが先ではないのか？　別の視点では、密告者は、現状よりも学校運営が困難になる事が確実なことを承知の上で上司達を後ろから刺したわけで、上司への裏切りと、在校生への裏切りを恥としなかったわけだ。　結果的に、この密告者が教頭や校長へ繰り上げになったとすれば、もうそれは悪い冗談の域を超えている気がするのですが、神奈川県教育委員会は”誰が密告したか”をオープンにしていなかったりします　・・・　密告ではなく、教育者としてまっとうな抗議だという信念と自信があっての行動なら自ら名前を明らかにすべきでしょう。　ちなみに、舞台となった県立神田高校(生徒数347人)は神奈川県平塚市にある高校で、ネットを含む複数の入学難易度ランキングで見る限り、いずれのランキングでも同校は下から数えた方が早い位置にあるのが現状のようですし、同校からは（350人に満たない規模の高校で）年間100人以上の退学者が出ている事も併せて考えると、生徒指導を含む学校運営は相当な困難を抱え続けていることがそれだけでも推察される状況だったりします。　ちなみに、神奈川県教育委員会の裁定に関して、何らかの意思表示を神奈川県教育委員会に寄せた人の中で、賛成する立場の意見を寄せた人の割合は全体の約１割程度だそうで、その主張の主なモノは”子どもが学ぶ機会を奪ったのは間違い”という私に言わせれば寝言のような主張だったりします。　税金を使って運営されている公の学校で、しかも義務教育ではない自らの学びたいという意欲が前提としてあるのが高等学校の存在意義ならば、入学試験の前後くらい”オトナうけのする格好や行動”を維持できない人材というのは、明らかに学業以外の能力（辛抱や社会適応能力など）が一定の水準に到達していないと私は考えていますから、学ぶ機会が云々という以前の話で義務教育より上の学校へ進む水準に到達していないのではないかと。　あるいは、進歩的な文化人を自称する人達がしばしば主張しているように”学歴は不要で、学力だけで人間を判断するな！”といった主張がもっともなことならば、学業以外を加味して合否が判定された今回の事例は”先進的な取り組み”として評価して積極的に受け入れるべきでしょう。　これまたちなみに、神奈川県の県立高校の入試では、１　学力調査２　面接３　調査書のを３つの基準を点数化し、上位から合格を決めていく方式で、この内の学力調査以外の査定加算の結果、学力が合格点に達していても不合格となったという事のようです。　つまり、面接や調査書などで神奈川県の共通評価基準としては設定されていない基準を高校教育の現場責任者である校長たちが設定して運用していた　・・・　それを「裏基準」と呼称しているようですが　・・・　のがけしからんと騒いだ人達がいたということです。　しかしながら、私たちの世代だと、”内申書”が本人にも完全非公開で、内申書がどのように加算されたかも不明瞭な状況下で公立高校の入試は推移していたわけで、”見かけや言動で判断せず、学力だけで判断しろというのなら、調査書の評価や面接による査定も不要ではないのか？”という素朴な疑問を持つわけです。　ある意味で、実際に当事者に接したときに、共通基準では差別化が困難なため、より詳細な判定基準を設けたというのが裏基準とされている評価体系という理解の方が現実に近いのではなかろうか？　まあ、どういった査定をしたのかは不明ですが、神奈川県の基準通りに査定していれば合格していた22人が不合格になっていたそうで、損害賠償がどうしたこうしたという声もあるわけですが、実際に本人に接してみて学業以外の能力が不足していると現場の教職員が判断したのなら、机上の空論や現場を知らない夢想家の理想論よりも、そちらの方を優先すべきだと私は思います　・・・　早い話、実際に教えることになる先生達に”こんな子は教えたくない”と思われてしまう言動や格好をして試験に臨んだ子の評価点を高くしろという方が無茶な要求ではないかということです。　この「裏基準」によるチェックは、05、06、08年度入試で行われていたことが発覚しているわけですが、内容は「軍手をつけたままで願書提出時の受け渡しをした」というまあ、どうでもいいような事の他、「（スカート丈を含む）服装がだらしない」「化粧をしている」「眉剃り」といったわかりやすい基準が多いようで、親の職業や年収、犯罪歴などで査定していないだけマシではないかと。　学校側の会見における、「真面目な生徒を多く取り(入学させ)たかった」という釈明は、”ごもっとも”と私は思いますし、真面目にやっている在校生にとっても、学校の評価を下げる可能性が高い日常生活に問題がある人材を入学させないでくれというのは切実な願いではないかと。　なお、ネット上や放送局、教育委員会に寄せられた声の多くは、学校側を支持するもので、そうした意見の代表的なモノは「勉強をしたい、授業を受けたいならそれなりの態度や服装をすべきで受験を舐めるな」ということになるかなと。　そうした、直接、間接の社会の声や意見に対して、神奈川県県教委が最終的にどう動いたかというと、「”（現場の独自基準である）裏基準”は不適切」と断じ、問題発覚後に渕野校長を2008/11/01付けで総合教育センター専任主幹に人事異動させ事実上の更迭をまず実施しています。　その後、神奈川県県教育委員会は問題の入試が行われたときの校長（渕野氏の前任）、副校長、教頭だった４人に、停職３か月、減給３か月などの処分を下したのですが、入試責任者だった前校長と前々校長への停職３か月という懲罰は公務員の懲罰規定では、後は”免職”くらいしか残っていない重い処分だったりします。　ちなみに、過去の業務上の処分事例で停職３か月というのは「体罰やわいせつ行為」といった「非行事案」への処分くらいですから、こういう処分をみせつけられて、今後、誰が公立高校の建て直しを率先して行う気になるのか？まさに、”角をためて牛を殺す”を地でいったのではないかと。　ちなみに、校長たちへの”処分”は、６人いる「教育委員」が決めたそうで、委員の中には「そもそも、処分はすべきでない」という意見と「懲戒免職にすべき」という現場をあまりに知らない意見があったそうで、最終的に懲戒免職派の主張がほぼ通ったということのようです。　納税者の民意とあまりにかけ離れた判断に自信があるのなら、処分を決めた教育委員は実名と自らの主張を公開して、神奈川県民の審判を受けるべきでしょう。　それ以前の話として、こんな無茶な処分が横行している事に対して神奈川県知事は何をやっているのか？　もっとも、神奈川県の教育水準が低下する事は他の都道府県にとっては歓（中略）でしょうし、神奈川県民が、”それでいい”というのならそこまでの話で、2-284”髪の色”の回のように神奈川県とは逆に、入学させたにもかかわらず、地毛が茶色の在校生の髪を黒色スプレーで強制染色しても教職員が誰も停職３ヶ月にならなかった県もあるわけで、神奈川県教育委員会としても”我々の裁定が不服なら、私学へ進むか他県へ移れ”ということなのかもしれません（笑）。＊　2008/11には、在校生とPTAのＯＢなどが、渕野氏の校長復帰を求める約3400人分の署名簿・嘆願書を県庁に提出し、神奈川県教育委員会に2008年12月4日までに、電話で340件、メールで1060件の意見が寄せられ、その９割が渕野氏や学校側の判断を支持するものだったことは明記しておきたい。初出：一夢庵　怪しい話　第３シリーズ　第４３５話：（2009/03/11）

2009.03.17

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帰ってきた怪しい話 第001話 「AIの普及と13個問題」

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オはオタクのオ 第0051回 表現の自由 ・・・ ただし、オタク文化は対象外（大笑）

オはオタクのオ 第0050回 表現の不自由展（笑）

オはオタクのオ 第0049回 明日は学園祭の初日ですから。

オはオタクのオ 第0048回 吉本事変（そこじゃないでしょ）

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一夢庵 怪しい話 第４シリーズ 第７８３話 「水茶屋雑考」

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一夢庵 怪しい話 第４シリーズ 第７７１話 「スポーツ少女２」

一夢庵 怪しい話 第４シリーズ 第７７０話 「スポーツ少女」

一夢庵 怪しい話 第４シリーズ 第６８０話 「人力車の話」

一夢庵 怪しい話 第４シリーズ 第６７９話 「競輪の話」

一夢庵 怪しい話 第４シリーズ 第６７８話 「ゲートボール」

一夢庵 怪しい話 第４シリーズ 第６７７話 「ドッチはドッジ」

一夢庵 怪しい話 第４シリーズ 第６７２話 「学内階級制度」

学外ギャップ

姑息の用法

スパッツ

ぶるっつ

能力以前の話

執事概論

大卒暴落

寺子屋

蛇口を捻ると

セーラー服学

ボートの転覆

カフェの女給

駅伝考察

受験の歴史

あんた嫌い

コピペ文化論

一万時間

携帯電話制限

声に出すな

合否判定

帰ってきた怪しい話　第0019話　「パスワードは123456789＿正気か？」

帰ってきた怪しい話　第0010話　「文部科学省解体論（笑）」

帰ってきた怪しい話　第0008話　「過労死すんじゃなかったの？」

帰ってきた怪しい話　第0006話　「ゆたぽん学」

帰ってきた怪しい話　第0002話「ひろゆき氏『古文・漢文オワコン』」論の闇

帰ってきた怪しい話　第001話　「AIの普及と13個問題」

オはオタクのオ　第0053回　無人島に何か一つ持参。

オはオタクのオ　第0051回　表現の自由　・・・　ただし、オタク文化は対象外（大笑）

オはオタクのオ　第0050回　表現の不自由展（笑）

オはオタクのオ　第0049回　明日は学園祭の初日ですから。

オはオタクのオ　第0048回　吉本事変（そこじゃないでしょ）

オはオタクのオ　第0047回　長友本シリーズ

一夢庵の怪しい話　第995話　「セクハラ騒動雑感」

怪しい話・番外編3　獣医師騒動3

怪しい話・番外編　「獣医師騒動」

一夢庵の怪しい話　第991話　「教育錯誤　その１」

一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第８８１話　「豆腐の角に」

一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第９１４話　「尾木ママ擁護論」

一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第７８５話　「江戸の居酒屋２」

一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第７８４話　「江戸の居酒屋」

一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第７８３話　「水茶屋雑考」

一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第７８２話　「江戸の茶屋」

一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第７７１話　「スポーツ少女２」

一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第７７０話　「スポーツ少女」

一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第６８０話　「人力車の話」

一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第６７９話　「競輪の話」

一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第６７８話　「ゲートボール」

一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第６７７話　「ドッチはドッジ」

一夢庵　怪しい話　第４シリーズ　第６７２話　「学内階級制度」