カテゴリ:ニュース
マラソン選手。福島県須賀川市出身。陸上自衛隊三等陸尉。 1964年の東京オリンピックで銅メダルの3位となる。このときゴールの国立競技場 に2位で戻ってきたが後ろに迫っていたイギリスのヒートリーにトラックで追い抜かれた。 「男は後ろを振り向いてはいけない」という父親の戒めを愚直に守り通した為ともいわれ る。いずれにせよこの円谷の銅メダルが「日本陸上界を救った」とまでいわれた。 東京オリンピックの陸上競技唯一のメダルだったからである。 その後メキシコオリンピックでの金メダルを期待され重圧に苦しめられる。 ほぼ決まりかけていた婚約を「次のオリンピックの方が大事」と認められず、破談となる。 この婚約への自衛隊干渉(「娶妻願」の提出)を不当と訴える上官の畠野が左遷され、円 谷は孤立無援の立場に追い込まれる。 またトレーニングの最中に腰痛を発してヘルニアの手術を受ける。 周囲の期待の重圧と走れない焦りから1968年1月9日にカミソリで左頚動脈を切って 自殺。戒名は最勝院功誉是真幸吉居士である。 以下遺書である。 父上様、母上様、三日とろろ美味しゅうございました。干し柿、餅も美味しゅうございま した。敏雄兄、姉上様、おすし美味しゅうございました。克美兄、姉上様、ブドウ酒とリ ンゴ美味しゅうございました。 巌兄、姉上様、しめそし、南ばん漬け美味しゅうございました。喜久蔵兄、姉上様、ブド ウ液、養命酒美味しゅうございました。又いつも洗濯ありがとうございました。 幸造兄、姉上様、往復車に便乗させて戴き有難うございました。モンゴいか美味しゅうご ざいました。正男兄、姉上様、お気を煩わして大変申しわけありませんでした。 幸雄君、秀雄君、幹雄君、敏子ちゃん、ひで子ちゃん、良介君、敦久君、みよ子ちゃん、 ゆき江ちゃん、光江ちゃん、彰君、芳幸君、裕ちゃん、キーちゃん、正祠君、立派な人に なって下さい。 父上様、母上様、幸吉はもうすっかり疲れ切ってしまって走れません。何卒お許し下さい。 気が休まることもなくご苦労、ご心配をお掛け致し申しわけありません。幸吉は父母上様 の側で暮らしとうございました。 川端康成は「円谷幸吉選手の遺書」を発表し、「繰り返される<おいしゅうございました> という、ありきたりの言葉がじつに純ないのちを生きてゐる。そして遺書全文の韻律をなし てゐる。美しくて、まことで、かなしいひびきだ。」と語り、「千万言も尽くせぬ哀切」と 評した。 三島由紀夫も当時の関係者が「本人のノイローゼ」とか「指導者に転向できなかった本人の 力不足」などの憶測を云々するのに「(円谷の自殺は)傷つきやすい、雄々しい、美しい自 尊心による自殺……この崇高な死をノイローゼなどという言葉で片付けたり、敗北と規定し たりする、生きている人間の思い上がりの醜さは許しがたい」と激しく批判した。 今回の野口みずき選手のオーバーワークによる故障はなにか円谷選手のことを思い起こされ て哀切である。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年08月16日 12時01分38秒
コメント(0) | コメントを書く
[ニュース] カテゴリの最新記事
|
|