Phos Graph1 ばらの花 (詩:sampleさん) ※水野英一さんの『ばらの花』評リンク
イラスト;freedesignfile.com詩の転載元:文学極道(作品#7801 掲載日'14/12/08) ※作品下:水野英一さんの『ばらの花』評リンク 詩:sampleさん ツイッター:sample @@kaibutsu_headばらの花言葉と子どもが走り抜ける橋の下で焚いた火は明るく配達され続ける魚を燃やして皿の上に描かれた細密な骨の水路は若い母の背中にあった痣のような海の記憶を圧し流して排泄してこぼれ落ちた情緒は骨を溶かしなにもない皿へと空腹だった子どものままきれいな手が伸びる意味も解らず嘔吐した溶けかけた宝石を拭ってくれた考えるだけで泣いていた眠り続けていたい天井を蹴破ってみたい一生のお願いを、たくさん抱えている朝はいつも怪物が訪問する冷たい空気を吸い込むと肺に魚の骨が突き刺さる咳と痛みを創造する幼児の悲しい魔法なわとびをしていたもう、どれほど飛んでいるのだろうか握った手のひらに汗をかきロープが滑って抜け落ちていったコンクリートの地面にプラスチックの部分が叩きつけられて響きのない、乾いた音が鳴った片方の手から足下に垂れさがるロープの曲線を何度も目で往復させながら今日はこれでおしまいロープを手繰りよせて結んだもう解けないくらいきつく結んだ窓から遠くの緑をながめるもっと目が良くなりたいから燃え続ける星を見上げる剥落する光、口、あけたまま点眼する目をつむると清潔で真っ白な布が瞼に裏打ちされて黄色い染みが小さく浮かぶそれは波紋のように広がってゆき耳のうしろへ、背筋のくぼみへやがて一枚の画用紙の上尾ひれを生やした子どもになって水色からいちばん遠い色ばかりすり減らしていた嘘だと知っていたから一瞬、笑いかけたあなたは、橋の下から拾ってきたのよ。そんなはずはないけれど息継ぎを忘れるほど泣いたお風呂にしようね。息を大きく吸い込んで浴槽に頭を沈めた髪の毛の間に気泡が留まるのを感じた目をひらいた、なにも見えないな手のひらをひらいてみる、閉じてみる苦しい、浴槽から顔をだす排水口にお湯が逃げてゆく流れる音は徐々に高くなり、細くなり消えてゆく並んだ隣の布団から母の寝息が聞こえる、規則的な息を吸う、止まる、息を吐く繰り返す、母のそれに合わせて呼吸をしてみるけれど、それだとなぜか息が苦しいような気がしていつもどおり、呼吸する息を吸う、息を吐く、ただそれだけなのに同じではいけないんだ真っ暗な天井を見つめるかすかに、耳鳴りがする橋の上から川をながめている流れのない安らかな水面遠い町の、名前の知らない川両岸から木々の枝葉がせりだして濃い影をつくっている呼吸をする、その音だけが聞こえるとても静かな時間子どもが僕のうしろを駈け抜けていった二羽のすずめが水面に触れてそのまま林の奥へ消えていったつぎに向かう駅の名前それを確認するように小さく声にだしてみる 水野英一さんの 『ばらの花』評 評(1) 評(2) 評(3)