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詩誌AVENUE【アヴェニュー】~大通りを歩こう~

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時代屋

2015年11月27日
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カテゴリ:時代屋
絵:四季の素材 十五夜さん



                      詩小説:泡沫恋歌さん
                      ツイッター:泡沫恋歌 @utakatarennka1









    時代屋シリーズ 其の二

     【 竜田姫と楓の木 】




            02 四季の素材_十五夜 2015-11 2010-tatutahime2.jpg



日本には四季を司る四柱の女神がいます
春を司る佐保姫(さほひめ)
夏を司る宇津田姫(うつたひめ)
冬を司るのは筒姫(つつひめ)
錦秋の紅葉の華やかさは竜田姫(たつたひめ)
風神でもある、秋を司る女神です

ある日、竜田姫は白い牝鹿に変身して
竜田山の森林を散策しておりました
山では楓が真っ赤の染まり
柿や栗の木にはたわわに実って
古い木の株にはきのこも生えています
今年も豊穣の秋だと満足に微笑む竜田姫でした

その時、一本の矢が飛んできて、
牝鹿の脚に突き刺さりました
痛みに嘶く、白い鹿の姿の竜田姫に、
弓矢を持った若武者が走り寄ってきました
「ああ、なんてことをしてしまったんだ」
薬草を牝鹿の脚に塗ってくれたのです

「白鹿は竜田山の精霊に違いない」
どうかお許しくださいと、額ずいて
若武者は何度も謝りました
鹿に変身した竜田姫は元の姿に戻り
「そこな、若武者よ。吾は竜田姫じゃあ」
美しい女神の出現に若武者は驚き目を見張った

燃えるような楓の木の下で
竜田姫と若武者は惹かれあったのです
この場所でふたりは会うようになりました
永遠に時が止まったように
ふたりは手を握り見つめ合っています
不老不死の女神と人間との儚い恋

若武者の国に隣国から兵が攻めてきました
「竜田姫、私は戦(いくさ)に行かねばなりませぬ」
「どうか、ご無事に! 武運長命じゃあ!」
そう唱えると、真っ赤な楓で鎧甲冑を紅く染めた
「吾はこの楓の木に宿って、そなたの帰りを待っています」
紅い鎧甲冑で馬に跨り、若武者は出陣していきました

それから、ずっと楓の木の下で
来る日も、来る日も、来る日も……
ひたすら若武者の帰りを待ち焦がれる
不思議なことに、楓の木は一年中紅葉していた
まるで燃える竜田姫の恋心のように
美しい唐衣裳(からぎぬも)を広げたように

そんな或る日、紅い鎧甲冑姿が通りかかる
だが、その者は待ち望んでいた若武者ではなかった
「紅い鎧甲冑では目立つ、戦では数多の矢が放たれる」
これを身につけていた者は矢に当って死んだという
ああ、なんてこと! 吾が紅く染めた鎧甲冑のせいで
あの若武者が矢に討たれたというのか!?

嘆き、悲しみにくれる竜田姫
宿っていた楓の木が一気に落葉してしまった
葉っぱが風に舞い 秋の空を真っ赤に染め上げて
女神の流した涙で「竜田川」が生まれた
秋風に吹かれると、なぜか切ない気持ちになるのは……
竜田姫の悲恋のせいかも知れません


                    ― 終り ―














最終更新日  2015年11月27日 21時52分08秒
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2015年10月12日
カテゴリ:時代屋
絵:四季の素材 十五夜さん



                      詩小説:泡沫恋歌さん
                      ツイッター:泡沫恋歌 @utakatarennka1









    時代屋シリーズ

     【 黒揚羽と女房 】




            bijin2012.jpg



あちきはおせんという、
飾り職人清吉の女房でございます。
亭主の清吉さんは、それは腕のいい職人で、
女たちの髪を飾る簪作りを生業として
浅草寺雷門の参道に小さい店を構えております。

亭主と姑とあちきの三人暮らしですが、
嫁して五年経っても、まだ赤子(あかご)が授かりません。
「おまえは石女(うまづめ)じゃ!」
姑に辛く当られても、清吉さんが庇ってくれるので、
あちきは幸せな女房でございました。

その清吉さんが変わったのは……
飾り職人の集まりで吉原に簪を卸すことになり、
腕を買われて遊郭へ注文を受けるために
初めて吉原の門をくぐった時からでした。

昔から堅物と呼ばれていた清吉さんは
吉原など悪所に足を踏み入れたこともない男です。
それなのに……それなのに……
廓の主人に遊んでゆけと勧められて、
つい遊女を抱いてしまったが間違いの始まり……
すっかり吉原の煌びやかさに当てられてしまった。

ああいう悪所には男を狂わせる瘴気でも
漂っているのでございましょうか。

夕凪(ゆうなぎ)という女郎の馴染みになり、
ぞっこん惚れ込んでしまい、家業も身が入らず遊んでばかり
店からお金を持ち出しては夕凪に貢いでしまう。
あちきがどんなに泣いて頼んでも……
清吉さんは吉原通いを止めてはくれない。

ああ、口惜しい、口惜しい……
あちきの心は般若にようになってしまった。

丑三つ刻になると、
裸足で雷門と本堂を行ったり来たりしてお百度参り。
清吉さんが吉原通いを止め、夕凪と別れるように
と、願をかけて
毎夜、毎夜、あちきはお百度参りする。

或る夜、お百度参りをしていると……
すぅーと魂が抜けて生霊になってしまった。
そして黒い揚羽蝶に変身すると、
清吉さんの羽織りの背中に張り付いて
一緒に吉原の門をくぐった。

亭主を盗った憎い女郎の夕凪に
生霊のあちきはとり憑いてやったのさ。
七転八倒して転げ回ってもがき苦しむ夕凪を
清吉さんは怖れ慄き見ていましたが、
ひらひら舞う黒揚羽のあちき目掛けて
「不吉な黒蝶め!」
と、箱枕を投げつけたのです。

ああ、怨めしい、怨めしい……
黒揚羽は無残にも潰されてしまった。
悲しい女房の物語でございます。

             ― 終り ―












最終更新日  2015年10月25日 07時03分43秒
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